ランドスケープ研究
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63 巻 , 5 号
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  • 林 まゆみ
    1999 年 63 巻 5 号 p. 353-356
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    中世後期, 室町時代を中心として北野社関連史料を調査し, 当時の造園土木職能の形成を分析した. その結果, 造園土木職能は臓れを清めたり, 道路の清掃, 井戸の水替え等の清め的機能と築地等土木的職能や植栽伐木, 運搬樹木の検分, 勢定や造庭に関する見識等の技術を混在させながら発展を遂げたことが検証された. それらの職能に従事した階層は散所や河原者を中心として百姓, 神人なども含んでいた. 階層に応じて異なったが, 河原者には独自の技術と高賃金等が見られた. 中世後期の権門に対する従属の重複性もこれらの職能の発展に寄与したと考えられる. 造園土木職能は階層や職能形態の多様性と従属の重複性がその発展を促進したと言える.
  • 飛田 範夫
    1999 年 63 巻 5 号 p. 357-360
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸時代の大坂の植木屋の中で, 高津の吉助は江戸の植木屋と並ぶほど大規模なもので, 天満天神と下寺町と北野寺町は社寺の参拝客を対象にしたものだった。新町は遊廓の中で季節的に店を出し, 道頓堀や難波新地の植木屋は遊興の客を相手にしていた。人が集まる場所であることと植木を仮植できる土地があることが, 植木屋が店を設ける条件になっていたと言える。せり市を開催して全国各地に出荷したり, 株仲間を形成したことも繁栄した理由だろう。供花や生け花用の草花は, 南御堂前や天満天神周辺などのような人が多く集まる場所で販売されていた。玉造が草花の生産地になっていたのは, 鮮度を保つ上で大坂近郊であることが必要だったからだろう。
  • 小野 佐和子
    1999 年 63 巻 5 号 p. 361-366
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大和郡山藩主柳沢信鴻が致仕の後記した『宴遊日記』をもとに, 安永・天明期の六義園での庭見物の様相を明らかにする。六義園では, 家臣とその家族奉公人とその親族信鴻と交友関係にある者, さらには信鴻と直接関係のない部外者の庭見物が認められる。部外者は, 藩の関係者を仲介に庭を見物し, その数は, 安永9年 (1780) 以降著しく増加する。その理由としては信鴻が菊花壇を設けて見物を誘ったことと, 当時の郊外の遊覧の盛況が考えられる。様々な人が見物に訪れる庭は.外部に閉じた構造をもつ大名屋敷が, 外部の人々を導きいれ, 外部社会と交わる装置の役割を果たしたと考えられる。
  • 平澤 毅
    1999 年 63 巻 5 号 p. 367-370
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    15世紀末の「廻国雑記」は, 多くの和歌・俳譜歌・漢詩・連句などによって綴られた紀行文である. そのなかには多くの地名がみられ, 古代・中古以来〈歌枕〉として知られる土地に限らず, 従来の文学とは無縁の地に関する記述を多く含む. その記述の姿勢には, 古くからの情報に捕らわれず, 俳譜性に基づいて, その土地の由緒を里人に尋ねたり, みずからの直接的感懐を述べるなど,〈歌枕〉的な名所観からの脱却のきざしがみられる. 本稿では,「廻国雑記」の記述に見られる名所・風景に関する観念のあり方に注目して, その特性に関する考察をおこない, 中古・中世の紀行文から近世の名所案内記への流れを検討する上で重要な作品であるとした.
  • 青木 陽二
    1999 年 63 巻 5 号 p. 371-374
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    人類の歴史と個人の成長の中で自然風景の評価がどのように変わったかを探った。絵画史では風景画の成立はかなり遅く, 今のような評価になるまでに, 長い時間がかかったことが分かった。また人によって自然の風景が思い出に残る年令が異なることが分かった。そして半数の人が風景を思い出して描けるのは15歳頃であることが分かった。現在の風景評価は歴史時代からも, 個人の成長から見ても長い景観体験によって出来上がった概念である。
  • 劉 東啓, 油井 正昭
    1999 年 63 巻 5 号 p. 375-378
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    台湾最初の国立公園の成立は, 第二次世界大戦以前の日本統治時代であった。本論文は,(1) 第二次世界大戦以前における台湾の国立公園の成立経緯について, 公園成立の沿革を明確にした。(2) 台湾国立公園の選定経緯を明らかにした。(3) 国立公園成立に対する主張について, 台湾総督府, 本多静六, 田村剛の三者の考え方とその主張を考察した。
  • 東海林 克彦
    1999 年 63 巻 5 号 p. 379-384
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論では, 我が国の鳥獣保護及び狩猟制度における鳥獣保護の考え方とその変遷について考究するため, 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律等に見られる鳥獣保護の目的, 対象及び手段等の変遷についての調査・分析を実施した。
    調査方法は, 法令, 法律改正時の国会審議資料, 審議会答申, 関連通達等の資料調査によった。その結果, 狩猟の規制から鳥獣保護の強化の方向へと法改正が重ねられてきたこと, 鳥獣保護の当初の目的・役割は, 農林業上の益性重視から生物多様性重視へと転換してきたこと, 鳥獣保護の対象は種や個体だけでなく地域個体群も含むものになってきたこと等が明らかにされた。
  • 赤坂 信
    1999 年 63 巻 5 号 p. 385-388
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    井下清の史蹟名勝天然記念物の保存事業に関する考えを, 昭和2年と7年の論文を中心に考察し, 井下自身に影響を与えた長岡安平ら一世代前の保存論議から井下の批判点と発言の意味を明らかにする。保存事業が保存が済めば, 注意札を立てて終わりという保存物件の維持運営に関する意識の低さを根底から批判している。保存物件は学者にとっては研究対象, 実業家にとっては経済的な対象にすぎず, そこには保存維持の論拠がみえてこない。井下は明治以来の公園事業が一定の保存事業を遂行したことを明らかにし, 自らも実践する。
  • 沈 悦, 下村 彰男, 竹田 直樹
    1999 年 63 巻 5 号 p. 389-392
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 中国明・清時代における平地作庭の「石組」に着目し, その造景手法について考察することを目的とした。研究の方法は関連する歴史文献実測図等により, 石組の発達史を踏まえながら, 図面データ及び現地調査による定量分析を行った。その結果, 中国明・清時代における石組の特徴を明らかにするとともに造景手法との関係についても明らかにした。特に石組における配石構成の特置及び仮山は, 造景手法に広く関係し, 平地作庭の造景に重要な役割を果たしていることがわかった。
  • 張 美娥, 藤井 英二郎, 李 相都
    1999 年 63 巻 5 号 p. 393-398
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 昌徳宮の後苑に位置する朝鮮時代の上流住宅である演慶堂を対象にし, 庭園と建築の関係について検討した。演慶堂内の主な建物である舎廊棟・内棟, 善香斎は各々尾根の流れを背後に受け止める形で配置されている。それ以外の付属的建物は舎廊棟・内棟の平側・妻側からなる建築線に従う形で配置されていることがわかる。また, 庭園を区切る塀は, 舎廊棟・内棟と, 善香斎がなす建築線に従っている。これらのことにより, 庭園は大きく二つの軸をもつ構成になっていることがわかる。それぞれの庭園は, 建物の内部空間の性格を反映し, 段を設けて立面的にも明確な区切りがなされている。このように庭園と建物は密接な関係をもち, それが固定される特徴がある。
  • 章 俊華
    1999 年 63 巻 5 号 p. 399-402
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 中国庭園における「屋宇」による皇家庭園と私家庭園の空間構成の特徴とその隣接状況の比較について, 明らかにすることを目的とした。その結果, 皇家庭園では豪壮華麗, 雄大な自然風景の再現, 強調, 対比などの空間構成に対して, 私家庭園では借景, 対景, また狭い空間に, いかに雄大な風景を作り出すかといった空間構成の特徴が見られた。また, 皇家庭園には門, 殿, 閣などの「屋宇」との隣接パターンが良く使われている。逆に, 私家庭園の場には, 亭, 廊, 館, 軒などの「屋宇」の隣接パターンが非常に豊富であることから, 隣接状況と空間構成の特徴との係わりがわかった。
  • 宮前 保子
    1999 年 63 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    コテッジガーデンは, 風景式庭園の衰退と共に新しい庭園様式としてブルジョワ階層に受け入れられた。この新しいコテッジガーデンの基盤となる自然観について, 庭園デザイナーであるガートルード・ジーキルの著書等をもとに考察した。その結果ジーキルは自然美に学び, 自然と人間との伝統的な関わりを重視し, 庭園における植物, 特にイギリス自生植物を尊重した庭園をつくりあげるべきであることを主張した。その背景にはガーデンジャーナリストの自然観や共同デザイナーである建築家の意匠が影響を与えているが, ジーキルの自然観は今日の自然保全思想にも受け継がれている。
  • 平岡 直樹, 佐々木 邦博, 伊藤 精晤
    1999 年 63 巻 5 号 p. 409-412
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    第一次世界大戦後のベルギーにおいて, 造園家のヴァン・デル・スワールメンは当時の多くの郊外住宅地建設で採用された田園郊外の計画に重要な役割を果たした。本研究では, 彼が計画に関与した田園郊外と4編の著述を取り上げて分析することにより, 当時の都市整備における田園郊外の位置付けを明らかにすることを目的とする。その結果, ヴァン・デル・スワールメンは, 田園郊外を都市および地方計画の重要な構成要素として位置づけていたこと, 建築デザイン, 街区構成, 都市および地方計画をベルギーでは初めて段階的に序列だてて全体を構想していたことが明らかになった。
  • 村上 修一
    1999 年 63 巻 5 号 p. 413-418
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    米国ランドスケープのモダニズムを成したデザイナーと所産の空間に対する近代芸術の影響を解明すべく, 仮説を設定した。解明の端緒として, 既往議論を仮説各項にしたがって分析・考察し, 既往の成果として実証された事実, および未解明の事項を明確化した。また, 調査の過程や結果で生じた仮説からの逸脱をもって, 仮説修正の方向性を明らかにした。
  • 永橋 為介
    1999 年 63 巻 5 号 p. 419-422
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    1920年代の大阪市において,「無宿者」は失業という社会構造に起因すると認識されつつも, 治安対策そして社会的弊害流布の原因という観点から問題視され,「無宿者」の調査分析や収容保護事業方針においては, 労働意志の有無という労働規律からの監視・疑念が常に向けられていた。当時の公園との関わりから言えば, 警察による公園からの「無宿者」排除という施策では対応しきれず, また, 公園内の「無宿者」が完全に排除されていたわけではなく, 好むとこのまざるとに関わらず, 公園が社会的「緊急避難」場所として機能していたことがわかる。ただし, 同じように野宿していても, 行政及び専門家によって労働意欲があるとみなされる者だけが公園内での野宿を公に認められ, それ以外の人は排除されるという側面も一方では有していた。
  • 小野 良平
    1999 年 63 巻 5 号 p. 423-428
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    明治22年の東京市区改正委員会において計画された公園配置計画を対象として, その計画思想を衛生行政の動向と関連させながら分析した。公園配置計画の特色として神田区付近への集中的配置が認められ, これを当時の内務省と東京府などによる神田下水等の衛生環境整備との関連から考察した。委員会での公園計画における衛生論の立場は, 計画全体についてみれば市区改正審査会時に比べて影響力を減じたと思われるが, それは当時の衛生行政が, 明治19年のコレラ大流行を経て, 上下水道の整備や建築規制の実現化という, より基盤的な衛生環境整備に重点を置くようになり, その結果公園の意義に関する認識が審査会時に比べて相対的に低下していたものと考察した。
  • 李 樹華
    1999 年 63 巻 5 号 p. 429-434
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    松類は, 中国において最も重要な庭園植物であると同時に, 最も重要な盆栽植物でもある。本論では数多くの文献資料と絵画及び版画資料を調査し, 中国歴代の松類盆栽を文化史, 技術史から究明したものである。その成果として, 唐代に流行した庭園小松, 宋代に始まった盤松・盆松, 明代に隆盛した天目松盆栽, そして清代に流行した風景式松類盆栽などを中心に考察した結果, 各時代の松類盆栽は, その樹種, 整姿技術, 栽培技術, 鑑賞方法及び庭園・室内の飾り方に関して発展してきたことが明らかにされた。
  • 中尾 裕介
    1999 年 63 巻 5 号 p. 435-438
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東アジア原産のツタ (Parthemcissus tricuspidata) は, 西洋諸国に広く普及し, 西洋の風景の一要素となっている。本稿では, ツタの伝播と普及の経緯を明らかにすることが, 来歴を踏まえた利用並びに観賞を行なう上で, また植物の人為的な移動の実際を認識する上で有意義であるという観点から, その一環として, ドイツへの伝播と普及の初期の経緯を, 当時発行されていた造園・園芸関係雑誌の記事に基づき明らかにしようとした。その結果, ドイツへのツタの伝播は, 19世紀後半にツタが普及したイギリスやアメリカへの伝播とほぼ同時期であったが, 19世紀中には普及が進まず, 20世紀初頭になって, 初めて一般に普及したことが明らかとなった。
  • 飯島 健太郎, 近藤 三雄
    1999 年 63 巻 5 号 p. 439-442
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    臨海地の緑化材料としての可能性を明らかにするためにセダム属数種の耐塩性について検討した° 海水処理による生存日数からタイトゴメが最も耐塩性に富み, マルバマンネングサ, メキシコマンネングサ, ツルマンネングサは早期に枯死した。健全に生育している時よりも水ストレス時の方が耐塩性が増加した。次に塩分濃度とその施用方法の異なる条件下での反応では, 食塩水が土壌に灌注されることによる影響が大きく, 2.5-3.0%濃度ではメキシコマンネングサは枯死, タイトゴメは顕著に生育が抑制され, 根からの塩分の吸収による被害が大きかった。しかし茎葉に散布される場合には影響は少なく, 地上部への塩分に対する抵抗性に富んでいた。
  • 岩崎 寛, 田邉 良忠, 新村 義昭
    1999 年 63 巻 5 号 p. 443-446
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    シダレヤナギを用い, 異なる水ストレス条件下 (乾燥ストレス下) において, さし穂の条件を変え, 活着に及ぼすそれらの影響を調べた。さし穂は根系を観察するためにフラスコを用いた水挿しをおこない, ポリエチレングリコールを加えて乾燥ストレスを与えた。さし穂は葉数を調整した。その結果, 対照区では葉数の違いにより根系の発達速度が異なり, 葉が多いほど有利な結果が得られたが, 強度の水ストレスを与えた場合, さし穂に葉が多いと葉からの蒸散により根系および新芽の発達が阻害された。よって水ストレス下ではさし穂の葉量が少ない個体の方がさし穂の活着に対して有利であることがわかった。
  • 養父 志乃夫, 山田 宏之, 中島 敦司, 中尾 史郎, 松本 勝正
    1999 年 63 巻 5 号 p. 447-450
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    従来から行われてきている草本種子を用いた法面緑化工法ではない, 自然の表土と, それに含まれる埋土種子を利用する緑化工法に関する研究のため, 香川県内において試験施工を行った。樹林内の表土を尾根部, 中腹部, 谷部の3箇所から1997年3月と6月に採取し, 土嚢袋に詰めたて勾配32度の南西斜面に設置し, 追跡調査を実施した。施工後2年目の段階で, 土壌採取場所の違いによリ異なる植生が成立した。いずれの区においてもアカメガシワ, ヌルデ等の先駆性の植物が優先的に成立したが, 尾根部から採取した土壌区では特にススキが密生し, 最大の被覆量を占めた。ススキも含め, 植物被覆量の多い区ほど土壌流亡が少ないことも明らかになった。
  • 呉 炎, 藤井 英二郎, 三島 孔明, 中山 敬一
    1999 年 63 巻 5 号 p. 451-456
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    キンモクセイの根系を1/4切除し, 16ケ月後の地上部の乾重や根元径, 樹高及び再生根と非切除部の根の乾重形態, TTC還元量を測定した。その結果, 地上部成長量は大きいコンテナで大きかった。太根の乾重は大きいコンテナで大きく, 生育期間の経過とともにその傾向が顕著であった。外部形態については, 小さいコンテナの方で分岐が密であり, 太根が細く, 新生根が少なかった。そして, これらの違いは, 再生根よりも非切除根で顕著であった。細根の内部形態については, 非切除根の方で横断面の直径がより小さく, 若い段階の木部が少ない傾向が見られた。TTC還元量は, 小さなコンテナの方で, また非切除根の方でより低い傾向が見られた。
  • 高橋 輝昌, 長沼 多恵子, 浅野 義人, 小林 達明
    1999 年 63 巻 5 号 p. 457-460
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    中低木植栽を通過した降雨が土壌へのイオン供給に及ぼす影響を明らかにするために, 降雨の樹冠通過に伴う水量と水質の変化を1998年5月から10月にかけて調査した。多くの場合, 降雨は樹冠によって40%以上遮断された。樹冠通過雨のpHは林外雨よりも高かった。降雨のイオン濃度は植栽の樹高が高いほど上昇し, 降雨量が多いと低下する傾向にあった。H+, アルカリ度, 無機態窒素を除くイオン濃度は樹冠通過によって上昇した。降雨によるK+, Ca2+, Mg2+, Cl-供給量は植栽によって2~5倍に増加した。ほとんどの場合, これらのイオンの70%以上が植物からの溶脱に由来していた。一部の植栽では無機態窒素とSO42- の葉面吸収の可能性が考えられた。
  • 日笠 睦, 山崎 亙
    1999 年 63 巻 5 号 p. 461-464
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年, 法面緑化には周辺生態系や景観との調和が求められているが, 事業全体における包括的な緑化計画を検討した例は少ない。そこで広島県温井ダムにおいて多数生じた大規模法面に対し, 効率的で効果的な緑化のためのゾーニング計画を策定した。まず法面の緑化優先順位を決定するため, 地形から計算した各法面の可視領域図と土地利用図を重ね合わせることで, 実際に人の目に触れやすい法面を順位付けした。次に植生図を用いて, 周辺域の代表的な群落の空間分布を把握し, 法面の目標植生を決定した。更に周辺域の植生調査から緑化樹種候補6種の生育方位, 傾斜の傾向を解析し, それらと各法面の地形や配置を考慮して法面のゾーニングを行った。
  • 山瀬 敬太郎
    1999 年 63 巻 5 号 p. 465-468
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    松枯れ激害地で優占している樹種の萌芽再生の特徴と, 伐採強度が萌芽再生に与える影響を把握するために, 伐採強度の異なる3区を設定し, 優占種の萌芽再生力を比較した。その結果, ソヨゴやネジキの高木種が優占しているのは, これらの萌芽再生力が伐採時の樹齢20-30年で最大になり, かつてのアカマツ林の伐採周期とほぼ一致していたためであること, ピサカキやコバノミツバツツジの低木種が多くみられるのは, 萌芽再生力が樹齢に関係なく一定であり, 一定の再生力によって安定した更新が行われているためであることが推察された。また, 皆伐区では, 強度伐採区や弱度伐採区と比較して, ソヨゴやネジキの優占度が相対的に高まる可能性が示唆された。
  • 中村 敬, 重松 敏則
    1999 年 63 巻 5 号 p. 469-472
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    西日本の平地及び低山地では, 自然遷移により常緑広葉樹林化が進行し, 薪炭林として管理されていた当時の名残をとどめる落葉広葉樹が被圧され, 次第にその勢力を失いつつある。本研究は季節景観や種の多様性の見地から, 落葉広葉樹の価値に注目し, 福岡市の鴻巣山緑地保全地区を対象に, その実状を把握するとともに, 特に, ヤマザクラについてその着花状況, 枝張り等と隣接樹木の被圧の影響について分析したものである。その結果, ヤマザクラはツブラジイ, タブ等の常緑広葉樹に被圧されて次第に枝張りを狭め, 着花率の低下のみならず, 立ち枯れも進行していることが明らかとなり, その保全のためには周辺木の早急な除伐が必要と考察された。
  • 山戸 美智子, 服部 保
    1999 年 63 巻 5 号 p. 473-476
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東お多福山草原の現状および維持・管理手法を明らかにするために調査・研究を行った。かつて広い面積を有していた本草原は植林, 遷移の進行, ゴルフ場開発によって88%も縮小し, 植生景観等に大きな変化が認められた。残された草原は種組成によって3つの植生タイプ (典型組成群トダシバ下位組成群, 典型下位組成群) に区分され, それらは管理条件に対応していた。管理の行われていない典型組成群はネザサが完全に優占し, 最も種多様性が低い。また, 2, 3年に1回の刈り取りおよび刈り草の除去が行われ, 種多様性の高いトダシバ下位組成群にも, 草原としての相観や種多様性維持等に問題が認められたため, より適切な管理手法を提案した。
  • 服部 保, 田村 和也, 小舘 誓治
    1999 年 63 巻 5 号 p. 477-480
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧種フジバカマ保全のための基礎資料として,全国分布を調べるとともに生育環境を把握する目的で植生調査および土壌調査を行った。フジバカマは河川水辺の国勢調査の結果などによると15河川に分布していた。植物社会学的手法に基づいて実施した植生調査で得られた資料をもとに群落区分を行った結果,フジバカマは河川内のヤナギ林,オギ草原,低水路沿いの雑草群落など増水時に撹乱を受ける群落によく出現していた。また,土壌調査の結果,フジバカマの地下茎が発達する層は砂土から微砂質壌土であった。フジバカマが減少した理由として,河川改修により主要生育地である増水による撹乱を受けやすい立地が改変されたためと考えられた。
  • 山崎 寛, 青木 京子, 服部 保, 武田 義明
    1999 年 63 巻 5 号 p. 481-484
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    里山の高林化と種多様性の増加を目指して, アカマツやコナラなどの高木優占種を残し。照葉低木類, ササ類の伐採等の植生管理を行った。植生調査は, 兵庫県の里山林整備事業地9ケ所に定置調査区12区を設置し, 管理前から管理後最長3年目までの追跡調査を行った。その結果, 管理前後の植生を比較すると, 管理後種数の明瞭な増加が認められた。特に, 日本海側のアカマツーユキグニミツバツツジ群集とコナラーオクチョウジザクラ群集で著しい種数の増加が見られた。また, 植生管理後増加した種は, 里山の主要構成種であるブナクラスの種が中心であった。したがって, このような植生管理手法は, 里山の種多様性を維持・増加させるのに有効であると考えられた。
  • 有田 ゆり子, 小林 達明
    1999 年 63 巻 5 号 p. 485-490
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年変化が著しい里山「谷津田」の保全に関する基礎的研究として, 千葉市内の谷津の伝統的水田, 谷津の整備水田, および平野部の整備水田で土地利用図の作成, 水田, 畦と水路際の植生調査水田と畦の土壌水分測定を行った。谷津の伝統的水田の多くは耕作放棄され, 草地となっていた。土壌水分, 単位面積当たりの種数や多年草と水湿植物の種数は谷津, 特に伝統的水田で多かった。希少種は谷津で多く確認された。水路際の種数は整備水田におけるコンクリート水路より伝統的水田における土水路で著しく多かった。谷津田は平野の水田に比べ種多様性が高いことがわかり, その特異的環境を保っている斜面林との一体的な景観保全の必要性が指摘された。
  • 関岡 裕明, 下田 路子, 中本 学, 水澤 智, 森本 幸裕
    1999 年 63 巻 5 号 p. 491-494
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 中池見 (福井県敦賀市) の耕作放棄水田において, デンジソウ.ミズアオイ等の希少な水生植物および湿生植物を本来の生育状態で保全する手法を確立するための研究をおこなった。上記の種は, かつて, 耕地整備がおこなわれる以前の水田や水路などに広く生育する普通種であったため、保全事例が少なかった。そこで, 本研究では上記の種の保全に有効な手法を確立することを目的として保全計画を立案・実施し, モニタリングをおこなった。
    本研究により, 上記の種の保全には, 田起こしや水管理・草刈りなど, 生育地における従来の営農作業に準じた維持管理作業の実施が有効であることが明らかになった。
  • 大澤 啓志, 勝野 武彦
    1999 年 63 巻 5 号 p. 495-500
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市域におけるカエル類の保全を検討するため, 多摩丘陵南部においてシュレーゲルアオガエルの鳴き声による個体数把握を行い, 各生息地の環境条件との関係を調べた。生息地点は全域で77地点であり, そのうち30個体以上の計数個体数が得られたのは10地点のみであった。水田タイプ毎の個体数密度は過湿田>湿田>乾田の順であり, 都市緑地における過湿田・湿田の重要性が示された。また, 分散能を考慮した地域個体群としての評価を加えることにより, 多くの地点が不安定な状態の個体群であることが示された。得られた結果を基に, 本種の生息に必要な整備・管理指針および丘陵全体でのメタ個体群の保全について考察を加えた。
  • ジョロゲ ジョンボスコ, 福井 亘, 森本 幸裕
    1999 年 63 巻 5 号 p. 501-504
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大規模な土地造成のうえ, 建設された公園である万国博記念公園の内外において, 夏季鳥類群集におよぼす土地条件の影響を調査し, 比較検討した。ARC/INFO, GISを用いて, すべての土地被覆タイプを作図し, 調査地点周辺の土地モザイクを示すために, 様々な幅のバッファーレイヤーを作成した。β多様度は公園の内外で有意に異なっていたが, α 多様度に有意差は認められなかった。ジャックナイフ法により推定した種数は, 公園の外より内部で高かった。CCAオーディネーションの結果, エナガ (Aegithalos caudatus) のような種はより自然な場所を好むことが明らかになった。落葉樹林と混合樹林は, 森林性の種に寄与し, オープンな場所や芝生にはいわゆる都市鳥が優占した。調査場所間の鳥相の違いは, 撹乱程度と種特異的な微小生息場所要求の得やすさに帰せられた。急速な都市化と隣接地域における森林の断片化を考えると, 万博公園の人工的植物群集の価値は重要である。生態的に劣悪な場所において必要な自然復元手段を提供することによって, 鳥の種数は非常に増加させられるだろう。そのような情報は都市公園管理者に管理を再評価する手段を与えるもの
  • 森田 健吾, 葉山 嘉一
    1999 年 63 巻 5 号 p. 505-508
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市近郊における樹林地での管理手法が求められている現在, 樹林の生息空間構造の関係を把握することは重要である。本研究は丘陵地の公園において, 樹林構造の相違による鳥相の変化を把握し, 管理計画策定のための基礎資料を得ることを目的とした。調査は神奈川県立七沢森林公園で異なるタイプの樹林12ケ所を対象に, 繁殖期の4月から6月に鳥類と植生の調査を行い検討した。その結果, 個々の種によって選好する環境が異なり, 樹林タイプごとに鳥類の種組成が異なること, 草本層の植被率が鳥類の個体数増加や疎林性鳥類の生息に影響を及ぼしていること, 鳥種の多様化に複数の要素が影響する可能性と繁殖期の低木層密度の重要性が示唆された。
  • 中島 敦司, 中尾 史郎, 養父 志乃夫, 山田 宏之
    1999 年 63 巻 5 号 p. 509-514
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    人工島に創出される環境保全緑地の樹林形成状況と昆虫の生息場所としての潜在性を明らかにする目的で, 御坊市の人工島とその周辺において環境保全緑地と自然樹林地の林分, およびそこに生息する主要昆虫類の調査を行った。人工島内の林分では周辺地と比較して生息するシデムシ・ゴミムシなどの甲虫類の種数および個体数が少なかった。しかし, セミ類, 特にクマゼミの成虫および脱殻は多数確認された。人工島内において, クマゼミ成虫は最上層にタブノキおよびホルトノキなどの階層が形成された林分に多かったが, 産卵・羽化場所としてはウバメガシやシャリンバイなどを主体とする階層構造の未発達な林分が利用されていた。
  • 夏原 由博
    1999 年 63 巻 5 号 p. 515-518
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    環境の異なる大阪府内18調査地 (うち8調査地は都市化がすすみ, 二次林を含まない) において, トランセクト法により記録されたチョウ76種の個体数変化を土地利用との関係から解析した。チョウの種組成は樹木面積率の変化に伴って推移し, チョウの種数と個体数は樹木面積率がそれぞれ75%と45%にピークを持つ山型の分布を示した。山型の分布はチョウの食性によってある程度説明できた。樹木面積率に対して林縁長は山型の分布をとり, 林縁植物や草本を餌とするチョウの種数が林縁長と高い相関をもっていた。二次林がなく, 都市緑地のみの調査地に出現したのは27種であったが, 年1化性の種とササを餌とする種は含まれなかった。
  • 中尾 史郎, 中島 敦司, 養父 志乃夫, 山田 宏之, 鈴木 武彦, 小松 正明
    1999 年 63 巻 5 号 p. 519-522
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, ヒメシロチョウ成虫の活動空間の整備に寄与する基礎的な知見を得る目的で, 成虫の個体密度とその時の環境条件との関係性について検討した。その結果, 調査を実施した春季には, 本種成虫は暗い樹林よりも明るく開放的な草地で多く確認され, 特に吸蜜植物が高密度で開花している条件下に集中した。しかし, このような花の多い条件下でも, 微風状態から風が強くなると確認される成虫数が減少した。以上の結果, ヒメシロチョウ成虫の活動空間の整備のためには, 開放的な草地, 高密度の吸蜜植物, 微風環境の3点の同時的な整備が重要であることが明らかとなった。
  • 加藤 和弘
    1999 年 63 巻 5 号 p. 523-526
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    河川における一次生産の多くを担いながら, 河川環境の保全や回復の際にはほとんど省みられない付着珪藻類に注目し, その種組成がどのように変動しているかを検討した。青梅市内の多摩川で調査を行った結果, 珪藻群集の種組成は, 主に水域の形状に対応して変化していた。その背景には, 水の化学性の空間的な不均一性があると推定された。付着基物や水際の植生, 水文学的条件も, 付着珪藻群集に影響を及ほしてはいたが, その程度は小さかった。多様な珪藻群集を維持するためには, 主流路の環境を多様にするだけでは不十分で, 通常は主流路からの流入がない池や, 伏流水の湧出, たまり水など, 自然な川原では普通に見られる多様水域が必要である。
  • 米森 由佳, 倉本 宣
    1999 年 63 巻 5 号 p. 527-530
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    多摩川中流域の河川改修後の低水路護岸3箇所において, 1998年8月の増水によって堆積した土砂と植物遺体に含まれる種子を実生発生法により同定したところ, 6t種の実生が確認され, そのうち28種46%は帰化植物であった。1999年5月と8月に行った群落調査においても出現種の多くが帰化植物であった。
    河川改修時の低水路護岸の緑化は, 人工的に植栽をしなくても増水時の種子供給により可能であるが, 帰化植物の扱いについての十分な検討が必要であることが示唆された。
  • 國友 淳子, 吉川 賢, 森本 幸裕
    1999 年 63 巻 5 号 p. 531-534
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区の毛烏素沙地における持続的な土地利用を検討していくために, 現地の牧農家から放牧に関するアンケート調査を行い, 現在の放牧状況を把握した。また, その結果と衛星画像デー夕 (SPOT/HRV) を組み合わせて, 広域的な放牧圧の推定方法を検討した。その結果, 放牧による土地利用では, 夏と冬で利用する土地類型を換えていること, 夏に2つの湿性草原を交互に利用していることがわかった。衛星画像から作成した現存量画像からは, 放牧頭数からだけでは判断しにくい過放牧の影響を明らかにすることができた。現存量画像と植物生産量との回帰式を画像へ適用することにより, 広域的な放牧負荷率の推定および特定地域の放牧管理に利用できることが示唆された。
  • 立入 郁
    1999 年 63 巻 5 号 p. 535-538
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    天水農業を行うには年降水量で夏雨地域では350mm, 冬雨地域では200mm前後が必要だとされる。本研究の目的は, 天水農地の雨季の降水量と可能蒸発散量の関係を用いて一般的に適用できる農耕の限界水文条件を示すことにある。解析は北アフリカにおける月別降水量, 月別可能蒸発散量 (Penman-Montelth式を使用) および土地被覆に関する既存のデータセットを用いて行った。本研究では, 1年で降水が最も安定となる連続する3ヵ月を雨季と定義し, 解析対象とした。本研究の結果, 夏雨地域・冬雨地域を問わず, 雨季の降水量と可能蒸発散量の比が0.58以上となることが耕作が可能であることの条件として示された。
  • 中村 友治, 野島 義照, 岡田 潤, 柳井 重人, 丸田 頼一
    1999 年 63 巻 5 号 p. 539-542
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年CO2の吸収固定による地球環境保全の観点からも, 市街地の緑化の推進が重要な課題となっている。千葉県松戸市内の戸建住宅地21戸を無作為抽出し, 庭の樹木の状況を調査し, 既存の文献資料を用いて, CO2の総固定量, 年間固定量を推計した。その結果, 1戸当たりの総固定量は平均1,441.2kg (敷地1m2当たり5.6kg), 年間固定量は202.8kg (敷地1m2当たり.0.88kg) であると推計された。この結果を米国イリノイ州シカゴ市および, 韓国江原道春川市での同様の推計事例と比較し, それぞれの事例ごとの特性を抽出し, 今後の住宅の庭におけるCO2固定の可能性, 望ましい方向を考察した。
  • 山田 宏之, 養父 志乃夫, 中島 敦司, 中尾 史郎, 松本 勝正
    1999 年 63 巻 5 号 p. 543-546
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    樹木緑陰内, 水田畦上, アスファルト道路上, 芝生広場上, グラウンド上という, 5種の異なる地表面状態の空間における夏季晴天日の温熱環境について, WBGT指数を用いて暑熱強度の評価を行った。その結果緑陰を除いて最も暑熱強度が低かったのは芝生広場で, 次いでグラウンド, 水田, アスファルト道路という順序になった。水田畦上は気温は低いものの相対湿度が高く, アスファルト道路上と大差が無いほどの暑熱状態にあることが把握された。2ケ月間の調査で, アスファルト道路上よりも水田の方が高温になった割合が25大9%あり, 夏の日中には1/4以上の確率で, アスファルト道路上よりも水田の畦道上の方が暑いという状態になっていた。
  • 本條 毅, 小平 直広, 市村 恒士, 丸田 頼一
    1999 年 63 巻 5 号 p. 547-550
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ヒートアイランドなどの解析に際し, 気温を従属変数, 周囲の土地利用比率などを説明変数として重回帰分析が行われているが, 気温分布と土地構成要素が非線形の関係にある場合, 良い推定結果が得られない問題がある。そこで, 本研究では, ニューラルネットを用いて非線型な回帰分析を行った。ニューラルネットの利点として, 多重共線性の問題がなく。変数選択の作業を行う手間も少なぐ精度良く推定を行える可能性がある。川越市付近の気温観測値データや, 土地構成要素デー夕等を用いて, ニューラルネットと重回帰分析により推定を行い両者の比較を行った。その結果, ニュ-ラルネットを使用する有効性が示された。
  • 大藪 崇司, 増田 拓朗
    1999 年 63 巻 5 号 p. 551-554
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 香川県丸亀市にある丸亀城を研究対象として, 城内修復工事が行われるにつれて具現化した景観問題を取り扱った。城内の樹木を保全するか取り除くかという意見対立に, フォトモンタージュ法を用い16種の景を作成して評価することにより, 被験者が好む景を分析し, 今後の整備方針に役立てようとした。その結果, 城内の樹木の存在は, 被験者に「美しい」「自然的」「調和のとれた」の評価を, 減少は「人工的」「堅い」「乾いた」の評価を与えること, 画面比で3割から4割程度の緑量を確保可能ならば「好き」という評価が期待できること, 被験者が良いと思う画像は着葉期には現況または植栽追加画像であり, 落葉期では植栽追加画像であることが判明した。
  • 藤田 英樹, 川口 摩利夫, 上島 晃嗣, 鈴木 雅和
    1999 年 63 巻 5 号 p. 555-560
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 国営および県営公園として利用が決定している吉野ケ里歴史公園をケ-ススタディとし, 遺跡情報と公園情報の共有化ための手法と具体的構造を考察したものである。これらの情報は取り扱う組織が複数にまたがるため, 一貫した情報管理が難しくなっている。そこで, 発掘情報の公園化における有効利用を目的とした発掘情報データベースの構築を行った。これは, インターネットによる発掘情報の発信者・利用者間の情報共有化を目指したものである。その結果, 発掘現場において得られた遺跡情報を公園計画・管理・運営・展示計画などにおいても利用できる可能性を開いたといえる。データ更新の簡素化とデータ構造の汎用化が今後の課題である。
  • 菅原 淳子, 鈴木 雅和
    1999 年 63 巻 5 号 p. 561-564
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 従来の景観研究において対象とされることのなかった視覚障害者を被験者とし, 彼らの緑地における空間認知の実態についてみた。平成10年7月に予備調査を行い, 同年8月から11月の晴天日を中心に本調査を新宿御苑にて実施した。被験者は, 日常単独で行動できる20代から60代までの先天盲者24名である。調査は経路上の16地点で各空間について評価, 説明してもらった。その結果を周辺状況の建築物及び樹木の認知度SD法による緑地空間の評価としてまとめた。各空間に対する評価はクラスター分析にかけた上で, 視認的空間の類型化と比較分析した。よって本研究から, 視覚障害者の緑地の空間認知についての知見がえられた。
  • 吉田 恵介, 高木 寛子, 矢部 和夫, 浅川 昭一郎
    1999 年 63 巻 5 号 p. 565-568
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    札幌市内に分布する低地と丘陵地の2地区で, アーバンフリンジを事例とした景観評価を行った。レパートリーグリッド発展法の結果.2地区とも「緑の多さ」が好ましい景観の評価項目であった。またSD法の結果を因子分析したところ, 4つの因子軸が抽出され3つが評価軸だった。3つの評価軸は特有の景観構成要素と有意な相関を示した: 快適性軸一低木 (正相関), 開放性軸一山 (正)・荒地 (正)・人工物 (負), 特徴性軸一高木 (正)・住宅 (負)・雑草地 (負)。又, 景観の総合評価である嗜好度に対して, 快適性因子が最も強い影響を持っていた。以上のことから, 景観の総合評価には緑量と低木との相関があることが明らかになった。
  • 西嶋 啓一郎, 仲間 浩一
    1999 年 63 巻 5 号 p. 569-572
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    景観研究にとって, 特定の意味づけが風景イメージとして実景に投影される過程を明らかにすることは, 風景生成の内容を理解する鍵になる。本論では, 歴代の通信使の紀行文と漢詩集をテキストにし, 瀬戸内海靹浦での風景生成を考察した。その結果, 通信使の風景記述方法には, 次のパターン化された図式が確認された。通信使は, 過去の通信使の風景記述を受け継ぎ, 洞庭湖や瀟湘八景の風景イメージを実景に投影するため, 靹浦の空間の実体的な要件を確認した。そして, その認識により主体の内面に特定の意味づけが行われた結果,「日東第-形勝」という風景が生成された。このことにより, 通信使による靹浦での風景の生成と定着が明らかになった。
  • 馬木 知子, 吉村 晶子
    1999 年 63 巻 5 号 p. 573-576
    発行日: 1999/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    風景とは, ある特有の意識の持ち方や身体的な体験の仕方, また両者の絡み合いによって体験者が独自に見いだすものである。これを風景生成と呼ぶことにすると, 廻遊式庭園はそれを積極的に容認し期待する風景生成の装置であったと言える。本研究では, 六義園に見られる風景生成行為を対象に, 風景が生成・更新されるしくみについて分析した。その結果, 風景生成を規定する体験者の「かまえ」について3つの類型を抽出し, また風景生成の類型を, 風景を生成する際に体験者があてはめる風景の「見かた」の編集という観点から整理し類型化した。さらに, 各々の風景生成類型について, 操作手法に言及した。
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