1) Diphenidol 投与症例32例中, 著効は, 15例 (47%), 有効は9例 (28%), 無効は8例 (25%), 一方全症例50例では, 著効は20例 (40%), 有効は15例 (30%), やや有効2例 (4%), および無効は13例 (26%) であった.
2) 効果別に分類して検討したが, まず自覚症状では, 著効例20例中, 回転性めまい例は12例 (60%), めまい感例は8例 (40%), 一方無効例では, メニエール病例を除いて, 回転性めまい例は1例もなかった. 他覚所見では, 著効例20例では, 前庭系の unbalance を示す所見として, 一側CPおよび Superimpose 左右差をもった症例は, 著効例20例中13例 (65%), 有効例15例中8例 (53%), 無効例では13例中3例 (23%) であった. 著効例と有効例ではそれほど差がみられなかったが, 一側CP, Superimpose の左右差程度において, 著効例の方が, 高度なものが多く含まれていた. 以上, 著効例ほど, 左右前庭系の unbalance が著明であった.
3) Diphenidol との比較からは, セロクラールは, 純粋な末梢前庭障害例よりは, いくらか中枢所見をもつ, 例えばめまいを伴う高血圧症例など, 椎骨動脈領域の循環障害例に有効であったが, 眼運動系に中枢所見がみられるが臨床的には, 末梢前庭障害例, めまいを伴う突発難聴例にも有効であった. しかし, 末梢前庭障害例すべてに無効かというと, そうではなくて, Diphenidol との比較から検討したためであり, 著効例もあった.
4) 以上, 中枢前庭系のみならず, 末梢前庭系の障害をもつめまい・平衡障害例にも有効的に働くセロクラールの薬理作用について, 最近の交感神経系の考え方, 交感神経系地域性反応の概念をもって説明した.
本研究の一部は, 厚生省特定疾患「メニエール病」調査研究班基金により行なわれた.
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