本報は筆者の昭和33年度燃料協会賞授賞記念講演を取り纒めたもので, 日本炭は外国炭と比較してその種類, 性質, 賦存状況が著しく異なるので, その性状に適した利用法を必要とするという考えの下に, 筆者が多年行つてきた石炭の基礎的ならびに応用研究, さらにわが国における石炭研究および利用工業の推移変遷を概説したものである。
戦前のわが国の石炭研究は応用研究を主とし, 特に戦時中は液体燃料の補給源としての石炭研究に主力が注がれ, 基礎的研究はほとんど顧みられなかつた。しかるに戦後, 石炭の組織学的, 物理的, 化学的基礎研究が重要視されるようになつたことは, 諸外国の実情に照らして洵に喜ばしいことである。資源の乏しいわが国としては, 将来, 石炭は炭素源および芳香族資源として利用する研究と工業化とに意を用いる必要がある。
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