熱分解程度の異なる3種のピッチ, すなわち低温タールピッチ, 高温タールピッチおよびピッチ油を試料として, その磁気係数を測定し, その結果とすでに報告ずみのこれらピッチの諸性質とをあわせ考えることにより, 熱分解度とピッチ類の組成性状との関係について, 若干の考察を行つた。
その結果
(1)磁気係数Xgの値は低温タールピッチが高温タールピッチおよびピッチ油よりもかなり脂肪族性にとむことを示し, また含有するO, N, S, 正パラフィンなどを除外して芳香族成分のみに対してのXgの補正値Xg
*を考えてもほぼ同様の関係にあることを示している。
(2)またXgの値をアントラセン.ピンンなど既知の純粋炭化水素の理論値並びに測定値と比較すると, 高温タールピッチやピッチ油のXgはやや低いように思われ, 従つてこれらの縮合環炭化水素以外の結合様式をもつ芳香族成分をも含むもののように考えられる。
(3)△K/△K
Bの値は, 従来推定してきた成分の核構造 (縮合環数) とほぼ一致するようであるということが考察され, 従来の報告に述べたピッチ類の組成に関する考察をある程度裏書きしているものと認めた。
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