情報通信政策研究
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最新号
総務省 学術雑誌『情報通信政策研究』 第3巻第2号
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学術雑誌『情報通信政策研究』 第3巻第2号
寄稿論文
  • 中川 裕志
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 3 巻 2 号 p. 1-24
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    シンギュラリティによって人間と同じような知的能力を持つAIが出現し、人間への脅威になりかねないという言説が流布した。これによって、AIにも倫理を守らせようという機運が高まったという状況もあってか、2016年ころからAI倫理指針の作成と公開が盛んになった。本論文では、2017年から2019年にかけて国内外で公開された多数のAI倫理指針のうち、影響力の大きな主要な指針に関して、AI制御、人権、公平性、非差別、透明性、アカウンタビリティ、トラスト、悪用、誤用、プライバシー、AIエージェント、安全性、SDGs、教育、独占禁止・協調、政策、軍事利用、法律的位置づけ、幸福などの倫理的テーマを各AI倫理指針がどのように扱ってきたかをまとめた。種々のAI倫理指針の公開の時間順序と合わせてみれば、AI倫理の内容の変遷を探ることができ、同時にAI技術、AI応用システムの開発を行うにあたって留意すべき点が明らかになる。また、これらの指針が誰を対象に起草されているか、すなわち名宛人を考察することによって、AI倫理指針を作成した組織の意図が見えてくる。

    次に、AI倫理指針のうちIEEE EAD ver2、1eで提案された個人データの収集、管理、保護をおこなう代理ソフトウェア、すなわちパーソナルAIエージェントの概念設計について述べる。これは、データ主体本人の個人データとその利用条件の記述されたデータベースであるので、これをデータ主体の死後に残されたディジタル遺産の管理に適用する場合の検討課題について述べた。

  • 映画・テレビ・ネット映像配信からみる垂直統合・分離政策、レイヤー間接続問題
    内山 隆
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 3 巻 2 号 p. 25-52
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    他国の映像メディア産業同様、わが国も2010年前後に放送産業の垂直分離が政策として意図された。産業の垂直分離(市場化)にも垂直統合(組織化)にもそれぞれ合理性がある。考慮すべきことは究極の差別化された財である映像の成果リスクを垂直ステイクホルダーの間でどのようにシェアしたり担保するかである。そのリスク・シェアのために、分離されている場合は垂直的取引に様々なオプションを付ける商慣習がある。

    垂直分離され水平的に融合した各レイヤーの競争促進は、容易なレイヤーもあれば困難なものもある。各レイヤー内の競争状態は、垂直的取引における民間契約の交渉力を背後から規定し、レイヤー間の接続契約に影響をあたえ、結果として社会的最適にも影響する。分離されたレイヤー間、セクター間の接続に関する政策的な議論は公益事業各分野で多く、映像分野においてもレイヤーの区切り方と接続問題は同時に考慮する必要がある。長期的には、市場競争自体が自律的にレイヤーを形成するダイナミズムが尊重されるべきで、政策がダイナミズムの基礎を形成することを意識していることは価値がある。

  • 非拘束的原則から普遍的原則への道筋
    新保 史生
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 3 巻 2 号 p. 53-70
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    「AI原則ブーム」が到来するとの予想のもとで、AI原則を単なる非拘束的な原則として活用を求める段階から、AIの実用・実装に対応した法規範においてその活用を考えるべきではないかとの提案を試みることが本稿の目的である。

    第三次AIブームの興隆によって、社会の様々な場面でAIの研究開発からその活用が現実化するとともに、その適正な利用にあたって原則の重要性が認識されるようになりつつある。そのため、エマージング・テクノロジー(新興技術)の活用を見据えて必要な対応を推進するための取り組みとして、基本法的なものを整備することで非拘束的な「原則」と謳ってきたものを基本原則として定めたり、法定公表事項として当該原則を組み込んだルール作りを考えることはできないだろうか。

    新たな問題に対応するためのルール作りは、EUにおける取り組みが様々な局面で先行しているが、「AI規制」に向けた検討においても同じ図式が繰り返されようとしている。本稿では、国内外における原則・ガイドライン等策定の現況を概観するとともに、EUにおける検討動向について、「信頼できるAIのための倫理ガイドライン」の内容と「評価リスト」、AI規制の方向性を示すホワイト・ペーパーの内容を概観することで、今後の規制に向けた方向性を把握する。EUにおける検討状況を参考にすることは、我が国における取り組みを考えるにあたり示唆に富むものである。

    最後に、OECDが「人口知能に関する理事会勧告」を採択した意義とともに、法的拘束力を有さない原則が法整備において参照されているOECDプライバシー・ガイドラインの位置づけを再確認することで、非拘束的なガイドラインではあるものの、OECDプライバシー8原則が各国の法制度において参照されるに至っている点に着目し、非拘束的原則が普遍的原則として用いられてきた意義を考える。

  • 杉原 周治
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 3 巻 2 号 p. 71-94
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツ規制は、2009年6月1日発効の第12次改正放送州際協定によって制定された。しかしながら、同規制の適法性をめぐっては当初から判例・学説において激しく議論がなされており、またその後も、メディア利用環境の変化に適した公共放送のあり方が議論されてきた。そして、2009年の改正法から10年の時を経て、2019年5月1日に、公共放送のオンライン・コンテンツに関する責務、すなわち「テレメディア任務」の改革に関連する改正法である第22次改正放送州際協定が発効した。

    本改正法は、一方で、公共放送のテレメディア任務の制約を緩和し、その範囲を大幅に拡大した。例えば、同改正法によって、旧法において課せられていた放送後7日未満というテレメディアコンテンツの閲覧期間の制約が原則として撤廃された。また、公共放送事業者は、リニア放送後だけでなく、リニア放送前に自己の放送プログラムのオンデマンドの番組をオンラインで提供できるようになった。さらに、公共放送事業者は、テレメディアコンテンツのために制作された独自の祖聴覚コンテンツをオンラインで提供できるようになった。

    他方で、本改正法は、公共放送事業者に対してより厳格な制約も課している。例えば、改正法では、新しいまたは本質的な変更がなされたテレメディアコンテンツはすべて三段階テストが課せられるとともに、原則としてすべてのテレメディアコンテンツに、「プレスとの類似性」の禁止の原則が適用されることとなった。

    本稿は、このような公共放送のテレメディア任務に関する重要な改革を行った第22次改正放送州際協定を分析し、公共放送のあり方につき検討を行うものである。

  • 板倉 陽一郎
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 3 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    令和元(2019)年9月2日の総務省情報通信法学研究会データ法分科会(令和元年度第1回会合)において、『情報法制研究』誌の連載である「プライバシーに関する契約についての考察」についての発表がなされたところ、同分科会で、構成員らから様々な指摘を頂いた。ここでは、分科会における応答を更に深化させ、連載の「問答編」として再編集した。

論文(査読付)
  • 米国法上の議論を手がかりとして
    海野 敦史
    原稿種別: 論文(査読付)
    2020 年 3 巻 2 号 p. 103-126
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    我が国では、憲法上のプライバシーの保護のあり方に関して、自己情報コントロール権という考え方が通説化した結果として、物理的な空間との関係が考察から捨象される傾向にあった。ところが、近年のGPS捜査判決は、「公道上」と区別される「個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間」を明示しつつ「私的領域に侵入されることのない権利」(私的領域不侵入確保権)を導き出したことにより、当該関係に着目する契機を与えた。特に、公的空間におけるプライバシーの保護の具体的なあり方については、一見すると自己矛盾的にも聞こえる未解明の問題である。我が国では、米国法上形成された衆人環視法理やパブリックフォーラム理論等が定着しておらず、公的空間におけるプライバシーが保護されやすい法的土壌が備わっているものの、当該プライバシーは判例上必ずしも積極的に保護されてきたわけではない。しかし、プライバシーの保護法益の主な内実が、大別して、①私的空間それ自体の保護、②私生活における一定の平穏な状態の保護、③私生活の相当部分を明らかにし得る私的情報等の不当な取得、利用等に対する脅威からの保護、に集約され、特に前記③については情報が生成又は取得された空間を問わず妥当し得ることにかんがみると、公的空間においても各人のプライバシーが手厚く保護される余地が認められる。そこで保護される客体は、空間それ自体だけでなく、当該空間において醸成され、又は当該空間と密接に結びついた一定の私的領域である。この私的領域は、物理的な空間としては公的空間及び私的空間の双方にまたがり、私生活の平穏に対する干渉や私生活の相当部分の把握を伴い得る形での私的情報等の利用可能性等から「隔離」された精神的・観念的な領域をも含む。かかる私的領域への不侵入こそがプライバシーの保護の核心であり、よって空間のみを基準としてプライバシーの保護のあり方を考えることには一定の限界があると考えられる。前述の意味での私的領域の保護に符合する「私的領域に侵入されることのない権利」が定立されたことの意義の一つは、従前の判例上必ずしも積極的に肯定されてこなかった「公的空間におけるプライバシーの保護」の余地を明確化するとともに、公的空間か私的空間かを問わずに問題となり得る「私的情報等の不当な取得、利用等に対する脅威からの保護」という命題の(憲法上の要請としての)重要性を浮き彫りにしたことにあるように思われる。

  • 漫画海賊版への対抗策
    田中 辰雄
    原稿種別: 論文(査読付)
    2020 年 3 巻 2 号 p. 127-150
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    漫画村事件は、漫画の海賊版対策の難しさを浮き彫りにした。対策として提起されたサイトブロッキングも静止画ダウンロード違法化も導入が見送られており、有効な対策は打たれていない。しかし、経済的に見るとまったく別の対策を考えることができる。それは海賊版が行っているサービスを権利者が自ら行い収益をあげる方法である。音楽におけるSpotifyのように漫画版での定額配信サービスが成功すれば、権利者もユーザも利益を得ることができる。本稿の目的は、漫画でもこのような合法化された定額配信サービスがビジネスとして成り立つかどうかを、漫画読者へのコンジョイント分析を行って検討することである。推定されたモデル分析によれば、総売り上げを減少させること無く、場合によっては増大させながら定額配信を実施することは可能との結果が得られた。これは定額配信によって漫画読者のすそ野が広がるためである。定額配信を始めると、出版社の懸念するとおり、これまで紙・電子で購入していた人の漫画購入額は半減する。しかし、その代わりにこれまで漫画をあまり購入していなかった人が定額配信なら漫画を見ようとしはじめ、この収入増加が、既存読者からの売上減少を十分に補うのである。言い換えれば補完効果が代替効果を上回る。現在漫画に支出していない人が本当に定額配信にお金を払うかどうかは不確実で留保がつくが、ビジネスとして引き合う潜在的な可能性があることは重要な発見である。ただし、定額配信サービスの成功のためには出版社を超えてどの漫画でも読める必要があり、現在のように出版社単位のサービスでは市場拡大は限られるだろう。

調査研究ノート(査読付)
  • 大森 審士
    原稿種別: 調査研究ノート(査読付)
    2020 年 3 巻 2 号 p. 151-170
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    日本放送協会(NHK)がその放送を受信する設備を設置した者と締結する受信契約について、契約法の観点からの問題点を整理した。

    本稿では、特に、平成29年12月6日、受信設備を設置していたにもかかわらず受信契約を締結しない者に対してNHKが受信料の支払を求めた事案において、最高裁判所大法廷が下した判決(受信料訴訟大法廷判決)を採り上げた。その補足意見や反対意見では、契約法の観点から受信契約の問題点が言及されており、それらについて、これまでの主な判例や学説を踏まえ、若干の検討を加えた。

    具体的には、①受信契約の契約主体、②その成立方法、③その成立時期及び受信料支払義務の始点並びに④受信料債権の消滅時効の起算点に関する問題点について検討した。

    その結果、①受信契約は単位ごとに締結することを法律上明記し、その代表者に契約締結義務を課すなど、契約主体をより具体的に規定してはどうか、②受信契約締結に応じない受信設備設置者に対しては、立法趣旨、実際の運用、これまでの判例等を勘案すると、受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命じる判決の確定をもって契約成立とする受信料訴訟大法廷判決に判示される方法が一般的な方法ではないかと考えるが、ただし、③受信料の初回支払額を受信設備設置時から受信契約成立時までの受信料相当額として受信契約の成立時と受信料支払義務の始点が一致するようにしてはどうであろうか、④そうすることにより、それらの時期が異なる場合の消滅時効の起算点の問題も解消するのではなかろうか、との改善案等を提示した。

  • 黒政 敦史
    原稿種別: 調査研究ノート(査読付)
    2020 年 3 巻 2 号 p. 171-194
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/03/31
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    令和元年6月14日「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が公表された。個人の社会生活の中に深くデジタル技術、ネットワーク技術が入り込んだデジタル社会において、社会課題の解決にはデータの利活用が重要な役割を果たすことが示されている。

    データ利活用のためにデータ流通が必要であり、データ流通政策においてデータの類型と規律整備が重要な役割を担っている。データ流通環境整備検討会において、データは、①個人情報を含むデータ、②匿名加工されたデータ及び③個人に関わらないデータの3つに大別している。

    匿名加工されたデータは、元の個人データの有用性を高いレベルで維持しながら、個人の権利利益を守ることができるデータ類型と期待されていた。民間においては平成29年個人情報保護法の改正により「匿名加工情報」が導入され、事業者が一定の条件の下で個人情報を基準に基づいて加工すると本人同意不要の第三者提供や目的外利用が行えるようになった。国の機関や独立行政法人等の公的部門においても「非識別加工情報」が導入されたが官から民へのデータ提供手段の一つとしてスモールスタートという必要最低限の規律を整備し、地方公共団体において非識別加工情報の導入は平成29年度5団体にとどまっている。

    現状、匿名加工データの制度は民間事業者がパーソナルデータの収集、データ流通、集約、加工、第三者提供を行う一連の利活用を念頭に整備されている。一方、公的部門における匿名加工データの利活用制度の整理は棚上げされた状況にあり、民間事業者と公的部門の間で匿名加工情報を共有、利活用するケースにおいて課題整理と対応策のコンセンサス形成が重要と考える。特に国立大学や研究機関などが民間事業者との共同研究や共同事業のため民間事業者から匿名加工情報を受け取った場合の取扱と、公的部門内部における取扱、さらに民間事業者への提供までの整理検討が必要と考える。

    本稿では、民間事業者における匿名加工情報および非識別加工情報の利活用制度を確認し、公的部門における匿名加工情報の取扱について課題整理を行う。

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