1965年1月~1978年12月までに, 大阪大学医学部耳鼻咽喉科, 大阪回生病院耳鼻咽喉科および大阪大学医学部放射線科で治療された上咽頭悪性腫瘍患者107例 (癌腫88例, 肉腫19例) につき, その臨床統計を行った.
1. 性・年令は癌腫では男性60例, 女性28例と男性が多く, 40~50才代にピークがあり, 肉腫では男性8例, 女性11例とやや女性に多く, 各年代に分布していた.
2. 初発症状は癌腫では鼻症状53.4%, 耳症状47.7%, 頸部腫瘤37.5%, 脳神経症状15.9%であり, 肉腫では耳症状47.4%, 頸部腫瘤36.8%, 鼻症状31.6%, 脳神経症状15.8%であった.
3. 脳神経症状 (初診時): 癌腫ではV (18例) VI・XI (各9例) IX (8例) の順であり, 肉腫ではVI (4例) II・IV・V (各2例) であった. Iは1例もなかった.
4. 原発部位は癌腫では後上壁43.2%, 右側壁29.5%, 左側壁27.3%であり, 肉腫では後上壁63.2%, 左側壁21.1%, 右側壁10.5%で, 肉腫の方が後上壁に多発する傾向がみられた. 下壁のものはみられなかった.
5. 病理組織像は癌腫では扁平上皮癌 (リンパ上皮腫・移行上皮癌を含む) が64.8%を占め, 未分化~低分化型のものが61.4%と過半数を占めていた. 肉腫は全例が悪性リンパ腫の範疇に属するものであった.
6. 治療は主として放射線治療を行った.
7. 癌腫・肉腫の5年粗生存率は各々37.7%, 27.3%で癌腫の方が良かった.
8. 癌腫についてUICCとHoの二つの病期分類による予後の比較では, あまり明確な差は認められなかったが, Hoの分類で Stage I+II, Stage III+IV, Stage V にわけると, その5年粗生存率は各々45.0%, 33.3%, 0%となり, この分類において, 多少とも Stage が予後と関係していた.
9. 癌腫の組織別では, リンパ上皮腫の5年粗生存率が66.7%ともっとも良かった. 組織の分化度と予後は平行していなかった.
10. 肉腫では, 5年粗生存率は Stage I 50.0%, Stage II 28.6%, Stage III 0%であった.
11. 死因は遠隔転移死が49.1%と半数近くを占め, 原発巣死は16.4%であった.
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