川崎市で30カ月間にわたつて測定した降下煤塵量と風向, 降雨量などを比較考察して, 川崎市における降下煤塵の特性とその原因的考察をした。その主な点は次のとおりである。
1.本市の南部臨港地帯に火力発電所, 製鉄所などの工場が密集し, 夏期にはS~SSWの最多風向によつて市街地に煤塵が多くおよび, 冬期はN~NNWの最多風向のため海上に飛散し減少する。
2.産業地域別にみると本市の降下煤塵量は地域差が甚だしく, 特にそのうちの灰分がこれを支配している。
3.降下煤塵量を年次別に比較すると, 工業地域では減少の傾向にあるが, その他の以遠の地域では大差がない。これは従来のサイクロン式の集塵器で, 近くに降下する粗粒子は捕集されるが, 遠くにおよぶ微粒子があまり捕集されないためで, さらに電気集塵器が必要と考える。
4.主要測定地点における降下煤塵量と風向頻度との相関を求め, 汚染源の方向を考察した。
5.溶解性成分は降雨量と有意の順相関を示し, その32~46%は降雨量によつて降下される。不溶解性成分と降雨量とは有意の相関を示さない。
6.燃料石炭使用量, 不溶解性成分およびS~SWの風向頻度のそれぞれの月別変動を比較検討することによつて, 集塵装置の効果を評価した。
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