日本エネルギー学会誌
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97 巻, 10 号
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目次
特集:バイオマス(論文)
  • 海邉 健二, KELLER Martin, 井上 雅文, 山田 興一, 大友 順一郎
    2018 年 97 巻 10 号 p. 284-299
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    国土の約7割を森林が占める我が国において木質バイオマスの賦存量は大きいが,そのエネルギー利用は進んでいない。 その背景として,木質バイオマスの生産コストが高いことや発電システムを含めたエネルギー利用の需給システムが未確立であることがあげられる。本研究では,直接燃焼型バイオマス発電,バイオマスガス化発電,化学ループ法(次世代のエネルギー変換技術の1つで炭素系燃料による金属酸化物の酸化還元反応の繰り返しにより新たな分離プロセスを経ずに二酸化炭素を分離・回収できる燃焼システム)を対象として,それぞれの発電種別のプロセスを確定した後,発電システムのエネルギー効率及び発電コストを詳細な積み上げ法により算出し,木質バイオマスの利用拡大に向けて解決すべき技術的課題(タービン効率の改善等)や条件(出力規模,燃料含水率,システム稼働率,二酸化炭素の分離・回収等)について技術シナリオとしてまとめた。その結果,木質バイオマス自体のコスト低減を施しつつ蒸気サイクルの高温高圧化によってシステム発電効率が改善し,木質バイオマス発電による発電コストが本報での目標値である25円/kWhを下回る可能性があることがわかった。また化学ループ法により分離・回収した二酸化炭素を売却することで発電コストが低減し木質バイオマスのエネルギー利用が普及・拡大する可能性を示した。

特集:バイオマス(技術論文)
  • 上田 厚志, 河合 秀樹, 埜上 洋, 日良 聡, 鈴木 健治, 武田 龍二
    2018 年 97 巻 10 号 p. 300-306
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    廃棄物系のバイオマスには,天然由来の無機物や人間活動に伴って排出される化合物の他,バイオマスの中間処理工程の中で添加される人工的な化合物が含まれる場合がある。燃料利用等を目的にバイオマスから炭化物を製造する場合,添加される化合物によっては,自己発熱性に影響を与える可能性がある。そこで本研究では,炭化処理にて生成された鉄化合物による自己発熱性への影響を評価するため,添加する化合物としてポリ硫酸第二鉄を選定し,鉄化合物の形態解析と酸化反応による熱挙動について確認を行った。その結果,ポリ硫酸第二鉄を含むバイオマスから製造された炭化物は,数日間空気雰囲気下で保持することにより,もとのバイオマスより自己発熱性が抑制される可能性があることがわかった。 鉄化合物の形態解析の結果によると,製造直後の炭化物には,FeSO4の水和物が存在し,それを酸化させることによりFe(OH)SO4となることが確認された。また,炭化物の発熱挙動を確認した結果,添加するポリ硫酸第二鉄の量に応じて酸化反応による発熱量が増す傾向が認められた。ポリ硫酸第二鉄の添加量が多い場合には,炭化物全体の発熱に大きな影響を与えることが示唆された。

特集:バイオマス(資料)
  • 中島 哲人, 大村 抱夢, 和田 僚平, 名苗 遼, 大溝 光希, 栁瀬 裕介
    2018 年 97 巻 10 号 p. 307-313
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    サクラ,マツの落ち葉と天然ゼオライトを混合し,熱電対を付けた枝付きフラスコに入れ,赤外線ヒーターで少しずつ温度を上げて540℃まで加熱した。エチレンの量をガスクロで測定した。落ち葉の構成成分とエチレンガスの発生の関係を調べるために試薬のリグニン,ろ紙,新聞紙も同様に実験した。ゼオライトの効果を確かめるために,ゼオライトを入れない場合についても実験した。 落ち葉の熱分解によりエチレンガスが400℃付近から発生した。エチレンガスはサクラの落ち葉から質量比で3.6%,マツの落ち葉から3.1%得られた。試薬のリグニンからは,落ち葉の場合と比べ,発生量は約3分の2程度だった。ろ紙からも,エチレンが発生したが,発生量は少なかった。リグニンを少量多含有すると考えられる新聞紙からは,より多く発生した。 ゼオライトを加えると,フェノール系化合物の特有の臭いが消え,エチレンガスの発生量が少し増えた。得られたエチレンガスからポリエチレンの合成などができれば,石油の消費を減らすことができ,低炭素社会に貢献できると期待される。

  • 古林 敬顕, 赤尾 貢佑, 中田 俊彦, 河西 英一
    2018 年 97 巻 10 号 p. 314-329
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,マレーシアで発生するオイルパーム残渣の一つであるEFBを対象資源として,日本への国際輸送を考慮した持続可能なEFB利活用システムを設計して,定量評価することを目的とする。対象地域に賦存するEFB資源の収集,対象地域内の未処理のEFBの輸送,前処理,対象地域内のEFB燃料の輸送,国際輸送,日本にて化石燃料の代替の各要素からなるシステムを設計して,エネルギー収支,経済性,環境性を評価する。資源発生地点から前処理工場,港への輸送経路は,地理情報システム(Geographical Information System: GIS)を用いて最適化する。前処理としてペレット化,炭化,エタノール製造を考慮して,それぞれ火力発電所での石炭代替及び自動車のガソリン代替を想定する。その結果,CO2削減コストが最も安価なのは,未処理のEFBを輸送せずにペレット加工するシステムであり,-4.35 USD/t-CO2と負の値となった。また,炭化,エタノール製造する場合のCO2削減コストはそれぞれ141, 393 USD/t-CO2となり,日本にて木質ペレットを製造することを想定した先行研究に比べて安価となった。感度解析では,資源の利用可能量が炭化及びエタノール製造のCO2削減コストに与える影響が大きく,ペレット化のCO2削減コストは大きな変化がないことが示された。

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