多層プリント配線板のドリル穴あけ加工時に発生するスミアや穴内壁粗さは, 各層間の導通不良や絶縁不良の主な原因となっている。スミアや穴内壁粗さの発生は, 多層材料特性やドリル条件等に影響されるが, その発生機構や多層プリント配線板の特性との関係は明らかでない。
そこで, スミアや穴内壁粗さと基板特性や基板に使用した樹脂特性との関係を明らかにすることを目的に, スミアについては, その発生機構をドリル摩耗や切粉形態, スミア発生過程の観察より推定し, 樹脂特性とスミアの関係を検討した。穴内壁粗さは, ガラス繊維と樹脂の界面接着特性をアコースティック・エミッション法で評価し, 穴内壁粗さとの関係を検討した。
その結果, スミアの発生にはドリル摩耗の影響が大きく, 排出過程の微細な樹脂の切粉が銅箔切削面と摩耗したドリルのマージンとのすき間に侵入し, 押し付けられて付着し, スミアになると推定した。硬化後の臨界表面張力が大きい樹脂で作製した多層プリント配線板は, スミアレベルが良好であることを見いだした。穴内壁粗さは, 積層板のガラス繊維と樹脂の界面接着強度と良い相関を示し, 界面接着強度が高すぎる積層板は穴内壁粗さが大きくなることがわかった。
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