昭和44年より昭和53年までの過去10年間に, 当科において治療した副鼻腔悪性腫瘍症例について, 臨床的検討を行い, つぎの結論を得た.
1. 性別の頻度差は1.7:1で男性に多く, 50才代, 60才代に多かった.
2. 来診時主訴は, 鼻閉, 頬部腫脹および疼痛, 鼻出血など鼻部を中心とする訴えが多かった. 歯痛, 眼球突出など耳鼻咽喉以外の訴えでも上顎癌の疑いをもってのぞむことが必要である.
3. 病理組織学的診断は, 上皮性腫瘍が圧倒的に多く, しかもそのほとんどが扁平上皮癌であった.
4. TNM分類では, T
11例, T
219例, T
359例, T
46例であった. 頸部リンパ節転移を認めたものは11例 (13%) であった.
5. 昭和44年より昭和49年までの57例の3年および5年生存率は, それぞれ40.4%, 31.6%であった.
T分類別では, T
1,2症例が53.3%, 46.7%, T
336.6%, 26.8%, T
40%, 0%であった. 初回治療法別では, 三者併用療法 (佐藤) 後に手術を行った群が, 3年および5年生存率とも56.3%, 43.8%と最も良い結果であった.
6. 再発したものは40例 (47.1%) で, そのうちの75%にあたる30例が1年以内に再発した.
抄録全体を表示