日本エネルギー学会誌
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99 巻, 10 号
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目次
特集:バイオマス(論文)
  • 廣田 順哉, 戸髙 昌俊, 昆 竜矢, 斉間 等, 茂木 康弘
    原稿種別: 論文
    2020 年 99 巻 10 号 p. 165-172
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    木質バイオマスを鉄鉱石の共存下でガス化を行った。鉄鉱石を共存させても,可燃ガスの生成量に変化はなく,炭酸ガスのみが増加した。ガス化後の残渣中の鉄鉱石は,ほぼ金属鉄にまで還元されていた。このとき,タールおよびチャー成分は減少していた。このことからタールやチャーが鉄鉱石を還元したと考えられる。炭酸ガス雰囲気で木質バイオマスのガス化反応を行った所,炭酸ガス供給量より排出量の方が少ない結果となった。これは炭酸ガスが一酸化炭素等に還元されたためであり,ネガティブ・エミッションを実現する意味で重要である。この時においても,鉄鉱石は約66%が金属にまで還元されていた。バイオマスから回収されたエネルギーは,鉄鉱石の還元エネルギーを含めると,その90%以上が回収された。

  • Teruaki YOKOO, Hisashi MIYAFUJI
    原稿種別: Original Paper
    2020 年 99 巻 10 号 p. 173-181
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    セルロースやキシランのような木材中に含まれる高分子に対するイオン液体中での反応性とそれらのイオン液体溶液の粘度特性について検討を行った。セルロースやキシランについて,120℃でイオン液体処理を行い,処理後の残渣収率を算出した。残渣収率の変化からそれらの反応性について検討を行った。セルロースやキシランのイオン液体溶液について粘度測定を行い,その結果からハギンズ係数を算出した。ハギンズ係数の結果から,イオン液体中でのそれらの存在状態を議論した。セルロースは,1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド中では分散し,1-エチル-3 -メチルイミダゾリウムアセテート中では凝集していると推測された。イオン液体中でのセルロースやキシランの存在状態が反応性に影響していると考えられた。

  • 山本 康介, 朝尾 高明, 野地 洋正, 坂本 竜彦
    原稿種別: 論文
    2020 年 99 巻 10 号 p. 182-189
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    持続可能な再生可能エネルギー原料として,国内木質バイオマス利用の促進は重要である。木質バイオマス材は重量取引が一般的であるが,用材向け原木は体積による取引が行われてきた。用材向け原木の価格が低迷している昨今,市場にてバイオマス材として原木を競り落とす動きも見られ,低価格帯の原木を市場取引した場合に,利用者が不利益を被る状況が生じていると推測された。そこで,三重県南部の原木市場における原木材積の過小評価とその課題について検討した。原木丸太を測定した結果,すべての原木丸太の長さが過小評価されており,また,原木丸太の測定値に基づきスマリアン式によって求めた材積は,実際の取引材積の1.116倍から1.444倍であった。

特集:バイオマス(資料)
  • 孫 燕, 須藤 裕太, MASFURI Imron, VALENTINO Novio, SHOLIHAH Atti, 野田 玲治
    原稿種別: 資料
    2020 年 99 巻 10 号 p. 190-203
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,インドネシア産の9種類の粘土粒子を流動媒体として実施したバイオマス水蒸気ガス化実験で得られた生成物のデータと使用した粘土の物性データを用いて,統計学的手法を用いて両者の因果関係を定量的に把握することが目的である。まず,因子分析により,実験で得られた5種類の物質収量を説明する2つの共通因子と,粘土の物性値(11種類)を構成する4つの共通因子が抽出された。その後,抽出された因子間の相関関係を重回帰分析により定量化し,物性データからガス化特性を予測する相関式を求めた。得られた相関式は,ガス化生成物の生成量を良好に予測することができた。得られた相関式と共通の因子を持つ物性値あるいは生成物データの相関係数から,特定の物性値が生成物データに及ぼす影響を定量的に評価した。その結果,ガスの収率向上には,比表面積の増加あるいはカリウム含有量の減少およびマグネシウムの減少が高い影響を持つ。一方で,タールの削減には酸量の増加および細孔径および細孔容積の増加が高い影響を持つことを明らかにした。

論文
  • 森泉 由恵, 本藤 祐樹, スリアンパイ ピヤワン
    原稿種別: 論文
    2020 年 99 巻 10 号 p. 204-214
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,太陽熱乾燥システムの導入がタイの農村コミュニティ活動の発展に貢献するか否かを検討することである。本研究では,太陽熱乾燥システムを生産活動に利用している6つの農民グループに対してインタビュー調査を行い,そこから得た経験的な知見を分析の素材としている。事例分析の結果,太陽熱乾燥システムの導入は以下に示す3つの価値をもたらす可能性が見出されている。第一に,軽労化という労働環境の改善を通して,コミュニティメンバーのモチベーションを高め,主体性を引き出す可能性である。第二に,導入による乾燥方法の変化をきっかけとして,メンバーの能力向上のための学習が自然に誘発される可能性である。第三に,農村コミュニティ内のつながりの強化と後継者の確保をもたらし,地域社会の持続性を向上させる可能性である。さらに重要な点は,再生可能な太陽熱エネルギーを利用することで,化石燃料の消費を伴うことなく,上述の3つの価値を実現することにある。本研究の結果は,太陽熱乾燥システムの導入が,気候変動の緩和という地球環境の持続性に資するだけでなく,途上国における農村コミュニティの持続的な発展に資する可能性を示唆している。

資料
  • Pongsert SRIPROM, Pornyamon LEEPHISUTH, Arthit NERAMITTAGAPONG, Sutasi ...
    原稿種別: Technical Report
    2020 年 99 巻 10 号 p. 215-219
    発行日: 2020/10/20
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    This work aimed to optimize lignin conversion to vanillin by hydrothermal method. An experiment was designed by Box-Benhken Design (BBD). Temperature, NaOH concentration, and reaction time were chosen as independent parameters for achieving the optimum reaction condition. The reaction products were analyzed by highperformance liquid chromatography. Based on the experimental results, the optimum condition for the hydrothermal process was predicted using the response surface method. The maximum vanillin production of 18.1 mg/L was predicted at the optimum condition given by the temperature of 142 °C, NaOH concentration of 9.2 g/L, and reaction time of 32 min. The conversion of lignin to vanillin was experimented using the predicted optimal condition to verify the prediction. It was found that the hydrothermal method at the optimum condition yielded 18.1 ± 2 mg/L of vanillin, which was in good agreement with the predicted value. It was also found that the yield of vanillin was influenced by temperature, NaOH concentration, and the interaction of both parameters, whereas the reaction time was much less influential.

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