絶縁層の総厚とコロナ放電開始電圧のトレードオフを解消した,新たな高熱伝導絶縁樹脂構造を開発した。パッシェンの法則に基き絶縁層と空気層の2層モデルを用い,絶縁層厚さとコロナ放電開始電圧との関係を明らかにした。その結果,樹脂絶縁層に導体を挿入して分圧することで総厚を厚くすることなく耐コロナ放電性を向上できることがわかった。また,導体を挿入した絶縁樹脂シートに適した圧着工程を開発し,定格電圧700 Vパワーモジュールと同等の絶縁層厚さで,定格電圧1,200 Vのパワーモジュールを開発した。
直流高電圧電源は高周波交流をインバータで生成し,後段のトランスやCockcroft-Walton (CW) 回路で昇圧を行う方式が一般的である。インバータの高周波化により,CW回路のコンデンサ容量の低減ができ,電源の小型化が期待できる。CW回路に用いる高耐圧ダイオードは素子を直列接続した超高耐圧のSiCモジュールの開発により,300 kHz以上の高周波動作が可能となり,素子の直列数による耐圧設計が可能となった。一方で,直列数と導通損失は比例するため,高耐圧化の限界もある。本稿では出力電圧を得るためのダイオード素子の直列数をCW回路の段数設計と合わせて検討することで,電源の性能向上に有効な構成を明らかにした。
電波望遠鏡のIF帯域のさらなる広帯域化のため,筆者らは受信機の主要なコンポーネントである広帯域90度ハイブリッドカプラの開発についてストリップ線路構造を用いて進めている。しかし,プリント回路板の基板間に生じる空気層などの影響により高周波側の特性が悪化し,性能要件を満足することができていない。そこで特性を改善するための構造最適化手法について検討を行った。電磁界シミュレーションの結果からThruおよびCoupledの特性に着目することで理想結合線路のパラメータを抽出し,その結果をもとに線路の寸法を電磁界シミュレーションにて調整する手法を提案し,周波数特性を大きく改善することができた。
電気自動車の普及に向けて,近年では800 Vクラスの高電圧バッテリーを搭載することで充電時間短縮を実現する技術が注目されており,それに伴って高耐圧なインバータとそれに用いるパワーモジュールが必要とされている。筆者らは,パワー半導体の熱を,両面の放熱フィンから絶縁シートを介して直接放熱する両面直接冷却型パワーモジュールの耐圧を向上するため,絶縁シート内部に中間導体層を積層することで,課題である部分放電電圧を向上する導体積層絶縁シートを開発した。実験にて,部分放電電圧が従来から1.67倍向上できること,中間導体層の最適なレイアウト,従来絶縁シートを用いた場合と同等のインダクタンス性能が実現できることを示した。
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