本研究は, 個人を越えて社会に共通する風景の捉え方の集合意識を「景」とし, その存在と近代以降の変遷の特徴について考察を行ったものである。分析対象として近代以降の東京の名所図会・百景を取り上げた。その結果, 作品間に共通した風景の捉え方, つまり「景」の存在することを確認できた。その変遷は (1) 明治前期 (明治20年代まで),(2) 明治後期・大正期,(3) 昭和戦前期,(4) 昭和戦後期の4期に区分された。変遷の特徴の流れは, 対象選択における価値基準の共有から個人の嗜好への「個人化」と, 対象の捉え方における観念的捉え方から, 客体として視覚優位の捉え方へそしてさらに活動場所自体を風景とする捉え方へと変化する「場所化」の二点にまとめられた。
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