情報通信政策研究
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特集号: 情報通信政策研究
3 巻 , 1 号
総務省 学術雑誌『情報通信政策研究』 第3巻第1号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特別寄稿
  • 堀部 政男
    原稿種別: 特別寄稿
    2019 年 3 巻 1 号 p. 1-24
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    AIやIoTは、グローバルな規模でこれまで経験しなかったような影響を与えている。それは、プライバシー・個人情報保護に新たな問題を投げかけている。これまでにまとめられているAI原則の中にプライバシー保護を揚げるのが通例となっている。それでは実際にどのように保護するのか。

    プライバシー・個人情報保護の問題は、情報通信技術(Information and Communication Technology : ICT)などの進展との関係でかなり論じてきた。その必要性は、日本の法律(2015年改正個人情報保護法附則第12条第3項)でも認められるようになった。これまでもそうであったが、グローバルな規模でプライバシー・個人情報保護問題を検討する必要性を痛感している。

    そこで、プライバシー・個人情報保護に日常的に取り組んでいる主要国のデータ保護機関(Data Protection Authority : DPA)で構成されている「データ保護プライバシー・コミッショナー国際会議」(International Conference of Data Protection and Privacy Commissioners : ICDPPC)における議論が実践的であり、それを参照する意義は極めて大きいと考えるに至った。日本の個人情報保護委員会は2017年にメンバーとして認められた。この会議においては2017年にIoTの具体的な事例である自動化・コネクト(接続)された車両のデータ保護に関する決議(Resolution on data protection in automated and connected vehicles)が採択された。また、2018年には、同会議においてAIにおける倫理及びデータ保護についての宣言(Declaration on Ethics and Data Protection in Artificial Intelligence)が採択された。従来からの研究に加え、個人情報保護委員会の委員長として、これらの国際的文書にコミットしてきた。特に後者については、常設のAI作業部会が設けられ、日本としてもインプットしなければならない。そのためには、英知が結集されるべきである。

  • ―行為統制型規律からガバナンス統制型規律へ?
    山本 龍彦
    原稿種別: 特別寄稿
    2019 年 3 巻 1 号 p. 25-45
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    EUのGDPR(一般データ保護規則)は、データ保護に関連した様々な権利を保障している。そして、こうした権利の侵害があった場合には、高い制裁金が科されることでも知られる。そうすると、一見、GDPRは、厳格なペナルティをもって権利侵害行為ないし違反行為を直接統制する法令であるように感じられる。ところが、実際上、権利の具体的な内実や範囲はいまだ確定的ではなく、また権利侵害行為ないし違反行為があっても、これを外部から発見することは非常に困難であるという問題を抱えている。GDPRは、かかる法的不確定性と執行困難性の問題を前提に、事業者自らが行動規範等の策定を通じて不確定性の隙間を埋めたり、データ保護影響評価(DPIA)やアルゴリズム監査といった内部統制システムを整備したりして、想定される違反行為等を未然に防ぐガバナンス体制を構築することを、かかる体制構築の努力と制裁金の免除・軽減とを結び付けることで(明示的なインセンティブ設計)実効的に促しているように思われる。

    本稿は、プロファイリングに関連するGDPRの諸権利、とりわけ、重要事項についてプロファイリング等の結果のみに依拠して決定されない権利(22条)、「説明を受ける権利」(15条)をめぐる解釈論に照準して、上述のようなGDPRの傾向、すなわち、行為ベースの規律(行為統制型規律)からガナバンス・ベースの規律(構造統制型規律)への焦点変動について若干の分析を加えるものである。本稿は、先行して同様の焦点変動が起きた(雇用に関する)反差別法の実践などにも視点を向け、法的不確定性と執行困難性を抱える法領域では「構造統制型規律」が一定程度有効であること、したがって、これらの問題が前景化するであろうAIネットワーク社会において、かかる規律モデルが中心的な法的アプローチとなる可能性についても言及を加える。

  • -競争法との交錯を中心に
    石井 夏生利
    原稿種別: 特別寄稿
    2019 年 3 巻 1 号 p. 47-72
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    本稿では、プライバシー・個人情報保護法と周辺法領域との関わりについて、主に競争法との関係に着目した考察を行った。プライバシー・個人情報保護法が競争法に影響を与える場面では、①プライバシー・個人情報保護の価値を競争法の中で考慮すべきか否か、②規範的尺度としてプライバシーの価値を競争法に取り込む場合の理論的根拠、③ドイツFacebook競争法違反事件の評価(EU一般データ保護規則(GDPR)違反に基づく競争制限禁止法違反の認定、データ保護法の目的としての情報自己決定)、競争法が個人情報保護法に影響を与える場面では、④データ・ポータビリティ、⑤制裁金(課徴金)導入の是非を論点に掲げた。

    競争法の中で考慮すべきプライバシー・個人情報保護の主たる価値は、本人の同意、選択ないしは情報自己決定と見ることができる。他方、GDPRにおける「同意」と日本の個人情報保護法の「同意」は有効性の要件が異なる。また、企業結合事案では、個人情報保護法に基づく個人データの第三者提供は同意がなくとも適法である一方で、GDPRに同旨の規定は存在しない。GDPRは同意の要件が厳格であるため、同意の有効性が問題とされる競争法違反事件では、GDPR違反の認定がなされやすいと考えられる。GDPRと個人情報保護法の法制度及び解釈上の違いに留意すべきである。

    企業結合事案及びデータ・ポータビリティ権の文脈では、事業者間でのデータ移転の是非に関して、競争法と個人情報保護法の役割分担が問題となる。EUの議論を概観する限りでは、両法は相互に関連性を有する場合もあるが、原則として独立に評価される。そして、問題となるデータに個人情報が含まれる場合は、個人情報保護に関する適法性を担保した上で、それでもなお競争法上の違法を構成する場合があるか否かを検討すべきといえる。競争法と個人情報保護法は、協調できる場面と対立する場面があり得るため、両者の役割分担には分析的な検討を要する。

    日本の個人情報保護法改正論議の1つとして課徴金導入の是非が検討されている。課徴金の制裁的色彩を強調するならば、個人情報保護法に課徴金を導入することも不可能ではなく、その際には先行する国内外の競争法の趣旨及び内容から多くの示唆を受けることが予想される。

    競争法及びプライバシー・個人情報保護法の交錯に関する考察を深めるためには、消費者保護法からの検討も必要である。

論文(査読付)
  • 斉藤 邦史
    原稿種別: 論文(査読付)
    2019 年 3 巻 1 号 p. 73-90
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    憲法学説における人格的自律権説を背景として提唱された自己情報コントロール権説では、本来、プライバシーの対象となる情報について、道徳的自律の存在としての個人の実存にかかわる情報(プライバシー固有情報)と、それに直接かかわらない外的事項に関する個別的情報(プライバシー外延情報)が区別されていた。

    公法における自己情報のコントロールについて、プライバシー外延情報に対するコントロールの正当化を試みる近時の有力説には、人格的自律権の本体とは質的に異なる、公権力の統制に固有の根拠を挙げる傾向がある。そこでは、私人間を含む全方位に主張し得る人格権としての構成からの離陸が生じている。

    私法における自己情報のコントロールでも、コントロールの自己決定は終局的な目的ではなく、不利益を予防するための手段であることが指摘されている。「信頼としてのプライバシー」という理念は、人格的自律権説では自己情報コントロール権の枠外とされてきたプライバシー外延情報について、私人間における手段的・予防的な保護法益を補完的に提供する指針として有益と考えられる。

    本稿は、プライバシーの中核にあたる私生活の平穏や、親密な人間関係の構築に対する侵害について、「自律としてのプライバシー」を根拠とする構成を否定するものではない。むしろ、核心としての「自律」の侵害を予防するため、その外延において「信頼」の保護を充実することが望ましい。

寄稿論文
  • 井部 千夫美
    原稿種別: 寄稿論文
    2019 年 3 巻 1 号 p. 91-106
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    本稿は、米国における、クローズド・キャプション方式の字幕(closed caption)及び画面解説(video description)を主体とする、視聴覚障害者等向け放送の現状と課題について、視聴者層、字幕・画面解説の制作方法、関連制度、最近の字幕・画面解説の付与状況の順に説明し、字幕・画面解説を制作する際に生成されたテキストの活用事例として、盲ろう者への対応とメディア・モニタリング・サービスを取り上げて論じる。そして、わが国への示唆として、字幕付与と画面解説付与の格差による、視覚障害者と聴覚障害者との間における情報アクセシビリティの格差を是正するための対策及び盲ろう者への対応について検討を進める必要があり、わが国でメディア・モニタリング・サービスと同様の新しいビジネスを導入する場合に直面する著作権法上の問題については、米国のような訴訟ではなく、業界団体等による検討などを通じて形成するソフトローのアプローチの方が適切であると結論する。

調査研究ノート(査読付)
  • -回答するのは成功した企業ばかりなのか?
    田中 辰雄, 山口 真一
    原稿種別: 調査研究ノート(査読付)
    2019 年 3 巻 1 号 p. 107-128
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    企業調査の場合、調査テーマに関し失敗した企業は回答をしぶり、成功した企業は積極的に回答するというバイアスが考えられる。このバイアスがどれくらいかをデータ活用を事例にして推定を試みた。手法は、同じ問いを従業員に対して行い、すでにある企業調査の結果と比較する方法である。従業員は匿名でたずねられれば勤務先の企業がデータ活用に失敗していても気にせず回答するだろう。だとすれば二つの調査の結果のずれはサンプリングバイアスから生じたと解釈できる。この方法で比較したところ、データ活用が成功したという答えの率は、企業調査の方が従業員調査より7.1%ポイント程度高かった。これがサンプリングバイアスによって生じたとすると、成功企業はそうでない企業よりも3割程度多めに回答したことになる。補正ウェイトに換算すると、回帰分析などをするときは成功企業に1/1.3すなわち0.77程度を乗じることになる。ただ、この程度のウェイトで結果が大きく変わる例は限られると思われ、そうだとすれば本稿の推定結果は、今回の事例については成功バイアスはあるにはあるが、それほど深刻なものではないことを示唆している。事例がひとつだけなので、本稿の結果が直ちに一般化できるわけではなく、一般的な結論を得るためには今後の研究の蓄積が必要である。ただ、今回の事例は官庁によるビジネス分野の調査だったという点で比較的サンプリングバイアスが小さいケースと考えられる。それでも一定のサンプリングバイアスがあったということは、企業の評判に関わるようなセンシティブな調査ではバイアスは大きくなる可能性があり、留意が必要であろう。

立案担当者解説
  • 堀口 裕記, 山内 匠, 中山 康一郎
    原稿種別: 立案担当者解説
    2019 年 3 巻 1 号 p. 129-144
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    第198回通常国会において成立した「電波法の一部を改正する法律」は、Society 5.0の基盤となる電波の有効利用を促進するため、①電波利用料の料額の改定等を行うとともに、②特定基地局の開設計画の認定に係る制度の整備を行うほか、③実験等無線局の開設及び運用に係る特例の整備等の措置を講ずるものである。

    ①については、電波利用料の料額に係る周波数帯の区分等の見直しとして、

    ・ 無線技術の進展に対応し、電波利用料の料額の区分のうち周波数帯の区分を見直すとともに、広域専用電波として指定(指定により無線局単位から使用周波数帯幅単位の課金となる)が可能な周波数帯を拡大する。

    ・ 今後3年間(令和元年度~3年度)の電波利用共益費用及び無線局の開設状況の見込みを勘案した電波利用料の料額等の改定を行う。

    また、電波利用料が減免されている国の機関や地方公共団体等が開設する無線局(公共用無線局)のうち、電波を非効率に使用しているものには、減免を認めないこととするほか、電波利用料の使途として、電離圏における電波の伝わり方の観測及び分析等並びに大規模災害に備えるための放送用設備の整備に係る補助金の交付を追加する。

    ②については、申請者が電波の経済的価値を踏まえて開設計画に記載した特定基地局開設料(認定を受けた者が納付すべき金銭)の額を考慮して開設計画の認定の審査をできるようにし、当該認定を受けた者による特定基地局開設料の納付に関する規定及び使途に関する規定を新設する。また、特定基地局の通信の相手方である無線局の移動範囲における無線通信を確保するために既設基地局を高度化してその運用を図ることが適当な場合について、開設指針及び開設計画の記載事項に当該既設基地局の配置等に関する事項を追加する。

    ③については、実験等に用いる無線設備(携帯電話端末及びWi-Fi機器等に限る。)が適合表示無線設備でない場合であっても、我が国の技術基準に相当する技術基準に適合しているときは、一定の条件の下に、当該無線設備を使用する実験等無線局の開設及び運用ができることとする。

  • 矢部 慎也, 上原 仁
    原稿種別: 立案担当者解説
    2019 年 3 巻 1 号 p. 145-160
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
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    第198回通常国会において成立した「放送法の一部を改正する法律」は、①NHKについてインターネット活用業務の対象を拡大するとともに、②NHKグループの適正な経営を確保するための制度を充実するほか、③衛星基幹放送の業務の認定要件の追加を行うものである。

    ①について、近年の視聴環境の変化に伴い、放送番組をインターネットを通じて様々な機器・場所・時間等において視聴したいという国民・視聴者からの期待やニーズが明らかになったことを踏まえ、NHKがそうした期待に応えて常時同時配信を実施することにより、他の放送事業者によるインターネット同時配信についてNHKが先導的役割を果たすとともに、NHKの放送番組の視聴機会の拡大を図ることで、NHKの目的達成に資するものである。

    具体的な制度整備の内容は、NHKが国内テレビ基幹放送の全ての放送番組の常時同時配信を実施することを可能とし、併せてNHKの目的や受信料制度の趣旨に沿って適切に業務が実施されることを確保するため必要な措置として、地方向けの放送番組の提供や他の放送事業者との協力を努力義務としたほか、実施基準の認可要件の見直し及び実施計画の届出・公表義務を法定したことに加え、事後規律の充実を行っている。

    ②について、受信料を財源として行われるNHKの業務拡大を行うに当たっては、NHKへの国民・視聴者の信頼確保という観点からNHKのガバナンス改革を行うことが必要である。そこで、NHKグループの内部統制の強化、監査委員会のチェック機能の強化、NHK役員のNHKに対する忠実義務の明確化等コンプライアンスの確保に係る制度を充実した。さらに、透明性の確保のための情報公開に係る制度の整備、及び中期経営計画の策定・公表に関する制度の整備を行うこととした。

    ③について、衛星基幹放送に係る周波数の有効利用を図るため、衛星基幹放送の業務の認定要件に、総務省令で定める周波数の使用に関する基準に適合することを追加することとした。

  • 雨内 達哉, 横澤田 悠
    原稿種別: 立案担当者解説
    2019 年 3 巻 1 号 p. 161-173
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2019/12/23
    ジャーナル フリー HTML

    第198回通常国会において成立した電気通信事業法の一部を改正する法律は、①モバイル市場の競争の促進に係る禁止行為の新設、②電気通信事業者及び販売代理店の勧誘の適正化に係る禁止行為の新設、③販売代理店への届出制度の導入を行うものである。

    ①については、現在のモバイル市場は大手3社が約9割のシェアを占める寡占的状況であり、市場競争が機能していないとの指摘がなされていることを踏まえ、モバイル市場の競争を促進するため、総務大臣が指定する「移動電気通信役務」を提供する総務大臣が指定する電気通信事業者及びその販売代理店に対して、

    ・端末の販売等に関する契約の締結に際し、利用者に対し、電気通信役務の料金を当該 契約の締結をしない場合より有利なものとすることその他電気通信事業者間の適正な競争関係を阻害するおそれのある利益の提供を約し、又は約させること

    ・電気通信役務の提供に関する契約の締結に際し、利用者に対し、契約の解除を行うことを不当に妨げることにより電気通信事業者間の適正な競争関係を阻害するおそれがあるものとして総務省令で定める料金その他の提供条件を約し、又は約させること

    を禁止するものである。

    ②については、利用者の利益の保護に関する規律を大幅に強化した平成27年の電気通信事業法改正の後、電気通信役務に関して寄せられる苦情・相談の件数が高止まっている状況にあることを踏まえ、電気通信事業者及び販売代理店に対して、

    ・利用者の利益を保護するために特に必要性が高いもの等として総務大臣が指定する電気通信役務の提供に関する契約の締結の勧誘に先立って、その相手方に対し、自己の氏名若しくは名称又は当該契約の締結の勧誘である旨を告げずに勧誘する行為

    ・その他利用者の利益の保護のため支障を生ずるおそれがあるものとして総務省令で定める行為

    を禁止するものである。

    ③については、販売代理店における適正な業務の確保の重要性の増大等を踏まえ、販売代理店について総務大臣への届出制度を導入するものである。

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