ご存知のように,わが国では脱炭素に向けて「2050年カーボンニュートラル」の長期目標と, 2030年度に2013年度比で46% の削減を目指す中期目標が宣言されました。これに伴って, 2021年10月には「地球温暖化対策計画」や「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」,「第6次エネルギー基本計画」が全面的に変更され,わが国が脱炭素社会に向けて,再生可能エネルギーを最大限に導入させることが明記されます。そんな中で,固定価格買取(FIT)制度は2012年の導入以降,バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入において非常に重要な役割を果たして来ました。このFITを活用することによって急速に導入が進んでいるのが小規模バイオマスエネルギーによる熱電併給(combined heat and power, CHP)です。この小型バイオマスCHPは,売電だけでなく熱利用も可能なことから,地域の経済的循環や資源循環に寄与すると言われ,雇用創出についても期待できるという特徴があります。しかしながら,今後もバイオマスエネルギーの導入が進めば,今後のFITによるバイオマス発電の導入は,FIT制度の出口戦略として,FIT制度に頼らずに進めていく必要が生じてくるかと思います(ポ ストFIT)。このポストFITを考慮したバイオマス利活用のために,マテリアル利用やさまざまなバイオマスに関するイノベーションと地域利活用について,先の学会(第18回バイオマス科学会議,群馬県前橋市前橋テルサ,バイオマス部会主催)においてパネル討論会が行われました。 本稿ではこの討論会の内容をご紹介させていただきます。 パネリストの方々からは,材料転換とエネルギー転換の工業団地,地域と密着したバイオマス資源収集,バイオ炭による収益の多様化,川場村の木材コンビナート,バイオマスからのエタノールやケミカルの可能性について議論いただき,標題への回答に至るまでの多くのヒントが得られ,示唆に富んだ有益なディスカッションとなりました。ぜひバイオマスに関わるすべての方々にご覧いただき,今後の地域におけるバイオマス利活用にお役立ていただけますと幸甚です。
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