低圧のアルゴン水銀混合ガス放電を利用する殺菌灯やけい光放電管などを交流点灯するとき, 陽極振動が停止し, 次いでまた発生することを0.3~0.5秒周期で繰返しすることがあり, 特に眼から近距離で使用するスタンドなどでは, 著しい光束のちらつきを感ずることが時々見受けられる. この原因を, 温度特性 (管壁-60℃ から+80℃ まで) や電極附近の探針特性や電極コイル温度の測定などから検討し, 陰極寿命に対する影響を考察した.
陽極振動停止現象は放電々流値と水銀およびアルゴン圧力に関係し, 常温以上で起り易いが低温とか水銀の非常に少い管では起りにくい. 陽極振動停止による電極コイル被着物質の蒸発は, 直流点灯では著しく, 交流点灯では比較的軽い. 陰極振動も発生と消滅を繰返すことがあるが, 陰極振動は0.5~1.3MC前後の正弦波が主体で, その最大振幅も通常は陽極振動電圧に比し1/3以下であり, その他の諸測定から陰極振動の有無による陰極電子放射物質の蒸発速度の変化はきわめて少いことがわかった.
この実験に付随して次のことをえた. すなわち陽極振動は爆発的電離の直後陽イオンによる陽極降下の消滅から, その陽イオン拡散による陽極降下回復に到るまでの時間を周期とする弛張振動型であると説明しうるが, 陽極コイル端に赤熱輝点と陽極グローとを発生できないようなや玉低い放電々流のときと, 低温における放電の陽極振動, あるいは陽極振動の無いときの陽極降下については考え方を変える必要があることである. また陰極振動は管壁温度+50°C以下-60℃ まで変えても変化は少いが, 陰極輝点の電子放射面の状況に敏感であって, 直流点灯より交流点灯の方が発生し易く, 双子型振動を通常形成する. 管壁温度60℃ を越えると, 陰極振動の振幅減少し, 更に高温では消滅することなどに対する陰極寿命について考察を行った.
抄録全体を表示