ランドスケープ研究
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58 巻, 5 号
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  • 小野 健吉
    1994 年 58 巻 5 号 p. 1-4
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    蘆花淺水荘は, 近代京都画壇で活躍した目本画家・山元春擧が, 郷里滋賀県大津市の琵琶湖畔に営んだ別荘である。庭園は, 大正4~6年ごろを中心に, 春擧の指示のもと京都の庭師・本井政五郎らにより作庭された。築造時の記録, 築造後間もない時期の写真・図面・文献, 関係者の証言などから, この庭園が建築と並行して築造されたこと, 風景画にすぐれていた春擧が絵を描く感覚でこの庭園のデザインに取り組んだこと, 琵琶湖を視覚的にも利用の上でも主たる構成要素とする傑出したデザインの写実的風景式庭園であったことなどを確認した。
  • 鈴木 誠, 栗田 和弥, 麻生 恵
    1994 年 58 巻 5 号 p. 5-8
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    日本人と結婚し在日する知目家欧米人とその伴侶の日本庭園に対する認識・イメ-ジをアンケート調査し比較考察した。その結果、彼等の日本庭園の体験度、理解度は日本人と大差はなく、目本庭園に対する感覚的イメージもほぼ同様であった。日本庭園関連用語などはむしろよく理解していると自認し、外国人にも日本庭園は理解できると彼我共に認めていた。彼我で異なるのは、借景の意味内容や枯山水の認識、わび・さびについての理解がやや低くなることであつた。また、「日本庭園」から目本人が具体的庭園要素を連想イメージするのに対し、欧米人は静寂、緑、平和などの印象を多くあげ感性的に庭の雰囲気を享受する姿勢をもつことが認められた。
  • 小野 佐和子
    1994 年 58 巻 5 号 p. 9-12
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸時代後期に梅の名所として名を知られた奈良県添上郡の月瀬梅林について, 明治期の有様を, 当時の新聞広告により考察した。その結果, 鉄道客の増加をはかる手段として月瀬が利用されたこと, したがつて, 誘致圏は鉄道網の拡大とパラレルな関係にあること, 鉄道と人力車の利用により, 月瀬は「容易に時間をかけずに行くことの出来る日帰りの行楽の場」だと考えられるようになること, 誘致圏の広がりと共に, 大和の月瀬が日本-の梅の名所へと名をかえていくこと, 車道や橋の建設が梅林の趣を変化させたことが明かとなり, また, 自転車, ビヤホール, 団体客といった新しい風俗が加わったことを認めた。
  • 山下 英也, 宮城 俊作
    1994 年 58 巻 5 号 p. 13-16
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, わが国の近代都市公園のプロトタイプである日比谷公園を対象として, 一連の設計案の平面形態ならびに開園後今日に至るまでの変容をトレースすることによって, その空間構成の特質を明らかにする。日比谷公園の計画にあたって提案された設計案を詳細に検討することによって, 敷地に想定される空間の単位性を確認し, その単位性の確立と施設の置き換えが公園プランのヴァリエーションをもたらしたことを指摘した。また, 本多静六による実施案では, 空間の単位性ゆえにその後の変容の過程において施設の置き換えが実際に行なわれ, 結果として施設空間のパッチワークとして認識される平面構成が形成されたことを明らかにした。
  • 林 まゆみ
    1994 年 58 巻 5 号 p. 17-20
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    世民衆社会における被差別民であった「散所」, 「河原者」等の民は, 一方で造園土木や作庭の分野でその職域を広げ, 技術を確立していった。あいまいな点の多い彼等の社会的背景について事例を挙げて分析することによって, 何故「河原者」等がすぐれた作庭家として輩出しえたかを考察した。そのために, 賃金体系の変遷や彼等の集団としての行動や主張に眼を向けた。さらに, 中世社会における特殊な価値体系一触積思想にも言及することにより, 「河原者」の果たした清めの職能が土木, 築地, 作庭技術とどのように結び付き得たかを検討した。また彼等の触穢思想の中での役割や, 呪術との関わりを考証した。
  • 永橋 為介
    1994 年 58 巻 5 号 p. 21-24
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は大阪天王寺公園の前身である第5回内国勧業博覧会の敷地設定について周辺地域の社会・歴史・空間的文脈から再検討することを目的とする。敷地周辺地域としては江戸時代からの貧民街である長町 (名護町) を取り上げる。考察の結果, 敷地と道路とが一体となって計画されるという近代都市計画的なプロセスが第5回内国勧業博覧会の敷地設定に見られることが明らかになった。博覧会の敷地が設定された地域は, 明治19年以降, 大阪市域の都市政策による度々の排除にさらされながらも存在してきた長町 (名護町) に近接した地域であった。そして, 日本橋筋が博覧会敷地へのアクセス道路として整備されていく中で, 長町はクリアランスされた。
  • 野嶋 政和
    1994 年 58 巻 5 号 p. 25-28
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論では, 明治22年の東京市区改正設計告示から明治36年の設計変更を時代対象として, 近代公園の成立期における, 国民統合政策の影響を考察することを目的とした。神社行政の動向や文化財保護行政の展開において, 空間の社会的意味形成機能への認識が高まる中, 社寺境内地, 特に神社境内地を基盤として出発した市区改正の公園も, 社会的意味形成を担う空間として捉えられ始めることになった。造園家小沢圭次郎は, 国民統合政策の論理に依拠して, 市区改正公園への批判を展開し, 庭園様式を援用した「公園論」を著した。この小沢の「公園論」は, 公園の近代化の転換点を示す日比谷公園の開設過程にも影響を及ぼしていた。結果的には, 小沢らの主張は実現しなかったが, 公園や文化財などのオープンスペースに対する認識の変化と関連していた。
  • 土肥 真人
    1994 年 58 巻 5 号 p. 29-32
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は江戸から東京への変動期にみられる都市オープンスペースの形態的変化を, 社会的な意味生成の場としてのオ-プンスペースという観点から検討することを目的とする。江戸の社会は, 制度的空間的に各町を構成単位としていたことから, オープンスペースは各構成単位の狭間の空間として自らを表していた。そこはまた大道芸人たちが宗教的色彩の濃い諸芸能を披露する舞台であり, 意味的には中世以来の〈定住一漂泊〉の関係がみられる。本論の考察の結果, 明治初期の東京で実施された各種芸能の禁止, 統制等の文化政策は, オープンスペ-スの形態的変化, 社会的諸制度の変化と密接に絡みつつ, 江戸の意味的世界観を変更することが明らかになった。
  • 西田 正憲
    1994 年 58 巻 5 号 p. 33-36
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸後期, 瀬戸内海を記述した紀行文に, 従来の歌枕や名所旧跡に捕らわれない風景の素直な評価と, 風景を遠く見渡し広く捉える広闊な俯瞰景の賞賛が現れ始める。それまで歌枕や名所旧跡しか讃えなかった日本人に, 徐々に歌枕や名所旧跡からの離脱が始まり, 瀬戸内海の新しい風景が少しずつ見えてきたといえる。その動きは, まだ従来の風景観の枠組みに強く支配された中での変化であり, 明治の近代的風景観の台頭ほど鮮明ではないが, 歌枕名所的風景ともいうべき伝統的風景の捉え方とは異なる新しい風景視点の萌芽であった。中世, 近世の瀬戸内海の紀行文を分析することによって, 江戸後期のこの新しい風景視点の萌芽を明らかにするものである。
  • 橋本 善太郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 37-40
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都道府県立自然公園の変遷を明らかにするため, 明治6年の太政官布告から, 昭和6年の国立公園法の制定, 昭和10年の千葉県による最初の地域制道府県立自然公園の指定, 昭和32年の自然公園法の制定, 昭和47年の自然環境保全法の制定といった一連の歴史展開の中で, 都道府県立自然公園がどのような位置づけと役割を担つたかを分析考察した。その結果, 都道府県立自然公園の歴史を明治6年から昭和9年までを第一期, 10年から32年までを第二期, 32年から47年までを第三期, それ以降を第四期とした。そして, 現在は都道府県立自然公園を含め, 自然公園の歴史にとって新たな展開の時期であるとの結論を得た。
  • 伊藤 太一
    1994 年 58 巻 5 号 p. 41-44
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ニューヨーク州北部のアディロンダック公園は, 1885年に保護林となり全面積の42%を占める州有林と, 残り58%を占める民有地から構成される地域制の州立公園として1892年に設置された。1967年にこの中心部の国立公園化が提案がされた。結局, この提案は拒絶されたが, 公園管理において民有地の土地利用規制が不可欠と認識されるようになり, その後の公園内の土地利用規制法とその管理組織の発足を促した。また, 議論の過程で人々のウィルダネスへの関心の高まりが明らかになり, 利用志向であった国立公園のありかたが批判される契機にもなった。
  • 杉尾 邦江
    1994 年 58 巻 5 号 p. 45-48
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    イギリスの福祉国家としての近代的国家機構の創出に深く係わったベンサムは、政治, 経済, 社会, 法改革を先導したのみならず, 功利の原理「最大幸福原理」やパノプチコンのアイデア等によってイギリスの公園運動を刺激し, 公園の成立に大きな影響を与えた。またベンサムの間接的立法論で提案された犯罪予防の政策は公園原理の萌芽とみることができ, 更には, パノプチコンの構想はラウドンの多目的グリーンベルトに影響を与えたと考えられる。
  • 佐々木 邦博
    1994 年 58 巻 5 号 p. 49-52
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    1871年 (明治4年) に明治新政府は岩倉使節団を欧米諸国に派遣した。その目的の一つに各国の近代的諸制度や文物の調査があり, 帰国後に久米邦武により「米欧回覧実記」としてまとめられる。本研究の目的は明治初期に西洋諸国について記した代表的な書物であるこの著作において整備直後のパリの公園がどのように把握されていたのかを探ることにある。分析の結果, 公園は街路樹のある道や広場と一体となった姿で全体を把握された上で高く評価されていること, そして社会政策上の遂行目的とされていることが, 公園を社交の場であり美しい場所としたパリ以前に訪れた都市の公園の説明と異なり, パリの公園の特徴とされていることが判明した。
  • 横張 真, 武内 和彦
    1994 年 58 巻 5 号 p. 53-56
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    トミー・トンプソン公園は, トロントの中心街の南東5kmのオンタリオ湖岸に位置する。当地は港湾施設と廃棄物投棄地を兼ねた地として埋め立てが進められたが, 水運の需要低下に伴い放棄地と化していた。その間に多様な生物相が生息するようになり, 現在ではトロント圏オンタリオ湖岸での生態系保全の中心的存在となっている。当地で急速に生態系が再生した理由としては, 広域的な公園緑地系統のなかで動物相の移動にとって理想的な位置に立地したこと, 敷地北西部の浚渫土砂による埋め立て箇所が植物の生育に適した土壌と微気象条件にあったこと, 一般の立ち入りが規制されてきたため人による直接的な撹乱が少なかったこと, などが考えられた。
  • 田原 直樹, スプロト T・ヨヨック・ワハユ, イカプトラ
    1994 年 58 巻 5 号 p. 57-60
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は, ジャワの都市におけるオープンスペースを対象として, その文化的な特徴をあきらかにすることを目的としている。主として固有の伝統文化の文脈に着目し, 野外調査の結果によって得られた知見に基づいて, それに考察を加えるという方法をとった。まず, 都市のオープンスペースを概観し, 庶民住宅地カンプンの路地, 王宮の前庭アルン・アルン, 貴族住宅ダルムを考察の対象として抽出した。村落のオープンスペースとの比較検討の結果, 住居のまわりの空間とその連鎖がオープンスペースを形成すること, それはプカランガンという概念であること, その特徴として個人所有開放性, 相互性 (社会性) があげられることがわかった。
  • 李 樹華
    1994 年 58 巻 5 号 p. 61-64
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    中国において「盆景」に関連する名称は唐時代から登場し, 清時代まで多様な呼称が用いられた。唐時代には「盆池」「盆山」「盆栽」などがあり, 宋時代には「硯山」「研山」「異石」「石供」「盆石」「盆草」「盆梅」などがある。元時代には「些子景」, 明時代には「盆島」「盆樹」「盆玩」「盆花」「盆景」などの言葉が使われている。清時代には「盆景」「山水点景」「小盆景」「天然盆玩」「梅樹盆景」などがある。本研究では中国の漢籍資料から, 「盆景」に関する名称の出現とその変遷過程及び名称間の関係について考察した。
  • 白 志星
    1994 年 58 巻 5 号 p. 65-68
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    朝鮮時代の宮関における宮苑の構成と庭園植栽の特徴について研究に当たり, 東関の後苑を取り上げ考究することにした。
    後苑は自然の丘陵, 山麓, 渓流などを活かし, その一部を削平しながら殿屋や亭子を建て, あるいは渓流を堰止めて池園を造成するなど多彩な園圃の空間を構成している。しかし, このような手法は人工を加えながらもその庭造りにおいては周りの自然と調和させる様々な工夫がなされ、自然林と地形を巧みに利用した自然と人工の取り合わせの庭構成となっている。
    後苑の空間造りにおいて植栽に限つてみると, 自然の植生をそのままに活かし, 自然林に囲まれた苑囿空間としたことが分かる。一方, 翠塀の仕切りのデザイン手法は注目される。
  • 飯島 健太郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 69-72
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    乾燥条件下への導入を前提としてSedum属2種 (S.makinoi, S.oryzifolium) の耐旱性を探るために給水停止後の生育と水ストレスの関係, 水ストレスによる生存臨界点, 水ストレスと気温の関係について検討した。生育状態は生体重量, 葉の数, 厚さ, 根の増加数, 水ストレス状態は葉の水ポテンシャルの測定によって判定した。その結果両種ともに給水停止後, 生体重量や葉厚が当初の20~25%に低下しても葉の水ポテンシャルはさほど低下せず約-1.0MPaを維持していた。萎凋点以下の土壌中での根の増加が見られた。水ストレスによる生存臨界点は-2.0~-3.0MPaであることが推察された。水ストレスの進行は10℃ ~20℃ よりも30℃ で緩慢になることが判明した。
  • 鈴木 貢次郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 73-76
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    広く緑化空間で扱われている低灌木類数種の種子の発芽特性について究明した。その結果, ユキヤナギは, 採種直後では発芽適温が15~20℃ の間であったが, 採種後約1年で発芽能力を失った。また, 強い好光性を示し, 暗条件におけるGA3 と低温処理の併用による発芽促進効果が認められた。ビョウヤナギの発芽適温は採種後7ケ月内外までは15~25℃ の間で, 特に25℃ で好光性を示した。また, 月日を経ると次第に発芽率が高くなる傾向を示した。アセビは, 採種直後の休眠が認められ, 好光性種子であった。ヒイラギナンテンは, 採種直後に15~30℃ の間で高い発芽率が得られたが, 1ケ月後には, どの温度, 光条件でも発芽能力を失った。
  • 高橋 新平, 鈴木 章己, 近藤 三雄
    1994 年 58 巻 5 号 p. 77-80
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    弱光条件におけるセントオーガスチングラスの生育, 形態変化について実験を行った。光強度260μmol・m-2・S-1区では新葉展開数ならびに枯死葉数が遮光区に比較して顕著に多く, 葉の新旧交代が絶えず営まれていることが認められた。35μmol・m-2・S-1区でもその傾向は認められるが260区ほどではなかった。また, 15, 5μmol・m-2・S-1で区では新葉展開数, 枯死葉数共に少なく当初展開した葉が維持して生育する状況が確認できた。35区でLARとLAlの増加がみられ, RGRに影響を与えること, 5, 15, 35区では葉の展開期移行に伴うLAIの増大がみられた。また, 遮光区では無遮光区に比較して葉の薄層化, 葉身長の増大が認められた。
  • 内田 均, 加藤 雅義, 田島 淳, 萩原 信弘
    1994 年 58 巻 5 号 p. 81-84
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    従来より用いている根巻資材の藁と最近用いられ始めた根巻資材 (麻袋・麻布.紙) との相違が根巻の作業に及ぼす影響を, 藁を基準として掘取りと根巻に要した根巻作業時間を100%とした場合の根巻時間割合, 根巻の商品的評価・根鉢の縄締め張力・資材の使用量・作業能率などから資材別・熟練度別に検討した。その結果, 熟練者による根巻作業時間中の根巻時間割合は藁63~70%, 新根巻資材39~44%で, 藁より2~3割短縮された。藁の根巻は商品的評価・縄締め張力・作業能率で熟練度別な差が認められたが, 新根巻資材では熟練者・未熟練者と大差がないことが判明した。今後の根巻資材は作業性の面からも藁より新根巻資材の方が有望と考えられる。
  • 長嶋 聡, 石井 芳夫
    1994 年 58 巻 5 号 p. 85-88
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    人工地盤の緑化に適した根鉢が薄い植木の養成技術を, 貫根型不織布ポットを用いて検討した。落葉広葉樹のソメイヨシノを供試し, 不織布ポットに植え込み, 根鉢の薄層化と地上部の養成を並行して行つた。根鉢の厚さを10cm, 15cm及び20cmとして1年半養成したところ, 根鉢の薄層化が可能になり, 地上部は各区とも露地対照区の85%以上, 養成開始時の2.5倍程度の生育を見せた。予備試験として, この方法で1年間養成したソメイヨシノを実際に薄い植栽層に定植して生育を確認したところ, 樹高4.5mの樹木が厚さ10cmの植栽層でも正常に生育した。
  • 下村 孝
    1994 年 58 巻 5 号 p. 89-92
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    マサ土6: ピートモス3: パーライト1 (マサ6), 同3: 6: 1 (マサ3), ピートモス1: ロックウ-ル1 (BM), メトロミックス250 (MM) を用い, 3号ポリポットでウエデリア挿し木苗を育苗した。液肥2回施肥では肥料保持能の低いBM区とMM区の成育が劣ったが, ポット当り1.8g, 3.6gの緩効性化成肥料 (11N: 24P: 10K) 施肥で用土間の差はなくなった。灌水打切り後, しおれまでにマサ6区で2日強, マサ3とBM区で約5日, MM区では7.6日を要した。しおれ開始時の苗重量はマサ6区が278gであったのに対し, マサ3区ではマサ6区の73%, BM区では29%, そしてMM区では42%であった。しおれはじめた苗をマサ3でプランターに植え付けるとすべての株が活着し, 成長量にも差はなかった。
  • 水庭 千鶴子, 雨宮 悠, 矢橋 晨吾
    1994 年 58 巻 5 号 p. 93-96
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    造園材料の一つである修景用表面被覆材を用いて被覆材の素材ならびに層厚によりどの程度の蒸発抑制効果があるのか明確にした。今回の研究では数種類の被覆材を用いて屋内における蒸発環境と, 蒸発に伴う土壌中の水分移動について蒸発抑制の事例的研究を行った。
    被覆材の層厚40mmのものは時期的な変動はあるものの裸地と比較して蒸発量が5分の1ないし3分の1と抑制効果は大きかった。また, これら被覆材を用いたときは蒸発が緩慢に起こり, 土壌内の水分は均一的に減少していくことが明らかとなった。
  • 野島 義照, 長谷川 秀三
    1994 年 58 巻 5 号 p. 97-100
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市緑化を進めることにより都市における夏期の暑熱を緩和する効果が期待できる。これは, 緑陰では日射が遮蔽されることと, 植物の葉面から水分が蒸散する際に潜熱消費が行われ葉の温度が気温と同程度に保たれることによる。都市地域ではヒートアイランド現象が顕著になってきており, 今後, 建築物の屋上や壁面の緑化を含め, 都市緑化を-層進めることにより, 都市における夏期の暑熱を緩和することが重要となっている。そのための基礎的な知見として, 各種の造園植物について, 潜熱消費量を求めるための原単位となる葉面からの蒸散速度を把握する必要がある。そこで, 各種の造園植物の蒸散速度を測定し, 大気飽差と光量子束密度に基づく1つの変数を用いた回帰式で蒸散速度を表わすことができることを確かめた。
  • 前中 久行, 大窪 久美子
    1994 年 58 巻 5 号 p. 101-104
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古の沙地の緑化に用いられている旱柳 (Salix matsudana), 沙柳 (Salix psammophila), 楊柴 (Hedysarum mongolicum), 油蒿 (Artemisia ordosica), ヨシ (Phragmites australis) について, 切り枝水挿し法による蒸散速度の現地測定を行った。同時に気温, 湿度, 照度の環境測定も行った。油蒿を除く4種については, 蒸散速度は, その時点での照度にほぼ比例した。しかし, 油蒿は夜間の蒸散速度も大きく, 照度と蒸散速度に明瞭な関係が認められなかった。また, 今回の水挿し法によって得られた蒸散速度は, 過去に行われた水無し法による数値のよりも小さい。今回の値を用いて油蒿群落からの蒸散量を推定すれば, 940g・m-2・day-1となる。
  • 加藤 和弘, 篠沢 健太
    1994 年 58 巻 5 号 p. 105-108
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    各種の自然環境調査で生物相が調査されるが, その結果の分析と利用は現状では十分とは言えない。本研究では, 多変量解析により生物相の調査結果を分析し, 各種の応用に供し得ることを示す。多変量解析の適用のために, 分析の前提条件が少ない分類型の多変量解析を出発点とし, 正準判別分析を併用することにより, 生物相の分類と優占的な環境傾度の抽出を行う手順を提案した。この方法は, 将来的には生物相の予測にも利用できる。河川中流部の底生無脊椎動物相を対象とした事例研究では, 水質がほぼ一様な場合の, 流速や堆積物の粒径などの物理的条件の重要性が指摘でき, これらの多様性を確保する必要性が示唆された。
  • 大窪 久美子, 前中 久行
    1994 年 58 巻 5 号 p. 109-112
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    畦畔草地は個々の規模は小さいものの, 多様な半自然草地が成立し, 農業生態系においては多様な生物のすみかとして重要な役割を担っている。しかし近年, 基盤整備事業が進行するなかで, かつては普通にみられた畦畔草地は減少, 変化しつつある。そこで本研究では, 畦畔草地群落の現状と基盤整備の影響を把握するため, 4地域において植生調査等を行った。大規模な基盤整備が行われた地域の群落は, 帰化率が高く多様性は低かった。一方, 基盤整備が行われていない地域では帰化率が低く, 多様性の高い群落から低い群落まで, 多様なタイプの群落が存在した。この多様な群落の存在が, 地域としての生物群集の種多様性を高めるものと考えられた。
  • 倉本 宣, 鷲谷 いづみ, 井上 健
    1994 年 58 巻 5 号 p. 113-116
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    多摩川におけるカワラノギクの個体群の分断化の進行と種子散布について調査した。1976年と1984年の植生図と1993年に行った現地調査から, 地域個体群の数は13, 8, 4と減少していた。地域個体群の間の距離が増大していたことから, カワラノギクの種子が生育可能なパッチに到達する確率は低下していると推定される。
    風散布, 付着散布, 水散布の3つの種子散布様式の散布距離を実験的に比較したところ, 前二者は散布距離が短く, 水散布のみが地域個体群間の種子散布に貢献できることが示唆された。水散布には方向性があるので, カワラノギクの保全には上流部に位置する地域個体群を保全することが重要であると考えられる。
  • 一ノ瀬 友博, 加藤 和弘
    1994 年 58 巻 5 号 p. 117-120
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    生物群集に配慮した環境整備のためには, 生物相を広域的に分析し, 保全のための指針を作成することが必要である。本研究ではそのための方法を提案する。生物群集の分布のメッシュデータを群集生態学的な観点から多変量解析し, 分布に影響を及ぼしている環境要因を識別し, 生物群集にとって主要な生息地を抽出する。その結果を用いることによって, 保全上重要な地域を指摘できる。この方法の実効性を埼玉県所沢市の鳥類分布のメッシュデータを用いて検証した。同市域の鳥類にとって繁殖期・越冬期ともに樹林地が主要な生息地であり, 狭山丘陵のみならず市北部に残存する平地二次林が生息地として重要であることが示された。
  • 渋江 桂子, 大場 信義, 藤井 英二郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 121-124
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 都市周辺地域の緑地保全計画の基礎として, 横須賀市野比地区の谷戸田においてゲンジボタルを研究対象種として選定し, ゲンジボタルの成虫個体数に影響を及ぼしている生息環境要因を解析することを目的とした。マン・ホイットニ検定によりゲンジボタルの生息環境として2つの異なる地形の存在が明らかになった。地形の異なる2つのタイプについて重回帰分析を行った結果, 両方の地形タイプに共通して, ゲンジボタルの個体が選択した生息環境要因は, 川幅と流速と冬の水路照度であった。さらに, 地形タイプに固有に, ゲンジボタルの個体が選択した生息環境要因は, 夏の水路照度と谷戸田の長さと畔の高さであった。
  • 浅見 佳世, 服部 保, 赤松 弘治
    1994 年 58 巻 5 号 p. 125-128
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    河川堤防植生 (河川堤防法面上の植生) の実態を明らかにし植生管理手法を確立するために, 高知県仁淀川, 兵庫県猪名川, 徳島県那賀川の堤防法面で植生と刈り取り頻度との関係について調査を行つた。両者の関係については, 刈り取り頻度が2年に1回以下の低頻度ではススキが, 年1, 2回ではチガヤやススキが, 年3回ではシバがそれぞれ優占し, また刈り取り頻度に対応して草丈の増減, 季節性の有無, 種多様性の高低が生じることが認められた。この内堤防管理の安全性および景観性, 種多様性などの環境機能についての条件を勘案すると, 堤防植生としてはチガヤ型がふさわしくその管理方法としては年2回の刈り取りを行うのが望ましいと考えられる。
  • 宮内 泰之, 仲 隆裕, 藤井 英二郎, 浅野 二郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 129-132
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    園池堆積土中に含まれる遺存植物体の採取方法ならびに平面的・垂直的分布特性を検討・考察した。種子・果実の遺存体については, 1mmの篩で木本植物が, 0.25mmで草本植物がおよそ選別される。平面的分布特性については, 多くの遺存植物体は地形や護岸の形態に強く影響を受けて分布し, 重力散布の種はその種子を供給する植物の生育位置の影響を受けることが示唆された。垂直的な分布特性は各層ごとに遺存植物体の構成に違いがみられ, それは各時代の庭園の植栽を反映していることが示唆された。今後草本植物の生態的特徴を勘案しつつ木本植物の遺存体の種構成との関係を検討することにより, 往時の庭園植栽を推定する方法を確立することが課題である。
  • 澤木 昌典, 上甫木 昭春
    1994 年 58 巻 5 号 p. 133-136
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 今後のニュータウン開発において重要な課題となる生物の生息にも配慮した緑地保全に際して, 生物と共生しつつ快適で魅力ある居住環境形成のための緑地保全の方向をさぐることを目的として, 兵庫県三田市の神戸三田国際公園都市フラワータウン地区及び周辺居住者に対して意識調査を実施した。その結果, 生物の生息範囲についての願望による居住者の類型化を通じて, 生物との共生に好意的な人・嫌いな生物への疎遠化傾向の強い人などの存在が明らかになり, 今後のニュータウン開発での緑地保全に関して, 生態学的調査・検討に基づく生物との共生に配慮した土地利用ゾーニング, 居住者の生物嗜好による住み分け等の検討の必要性を論じた。
  • 馬場 多久男, 伊藤 精晤
    1994 年 58 巻 5 号 p. 137-140
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    自然環境保全法には原始的自然環境の動的平衡状態の維持の必要が指摘されている。南アルプス国立公園の戸台川流域の事例では, 林道開設 (1978) 以来, 治山・砂防工事が大規模に進んでいる。この結果, 山腹沢筋の土砂の流出は停止し, 川原は土砂の堆積が増大している。この地域にはトダイハハコ, トダイアカバナなどの植物も生育し, 環境変化が貴重種の絶滅をもたらす危険もある。沢筋と川原のカラマツ天然林の成立は土砂流出と密接に関連し, 崩壊, 堆積, 森林成立の循環的変動のもとで維持されていることを分析し, 原始的自然環境の動的平衡状態を考察する。さらに, 現在の土砂の安定工事が原始的自然環境に与える影響を検討する。
  • 金 恩一, 藤井 英二郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 141-144
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    植物の色彩が人間に与える生理・心理的効果を検討するため, ペチュニアの6品種 (紫, 赤, ピンク, サーモンピンク, 黄, 白) と花のないペチュニアを対象に脳波, 血圧を測定した。さらに, それらとアンケ可ト調査結果との関連性を検討した。また, これとほぼ同じ被験者によって進めているスギ林と満開状態のソメイヨシノ林 (花の色はピンク) における同様の検討との比較も行った。その結果, ペチュニアの緑とピンクにおいてみられた結果と, スギ林とソメイヨシノ林の間でみられた結果には, 類似した傾向がみられたことから, それらに対する印象評価とβ波が多く発生する部位との間には関連性があるものと考えられる。
  • 渡辺 淳
    1994 年 58 巻 5 号 p. 145-148
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市公園の植栽地における落葉落枝の除去や利用者による踏圧を中心に, 東京都内の12公園で15の植栽地を選定し, 表層土の性質と植栽木の生育状態に影響を与える要因について調査を行った。その結果, 植栽木の活力指標と表層土の固相率, 粗孔隙および全炭素との間の回帰式が求められた。また, 樹種, 植栽密度, 土性, 開園後の年数, 造成条件, 管理条件および利用条件のうち, 植栽木の生育や表層土の条件に影響を与える主要な要因として, 土性, 管理条件および利用条件を抽出し, その影響程度について試算した。
  • 佐藤 治雄, 小柴 千賀, 山野 智子
    1994 年 58 巻 5 号 p. 149-152
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市緑地の存在意義はその快適性, レクリエーション機能, 環境改善機能など様々な側面から評価しうるが, これらの機能はその緑地がもつ群落構造に大きく依存する。本研究では公園緑地の自然性評価を当面の目的とし, 堺市, 高石市の55公園緑地に出現する自生・植栽樹種の調査と14公園19プロットにおける毎木調査および一部樹冠投影図作成をふくむ群落構造調査をおこなった。それをもとに, 構成種における郷土種の割合, 樹木サイズ, 群落の樹冠連続性, 下枝の高さ, 実生稚樹の多少などが自然性評価の基準的特徴となることを把握し, ついで22公園において作成した群落構造地割り図をもとにその公園の総合的な自然性評価と相互比較を行った。
  • 久野 紀光, 仲間 浩一, 中村 良夫
    1994 年 58 巻 5 号 p. 153-156
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は, 様々な様式形態を含んだ庭園風景が「美しい」ものとして捉えられる際に, 庭園建築の外部意匠が担っている役割を景観論的に明らかにする。14庭園27建築に対する眺望点の抽出等の実証調査を通じ, 文化的な様式形態の基礎に共通して見られる形態上の特性を, J. AppletonならびにJ, J. Gibsonによる視覚論の知見に基づき解読している。結論として, 建築の外部形態の認知尺度を提示し「風景に対する人間の美的感覚を啓発する」性質と「仮想行動の示唆体として機能する」性質との両面から, 庭園建築の担っている風景美上の役割を整理している。
  • 沈 悦, 熊谷 洋一, 下村 彰男
    1994 年 58 巻 5 号 p. 157-160
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 中国西湖風景地の景観構成の特徴を明らかにするとともに, 自然風景地における景観づくりの考え方について考察することを目的とした。研究の方法は, 地形図及び現地調査による視覚の定量分析, 歴史資料や図絵詩集などの文献調査を中心とし, ヒアリング調査による補完を行った。分析の結果, 次の結論が得られた。景観構成の特徴としては, 1) 囲まれているものの開放感がある景観2)「三層構造」の景観, 3)「自然景観」と「人工景観」の巧みな融合の3点が。一方, 自然風景地における景観づくりの一つの考え方については, 自然景観の「層化」による奥行感の形成と, 「仙境化」による景観ポイントの強調の2点が抽出された。
  • 近藤 隆二郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 161-164
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸のまちにおける写し霊場 (33ヶ所) を取り上げ, 札所番号・景観類似・巡拝域などについて考察した結果, 本尊が観音である寺社のネットワークであること, 本西国との類似性を意識した演出法の存在, 江戸全域を巡るものと地域的に限られたものに分かれること, 都市像の形成を促す役割を持っていたことなどを示した。江戸西国三十三所 (上野王子駒込辺) の『案内記』を分節化し, 御詠歌が本西国連想の媒介であったこと, 景観的視点が重視されていたことを示すとともに, 現地景観体験と本西国の景観を連想する体験とが重なって成立しており, 江戸における写し霊場の鑑賞構造が, 虚実が交錯する中で部分的全体性を体得するものであったことを示唆した。
  • 堀木 美告, 下村 彰男, 熊谷 洋一
    1994 年 58 巻 5 号 p. 165-168
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    市川市の市街地に残存するクロマツ高木群を対象として, これらの「見え」のタイプを明らかにし, 住宅地景観に及ぼす影響を考察することを試みた。まずクロマツの分布構造の分析を行い, 分析対象エリアとの位置関係と高度を変えて視点を設定, 写真を全176景撮影し, 分析対象とした。続いてクロマツ高木の「見え」をその纏まりの程度と敷地及び街路との関連から15のタイプに類型化した。これに基づき, 先に得た写真から抽出したクロマツ高木の「見え」を集計した結果, 各エリアにおける特徴的なクロマツ高木の「見え」があることや, その中には分布構造を示す指標だけでは把握できないものがあることが明らかとなった。
  • 増田 昇, 安部 大就, 下村 泰彦, 山本 聡, 杉山 富美
    1994 年 58 巻 5 号 p. 169-172
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 主な尾根筋を骨格とする分水界によって囲まれる「小流域」を解析単位として, 種々の開発によって変化を受けた農村の空間構造が農村景観に与える影響を景観評価を通じて明らかにすることによって, 農村景観の保全の方向性を探ることを目的とした。その結果, 農村景観の評価は, 解析単位である環境区が保有する地形特性と土地利用特性でほぼ9割がた説明できることが明らかとなった。その中で, 地形特性では谷構造を保有していること, 土地利用特性では二次林, 水田と集落がセットとして存在することが農村景観の評価を高めることが明らかとなり, 谷構造の保全を基調として, 水田と集落の背景となる二次林をセットとして保全することが重要であると考えられる。
  • 奥 敬一, 深町 加津枝
    1994 年 58 巻 5 号 p. 173-176
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    森林レクリエ-ション地域に対する一般利用者の風景認識を明らかにするために, 箕面国定公園を対象地とし, 65グル-プの被験者による写真投影法を用いた調査を行った。まず地点毎の撮影グループ数を地図上に重ねて, イメージマップに相当する図を作成し, 利用者の行動パタ-ンをとらえた。次に, 撮影頻度を示す指標を用いたクラスタ-分析によって, 被験者が撮影した対象を5つに区分した。そして, これらがA: 地域のランドマ-クとなる風景群, B: 背景的な存在である森林景観の中から, 「図」として認識されやすい風景群, C: やや認識される度合いが低く「地」に近い風景群, D: 各人固有の見方による風景群に整理されることが示された。
  • 児島 隆政, 古谷 勝則, 油井 正昭
    1994 年 58 巻 5 号 p. 177-180
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    自然景観において眺望景観を人々がどのようにして好ましく感じているかを明らかにした。まず, 今までの研究成果である形容詞対を用いた評価実験結果を, 因子分析と多次元尺度法で解析した。その結果, 自然景観における「好ましさ」の評価構造は3階層に区分され, 各階層別に評価項目を抽出することができた。
    次に, 階層分析により評価項目の重要度が明らかとなった。この結果では, 「美しさ」と「自然性」が感じられ「景観要素の構図が良く」, 「水が存在」する景観は「好ましい」評価を得ることがわかった。また, これらの評価構造と重要度を用いた評価予測式により, 7種類の眺望景観の評価値を求めた。この結果と形容詞対を用いた評価実験より得られた「好ましさ」の値を比較することにより, 評価予測式の有用性が明らかとなった。
  • 裴 重南, 油井 正昭, 古谷 勝則
    1994 年 58 巻 5 号 p. 181-184
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    眺望景観に対する中, 高, 大学生のイメージ構造と評価の差を把握する目的で, 自然景観31景と建築物を画像合成した景観7景を用い, SD法とME法の評価実験を実施した。被験者は中学41名, 高校40名, 大学33名である。実験結果は因子分析とMDS分析で各グループ間の特徴を比較した。イメージ構造は, 中, 高校生は4因子, 大学生は5因子を抽出した。各グループとも第1因子は構成している形容詞からみて, 総括的評価因子と判断した。MDS分析では, 各グループ共球面構造になっており, 因子分析で抽出した因子は中学生で2つ, 高, 大学生は3つの分類になった。景観評価では, 中, 高校生の評価値が大学生より高い傾向にあることが示された。
  • 安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦, 山本 聡, 加我 宏之
    1994 年 58 巻 5 号 p. 185-188
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, コンピュ-タグラフィックスを用いて, 都市河川の基本構造モデルと修景緑化モデルを作成し, モデル画像を刺激媒体とした心理実験を通じて今後のスーパー堤防化に伴う都市河川の空間整備に関する課題と方向性を探った。その結果, 都市河川の空間整備に際しては, 河川空間のみならず沿川の建物の高さとの関係を考慮した一体的空間として景観形成を図ることが重要であること, 流路線形が曲線線形で河川幅と沿川の建物の高さとの比率が3.0程度であることが望ましいスケール感を創出する可能性があることや高水敷, 堤体の両方に芝生緑化を導入し, 建物の前面に高木緑化を導入することが総合的な快適性を高めることが明らかとなった。
  • 東海林 克彦, 斉藤 馨
    1994 年 58 巻 5 号 p. 189-192
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    可視・不可視領域シミュレーションについては, 環境アセスメントにおいて使用されることが多いにもかかわらず, シミュレーションにより求められた可視・不可視領域と実際のそれとを比べた場合の再現性について十分な分析がなされていないことから, 得られた結果に対する信頼性等の評価が適正に行い得ない状況にある。このため, 本調査においては, 所要の精度を確保するうえで必要となる適切なメッシュスケールの選定基準を明らかにすることを目的として, メッシュスケ-ルが大きくなることによる再現率の低下傾向について, 対象視点の眺望特性及び対象地域の地形の複雑さの2つの変動要因を考慮しつつ分析を行った。
  • 筒井 一貴, 斎藤 馨, 熊谷 洋一, 吉岡 太郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 193-196
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東京大学構内樹木調査をケ-ススタディとして地理情報システム (GIS) を応用したデー タ入力整備を行い, 樹木情報システムの構築と適用可能性の検討を行った。GISは調査結果をそのまま情報化できるベクター型を採用した。この結果, GISの特徴である
    1. 位置データと属性デ-タがGISソフト上でリンクされることによる, 解析処理と図化の連動性
    2. GlSシステム上でデータが関連づけて処理されている点が計画実務に有効と実証された。前者から利用目的に応じた効率的な資料作成が可能になる点, 後者から調査結果を原資料に反映させたデータの拡充が常になされる点, が有効であると明らかになった。
  • 斎藤 馨, 熊谷 洋一, 本條 毅, 趙 東範, 吉岡 太郎, 筒井 一貴
    1994 年 58 巻 5 号 p. 197-200
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東京大学キャンパス樹木調査GISデータを用いて, 建築物を含む樹木景観の現況把握・予測に必要な情報処理手法について検討した。GISデ-タから樹木・建築物の3次元データ生成・可視化するシステムを整備し景観シミュレーション画像を試作した。その結果,(1) 既往樹木調査GISデータに植物成長モデルを適用して樹木景観を効率的かつリアルな予測,(2) 市販GIS建築物デ-タをベースにして設計CADシステムで景観予測に有効な建築物データの効率的な作成 (3) GISとCADとが相互にデ-タ共有して都市内樹木景観の現況・将来像の予測ができることを示し, 今後の都市内における景観情報処理システムのプロトタイプを明らかにした。
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