耳鼻咽喉科臨床

抄録を表示する抄録を非表示にする

正常人ニ於テハ内因 (自律神經緊張状態, 内分泌機能ノ影響等) 又ハ外因 (個體ノ状況, 外來刺戟等) ニヨル鼻腫脹體含血量ノ變動ハ極メテ僅微ニシテ, 從ツテ吾人ノ知覺ニ昇ラズ. 雖然, 病的状態 (例ヘバ血管運動神經性鼻炎) ニアリテハ腫脹體ハ生理的範圍ヲ超ヘテ變動シ, 鼻腔容積ハ不安定トナリ, 自覺的ニモ鼻閉塞感ヲ惹起ス. 而シテ如斯キ鼻閉塞感ガ運動, 入浴或ハ體位變換等ニヨリ屡々消失スルコトアリ, 或ハ左右鼻腔ニ交互ニ反覆發來スルコトアリ. 而シテ之レガ原因ニ關シテハ未ダ明確ヲ缺ク. サレバ鼻腫脹體ガ如何ナル條件或ハ刺戟ニヨリテ如何ニ變動スルヤニ就キ檢討スルハ鼻腔生理上, 或ハ臨床上緊要ナル問題ナリ. 然ルニ此ノ方面ニ關スル研究ハ從來乏シク, 從ツテ闡明ナラザル事項多々存ス. 茲ニ於テ, 余ハ星野教授課題指導ノ下ニ本問題ニ就キテ諸種實驗ヲ行ヒ, 次ノ如キ成績ヲ得タリ.
第1篇自律神經毒靜脈内注射ノ鼻腔容積, 血壓並ニ呼吸ニ及ボス影響.
諸種自律神經毒ノ鼻血管充盈状態ニ及ボス影響ニ就テノ薬物學的研究ハ H. Sternberg (1925) ノ數種ノ藥物ヲ使用セル簡單ナル報告ヲ見ルノミ. 余ハ次ノ13種ノ藥物ヲ少量ヨリ大量ニ及ブ各種用量ニ分チテ詳細ニ實驗ス. 尚, 之等諸種自律神經毒ノ血壓並ニ呼吸ニ及ボス影響ニ就キテハ既ニ多クノ業績存スルモ, 其成績ハ實驗者ニヨリ甚ダ區々ニシテ, 其見解モ亦多岐ニシテ, 統一的ナラザルヲ以テ余ハ之等ノ成績ニ就キテモ觀測シタリ.
實驗ニハ6-12瓩ノ家犬ヲ用ヒ,「ウレタン」麻酔ノ下ニ所謂 Plethysmographische Methode ニヨリテ鼻腔容積ヲ測定ス. 其ノ成績次ノ如シ.
(1) i) 鹽化 Adrenalin (對瓩 0.0000001-0.1mg), 鹽酸 Ephedrin (對瓩0.0001-4mg), 鹽酸 Cocain (對瓩0.0001-0.1mg), Gynergen (對瓩0.001-0.1mg), 鹽酸 Pilocarpin (對瓩 0.000000001-1.0mg), 鹽化 Acetylcholin (對瓩0.00001-0.01mg ニテハV型降下, 對瓩0.1mg ニテハW型降下) 及ビ酒石酸 Nicotin (對瓩0.01-0.1mg) ハ其ノ靜脈内注射後, 鼻腔容積曲線ノ降下 (鼻腔容積ノ増大即チ鼻血管収縮) ヲ惹起シ, 就中, 鹽酸 Pilocarpin 及ビ鹽化 Acetylcholin ハ血壓ニ概ネ並行シ, 爾余ノ藥劑ノ總ベテハ血壓ニ概ネ逆行ス.
ii) Yohimbé Alkaloid (對瓩 0.001-0.1mg), 硫酸 Atropin (對瓩0.1-10.0mg), Bellafolin (對瓩0.001-0.1mg), 鹽酸 Histamin (對瓩 0.001-0.1mg) 及ビ Coramine (對瓩0.2-0.3cc.) ハ鼻腔容積曲線ノ上昇 (鼻腔容積減少即チ鼻血管擴張) ヲ招來シ, 就中, Bellafolin 及ビ Coramine ハ血壓ニ概ネ並行シ, 爾余ノ藥劑ノ總ベテハ血壓ニ概ネ逆行ス. iii) 比較的大量 (對瓩0.5mg) ノ Yohimbé Alkaloid ニテハ被働性血管収縮ヲ, 比較的大量 (對瓩0.1mg) ノ酒石酸 Nicotin ニテハ被働性血管擴張ヲ一過性ニ惹起スルコトアリ.
(2) i) 鹽化 Adrenalin, 鹽酸 Ephedrin, 鹽酸 Cocain, Gynergen,「サリチール」酸 Physostigmin, Bellafolin, 酒石酸 Nicotin 及ビ Coramine ハ血壓上昇ス. 但シ比較的大量ノ酒石酸 Nicotin ハ多數例ニ於テ, Coramine ハ少數例ニ於テ著明ナル上昇ニ先立チテ一瞬或ハ數秒間, 血壓降下ス. ii) Yohimbé Alkaloid, 鹽酸 Pilocarpin, 鹽化 Acetylcholin, 鹽酸 Histamin ハ血壓降下ス. iii) 硫酸 Atropin ノ比較的少量ハ血壓上昇シ, 比較的大量ハ降下ス.
(3) i) 鹽化 Adrenalin 及ビ Gynergen ハ呼吸ノ深サ及ビ數ヲ減ジ, 前者ハ血壓恢復後, 却テ其ノ深サ及ビ數ヲ増ス. ii) 鹽酸 Cocain, Yohimbé Alkaloid, 鹽酸 Pilocarpin, 硫酸 Atropin 及ビ Bellafolin ハ極メテ短時間, 呼吸ノ深サヲ減ジタル後, 其ノ深サ及ビ數ヲ増ス. iii) 鹽酸 Ephedrin, 鹽酸 Histamin, 鹽化 Acetylcholin, 酒石酸 Nicotin 及ビ Coramine ハ呼吸ノ深サ及ビ數ヲ増ス. iv)「サリチール」酸 Physostigmin ハ深サ及ビ數ヲ増スモ暫時ニシテ却テ深サ及ビ數ヲ減ズ.
第2篇内分泌腺製劑靜脈内注射ノ鼻腔容積, 血壓並ニ呼吸ニ及ボス影響.
第1篇ト同樣ノ方法ニヨリテ實驗ヲ行フ. 其ノ成績次ノ如シ.
(1) i) 腦下垂體後葉製劑 Pituitrin (對瓩0.01-0.1cc.), Pituglasin Nr. 2 (對瓩0.05-0.15cc.) 及ビ腦下垂體漏斗部製劑 Pituglandol (對瓩0.01-0.1cc.) ハ其ノ靜脈内注射後, 孰レモ鼻腔容積曲線降下 (鼻腔容積増大即チ鼻血管収縮) ヲ惹起スルモ夫ニ先立チテ該曲線ノ僅微ナル上昇ヲ觀ル. ii) 甲状腺製劑 Thyradin (對瓩0.1-0.3cc.), 腦下垂體前葉製劑 Hypohorin (對瓩0.1-0.2cc.), 睾丸製劑 Spermatin (對瓩0.1-0.2cc.) 及ビ卵巣黄體製劑 Luteinol (對瓩0.2-0.3cc.) ハ鼻腔容積曲線上昇 (鼻腔容積減少即チ鼻血管擴張) ヲ招來ス. 而シテ上記藥劑ハ孰レモ其ノ鼻腔容積曲線ハ血壓曲線ニ概ネ逆行ス. iii) 副腎皮質製劑 Enex (對瓩0.01-0.2cc.), 膵臟製劑 Miniglin (對瓩1-7u.), 腦下垂體前葉製劑 Plaehormon (對瓩0.1-0.3cc.) 及ビ卵巣濾胞製劑

抄録全体を表示

PDF形式でダウンロード (56542K)

J-STAGEへの登録はこちら（無料）