ランドスケープ研究
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64 巻, 5 号
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  • 権 孝姓, 松尾 英輔, 高藤 博之
    2000 年 64 巻 5 号 p. 375-378
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    住宅の門または玄関は住居の'うち'と'そと'を仕切る境界でありながら, 道という公的領域と家という私的領域をつなぐ大切な役割を果たしている。本研究では, 戸建て住宅を対象に, 門または玄関における植物の配置の実態を把握し, 住宅の外についての意識とその変化を探って, 今後の戸建て住宅の外側の計画・設計の基礎的資料を得ることを目的とした。庭がない場合は, 玄関が道路に接していても, 多くの住宅が植物を玄関前に配していたが, 庭がある場合は, 門外にはあまり植物を配していなかった。しかし, 戸建て住宅団地では, 庭があるにもかかわらず, 門外に植物を配する住宅の割合が高かった。また, 戸建て住宅団地のほうが, そうではない住宅地より早く門外に植物の植込み場所を設置しはじめたことがわかった。
  • 中尾 裕介
    2000 年 64 巻 5 号 p. 379-384
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東アジア原産のツタは現在では西洋に広く普及している為, 西洋的なイメージを持つに至り, 日本的なイメージはやや希薄になっている。本稿では, ツタが日本では古来どのように観賞されてきたのかを明らかにすることにより, その来歴に応じた重層的な, 豊かなイメージの形成に資することを目的として, 古典和歌に詠まれたツタが, どの様な視点から観賞されているかを分析した。その結果, 植物自体の特性を観賞する視点, 他の植物と対比して観賞する視点, 植物の繁茂している場に関連した観賞の視点, 特定の土地と関連した観賞の視点という4つの類型について, 観賞の視点を明らかにすることが出来た。
  • 李 樹華, 林 まゆみ
    2000 年 64 巻 5 号 p. 385-390
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    唐代は中国文化・芸術が大発展を遂げた時代であったが, 同時に庭園事業も全盛の時期でもあった。唐の時代は中国庭園史上に極めて重要な位置を占めている。本研究では,「唐詩類苑」,「古今図書集成」草木典など8文献資料を調べ, 唐代における庭園植物や植栽形式について考察を試みたものである。成果としては、当時の庭園に植えられた針葉樹類, 広葉樹類, 花木類, 竹・ヤシ類, 草花類及び果樹類, 薬草類の種類を明らかにした上で, それらの庭園植物の植栽形式と植栽場所も同時に検討し, 更に唐代における中国庭園の伝統的な植栽法の「松竹梅」,「桃紅柳緑」,「玉堂春富貴」及び「梅蘭竹菊」に関しても考察を行った。
  • 亀井 幹夫, 中越 信和
    2000 年 64 巻 5 号 p. 391-396
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    天然記念物制度の指定方針とその変遷を明らかにするため, 植物に関連する国指定天然記念物の指定の実態を分析し, その時間的変遷を以下のように整理した。戦前は, 自然破壊の阻止, 学術資料の保存, 郷土や国家への愛情の向上という3つの意図を持ち, 偏りがあるとはいえ指定対象は多岐にわたっていた。第二次世界大戦での敗戦によるナショナリズム的側面の後退と高度経済成長がもたらした深刻な自然破壊によって, 学術優位が定着すると共に、珍奇なものから代表的一般的なものへと保護すべき対象も変化した。近年, 面的な保護を中心とした指定が進められている。しかし, 他の自然保護施策との関連から, より柔軟な制度改革が必要であろう。
  • 大島 知子
    2000 年 64 巻 5 号 p. 397-402
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 国指定文化財庭園に関する文献を整理し, 基礎資料として具体的な情報を示した。また, これを用いて統計をとり, 国指定文化財庭園の全体像を明らかにした。その結果, 以下のことが分かった。国指定文化財庭園は指定状況から, 実質的には名勝として指定された庭園 (名勝庭園) とみなしてよく, 名勝庭園はこの約80年の間, 例外的な期間を除けば, ほぼ毎年のように指定され続けている。名勝庭園が名勝全体に占める割合は徐々に大きくなってきており, 50%にも達している。名勝庭園は, 管理者が寺院であるものが多く, 地方公共団体のものも相当数ある。名勝庭園の約30%は京都府にあり, 近畿地方に約50%が集中している。
  • 林 まゆみ, 李 樹華
    2000 年 64 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    中世後半にかけて活躍した善阿弥とその周辺の山水河原者に関する再検討を行い造園職能を論じた。従来の論では善阿弥が優れた庭者として重用されたのは彼の卓越した才能と, 卑賎視されたことがばねとなったという精神論に重点が置かれていたが, 本論では『蔭涼軒日録』などの詳細な検討から, 善阿弥の若年期における活躍や, 盆山と枯山水などの関連性を検証しつつ, 善阿弥がこの時代に将軍から重用されたのは, 彼の非凡な才能と共にその背後に控える技能集団の形成に負うところが大であることを様々な事例から考察した。その技能集団とは, 善阿弥を中心とする血縁集団やその配下と考えられる地縁'職能を共有するものであり, 善阿弥が不在の時も, 或いは2代目善阿弥を支えて, 技術的に相応の集団が形成されていた。これらの集団は各権門に固有に従属する形をとりながら, それぞれの技能と地歩を固めていったことが考証された。
  • 古井 有子, 鈴木 誠
    2000 年 64 巻 5 号 p. 409-412
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 平安時代から鎌倉時代にかけて成立した日本庭園の一形式である浄土庭園を対象とし, 空間構成の特徴と時代的変化の考察を目的とした。調査は,(1) 敷地内庭園構成要素のスケールの計測・分析,(2) 敷地外要素, 特に園内から視認できる山について距離・方位・仰角の定量的把握と形態分析を行った。この結果, 敷地内要素の特徴としては, 視点場から池の汀線までの距離が約20~30mであること, 池を見る水平視角が約80度以上であること等6つの特徴が明らかになった。また, 敷地外要素については, 園内から周辺の山頂への平均仰角が約8.5度であること, 時代を経るにつれて伽藍背景となる山との距離が近くなること, 伽藍後方には複数の山による視覚上の谷が見られることが多い等の特徴が明らかになった。
  • 小野 佐和子
    2000 年 64 巻 5 号 p. 413-418
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    柳沢信鴻の『宴遊日記』に記された園内の動物の記事をもとに, 六義園における動物の様態をあきらかにし, 大名庭園の構成要素としての動物について考察した。
    その結果, 庭園が動物にとって多様な生育環境を提供したこと, 昆虫からほ乳類まで種々の動物が園を訪れ, 園内に棲みついていたこと, 園は野生の動物と身近に接する場となったことが明らかになった。さらに, 園の動物は, 自然界の営みを目のあたりにさせる, 園が祝意の空間であることを示す, 超自然の意向を示す, 季節の聴覚的享受といった要素を庭園に付け加え, 庭園空間を豊かにしたことが認められた。
  • 佐々木 邦博, 米林 由美子, 平岡 直樹
    2000 年 64 巻 5 号 p. 419-422
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    長野市松代町は城下町であり, 水道網が発達していた。武家屋敷において庭園の水を隣家から隣家へと流す泉水路が存在し, 現在でも一部ながら残されている。江戸時代における泉水路の形成過程, その範囲, その用途を明らかにするのが本研究の目的である。対象地は上級武家屋敷地であった殿町とした。真田家文書などの水道絵図から分析すると, 次の結論が得られた。中水道が江戸時代中期頃に形成され始め, 後期には泉水路として水系を形成する。殿町にはほとんどの家に泉水路が流れ主に生活用水として, 後期には部分的には養魚池の給水源としても用いられていた。その範囲はおそらく松代城下町全体に及んだのではないかと推測される。
  • 今江 秀史
    2000 年 64 巻 5 号 p. 423-426
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    植栽樹木を主体とした庭園を維持管理する職人は, 管理上意図した庭園の風趣を実現するために固有の用語を用いて集団内での意志疎通を図っている。本研究はこれまで学術的な調査が行われていなかった, 職人の言語と所作・思惟の連鎖関係に関する実態の一部を明らかにした。方法は京都市内を中心に活動する職人4名に対し, 調査者自身の実地体験を踏まえた聞き取り調査を実施し, その結果を参加観察の知見と共に分析・考察した。その結果, かれらは固有する用語の使い分けによって作業内容の認識を機微にし, それが庭園の風趣に関する意図の共有と円滑な作業の遂行に寄与していることがわかった。
  • 飛田 範夫
    2000 年 64 巻 5 号 p. 427-430
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸時代の庭園に使われている庭石の販売経路, 燈籠・蹲鋸などの石造品の製作と販売経路については, 不明な点が多い。大坂について史料を調べてみると, 石材の運搬に便利なように西横堀と長堀, 東横堀 (松屋町筋) の堀割り沿いに, 多くの石屋が分布していたことがわかる。庭石は各地の名石, 石材としては御影石・竜山石・和泉石などが搬入され, 原石あるいは加工品が再び各地に販売されている。高野山などに残存する石造品の刻銘からも, 大坂の石屋の活動を知ることができる。賃金・労働時間・販売などについても問題は多かったが, 既得の権利を守るために明和7年 (1770) には, 石問屋株仲間と切石屋株仲間が形成されている。
  • 宮 江介, 下村 彰男, 小野 良平, 熊谷 洋一
    2000 年 64 巻 5 号 p. 431-434
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は作庭技法の古典である『作庭記』から石組に関する考え方や配石の心得を抽出するとともに, 現代に残されている枯山水様式庭園における石組の配石傾向について定量分析を通して明らかにし, さらにその両者をもとに枯山水様式庭園における石組の配石原則について考察することを目的とした。その結果, 2石石組では, 第2景石は視点から眺めて第1景石の左右, 斜め前に配石することや, 両者が頂点を向け寄り添うように配石することなど, また3石石組では, 第2, 第3景石は第1景石に対してほぼ均等な距離に配石すること, 第2景石の高さは第1景石に, 第3景石の高さは第2景石にもとづき石組みされることなどの原則が考察された。
  • 沈 悦, 下村 彰男, 熊谷 洋一
    2000 年 64 巻 5 号 p. 435-440
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 北京の北海公園瓊華島の「石組」に着目し, その造景の位置づけについて考察することを目的とした。研究の方法は関連する歴史文献等により, 対象地の景観形成史を踏まえながら, 図面データ及び現地調査による定量分析を行った。その結果, 対象地における石組の造景特徴が明らかになった。さらにこれらの造景は中国帝王造園の仙境づくりに深く関係している点がわかった。
  • 井原 縁
    2000 年 64 巻 5 号 p. 441-446
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    現在の「国民公園」京都御苑では, 御苑造成時から共存している「皇室苑地」と「公園的利用の場」という2側面に基づく二律背反的な要素が多数共存しており, この内包する要素の多様性こそが個性といえる。本研究では, まずその個性が形成された京都御苑の歴史的経緯を辿り, その後,「御所透かし」という特殊な技法が, その個性を守っていくうえで非常に重要な要素のひとつであることを考察する。「御所透かし」は,「皇室苑地」という側面に付与される要素であると共に「公園的利用の場」という側面にも寄与する要素であり, 時代を経て継承されてきた重要な文化財的要素であると共に松の手入れという景観構成要素でもあるからである。
  • 内田 仁, 北山 正雄
    2000 年 64 巻 5 号 p. 447-450
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は二條城清流園の成立過程及びその経緯更に地割・植栽の経年変化について考察した。京都市はかねてより城に不釣合いな市民のレクリエーション施設であるテニスコートを撤去し, 国賓・公賓を迎える迎賓施設として, また市民や観光客にも利用できるような新庭園の作庭を検討していた。そのような折テニスコート代替地決定と旧角倉了以邸の敷地内の建物などの無償譲渡の確約が得られたことを機に, 京都市職員が直営で10ケ月の歳月を費やし昭和40年4月清流園を完成させた。清流園は作庭から35年以上経過している現在でも地割・植栽ともほとんど変化なく維持され, 鑑賞要素の一つにとどまらず迎賓・集会的な役割を果たすこととなった。
  • 楊 平安, 平野 侃三
    2000 年 64 巻 5 号 p. 451-456
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は, 高雄市の日本植民地時代における公園緑地計画の展開を明らかにすることを目的とし, 文献及び公文書等の記録の検討並びに新たな資料の発掘により次の事項を明らかにした。
    高雄市の公園緑地計画は,(1). 港湾都市として整備を開始する早い時点で最初に計画された公園が台北市の圓山公園と同じように市街地を展望する地点であること,(2). 1917年には土地利用計画に合わせた公園の配置計画が立てられており, 小学校に隣接した小公園及び河川沿いの緑道が計画されていること,(3). 更に, 大台北市区計画が立てられた同年には, ブールバールで結ばれた同様のパークシステムが計画され, 今日の高雄市の骨格を形成していること。
  • 温井 亨
    2000 年 64 巻 5 号 p. 457-460
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 生活・生業の場としての歴史的風景を保全するための研究の歴史と, その現在の傾向・動向を探ることである。そのために, 主として建築学会, 都市計画学会, 造園学会の学会誌・論文集を創刊号より分析した。その結果, このような研究が現れるのは1980年代からであるが, 大正~ 戦前期の民家研究, 1960年代後半からの町並み保存が前史として重要であることを明らかにした。1980年代以降の研究の傾向・動向では, 1. ここ10年間で論文数が非常に増えたこと, 2. 特に村落を扱った論文が増えていること, 3. 生活・生業を扱ったものが増えたこと, 4.風景保全の施策やその効力を検証する実践的な研究は少ないが, 後者はここ5年に町場で急に増えたことを見出した。
  • 竹田 直樹
    2000 年 64 巻 5 号 p. 461-464
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本報は, 計画的な彫刻設置事業が展開する以前すなわち1950年代の初期的な設置事業を分析の対象とし, それらの事業の目的や性質について調査と分析を実施するものである。結果として, 1950年代の彫刻設置事業は, 戦後の新しい社会的価値観や平和主義あるいは自由主義というような新しいイデオロギーを賛美することを目的とすることが多かったこと, それまでになかった男女の裸像が出現したこと等が明らかになった。したがって, これらの設置事業は戦前の銅像と近年の計画的な彫刻設置事業の双方の性質を合わせ持つということができる。両者の変遷期における中間的な性質もつ設置事業であったと考えられる。
  • 裴 重南, 薜 孝夫
    2000 年 64 巻 5 号 p. 465-468
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 九州地方の景観行政の展開状況を把握し, 各自治体が景観行政の方向性を導く一助とすることを目的とした。調査は九州地方の政令市, 県及び県庁所在地がある自治体を対象に行い, 各自治体が策定している景観条例を収集しその内容と構成を把握した。その後, 各自治体の景観行政担当者に対する面接調査または電話インタビューを行い, 条例に基づいた施策展開として景観形成地区の種類と指定状況や運用について比較した。その結果, 各自治体の景観形成方針と景観条例構成には類似性がみられた。また, 各自治体が景観行政の施策展開を活発に行うためには, 自治体の景観行政担当者の強い意志, 市長や県知事の景観行政の関心度, などに深く関係することが確認できた。
  • 青木 陽二
    2000 年 64 巻 5 号 p. 469-474
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    風景や景観を表題にする著作が近年になって多くなった。これは風景というものに対する興味が人々に現れた結果であると考えられる。明治以降に出版された風景や景観を表題などに含む本について, 風景という現象に対する理解がどのように変遷して来たかについて調べた。その結果最初は人間の外界にある現象だと思われていたが, 次第に人間の心に生ずる特別な現象であることが理解されるようになった。人間の五感を通した大脳の機能による現象であることが指摘されるようになり, これをもたらしている景観体験について, 時間の長さを変えて, また気候や文化などによる影響について明らかにする必要が分かった。
  • 本中 眞, 佐々木 邦博, 麻生 恵
    2000 年 64 巻 5 号 p. 475-478
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    平成11年5月10日に, 長野県更埴市に所在する顕著な棚田 (千枚田) が「姨捨 (田毎の月)」として国の名勝に指定された。本研究では.「姨捨 (田毎の月)」の棚田がもつ文化的価値の分析を行い, それらの保存を目的として行われた名勝指定の在り方について検証することを目的とする。その結果, 姨石を中心とする棚田地域-帯が文化的な価値をもつ景観であり.それらの保全のためには, 地元保存会に見られる就労年齢の高齢化等の問題に対し, 担当部局を越えて対処する必要のあることが明らかとなった。また, この指定の意義は, 農林水産業に関連する文化的景観の価値を広く認識し, それらの総合的な保全の契機となることにあるといえる。
  • 西田 正憲
    2000 年 64 巻 5 号 p. 479-484
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海において, 古代から現代にかけて日本人が海岸景をどのように捉えてきたか, 紀行文等の記述と定数名所・観光地等の選定から, その変遷を考察する。古代は, 海岸を身近な風景として多彩に捉え, 特に潟, 白砂・白浜, 松原の風景を賞賛していた。近世には, 海岸の松を微視的に捉え, 松原, 白砂、砂脂の風景を賞賛し.特に磯馴松と舞子の浜を特化させたが, 全体に海岸景を数多く名所化し, 海岸景に強いまなざしを注いでいた。近代には, アノニマスな海岸景を見出す中、白砂青松と長汀曲浦という類型的風景を固定した。近代以降は, 海岸景へのまなざしを喪失していく過程にあり, 瀬戸内海国立公園の選定も海岸景を相対的に軽視していた。
  • 佐山 浩, 西田 正憲
    2000 年 64 巻 5 号 p. 485-488
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    富士山の戦後の美化清掃活動について, その動きを全国的視野から位置づけるとともに実態等の経緯をたどり, 社会的背景を考察することによって, 富士山の美化清掃活動の変遷の特徴を明らかにする。その結果, 富士山の美化清掃活動は,(1) 東京オリンピックを背景に国土美化の-環として始まり,(2) 交通の発達及び利用者の増大を背景にゴミ問題が深刻化し, 景観問題から生態系問題へ変化しつつ, 広範な市民参加を促した。その後 (3) 世界遺産登録運動等を契機として, 山梨・静岡両県等の連携のもと, 環境保全意識の高まりとともに, 広範な環境保全活動と一体化していったと指摘できる。
  • 宮前 保子
    2000 年 64 巻 5 号 p. 489-492
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年, 都市近郊林の保全・活用に向けた様々な施策が講じられているが, 本稿では大阪府高安山を事例とした都市近郊林利用の変遷などを通じて今後の保全に向けた基礎条件を検討した。その結果, 特異な空間価値がなくとも, 館0館自然環境の多様性が確保されていること, 館 (2) 多様な利用の蓄積がみられること,(3) 都市住民による関わりが継続していること, の諸点が当該近郊林の価値として捉えられ, こうした価値を評価することによって, 地域毎に特徴的な近郊林保全の実効性が高められることが明らかになった。
  • 上原 巌
    2000 年 64 巻 5 号 p. 493-496
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ドイツ国内には, クナイプ療法地という自然保養地が多数存在するが, 本論では, そのクナイプ療法の発祥地であるバイエルン州バート・ウェーリスホーフェン市がどのように保養地として発展したのか, その特徴を明らかにすることを目的とした。調査の結果から, 同市は前身が農村田園地帯であり, 自然保養地としての基盤条件を備えていたこと, 中世にカトリック教会が町の造成基盤をなし, 19世紀中頃に同教会修道院にセバスチャン・クナイプ司祭が赴任して自らのクナイプ療法を同地に伝えたことにより保養客が増加し村の施策転換をもたらしたこと, そしてその後の各施設建設と行政による環境整備が保養地形成を進めてきたことなどが明らかになった。
  • 市川 秀和
    2000 年 64 巻 5 号 p. 497-500
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    明治の欧化政策によって日本庭園の伝統様式は,「洋風」に対する「和風」として相対的に再認識された。明治・大正期の都市公園や上流邸宅庭園の設計には,「洋風」あるいは「和洋折衷」が専ら好まれ, さらに和風の新創造としての「近代和風」が, 近世から継承された高い造園技術に支えられて試みられた。また一方で, 近代化の進む中央都市へ新生活を求めて集まった「一般大衆」の誕生は, 全く斬新なモダンデザインによる住まい (住宅・庭園) の可能性を開かせた。そこでかかる時代状況を反映した田村剛のモダンデザイン思考が, 大正9年発足の生活改善同盟会を発端にして庭園改善運動へと結実していく事態を追跡して再評価を試みる。
  • 村上 修一
    2000 年 64 巻 5 号 p. 501-506
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近代の視覚芸術や建築で筆者の注目する空間成果として, 形態の曖昧性を定義した。この特性が, ジェームズ・ローズ (1913-1991年) の空間で, いかに実現されたのか明らかにすることを目的に, まず著作19点を調査して, 天井・側面・床面で構成される空間単位, 曖昧な形態を創り出す要因を, 彼の空間思考より明らかにした。この空間論にもとづき自邸 (1953年) を分析したところ, 要素の視線透過性や配置具合による同時的曖昧性, 主要動線上での視点移動による曖昧性, 日影変化や作家の改変という時間経過にともなう曖昧性が認められた。分析結果より, 近代の空間成果との共通性, および実現における独自の要因が明らかとなった。
  • 内田 泰三, 田崎 冬記, 丸山 純孝
    2000 年 64 巻 5 号 p. 507-512
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年, ヨシを用いた水域緑化が世界的に注目されている。しかし, これに費やされる労九時間, コスト等の負担は大きく, 今後に求められる課題は多い。そこで本論では.上記負担を解消すべく新たな手法を開発・提唱した。同手法は, 緑化資材として利用頻度の高いヤシ繊維マットに刈取ったヨシ稈を挿入するのみで, ヨシが繁茂する水辺環境を創出するものであった。また, 同手法は現在多用される手法 (ヨシ苗をヤシ繊維マットに植栽するもの) と比較しても緑化性, 施工コスト.労力等の面で良好な成果を上げた。一方で, 同手法には基部直径の細いヨシ稈や乾燥したヨシ稈が適さないことも明らかになった。
  • 薛 孝夫, 裴 重南
    2000 年 64 巻 5 号 p. 513-516
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    公共土木工事で用いられるようになった, 建設発生土を高分子吸収剤と生石灰で粒状化した改良土の, 雑草発生抑制効果とその機構を探るための予備的な試験を行った。その結果, 改良土を10cm以上の厚さで敷設すれば, 種子で侵入する草本が定着しにくい現象が認められた。改良土が一定以上の厚さで敷設された場合に表層が乾燥しやすいことが雑草を抑える一因であると思われていたが, 土深5cmにおける土壌水分の計測結果では改良土が常にマサ土より際だって乾燥しやすいとはいえなかった。土壌水分の挙動についての精度の高い計測および他の要因の影響についての検討が不可欠であると考えられた。
  • ソン ゼェタク, 薛 孝夫, 裴 重南
    2000 年 64 巻 5 号 p. 517-520
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    森林生態系の自然性を損なわずに樹林を移植する工法あるいは元の森林生態系により早く回復できる工法を求めて, 九州の大分スポーツ公園と隣接住宅造成地で採用されている3つの重機移植工法による造成樹林で調査を行い, 林床植生および土壌動物を指標に, 既存林との比較, 工法間の比較, 経年変化などについて検討した。EG工法とTPM工法はで大木が移植できる反面, 樹木を点状に移植するために全般的な自然性は低いことと, EU工法では移植できる樹木は小さいが, 森林土壊を面的に移植するため2つの工法と比べて林床の自然性は高く, 自然的な樹林への回復も速いのではないかと思われた。
  • 高橋 輝昌, 御代田 泉, 綛谷 珠美, 浅野 義人, 小林 達明
    2000 年 64 巻 5 号 p. 521-524
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    火山灰起源の森林表土の植栽基盤としての有効性について検討するため, 比較的浅い表土 (表土 (浅)), 比較的深い表土 (表土 (深)), 心土, 比較的浅い表土と心土の混合土壌, 施肥した心土 (施肥土) で土壌の化学性と植栽された苗木の生育を比較した。施肥土の無機態窒素含有量と電気伝導度は施肥直後には他の土壌を上回ったが, 急激に減少し, 3ケ月後には他の土壌と同等になった。施肥土の苗木は1年目にはその他の土壌より良好に生育したが, 2年目にはほとんど生育しなかった。表土 (深) の苗木の生育は表土 (浅) よりも劣り, 心土とほぼ同等であった。表土 (浅) での苗木の葉の高い光合成速度と比較的低い呼吸速度が苗木の安定的な生育の原因と推察された。
  • 高橋 新平
    2000 年 64 巻 5 号 p. 525-528
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    つくば研究学園都市内の17公園を対象に芝生地の消失について調査した。それは公園計画や公園設計において確保されるべき芝生地の面積や公園管理における芝生地の整備水準を明確にするためである。現地での調査から芝生地が消失する要因は, 樹陰, 雑草との競合, 過剰利用であることが判明した。その要因の中でも樹陰による消失は最も大きいことが確認できた。この要因を解析するために芝生の生育状況と周囲の植栽状況の関係を調査した。年平均可照時間が300~400分以上では芝生が生育し, 未満では消失する箇所が多かった。また, 消失は植栽状況に影響されることも確認した。芝生地の消失は公園の開園からの年数には影響されることはなかった。
  • 前原 大輔, 重松 敏則
    2000 年 64 巻 5 号 p. 529-532
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    西日本の都市周辺にあるかつての薪炭林では, 自然遷移の進行により, 混交する落葉広葉樹種が常緑広葉樹に被圧され, 次第にその活力を失いつつある。福岡市の都市内残存林である鴻巣山緑地保全地区を対象に, 落葉広葉樹を含む多様な植物による季節景観の保全を目的に, クリ・クヌギ・ハリギリ・ホオノキの4種について調査し, それぞれの分布状況を把握するとともに, 各個体の生育状況ならびに隣接樹木の被圧の影響について分析した。その結果, これら4種にはスダジイやタブ等の常緑広葉樹種の被圧を受けて, 生育不良や立ち枯れが少なからず見られ, 周辺木の除伐など早急な保全管理対策が必要であると結果づけられた。
  • 飯島 健太郎, 近藤 三雄
    2000 年 64 巻 5 号 p. 533-536
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    セダム属4種の挿し木, 葉播きへの気温 (月別), 照度条件 (相対照度100, 30, 10%) の影響について検討した。その結果, 挿し木後の不定根, 葉播き後の不定芽の形成は4種類共に12-2月の厳寒期, 酷暑期の照度100%下では困難であった。不定根の形成は100%, 30%では良好であり, マルバマンネングサ, メキシコマンネングサ, ルツマンネングサでは10月, タイトゴメでは4-5月の挿し木が最も優れた。葉播き後の不定芽の形成は光条件が大きく影響し4種類共に100%下では概ね困難であった。遮光下ではマルバマンネングサ, ツルマンネングサで活発に形成され, 他の種類の形成は僅かであった。また室内実験によって10-30℃ の範囲内では気温が高いほど早期に不定芽が形成された。
  • 大出 英子, 近藤 三雄
    2000 年 64 巻 5 号 p. 537-540
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    室内緑化空間として, 鑑賞用温室 (約35000lux), 明るいアトリウム空間 (約6000lux), オフィス空間 (約350lux) を想定した実験区を設け, 造園樹木4種の栽培実験を行い, 葉の陰葉化, 光合成速度および生育状態から, 室内弱光環境での生育可能性について考察した。その結果, 35000lux区では4樹種ともに健全な生育を維持できること, 6000lux区ではトウネズミモチは健全に生育するが, イロハモミジとカクレミノは1年目は健全に生育するが2年目以降は生育が低下すること, エゴノキは著しく生育が低下すること, 350lux区では4樹種ともに概ね1年以内で枯死することが明らかとなった。
  • 加藤 泰子, 山本 聡, 石田 均, 前中 久行
    2000 年 64 巻 5 号 p. 541-544
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    人工地盤上の緑化を行う際に, 植物の生育上, 必要な土壌中の保水量を探ることを目的とし, 厚さ8cmの薄層土壌における土壌水分量と日射量を測定した。その結果, テイフトンシバによって緑化した試験区の蒸発散量は土壌中の水分量および日射量に相伴って増加し, 試験区の違いには影響を受けていないことが分かった。そこで, 土壌中水分が十分にある場合の緑化面からの蒸発散量は日射量あたり0.34mm/MJ/dayとして, 夏季の気象データをもとに, 人工地盤上の芝生についての必要な土層厚の試算をおこなった. その結果, 8月の気象条件で不足する水分量を補うためには, 軽量土壌では40cm程度の土層厚が必要であった。
  • 服部 保, 小野 由紀子, 鍛冶 清, 石田 弘明, 鈴木 武, 岩崎 正浩
    2000 年 64 巻 5 号 p. 545-548
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    環境緑化等を目的とした照葉人工林が各地に育成され, 成功を収めているが, 今後, 照葉人工林の構造や種類組成をさらに発達させるためには, いくつかの課題が残されている。特に, 生物多様性保全の視点から考えて照葉人工林の種多様性を増加させることは大変重要である。著者らは照葉人工林の種多様性に与える種子供給源の役割について調査を行った。その結果, 種子供給源の存在が種多様性を高めるのに重要であることが明らかとなり, 種子供給源となる母樹林を小面積形成すれば, 植栽に依らなくとも照葉人工林の種多様性を増加させることが可能と考えられた。
  • 矢部 和夫, 中村 隆俊, 河内 邦夫
    2000 年 64 巻 5 号 p. 549-552
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    北海道南部の歌才湿原にはイボミズゴケ群落が分布している。イボミズゴケの生育環境を推定するために, 水文化学変量と群落分布の関係をANOVAによって明らかにし, 環境要因間の関係を因子分析によって明らかにした。群落分布は, 1) 水位. 2) pHと塩類濃度, および3) 栄養塩と鉄の濃度といった要因群によって規定されており, これらの要因群はそれぞれ最高水位, pHと総窒素濃度によって代表される。各要因のイボミズゴケに対する最適範囲は-10.5~0.0cm (最高水位), 4.44~4.67 (pH) および0.938~1.156mg/L (総窒素) であった。イボミズゴケはこれらの条件が同時に満たされた場合にだけ優占する。
  • 濱野 周泰, 秀島 まゆみ, 根本 正之
    2000 年 64 巻 5 号 p. 553-556
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    水田畦畔の緑化に木本植物を導入することを前提に実験を行い, 畦畔草地の草刈り管理における刈取の高さ及び畦畔斜面の上・中・下部の違いによる樹形形成の変化を観察した.
    試験地の畦畔は北向きの斜度45度の斜面, 斜面の長さは7m, 土壌水分量は斜面上部ではpf値約2.4, 中部約2.1, 下部約1.8である. クサボケは, 斜面中部において草地の刈取の高さがOcmの区で253%, 20cmの区で120%の高い成長率を示した. ヤマツツジは, 斜面中部で刈取の高さ10cm. 20cmの区でそれぞれ118%と123%, 斜面下部の0cm, 10cmの区で各々104%と108%の高い成長率を示した.
  • 根本 正之, 宗吉 直子, 濱野 周泰
    2000 年 64 巻 5 号 p. 557-560
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    基盤整備後の棚田畦畔を自然に近いかたちで緑化する目的で, 我国の在来種に由来する園芸植物を畦畔法面に定植し, 1年間にわたりそれらの法面被覆過程を調査した.シロバナサギゴケ区では成長の開始が早く, 5月下旬には全面が被覆された. しかし秋季にはほとんどの親株が枯死した. キチジョウソウやコグマザサは初期成長が遅く, 処理区内に多くの雑草が発生した. しかしながら何度か草刈りを行えば, 秋季までには活着し法面を十分被覆した. 土壌の水分状態に対応し, 法面下部ではシロバナサギゴケの生育がよく, 逆にコグマザサは生育が抑制された.
  • 山戸 美智子, 服部 保, 稲垣 昇
    2000 年 64 巻 5 号 p. 561-564
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    岩湧山, 和泉葛城山, 大和葛城山の半自然草原において, 面積, 管理方法種多様性の調査を行った。3調査地とも数十年におよぶ草原管理の放棄や面積の縮小化によって, 過去の出現種の80%(岩湧山), 59%(和泉葛城山), 60%(大和葛城山) しか現在出現していない。欠落種には絶滅・絶滅危惧種が目立つが, 普通種も多く見られた。岩湧山で草原生植物種 (75種) が最も多いのは.面積が最も広いことや草原管理の再開が影響していると思われた。しかし, 岩湧山でも3地域全体の種数 (104種) は保持しておらず, 本地域の種多様性を維持するためには3草原全体を保全することが必要と思われた。
  • 日置 佳之, 水谷 義昭, 太田 望洋, 館野 真澄, 鈴木 明子
    2000 年 64 巻 5 号 p. 565-570
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    国営みちのく杜の湖畔公園 (宮城県柴田郡川崎町) 内にあるヨシ群落において, 埋土種子集団を含めた潜在的植物相を把握するために, 地上植生の調査, 群落の刈取りによる調査, 表土のまきだし実験の3つを行った。刈取りを行った場所では, 種数が大幅に増加した。また, まきだした表土からも多くの種が発芽した。調査対象としたヨシ群落の地上植生は, 潜在的植物相の一部に過ぎず, この群落では, 多くの種が埋土種子として休眠しており, 潜在的には豊かな植物相を持つ群落であることが明らかになった。潜在的植物相が豊かである要因として, 当地が耕作放棄地であることを示唆した。また, 調査にもとついて, 環境調査や植生管理に対する応用について提言した。
  • 浅見 佳世, 中尾 昌弘, 赤松 弘治, 田村 和也
    2000 年 64 巻 5 号 p. 571-576
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 放棄水田の水生生物を保全するための植生管理手法として, 植生配置のローテーションにより谷全体で種多様性を維持するシステム (シフティング・モザイク・システム) を提案し, その有効性について京都の府立公園予定地を事例に検討した。まず, このシステムを用いるのに適した遷移系列と, 初期化に適した遷移段階を把握し, 次に抽出した植生を対象に初期化を行いその効果を調べた。調査の結果, コナギ群落からカンガレイ群落へとむかう遷移系列において, 植生, 水生昆虫相共に遷移当初の状態が復元でき, システムの有効性が明らかになった。このように本研究は.遷移を前提とした植生管理の一つの方向性を示し得たと考える。
  • 伊藤 風香, 大窪 久美子, 馬場 多久男
    2000 年 64 巻 5 号 p. 577-582
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    南アルプス仙丈ヶ岳に源を発する戸台川の河辺はトダイアカバナ, カワラニカナ等多くの絶滅危惧種の生育地として保全上重要な地域である。しかし近年, 帰化植物の侵入, 定着がみられ, これら絶滅危惧種への影響が懸念されている。本研究では, 戸台川河辺植生の現状, 特に帰化植物定着の絶滅危惧種への影響を明らかにすることを目的とし, 中, 下流域において植物相及び群落調査を行った。最下流部の帰化率は約12%であったが, 一般都市河川の帰化率約20%と比較すると, 山岳河川としては低い値ではないと考えられた。また帰化植物のフサフジウツギ等は絶滅危惧種のカワラニガナ, トダイアカバナのハビタットと重複することが示唆された。
  • 本田 裕紀郎, 倉本 宣
    2000 年 64 巻 5 号 p. 583-588
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物力ワラニガナの生育状況を把握するため, 多摩川においてDGPSを用いて局所個体群の分布を記録するとともに, その個体数と個体群間の距離を測定した。その結果, 一つの個体群を除いて他は極めて脆弱な個体群のみであり, 各個体群間の距離は非常に長かった。
    また, 休眠・発芽特性を明らかにするため, 3種類の発芽実験を行った。その結果, 変温効果はあるが永続的な埋土種子集団を形成しないこと, 一次休眠は誘導されていないこと, 低温域において若干の相対的休眠が誘導されること, 秋に発芽することが明らかになった。
    これらのことから, 個体群の復元が必要であり.それには秋の長雨が訪れる前に種子を散布することが有効であると考えられる。
  • 栗田 英治, 横張 真
    2000 年 64 巻 5 号 p. 589-594
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ゴルフ場が里山地域の生物多様性保全上, 果たし得る役割を, 景観及び群集・生態系レベルでの多様性という面から解明し, 管理指針を検討した。景観レベルにおける土地利用履歴の解明の結果ゴルフ場の履歴が様々な施業段階にある里山林であったこと, 施業初期段階にあたる草地的な緑地空間が失われたことが分かった。群集・生態系レベルにおける植生および管理状況の調査の結果, コナラ林を中心とした森林の環境は, 残置森林としてゴルフ場開設後も確保されたことが明らかになった。今後, 残置森林, ラフ等の管理にあり方に検討を加えることにより, ゴルフ場が景観及び群集・生態系レベルでの多様性を保全しうる可能性が示唆された。
  • 養父 志乃夫, 山田 宏之, 中島 敦司, 中尾 史郎, 松本 勝正
    2000 年 64 巻 5 号 p. 595-600
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大阪府大阪市から東大阪市にかけての近鉄奈良線沿線部において, バッタ類の生息密度の変化を調査した0調査区としては, 近鉄奈良線の各駅を中心とした半径250m円の調査区を12カ所, 半径1km半円の調査区を5カ所設定した。調査は2000年8月から9月にかけて行い, 一般に人の立ち入ることのできる接道部の緑地と公園緑地を対象に, 全バッタ類を捕虫網で捕獲する方法で行った。その結果, 都心部からの距離が離れるに従って単位面積あたりの捕獲数は指数関数的に増加すること, 緑地の規模や草地組成とバッタ類捕獲数は相関を持たないことなどが明らかとなった。また, 都市環境への適応性の大きいバッタ種も特定された。
  • 中尾 史郎, 松本 勝正, 中島 敦司, 養父 志乃夫, 山田 宏之
    2000 年 64 巻 5 号 p. 601-606
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市部河川敷の緑地が担う微小昆虫アザミウマ類 (総翅目) の生息空間としての機能を明らかにして, その管理の方向性を提案する目的で, 京都市街の桂川と宇治川流域の河辺のオギ群落において, 群落の形状, 構造とアザミウマ類の生息状況との関係を調査した。特にアザミウマ類については種数種構成個体数, 各種の食性や害虫としての位置づけ, ならびに各個体の翅型に着目し, 調査対象としたオギ群落の生息空間としての特性を検討した。その結果, 河川敷のオギ緑地の管理においては線的および面的空間連続性よりも, 時間的および立体 (三次元) 的空間構造連続性を高めることにより, アザミウマ類の多様性保全と都市部河川敷のアメニティー空間確保が両立可能であると示唆された。
  • 加藤 和弘
    2000 年 64 巻 5 号 p. 607-610
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    河川の底生無脊椎動物は昆虫の幼虫をはじめ幅広い分類群を含み, 河川の動物相の主要な構成要素である。本研究では, 河川中流部において底生無脊椎動物の多様な群集が維持されるために必要な条件を, 多摩川における現状分析に基づき検討した。その結果, 水文学的条件である流速と水底の堆積物の変化に伴い群集の種組成が変化すること, および, 川岸の植生が特徴的な群集を成り立たせていることが明らかとなった。これは, 既に報告した付着珪藻類の群集多様性を支える条件とは異なっており, 河川の生物多様性を総体として保全する際の指針として, 特定の生物種や生物群いわば指標生物だけに注目する評価は不十分であることが示唆された。
  • 大澤 啓志, 勝野 武彦
    2000 年 64 巻 5 号 p. 611-616
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    アカガエル2種について非繁殖期の樹林内での生息を調査し'その確認地点の植生構造から環境嗜好性を分析した。両種は落葉広葉二次林, シラカシ林, スギーヒノキ林のいずれも生息場所としていたが, ニホンアカガエルはシラカシ林に負, 落葉林に正の嗜好性を示した。ヤマアカガエルは樹林タイプを問わず樹林の内部への嗜好性が示唆された。林床環境の5要素で判別分析を行った結果, シラカシ林は草本ll層, スギーヒノキ林では草本1層, 落葉林では草本l層・ll層の被度落ち葉量の各変数項目が関与していた。人為撹乱による明るく草原的な環境と暗い林内の環境を両極とした両種の環境選択の勾配軸が認められ, その植生管理について考察した。
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