聴神経腫瘍症状を呈した46才の男で, 最初錐体尖炎を疑い, 錐体尖開放を行つたが, 著変を認めず結局X線照射により症状の軽快を得たが症状が複雑で診断にはなはだ苦しんだ1例を報告した. 聴神経腫瘍というものは耳科的所見のみで診断を決定することははなはだ困難で, Cushing, Nylèn, Brunner, List, 等のいうように, あるものは機能が亢進しあるものは機能低下があつて, 臨牀経過は一定方向に進行するものとは限らず, また Cushing の分類I~IV期の発現順序も, 症状の発展経過を吟味するうえには参考となるが, 必ずしもこのような定型的な経過をとるものでなくて, 複雑きわまりないことを強調する次第である.
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