我々の考案した方法, すなわち, ウサギの躯幹を布片で吊下げて固定し, 四肢を空中に自由にした状態におき, 頸部を躯幹長軸の回りに時計回り, または反時計回りに捻転して生ずる眼振は, 頸部深部受容器起源のものであり, これに耳石器が協応して, その眼振発現を activate するものであるとの考えを明らかにするため, 一連の実験が行われた.
得られた成績は次の通りである.
(1) 頭部を前傾45°の位置で固定し, 躯幹を反時計回りの方向に回転し, 腹部, 四肢上位の姿勢をとらせると, 7羽中3羽に眼振が誘発された. しかし, その眼振は活発でなかった.
(2) ウサギの頭部と躯幹の相対的位置変化をおこさせることなく左側臥位をとらせると, 眼球偏倚がおこる. 眼振をみることがあっても再現性に乏しかった.
(3) ウサギを, 先ず左側臥位におき, 次に頭部を動かすことなく, 躯幹を反時計まわりに回転して, 頸部が90°捻転された姿勢をとらせると, 偏倚の増大に続いて眼振が全例に, 且つ活発に誘発された.
(4) (1) または (3) で述べた姿勢でおこる脳波の覚醒反応は, 時間の経過とともに消褪し, これと平行して, 眼振も出現し難くなった.
(5) (1) または (3) で述べた姿勢の変化を短時間の休止で, 且つ長時間に亘って繰り返すと, 眼振の解発は抑制され, 脳波の覚醒反応もおこり難くなった.
以上の成績より次の結論を行った.
(I) 我々の考案した頸捻転法で誘発される眼振は, 頸部深部受容器起源のもので, 耳石器はその解発に促進的に作用する.
(II) この種眼振の発現と脳, とくに脳幹網様体上行性賦活系の活動性亢進は密接な相関を有す.
(III) この種眼振にも response decline 現象がみられ, この際, 中枢神経系, とくに上記の脳幹網様体には活動性低下が生じている.
抄録全体を表示