再生可能エネルギーであるバイオマス,特に含水率の高い原料の場合は,多くの場合生物的な処理法が広く適用されている。仮に,含水率の高い原料であっても超臨界水ガス化反応を適用することで有機物質を完全にガス化し可燃性の気体燃料に変換でき,エネルギーとして有効利用が可能である。しかし,反応工学的な検討が不十分であったために,装置設計などに十分な知見が得られている状況にはなかった。 これに対し,実際のバイオマス原料やモデル化合物を用いて系統的な検討を行い,反応工学的にガス化速度の決定,反応ネットワークの検討,反応速度の温度依存性,チャー生成機構などの検討を通して,バイオマスを超臨界水ガス化する上での,装置設計につながる反応工学的な知見を整理した。特に,原料の昇温速度が生成物に大きく影響するという特性について検討を行った結果,イオン反応とラジカル反応が競争的に起きるという機構で進行することを明らかにした。この知見はこれまでに説明のつかなかった事象を明らかにするものであった。 さらに低温側での水熱処理を前処理として行う検討を進め,超臨界水ガス化の実用化に向けての指針を提示することができた。
持続可能なエネルギー社会構築に向けた水素の貢献可能性について,エネルギー総合工学研究所での研究事例を中心に紹介し,再生可能エネルギーの変動吸収対策に水素が貢献する可能性と課題を考察する。
自然エネルギーは人為的に制御できないうえ,化石エネルギーに比べてエネルギー密度が低い一方,比較的広範囲に分布する。そのため,自然エネルギーの利用においては高効率なエネルギー変換貯蔵と小型分散化が進むと考えられる。ここでは,水素をキーワードとしてこれら技術を議論する。
太陽光発電(PV)や風力発電などの再生可能エネルギーの電力系統への導入拡大にあたっては,気象条件により発生する出力変動の抑制が課題となっている。これまで当社では,蓄電池技術を活用した出力変動対策に取り組んできた。本研究では,水素製造技術が再エネの出力変動対策として適用可能かの検証を実施した。これまでの成果と課題について報告する。
出力が不安定な再生可能エネルギーを主力電源化していくためには,蓄エネルギー技術の活用は必須である。本稿では,蓄電池を活用した水素製造システムに焦点を当て,その経済的合理性について議論する。
生産工場や商業施設などで稼動する空調設備などの動力伝達システムとして新開発した製品が,平ベルト駆動システム(当社製品名:Hyper Flat Drive System(HFD システム))であり,従来Vベルト比平均6%の節電効果と約2.5倍の長寿命化を実現させた。平成25年度(2013年)省エネ大賞資源エネルギー長官賞受賞時にはモータ適用容量は2.2 ~22 kWまでであったが,小型・大型HFDシステム,またクーリングタワー仕様のHFDシステムの開発によってラインナップの補完を行うことで省エネ推進を行ってきた。
新しいスポット・ゾーン空調システムであるFLEXAIRは,工場をはじめとした大空間空調に適した空調機として,空調負荷を抑制しながら,限られたスペースに設置可能で,生産ライン変更にもフレキシブルに対応できる製品である。
自動車産業におけるCO2削減の取り組みは地球環境への影響の大きさから非常に重要である。自動車のライフサイクルの中で,製造工程のCO2排出を低減することは,世界的な生産台数から見てもその意義は大きい。車体軽量化により走行時のCO2削減に大きく貢献する熱可塑性CFRP(炭素繊維強化樹脂)は,その部品製造工程における加熱に多くのエネルギーを必要とする。本取組みでは,CFRP加熱工程の熱効率を上げ,製造工程のCO2排出量を大幅に低減することを目的とした。
本事例は同社で全社の生産技術開発を担っている事業所における省エネ活動であり,省エネ大賞WGという分野横断組織をトップが率先して立ち上げ,現場と開発の一体運営を行い,全社水平展開を行った事例。①スマートEMS自動制御で,従来,生産現場の稼働に応じて不変もしくは手作業による原動設備の条件変更を,現場のIoTセンシングとAIを活用した独自アルゴリズムにより原動設備の自動省エネ制御を可能にし,従来比30%超の省エネを実現,②独自開発シルキーファインミストを用いた,気化熱利用による省エネ,③独自FEMSを用いた全員活動による固定エネルギーロス削減等により,事業所全体として,2017年度に550 MWh(原油換算145 kl)の省電力を達成。2012年基準では12.6%の省エネルギーを実現した。
省エネ性と快適性の双方を向上させた業務用空調機である。高効率スクロール圧縮機を新規開発することでAPF最大+2.9%の改善を実現し,4方向天井カセット形の左右風向調整を可能にする左右ルーバーユニットの新規開発を行うことで快適性を向上させた。
新発想で特許取得の「リタンエア除湿方式」を採用した本機器は,3つの特長を備えた外気処理機である。①外部熱源設備が不要,②消費電力を60%以上削減,③設備工事コストを30%以上削減(②③は冷却再加熱方式と比較)。本方式は,デシカントロータの低温再生が可能となり,効率が高いヒートポンプ熱源のパッケージ搭載が可能。省エネ面では,冷房時 二次エネルギーCOP5 ~6,暖房時6 ~7 の高効率を実現。設備工事コストは,外部熱源設備や冷温水配管工事が不要なため30%以上削減可能。外部熱源設備不要と高効率である本製品は,今後のZEB化を目指す一般オフィスビルへの普及が期待できる。
国内メーカで初めてGWP =1の新冷媒HFO-1233zd(E)を適用した,高効率かつ省スペースのターボ冷凍機である。新冷媒のHFO-1233zd(E)は,従来のHFC 冷媒と比較し,ガス比体積が約5倍となるため,従来設計では機器寸法や効率面で問題が想定された。本製品は,CFD解析を用いた空力流路全体の最適化による圧縮機の小型化,圧縮機と電動機の直結化による信頼性向上と小型化・低損失化,熱交換器内熱流動解析を用いたチューブ配置の最適化による蒸発器・凝縮器の小型化等,各設計をゼロからやり直し,HFC冷媒を用いた従来機とほぼ同等の設置面積を実現するとともに,定格COP6.3(従来比3.0%向上),IPLV9.1(従来機比1.1%向上)を達成した。
「省エネ,節水」を維持したまま,「ウルトラファインバブル」水により洗濯機購入時の重視点である「洗浄力」(皮脂汚れ)を向上させ,さらに残留する洗剤量も低減し洗い上がりを向上させたドラム式洗濯乾燥機。また,アクティブS-DDモータ,アクティブサスペンション,大容積ドラム,高圧ダブルシャワーにより,洗濯容量12 kg化,乾燥容量7 kgのまとめ洗い・まとめ乾燥を実現し,1 kgあたりの省エネ性を向上させた。
近年のIoT化の推進によりデータセンターにおけるエネルギー消費量増大が社会的問題となっている。当社は,データセンターで使用されているサーバなどのICT機器を丸ごと液体に浸漬し,高効率に冷却することにより,ICT機器だけでなくデータセンター全体の省電力を達成できる先進的な省エネルギーシステムである「FUJITSU Server PRIMERGY液浸冷却システム」を開発した。
既築ビルを改修した新本社ビルは,地中熱利用換気システム,国内オフィスビルとして初となるスマート中低圧直流配電ネットワークシステム,直流電源対応LED照明の他,太陽光発電システム等を導入した。これらの導入による一次エネルギー消費量は,平成28年省エネルギー基準比74%削減の337 MJ/m2・年となり,既築のビルでZEB Readyを実現した。 またカーポート上の余剰スペースを活用して平成30年6月に太陽光モジュール(1.92 kW)を増設し,BELS評価で削減率75%のNearly ZEBを取得した。 ZEBリーディング・オーナーとして多くの見学客を受け入れつつ,約1年の実運用を通してNearly ZEBを達成見込みである。
LEDからLEDへの切り替えでも,制御により大きな省エネを実現。
福島県内にある温泉宿「おとぎの宿 米屋」が東日本大震災を機に省エネに取組み,成果を上げた事業である。温泉宿やホテルといった宿泊業は一般的に,エネルギー等の消費量及びCO2の削減余地が大きいとされるが,温泉排湯熱と冷房排熱を活用した高効率なヒートポンプを導入し,冷暖房・給湯を行うとともに,エネマネ事業者を活用し,エネルギー管理システ ム(EMS)の導入と見える化を図ることで,2016年からの稼働実績ではエネルギー削減量(原油換算)47 kL/年(削減率18.1%)を達成した。このような取り組みとオーガニック認証を受けた食材とコスメをお客様に提供することで,日本で初めて温泉旅館としてビオホテルの認証を受けた。
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