大ノ浦炭 (C.81.5%) と中郷炭 (C.72.0%) を400-1, 000℃で熱分解し, 得られたコークスをlNHNO
3の沸点で酸化した。酸化状況をさぎに明らかにした各種石炭の酸化状況と比較して熱分解過程における石炭あるいはコークスの化学構造の変化を論じた。400℃コークスはその酸化状況から判断すると石炭の化学構造上の特徴を保持しており, 熱分解が不十分な状況にあると考えられるが, 400℃までに熱分解する部分は, その組成から考えて, 石炭が希硝酸酸化で崩壊する際に小分子量物質となる部分 (前報で肪環族構造と考えられることを明らかにした) と同じであるといえる。500℃ コークスの酸化状況は石炭のそれと全く異質のものであるから, 500℃までの熱分解によつて上述のような構造部分は完全に崩壊するものと判断されるが, 熱分解における反応は酸化においてみられたほど選択性のよいものでなく, 石炭分子の芳香族構造部分の炭素集約的変化が併発するものである。600℃ コークスはきわめて酸化され難く, したがつて単位体の重縮合によつて反応性に乏しい炭素質になつたものと思われるが, 800℃ 以上の温度で処理したコークスは酸化されやすくなり, また, 生成するフミン酸の分子量が低下する。この際にみられるコークスの酸化性の向上ならびに酸化状況の変化は縮合芳香族環の成長に帰せられるものと判断された。
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