ランドスケープ研究
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58 巻, 5 号
選択された号の論文の70件中51~70を表示しています
  • 香川 隆英, 田中 伸彦
    1994 年 58 巻 5 号 p. 201-204
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    我が国における森林の風致施策は, 明治6年の「官林調査仮条令」において, 社寺林を風致林として保護するところから始まる。その後, 今日までの120年の間に様々な歴史・変遷の過程を経ながら, 森林の風致施策は展開してきた。その風致施策の2本の柱は, 保安林制度の中での施策と, 国有林におけるレクリエーションの森を代表とする施策である。本論では, 保安林制度における, 風致保安林と保健保安林について, 保安林制度及び森林風致施策の歴史の中での位置づけを明らかにする。
  • 手嶋 潤一, 堀 繁
    1994 年 58 巻 5 号 p. 205-208
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    日光地域の国立公園集団施設地区計画における栃木県の役割を明らかにするため4集団施設地区に係わる12の計画 (案) を分析した。その結果明らかになった栃木県の役割は, それぞれの計画で相違はあるものの先駆的実践例となる計画や先導的計画の策定, 国の計画を誘導する施設の整備, 国の計画作業の代行・国との共同作業や国の計画への地元理解の促進など, 集団施設地区計画策定を促進した事である。
  • 多田 充, 金 恩一, 藤井 英二郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 209-212
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    山容および表面の被覆の異なる山岳景観が人間に与える生理・心理的影響について比較するため, 樹木に覆われた山と急峻な谷川岳一ノ倉沢を対象に実験的に検討した。現地で被験者から脳波, 自律神経機能を測定し, 同時にアンケ-トを行った。その結果, 山では一ノ倉沢に比べて安全感と快適感が低かった。脳波のα波発生量は山では一ノ倉沢に比べて前頭部中央において相対的に高く, 脳の同部位の活動が異なることが示唆された。両対象は言語を介した評価, 感情のみならず, 身体的な反応にも異なる影響を与えていると考えられる。また性によって山岳景観の評価, 脳波や自律神経の反応が異なり, 男性はより分析的に, 女性はより感情的に捉えていた。
  • 小林 昭裕, 愛甲 哲也
    1994 年 58 巻 5 号 p. 213-216
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大雪山国立公園の登山者を対象に, 来訪動機や, 登山行程に含まれる区域に対する期待と, 登山経路の選択との関連性を検討した。その結果, 来訪動機に示される欲求の種類によっては, 登山経路の選択に影響した。類似した登山経路では, 登山者が抱く欲求と期待の内容が対応した。各区域に対する期待は, 登山経路が違う登山者間で異なった。また, 類似した登山経路を選択した登山者においても, 登山行程に含まれる区域毎の期待が異なった。自然性が高く利用者が少ないと想定される区域に, 欲求の充足を期待する傾向が強かった。登山者は登山経路の選択にあたり, 欲求を充足するにふさわしい場所と, その場所へ到達できる可能性を考慮すると考えられた。
  • 下村 泰彦, 増田 昇, 安部 大就, 山本 聡, 鈴木 康介
    1994 年 58 巻 5 号 p. 217-220
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では、街区公園を対象に、居住者から公園までの距離、近隣住区内の生活行動パターン、公園の内部状況と、街区公園の利用実態や公園の選択理由との相互関係を探った。その結果、居住者が街区公園を利用する際、最も近い公園を最もよく利用するとは限らないことが明らかとなった。これは、立ち寄りやすさや心理面での近さ等のアクセス面と公園の緑環境や施設整備水準等の内部状況が大きく影響するためである。従って、公園へのアクセス性の向上を図る日常生活動線上への公園配置や公園の整備水準向上を図る質的整備が利用圏域を拡大し利用率を高め、さらに、街区公園に対する愛着を高めることが公園利用率の向上に効果的であるといえる。
  • 包清 博之, 杉本 正美
    1994 年 58 巻 5 号 p. 221-224
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    我々の生活環境には, 公園や神社林をはじめ様々な非建蔽地のオープンスペースがある。しかし, 建蔽地であっても, 商業施設にみられるアトリウム広場の如く, 人々に解放されたオープンスペース的な機能を果たしている空間がある。このような空間は地域の生活環境の質を高める重要な要素の一つであると考えられる。そこで本研究では, これらのオープンスペース及び関連空間の発見と確保およびこれらの系統化の重要性に着目し, 人々の生活環境の質の向上を図るための基礎的な条件の設定を目的とした。具体的には, 系統化に必要な地域特性の類型化およびその特性と地域住民の嗜好するオープンスペース及び関連空間との関連性について検討した。
  • 竹内 智子, 石川 幹子, 井手 久登
    1994 年 58 巻 5 号 p. 225-228
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    地域制緑地施策が市街地の環境形成に与えた影響を, 東京西郊の石神井・善福寺・井の頭地区を対象に検証した。文献・資料の分析により, 緑地施策の目的・内容の流れと地域制緑地施策の位置付けを把握した。さらに, 石神井・善福寺について3時点の空中写真を用いて緑被率, 土地利用変化の分析を行い, 風致地区, 緑地地域の効果を検証した。その結果,(1) 風致地区は, 主に住宅地内の緑被地, 緑地地域は非建蔽地の確保に効果があったこと,(2) 都市基盤整備と地域制緑地施策が同時期に行われたところで緑被率, 平均敷地規模からみて最も良好な市街地環境が形成されていること, が明らかになった。
  • 宮本 克己
    1994 年 58 巻 5 号 p. 229-232
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東京緑地計画 (1939) に端を発するわが国緑地帯構想は, その後, 防空空地帯, 緑地地域を経て, 首都建設計画, 首都圏整備計画における近郊地帯へとその形を変え受継がれ, 今日まで東京の発展に多大な影響を与え続けている。この間, 経済復興にともなう東京への集中が激化する中, 緑地帯の実現への努力が種々なされるが, 構想に反し地価低廉な緑地帯への分散が進み, 諸施策の進捗状況もおもわしくなく, ついに近郊整備地帯へと衣替えすることとなった。本稿は, 旧くから特に首都圏において議論されてきた緑地帯構想に関し, それを担保すべく諸制度の, 特にその実効性に焦点を当て検討し問題点を指摘したものである。
  • 村上 暁信
    1994 年 58 巻 5 号 p. 233-236
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    エベネザー・ハワ-ド (1850-1928) は, 1898年にTomorrow: A Peaceful Path to Real Reformを著した。その中で田園都市という新しい都市の建設を提案し, その後の都市計画に多大な影響を与えた。ハワードは著書の中ではオープンスペースの重要性をうたっているが, 実際の建設に際してはほとんど言及していない。田園都市論の形成過程を検討することにより, 彼の関心はむしろ人間の技術の統合である都市建設という行為により多くの労苦が取り除かれることと, 協同の原則に基づいた社会をつくりあげることにあったということが考察された。
  • 笹岡 達男, 東海林 克彦, 鳥居 敏男, 橋本 善太郎
    1994 年 58 巻 5 号 p. 237-240
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 都道府県立自然公園が抱える保全上の問題点を明らかにすることを目的に, 国土の自然環境保全の枠組みの中で, 都道府県立自然公園がどのような位置付けにあるか, 条例上の問題は何か, 公園面積, 土地所有状況, 特別地域の指定状況, 公園計画の策定状況はどのようになつているか等につき, 随時国立, 国定公園と比較しながら資料分析, 考察を行った。その結果, 都道府県立自然公園が国土の丘陵地帯の保全に重要な位置にあること, 都道府県立自然公園における特別地域の指定, 公園計画の策定状況が国立, 国定公園に比べ遅れている等の状況が定量的に明らかになった。公園計画の充実, 生態系保護が今後の課題である。
  • 轟 慎一, 中村 攻, 木下 勇, 藤 正三
    1994 年 58 巻 5 号 p. 241-244
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年, 我国の農村地域の自治体で様々な景観施策が展開されている。本研究は, 此等の実態を把握すると共に, その成果や生じてくる課題などを通し, 農村地域の自治体における景観施策の在り方について基礎的知見を得ることを目的とする。そこで第一に農村自治体の景観施策の全体像を明らかにする為, 我国の農村地域の自治体景観行政について施策展開の状況を把握した。第二に, 自治体における景観行政の成果・課題について, 種々の施策の実施の観点から検討した。結果, 住民運動的な施策, 公共事業に係る施策, 計画的な施策等, 自治体の景観施策は幾つかに群化された。そして種々の群はそれぞれ異なる形で, 展開状況, 成果, 課題等に特徴を示した。
  • 丙 京禄
    1994 年 58 巻 5 号 p. 245-248
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 千葉県内の環境条件の異なる3つの小学校の5年生児童とその保護者を対象としたアンケート調査を通じて, 過去と現在の児童の自然体験の変化と地域特性との関連について考察することを目的に実施した。その結果, 過去 (約30年前) の児童の多くが, 農村的な自然空間で自然を活用した多様な遊びを行なっていたのに対し, 現在の児童の多くは, 都市的自然空間で地域特性 (土地利用, 存在する自然) によっては規定されない単調な道具利用型の遊びが行われている実態が明らかとなった。
  • アリスティムニョ イグナシオ, 吉田 博宣
    1994 年 58 巻 5 号 p. 249-252
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    神戸市西区伊川谷地区は, 過去15年間に急速に開発が進展し, 農村景観と土地利用が大きく変化すると共に, 新旧住民が混在して住民意識が多様化していると予想された。本研究は, この地区を対象に市街化区域と調整区域の住民の景観変化に対する選好を調査分析し, 前回のボゴール市の調査と比較するなかで地域計画への基礎資料を得て, 計画の方向を考察することを目的とした。調査方法では地区の航空写真を住民に示し, 開発や保全の選好を写真上に表示させた。結果として新旧両地区での保護すべき場所についての選好の差が明白になる一方, 共通した要素として伊川谷地区を縦貫する河川環境の保全が求められた。これらの結果を基に伊川谷地区の景観保全計画への提言が試みられた。
  • 山田 宏之
    1994 年 58 巻 5 号 p. 253-256
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論では現在までに実施してきた6都市 (杉並区, 長野市, 幸手市, 栗橋町, 庄和町, 野田市) における気温分布と緑地分布との関連についての総括的な解析を行った。気温分布については市街域での高温, 緑地域での低温が全都市, 全時刻の結果について認められ, 最も気温差の大きかったのは14時であった。これは一般的なヒ-トアイランド特性とは異なるが, 測定方法に起因するものであると考えられた。緑地の気温低減率の比較の結果, 都市規模が大きいほど気温低減率が大きくなる傾向が認められた。そこで, 都市の総人口との関連について解析したところ, 1 4時, 4時については総人口の対数値と気温低減率が直線関係にあることが分かった。
  • 山本 聡, 安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦, 岡本 隆志
    1994 年 58 巻 5 号 p. 257-260
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大阪府堺市の市街化区域内に存在するため池を対象に, ため池の規模, 立地位置, 周辺状況といった存在形態やため池から居住者までの距離と, 近隣居住者が捉えたため池が保有する環境保全機能の評価との相互関係を明らかにすることを目的とした。その結果, 環境保全機能の評価は, ため池の存在形態によって異なっており, 自然供給機能, 景観形成機能, 利用機能では, 水辺周辺に樹林が多く, 水面の眺望性の高い, 自然要素がセット環境として存在するため池で評価が高いことが明らかとなった。評価の高い池では距離が離れても評価が高いまま維持されることや, ため池に対する接触頻度が高いほど, 評価が高いことが明らかとなった。
  • 上甫木 昭春, 池口 仁
    1994 年 58 巻 5 号 p. 261-264
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 神戸三田国際公園都市フラワータウン地区内の保全林を対象としたアンケート調査により, 樹林に対する身近さの認識特性と身近な樹林に対する管理運営への参加意向を, 利用程度の相違に着目して検討した。その結果, 林内の利用経験のないグループでは敷地特性が, 林内の利用経験のあるグループでは地形特性, 林内状況等が, それぞれ身近さの認識傾向に影響していることが分かった。また, 残存樹林内の利用程度が高い程, 残存樹林の管理運営への参加意向が高くなる傾向にあり, 住民参加型の樹林の整備・管理の可能性が示唆された。さらに, 既往研究の結果も加えて, 樹林の計画・整備段階における課題を整理した。
  • 長友 大幸, 丸田 頼一, 近江 慶光, 柳井 重人, 松原 秀也
    1994 年 58 巻 5 号 p. 265-268
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市における巨樹の保護のあり方を検討することを目的に, 個人所有の巨樹を取り上げ, 研究を行った。調査地は, 東京都区部にあり, 住居系の土地利用が多く, 個人所有の巨樹が残存する民有地数が多いということから, 世田谷, 杉並, 練馬および板橋区を選定した。巨樹の所有者にアンケートにより, その意識を調べた結果, 所有者は落葉による季節感や木陰を巨樹の利点としてとらえ, 先祖代々受け継がれてきた地域の共有財産として保護していきたいと考えていた。しかし, 落葉の処理および枝の剪定などの維持管理上の負担が問題点となっており, これらの問題点に対する実際的な労力の提供を, 区が積極的に行っていく必要があるものと考えられた。
  • 近江 慶光, 島田 正文, 丸田 頼一
    1994 年 58 巻 5 号 p. 269-272
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    緑多く潤いのある良好な居住環境の保全方策を検討するための基礎資料を得ることを目的として, 藤沢市鵠沼地区において, 空中写真と都市計画基本図を基に, 昭和20年代以降の緑被の変遷と高木の残存状況, 各住宅敷地の変化について調査し, 高木や緑被が保全されるための敷地条件について考察した。敷地の細分化が進み, 地域の緑被が著しく減少していく状況が把握された。高木が残存している住宅は, 昭和20年以来敷地の変更がないものが多くを占めていた。以上, 把握されたことを基に, 緑被, 特に高木のような貴重な緑の保全方策に関して検討をした結果, 300m2程度の敷地面積があれば敷地が細分化されても高木残存の可能性があることがわかった。
  • 柳井 重人, 保田 圭一, 丸田 頼一
    1994 年 58 巻 5 号 p. 273-276
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 住宅地における生垣等の囲障分布の実態と囲障に係わる住民意識との関連性等を明らかにし, 生垣化推進に際しての問題点や課題を探ることを目的とした。調査対象地区は東京都大田区内の住宅地とし, 現地踏査による囲障分布実態調査およびアンケートによる住民意識調査を行った。その結果, 生垣の出現率は人口密度等の地域特性の相違によって異なること, ごく身近な接道部の緑の量は, 住民の身近な緑の多少感や満足感に影響を及ぼし, それには生垣の存在が深く係わっていること等が把握された。さらに, 生垣の所有者は, 街並みとの調和等の美観の面での効果を生垣の利点として評価する一方, 剪定等の維持管理を負担に感じていること等が把握された。
  • 山口 徹, 屋代 雅充
    1994 年 58 巻 5 号 p. 277-280
    発行日: 1995/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    商業系と業務系の建築物ファサードおよび前面空間は都市景観を構成する重要な要素と考えられる。そこで, これらの要素の中の何が景観評価を左右しているかを客観的に明らかにするために, 合成写真を含むスライド映写画像による被験者評価実験を行った。実験では, 予備実験により絞り込んだ複数の評価項目を用意した。そして評価項目ごとに被験者回答の傾向を分析し, 次いで評価平均値について, 重回帰分析と数量化理論1類分析を適用し, 景観を構成する建築部位である, 緑や花, 開口部, 壁面, 看板, 放置物が各評価項目に特に影響を与えていることを明らかにした。
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