ランドスケープ研究
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65 巻 , 5 号
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  • 小野 佐和子
    2001 年 65 巻 5 号 p. 365-370
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    柳沢信鴻の時代, 六義園では, 土筆・茸・栗などの採取が楽しまれ, 採取された庭の産物は, 自家消費の外, 贈答品として用いられた。本稿では, 柳沢信鴻の『宴遊目記』をもとに, 庭の産物のやりとりの様態を明らかにする。庭の産物は, 親族や趣味を同じくする仲間といった身近な人々に贈られ, その贈答は偶然性と恣意性のもとにある点で年中行事や儀礼に伴う贈答品と異なる。信鴻自身の採取・収穫物, 季節のしるし, 興趣の対象, 園の自然の豊かさの現れであることに, 庭の産物の贈答品としての特徴を認めうる。庭の産物を贈ることは, 贈る相手との間に親密さを作り出すと共に, 信鴻が, 園の自然の豊かさの分配者であり, 園の掌握者であることを示した。
  • 溝口 周道
    2001 年 65 巻 5 号 p. 371-374
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    貝原益軒 (1630-1714) は, 公務の旅の傍らに各地を遊観し, その足跡を紀行文に記した。そのうちの数点が板行され, 旅に携行されたり多くの紀行文や名所図会等に引用され, 近世の観光に少なからぬ影響を与えた。本研究は, そのような意義を持つ貝原益軒の紀行文の特徴について, 読者である観光者のまなざしの観点から考察したものである。その結果, 名所等だけではなく路次の風景・事物に興味を広げたことで, 旅の行程における情報の密度を高め, 旅全体の魅力を表現し伝えるものとなったこと, 訪問地の見所となるポイントなど, 旅における様々な楽しみ方を具体的に伝えていることなどを明らかにし, それらが読者の関心を呼んだことを示した。
  • 飛田 範夫
    2001 年 65 巻 5 号 p. 375-378
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大阪市内の八景としては, 江戸前期に眺望地や社寺, 中・後期に社寺・茶屋などの行楽地, 明治に欧米の影響が見られる場所が挙げられているが, 大正には幕末に大坂城周辺の光景を描いたものが懐かしがられている。一方, 住吉八景は隣接する堺まで含んでいたことから, 流行歌では堺八景に変化している。また, 江戸時代には画家が狭山八景を選び, 東大阪では文人が自邸から見える富景楼十景をつくっている。瀟湘八景にならって八景を選定することが日本で流行したのは, 中国文化に対する憧れがあったからだが, 漢字熟語の豊富な意味合いを活用して, 風情を求めることが根底にあった。しかし, 現代の八景選定では風景の構成美が重要視されている。
  • 粟野 隆, 服部 勉, 進士 五十八
    2001 年 65 巻 5 号 p. 379-382
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 明治期東京の邸宅庭園を対象として, 明治期の地形図を中心に庭園空間の (1) 成立形態,(2) 立地・構成の2つの側面から分析を行った。その結果, 以下の3点が明らかとなった。(1) 下江戸期の武家地を前身とし, 明治期には江戸期の土地の区画に改変を伴いつつも, その立地形態は江戸期の庭園を継承した可能性が高いこと,(2) 立地形態は, 3類型 (崖線型・台の端型・平地型) に大別され, 眺望 (崖線型・台の端型), 池 (崖線型) など, 東京の地形状況 (地域性) を十分に活用した庭園が多数確認できたこと。(3) 多くの庭園には, 共通して芝生が多数利用されており,「芝庭」が庭園構成の中心的な役割を担っていたこと。
  • 井原 縁
    2001 年 65 巻 5 号 p. 383-388
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    京都御苑における精神性の系譜を究明するべく, その景観変遷を辿り, あわせて皇居外苑のそれに沿った結果, 京都御苑と皇居外苑の景観変遷は異なり, そこに内在するはずの精神性には隔たりがあることが明らかになった。京都御苑の景観は, 造園以前のこの地固有の性質を受け継ぐ要素と大きな整備事業などにより新たに変化した要素が共存して現在に至っている。他方, 皇居外苑の景観は基本的にこの地固有の性質を受け継ぐ要素により形成されたまま現在に至っている。京都御苑の精神性は, その地固有の性質に根ざしつつ社会と時代の要請に柔軟に対応した拡がりをもち, 他方皇居外苑のそれは, その地固有の性質を保持しつづけた深まりが読みとれる。
  • 神田 圭一, 鈴木 誠
    2001 年 65 巻 5 号 p. 389-392
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    明治期の文豪夏目漱石 (1867-1916) の作品中に見る庭園像を分析解釈し, 漱石の庭園観を考察すると共に, 明治時代日本の一般的住宅の庭のイメージを探った。その結果漱石はイギリスの庭より, 日本の庭の情緒を好んでおり, 作品中には日本で一般的な「松」「竹」「梅」や「杉」などの庭木を多く登場させ,「苔」の描写も多かった。また, 庭「石」も見られる一方, 植えられた「花」も目をひいた。作品中の庭は漱石の自宅の庭とも違っていた。それは漱石の植物・庭に対する知識を駆使して描写した庭というよりも, 一般読者が理解できる日常的な庭であり, 明治時代の住宅の庭の一般的姿と考察された。漱石の庭へのこだわりは, 日常生活の中, 暮らしにとけこんだものとしての庭だといえよう。
  • 相田 明, 鈴木 誠, 進士 五十八
    2001 年 65 巻 5 号 p. 393-396
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    英国のイングランドとウェールズにおけるナショナル・ガーデン・スキーム (NGS) は, 1927年より現在に至るまで組織化されたオープンガーデン (個人庭園の公開) を開催している。本研究はその議事録を中心に, 団体が設立されるまでの背景ならびに, その変遷を調査した。その結果, NGSの活動の特色として (1) 団体との提携・合併による組織の強化,(2) ナーサリーや小規模な庭園にいたる公開庭園タイプの充実や, 茶菓の提供, 植物販売という, サービスプログラムの多様化,(3) 時代の要請によって寄付先の選択肢の拡大・多様化を行なう一方, 庭園主に選択権の一部を委託する運営手法の柔軟性, といった3つがあげられた。
  • 高橋 ちぐさ, 下村 孝
    2001 年 65 巻 5 号 p. 397-400
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ガーデニング関連雑誌の創刊数, 発行点数および書籍の出版点数は,'94年を境に急増し, ガーデニングブームが'93年頃に生起したことが推測された。また, 記事内容を見ると, ブーム以前には栽培法の解説が主であったのに対し, ブーム以降は, デザイン, ガーデンあるいはガーデニングなどの用語が使われるようになり, その解説が増加した。さらに, 雑誌「NHK趣味の園芸」の記事内容の経年調査から, ブームの中で草花栽培の容器の呼称が, プランターからコンテナに変遷する実態が明らかとなり, 欧米で一般的であるコンテナガーデニングがわが国にも普及したことが推測された。
  • 村上 修一
    2001 年 65 巻 5 号 p. 401-406
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 近代の空間成果として筆者の注目する形態の曖昧性という観点から, トーマス・D・チャーチ (1902-1978年) の代表作ダーネル邸庭園 (1947年) の形態を検証することである。まず1930-50年代の著作27点を調査し, 彼の床面意匠に対する考え方に曖昧な形態が生成される要因を指摘した。この床面意匠にもとづき本事例の形態を分析したところ, 視線透過性や空間構造に起因する曖昧性が明らかになった。さらに, 床面意匠が視点移動や時間経過にともなう空間変化を増幅させる要因でもあることが明らかとなった。
  • 西田 正憲
    2001 年 65 巻 5 号 p. 407-412
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    19世紀のアメリカの風景画に見出される大自然へのまなざしの特質を明らかにし, アメリカの国立公園の成立にもこの同じ大自然へのまなざしが働いていたことを考察するものである。風景画を作品内容, アメリカ美術史, ヨーロッパ風景画との相違, 背後にある思想の観点から分析を行い, 風景画にみられる大自然へのまなざしの特質を壮大なウィルダネスの景観への指向, パノラマの視覚, 崇高と汎神論の思想として明らかにし, 国立公園にも分析を加えて同じ特質が認められることを考察した。19世紀のアメリカにおいて, 大自然へのまなざしとも呼ぶべき大自然を捉えるアメリ力固有の風景観が独特の風景画と国立公園を生みだしていたと指摘できる。
  • 十代田 朗, 岸本 史大, 中野 文彦
    2001 年 65 巻 5 号 p. 413-416
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 林学博士・田村剛が立案した次の4つの計画,『縣立榛名公園計書』(大正15年),「妙高大公園計劃」(昭和2年),『別府國際泉都計書』(同24年),『草津温泉地計書』(同24年) を事例として, 田村剛の公園・温泉地計画の特徴を明らかにしていくことを目的としている。その結果,(1) 対象とした計画はいずれも交通計画から各種施設整備計画, 経営計画まで包括した総合的なものであったこと,(2) コンセプトの特徴として「ネットワーク的発想」「リゾート資源としての自然の利用」「都市づくり的発想」「利用者本位の施設整備」「風致保護・緑化の重視」「国際化への対応」「地域経営的発想」の7点を抽出している。
  • 佐山 浩
    2001 年 65 巻 5 号 p. 417-420
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は屋久島地域の国立公園指定の経緯を辿り, 霧島国立公園編入に至った社会的背景について明らかにする。当初, 硫黄島を含む屋久島は霧島国立公園, 錦江湾国定公園とは別に屋久島国立公園として指定される方針であったが, 屋久島における国有林施業との調整等, 困難な課題があった。その後, 当時の観光政策の状況や既存国立公園に新たに地域を追加するという国立公園指定の潮流に沿った方針に変更される。一方で, 国有林施業との調整に見通しが立ち, 併せて硫黄採掘が進められていた硫黄島の指定を断念した。そして, 水力発電開発との調整も進み, 最終的に広域的利用を前提に錦江湾国定公園を挟み, 霧島国立公園に編入されたと指摘できる。
  • 内田 和伸
    2001 年 65 巻 5 号 p. 421-426
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    遺構の復元や表示を行なう遺跡の環境整備の中では, 通常, 遺構を盛土で保護し, 遺構の真上の位置でその表現を行なっている。しかしながら, 遺構保存を前提とした復元事業では考慮しなければならない様々な設計条件があり, 復元する遺構の性格によっては本来の見え方やそれに伴う意味を表現できなくなる場合がある。そうした場合, 遺構の理解を遺構というものの中でのみ捉えるのではなく, 遺構の背景にある歴史的文脈に立ち返り, その方向性を見定め, 表現方法を選定することが有効である。従来型の遺構真上の表示原則に拘泥することなく遺構復元をした方が, 遺跡本来の理解に寄与すると考えられる。
  • 亀井 幹夫, 中越 信和
    2001 年 65 巻 5 号 p. 427-430
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    天然記念物制度による植物保全の効果を明らかにするために, 植物に関連する天然記念物を2つの側面から分析した。1つは保全対象の選定など指定, もう1つは管理状況や被害状況など保存管理に関するものである。分析の結果, 1) 比較的多くの種類を保全しているが対象により偏りが見られ, 全体として代表性を満たしていないこと, 2) 指定地そのものに対する大規模な改変は制限されているが, 盗掘や踏みつけ, 周辺環境の変化, 自然災害, 遷移の進行や外来種の侵入などの被害を受けた物件が半数近くあること, などが明らかになった。今後は, その場限りの対応を改め, 計画によって目標と目標達成のための方法を明確にすることが重要である。
  • 宮内 泰之, 田畑 貞寿
    2001 年 65 巻 5 号 p. 431-434
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    鎌倉建長寺庭園の池底の堆積土に含まれる遺存植物体の分布状況を分析し, 鎌倉期建長寺庭園の植栽, 環境眺望等について復元的考察を行った。堆積土にはニヨウマツ類, スギ等の庭園に植栽されていたと推測される種類の遺存植物体のほか, ケヤキ, カエデ類, アカメガシワ等の木本や, カラムシ属の-種, ホトトギス属の一種等の草本の遺存植物体が含まれていた。今回の分析結果と巨福山方向の眺望の関係から, ニヨウマツ類のように枝葉が疎な樹木ならば築山上に生育していることはあったとしても, スギのように枝葉の緻密な常緑針葉樹やケヤキのような大木は巨福山への眺望を遮らない場所に植栽されていた, あるいは生育していたものと推測される。
  • 李 樹華
    2001 年 65 巻 5 号 p. 435-438
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では, 数多くの古代文献資料と考古学的発掘の成果を用いて, 中国漢代以前の神格化されてきた樹木 (神樹類) の内, 建木・扶桑・桃都・桃・桑・連理木・嘉禾と朱草などの由来, 意味などに関して検討した。更に, 社壇植樹の意味, 社壇の種類, 歴史時期および所在地域などによって異なった樹木の種類, そして墓地植樹を身分性により植え分けた常用樹種および専用樹種などの内容を明らかにした。
  • 沈 悦, 下村 彰男, 熊谷 洋一
    2001 年 65 巻 5 号 p. 439-442
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 中国清時代における揚州庭園の石組を対象とし, その昼石 (石組) 技法による造景について考察することを目的とした。研究の方法は関連する歴史文献図絵などの整理により, 楊州庭園の石組発達史を把握し, さらに実測図及び現地調査データを用い, 蘇州庭園の石組データと比較しながら総合的な定量分析を行った。その結果, 揚州庭園の石組は「外実内虚」の構成と,「洞・室」景観の整備を重視した造景が特徴として挙げられた。
  • 藤井 英二郎, 金 眞成, 高瀬 要一, 白 志星, 小野 健吉
    2001 年 65 巻 5 号 p. 443-446
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    宮南池は韓国・百済の最後の都・扶余に造営された園池であり,『三国史記』武王35年 (643) の条には, 王宮の南に穿池し島を造ったとある。現状の園池には規模や構成の点で多くの疑問が呈されている。本論は既往の研究を踏まえながら, 近年相次いでなされた発掘調査をもとに往時の宮南池の範囲や構成, 造営意図を探った。園池は, 現状より広大で, 水田を水没させて造られたことが明らかとなった。広大な園池は旺浦川からの導水によって維持され, 園池は都城防衛上も大きな役割を担っていたものと推定された。園池東の花枝山西南尾根で検出された建物は, 園池を中心とする景観構成やそこでの園遊において重要な位置を占めたものと判断された。
  • 今江 秀史
    2001 年 65 巻 5 号 p. 447-450
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    京都には庭の手入れに関して「御所透かし」・「寺透かし」・「町家透かし」という呼称がある。本研究では, 宮内庁京都事務所園林課庭園係の技官をはじめ, 業務として御所・離宮, 寺, 町家の庭の手入れに従事している職人らを対象に, 上記呼称に対する認識について聞き取り調査を行った。その結果, 手入れは各所固有の動機や要請もさることながら, 場の特性や植栽樹木の生長特性に対する柔軟な姿勢に基づいていることが分かった。各所の手入れが相違してみられるのは, 要請される事項の多様性が反映されているからであると考えられる。庭の雰囲気の維持・創出には, 技術の継承だけではなく場の設えに精通することが重要であることが明らかになった。
  • 内田 均, 佐藤 誠樹
    2001 年 65 巻 5 号 p. 451-454
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    住宅庭園の植栽管理実態と, 望ましい管理水準をアンケート調査により把握した。その結果, 庭の仕上がり状態が「きれい」と21.4%の住宅が思うものの, 管理状態に41.8%の住宅が「不満」であった。望ましい管理水準は年間当たり除草57.4回, 清掃127.4回, 施肥3.0回, 病虫害防除3.5回, 剪定3.4回となった。管理費用は, 家人の主観が大きく影響し, 水準となる金額を算出できなかった。今後の管理は, 今以上に費用をかけたくないものの, 十分に管理していきたいと64.8%の住宅が答えている一方で, 35.2%の住宅で「やりきれない」「考えていない」, また, 22.0%の住宅で「費用をかけたくない」と答えており, 管理の難しさを如実に現している。
  • 倉本 宣, 永井 敬子
    2001 年 65 巻 5 号 p. 455-460
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    桜ヶ丘公園雑木林ボランティアの活動10周年にあたって, ボランティアの自己評価のために, 活動内容と組織形態に対する意識をアンケートによって検討した。活動内容については個人としての評価と活動全体としての評価を比較した。組織形態については理念としての評価と機能としての評価を比較した。活動内容については植生管理と調査は個人としての評価よりも活動としての評価の方が高かった。この結果は, 雑木林ボランティアの現状と対応していた。組織形態については, ボランティアは対等であることの評価が高かった。ボランティアが自分で考えることは機能としての評価が低かった。集団による作業では自分で考えることがむずかしい場合もあると考えられる。
  • 飯島 健太郎
    2001 年 65 巻 5 号 p. 461-464
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    日本クライメートゾーン8に相当する神奈川県の津久井町 (ZONE8b) と宮城県の松山町 (ZONE8a) で, セダム類の生育と越冬性について実験的に検討した。その結果, 直射光下では,(1)両地域で越冬 (チチイロマンネングサ, ツルマンネングサ, コーカサスキリンソウ, タケシマキリンソウ),(2) 津久井町で越冬し, 松山町で衰退 (マルバマンネングサ, メキシコマンネングサ),(3) 両地域で衰退 (タイトゴメ) の3タイプが認められた。(2),(3)タイプでも遮光下では冬期の衰退現象を緩和し越冬性に優れた。またメキシコマンネングサは衰退を示した松山町でもNP施用で生育, 越冬性が優れた。以上より, 照度条件を調整したり施肥により生育を助長することで越冬性を増大させる可能性が示唆された。
  • 岡田 穣, 浅川 昭一郎
    2001 年 65 巻 5 号 p. 465-470
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では屋敷林の微気象改善機能を再確認し, 管理による効果の違いを検証するために, 平地の単列屋敷林において枝打ち管理の施業前, 施行後の微気象を観測・比較した。その結果, 枝打ち前の観測では冬期における防風・防雪効果, 夏期における防風・気温調節効果が確認されたが, 屋敷内における冬期の堆雪, 夏期の気温におけるデメリット面もみられた。しかし枝打ち後の観測で屋敷内における積雪の軽減, 夏期の気温の低下が認められた。以上により, 土地利用上多くの列を植栽することが難しい屋敷林が, 通年的・複合的に微気象改善機能を持ち, かつ十分有効であることが示された。また, 枝打ちを行うことにより微気象機能が更に向上することが示され, この面からも屋敷林の管理が必要であることが認められた。
  • 中島 敦司, 中尾 史郎, 山田 宏之, 山田 和司, 養父 志乃夫
    2001 年 65 巻 5 号 p. 471-474
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    年間を通じた気温の上昇が, 冬季に開花するサザンカ (シシガシラ) の開花に及ぼす影響を検討する目的で, 6年生の挿し木苗を野外の気温に1.5℃, 3.0℃, 4.5℃ 加温した温暖条件および野外と同温,-1.5℃ に調整したグロースチャンバー内で育成し, その2年目の開花経過を調べた。その結果, 開花の開始は, 設定温度の低い区から始まり,-1.5℃ 区と+4.5℃ 区の開花開始の差は1ヶ月半に及んだ。これに対し, 花の形態について, 設定温度の高い区ほど, 花弁数, 雄ずい数が増加する傾向を認めた。以上の結果, 生育環境の気温上昇は, 開花期の遅れと花の形態の大型化, 花弁数等の多数化という現象を引き起こす可能性があると考えられた。
  • 海老根 晶子, 藤井 英二郎, 三島 孔明
    2001 年 65 巻 5 号 p. 475-478
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    風が樹木の生育に及ぼす影響と支柱の効果について検討する目的で、ユリノキの2年生個体を用い, 支柱をせずに風を当てた風区, 支柱をして風を当てた風・支柱区, 風を当てずに支柱をした支柱区, 処理を加えない対照区の4区で地上部, 地下部の成長を比較した。その結果, 地上部では, 風区で主幹と枝の節間の伸長成長, 支柱区で主幹の肥大成長が抑制される傾向が見られた。また, 風.支柱区では, 成長が全体的に抑制されていた。
    地下部については, 風区では風上側, 側面に比べ風下側で細根・中径根が抑制された。また, 支柱区では支柱側よりも反対側で小径根が多くなった。これら2処理区に対し, 風・支柱区では方向による有意差は見られなかった。
  • 寺島 悦子, 藤井 英二郎, 三島 孔明
    2001 年 65 巻 5 号 p. 479-482
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ケヤキの3年生樹木を直径200cm・深さ60cmの地中埋め込み型コンテナに関東ロームを用土として植え付け, 踏圧面積を変えて生長に及ぼす影響を実験的に検討した。踏圧処理は, コンテナ全面区, 1/2区, 1/4区, 対照区とし, 踏圧負荷は14ヶ月とした。土壌の堅密化は地表面から深さ20cmであり, 特に10cmまでで顕著であった。堅密化した土壌では根は水平方向への伸長が抑制され, より下方に伸長していた。また, 対照区に比較してすべての踏圧区で中径根の主軸の生長が悪かった。地上部では, 踏圧区では伸長期間が数期にわたる枝が少なく, 材に比して葉乾重が小さいなどの踏圧の影響がみられた。
  • 山瀬 敬太郎, 田中 義則, 上山 泰代
    2001 年 65 巻 5 号 p. 483-486
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    六甲山系で, 絶滅危惧種ヤブウツギによる初期緑化の有効性を検証するために調査・研究を行った。植物社会学的手法に基づいて実施した植生調査で得られた資料をもとに群落区分を行った結果, ヤブウッギは, 河辺林, 多年生草本群落, 路傍雑草群落, 林縁, 二次草原, 陽地生夏緑広葉樹二次林, 植林の群落に出現しており, 植生遷移の初期から比較的長期間の遷移段階にわたって生育が可能であることがわかった。また, 立地環境や施工方法の違いによる苗木の生育状況を比較した結果, ポット苗であれば乾燥条件下であっても良好な活着率が得られることが明らかになった。以上のことから, ヤブウツギを用いた初期緑化は有効であると考えられた。
  • 小林 章
    2001 年 65 巻 5 号 p. 487-490
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    戸室石は金沢産の安山岩で赤と青の色がある。その利用史と利用の意義を, 現地調査と文献調査により研究した。
    金沢における戸室石利用の意義は以下のようにまとめられた。
    (1) 戸室石の色は明快であるため, 金沢では石の赤色が普遍的であり, 文字どおりの地方色を表わしてきた。
    (2) 青戸室も普及し, 金沢は日本には希有な, 加工した安山岩による赤・青の配色の伝統文化を持った。
    (3) 赤・青の戸室石は, 金沢の土木・建築・庭園の材料として色彩を活かされ, 高い文化的要素となった。
  • 林 陽子, 小林 章
    2001 年 65 巻 5 号 p. 491-496
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    横浜市の山下公園造成当時のいきさつ, 採用された建設技術の位置付を明らかにした。震災復興公園として造られた山下公園は, 帝都復興計画に基づき計画決定され, 大正14年から護岸工事より着手, 昭和5年2月28日に竣工した我が国初の臨海公園である。護岸工事, 敷地埋立て工事は公園造成を目的として行われた。現在植栽されている樹木の多くは開園当時のものである。港からの入園を可能にする石段付きのバルコニ.や端艇溜等, 親水施設も備えている。橋梁には一型鋼, 下水管や構造物には鉄筋コンクリートを用い, 耐震性, 耐久性を考慮し, 当時の最高, 最新の技術で造られた。
  • 安田 信太郎, 横張 真
    2001 年 65 巻 5 号 p. 497-500
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    里山管理から発生する植物性廃棄物をエネルギー資源として有効利用することは, 二酸化炭素の排出量削減に向けた取り組みとして意義がある。本研究では, 里山ゴルフ場から発生する刈り芝残さに着目し, その発生量を実測にもとづき推定した。5種の芝タイプにおける調査から, 乾物量換算で年間398g/m2の刈り芝残さが調査対象ゴルフ場の管理芝地から発生していると推定した。また, ガス化・メタノール製造法により, 398gの刈り芝残さから175gのメタノールが得られると推定した。さらに, より多くのエネルギーを得るための里山ゴルフ場の管理・誘導指針を, 刈り芝残さの回収量の増加および刈高の変更から示した。
  • 一ノ瀬 友博, 森田 年則
    2001 年 65 巻 5 号 p. 501-506
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    淡路島北淡町の農村地域のため池24ヶ所において,2000年の6月から9月の間,トンボ類の分布を調査した。出現したトンボ類の種数とため池の水域面積の間には明らかな関係が見られなかった。TW-NSPANによって,24ヶ所のため池は5つのタイプに分類された。ため池の環境についての変数を説明変数として,分類・回帰樹木を用いて分析を行った結果,ため池の区分には,ため池の位置する標高,隣接する樹林の存在,水域面積,水質が影響を及ぼしていることがわかった。特に,ため池の周囲の約半分以上で樹林と接していれば,林縁や暗い環境を好む種が出現することが明らかになった。
  • 嶽山 洋志, 上甫木 昭春, 佐藤 治雄
    2001 年 65 巻 5 号 p. 507-512
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    地域の生態系を理解する学習拠点を目指して学校敷地内に設けられた学校ビオトープには,都市の自然環境の資産としての役割も期待される。本研究では,学校ビオトープを所有する都市域の小中学校及びその周辺環境において,チョウとトンボについての行動を-個体追跡調査によって把握することにより,学校ビオトープの計画・デザインのあり方を探ることを目的とした。その結果,コの字型の校舎の開口部に,菜園やプールと一体となった学校ビオトープを設けることや,大木の創出や構造物の垂直緑化,粗放管理の草地の確保などがチョウとトンボの行動を支える緑地環境として有効であることが明らかとなった。
  • 大澤 啓志, 勝野 武彦
    2001 年 65 巻 5 号 p. 513-516
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    アカガエル類2種の生息数 (概数) を規定する環境要因について解析するため, 多摩丘陵中南部~三浦丘陵北部に点在する7箇所の公園・保全緑地を対象に, 1999年~2001年にアカガエル類の卵塊数調査を実施した。7地点での3年間の卵塊数の平均はニホンアカガエルが13~2250卵塊, ヤマアカガエルが15~165卵塊であった。ニホンアカガエルの卵塊数は過湿田と休耕過湿田の両方の面積 (rs=1.00) との, またヤマアカガエルの生息数は耕作されている水田ではなく休耕田の湿地面積 (rs=0.94) との関係が強くなっていた。このように両種の卵塊数は, 繁殖に使われる植生区分の面積や管理状態により規定されていた。対照に非繁殖期の植生区分は両種の卵塊数との間に関係は見られなかった。
  • 鈴木 圭太, 大窪 久美子, 澤畠 拓夫
    2001 年 65 巻 5 号 p. 517-522
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧種であるダルマガエルRana porosa brevipodaの生息状況と環境条件を把握するため, 隔離分布地である長野県において個体数調査及び聞き取り調査を行った。交雑が問題とされるトノサマガエルRana nigromaoulata, 及び中間個体についても同時に調査を行った。ダルマガエルの生息分布は北から辰野町, 箕輪町, 南箕輪村, 伊那市, 駒ヶ根市, 高森町で確認された。過去には連続した生息地であったと考えられる隣接地区においても, 車道や構造物, 河川によって分断された場合には, 生息の有無に明確な違いがみられた。数量化II類の解析からダルマガエルやトノサマガエルの個体数密度を減少させる要因の一つとして, 圃場整備が挙げられた。
  • 夏原 由博, 三好 文, 森本 幸裕
    2001 年 65 巻 5 号 p. 523-526
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    開発や保護がカスミサンショウウオの絶滅確率におよぼす影響について, メタ個体群存続可能性分析によるシナリオ分析を行った。調査地は滋賀県南部の面積約200haの孤立した丘陵で, かつては全ての谷が水田であったが, 現在では大部分が耕作されていない。1歳到達仔数および上陸後の生存率と移動率を変化させ, 土地利用のシナリオを変えてシミュレーションをおこなった。その結果, 全面開発された場合, 小規模な保護区を設けても絶滅リスクは緩和できないこと, 部分開発でも絶滅リスクは増加することが示唆された。また, 現状維持でも孤立したパッチには個体群が回復しないこと, 耕作放棄の影響は部分開発よりも大きいという結果が得られた。
  • 山尾 あゆみ, 中尾 史郎, 中島 敦司, 養父 志乃夫, 山田 宏之
    2001 年 65 巻 5 号 p. 527-532
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近畿地方の70か所の淡水湿地で中型アメンボ類5種を対象に, 生息種構成と, 湿地周辺の土地利用, 水面上の樹冠被率, 草本植生の生育型と植被率, ならびに汀線構造との関係を調査した。また室内実験で, 産卵基質選好性および産卵場所の水面に対する位置関係を調査した。その結果, コセアカアメンボとヤスマツアメンボの生息は, 湿地周辺の樹林地率, 水面上の樹冠被率や汀線部周辺の土砂域の面積と, ナミアメンボ, ヒメアメンボおよびハネナシアメンボの生息は, 水面上の樹冠比率や草本植生の生育型とそれぞれ密接な関係があった。以上の結果から淡水湿地におけるアメンボ類の生息環境保全において配慮すべき要件を造園的な見地から議論した。
  • 上甫木 昭春, 山崎 綾子, 佐藤 治雄
    2001 年 65 巻 5 号 p. 533-538
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 絶滅のおそれのある小型淡水魚であるハリヨの生息地の変化をアンケート調査より捉え, その変化に影響を及ぼす環境要因を地域及び地点スケールでの自然的・社会的状況の変化から考察した。その結果, 地域スケールでは, 農業, 工場による地下水揚水に伴う地下水位の低下や湧水の洞渇, 圃場整備による生息地そのものの破壊や農業用給水パイプの設置による極端な季節的水位変動の発生など, 従来の灌漑システムの崩壊が影響要因と考えられた。地点スケールでは, 砂礫質の底質, 10~40cmの水深, 水草の存在などの物理的構造が必要であることが確認されると同時に, 人の利用やかかわりを深めることの重要性が示唆された。
  • 橋本 啓史, 夏原 由博
    2001 年 65 巻 5 号 p. 539-542
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    シジュウカラの生息が都市においてバランスのとれた食物網の存在の指標となると考え, 環境情報をGISで解析し, ロジスティック回帰でモデル化することによって, 大阪市において本種の生息する都市緑地の形態を明らかにした。環境情報の読み取り方法を2通りでモデルを作成した。1つめのモデルでは緑地内および緑地から50mバッファ内の樹冠面積と緑地の形状が, 2つめのモデルでは緑地の重心から半径200m以内の樹冠面積のみが説明変数に選ばれた。2つめのモデルから, 大阪府の市街地においてシジュウカラの生息確率が0.5以上になるには, 半径200m円内に4.0ha (32%) 以上の樹木が必要であることが明らかになった。
  • 松浦 俊也, 横張 真, 東 淳樹
    2001 年 65 巻 5 号 p. 543-546
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    数値標高モデルと現存植生データを用い, 谷津の景観構造を数量的に把握し, 谷津における高次捕食者であるサシバの生息を規定する土地環境条件を推定した。解析対象地域内の台地域における繁殖期のサシバの生息環境は,(1) 谷の横断方向に樹林地一水田一樹林地となる土地利用配列,(2) 樹林地と水田の隣接長,(3) 谷底低地の幅, の3点と関係がみられた。サシバの生息の有無を目的変数とした判別分析の結果,(1) 谷の横断方向の土地利用配列により, 7割以上のサシバの生息環境が推定可能であることが明らかとなった。これらの特徴は, サシバの採食効率の面から解釈できると考えられた。以上の条件を用い, サシバの生息適地を広域的に推定した。
  • 川村 みゆき, 大窪 久美子
    2001 年 65 巻 5 号 p. 547-552
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    水田地域の生物生息地としての評価を目的とし, 長野県上伊那郡の5地区において, チョウ類相をルー トセンサス法で調査をした。チョウ類が吸蜜した植物についても記録した。中山間地では総種数, 総個体数が多く, 多様な生息環境の存在が考えられた。中山間地未整備水田では多様度指数 (β) が高く, 同じく基盤整備水田では最も低かった。中山間地では環境評価値が高く, 市街地では低かった。中山間地では総吸蜜頻度と吸蜜植物種数が多く, 中山間地未整備水田では全吸蜜植物中の在来種割合が高く, 同じく基盤整備水田では最も低かった。基盤整備や市街化がチョウ類群集のみでなく, 植物との関係性にも変化をもたらしていることが指摘された。
  • 宮久保 知和子, 上野 達也, 倉本 宣
    2001 年 65 巻 5 号 p. 553-556
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    絶滅が懸念されているカンエンガヤツリには, 突如大きな個体群を形成する現象が見られる。その現象を本種の種子発芽特性の点から解明するため, 実験室内において10の温度条件と4つの光条件を組み合わせ, 計40の条件区を設定して発芽実験を行った。その結果, 発芽には変温効果が認められ, 発芽に最適な温度条件下においては緑陰感受性は確認されなかった。本種に見られる現象は, 埋土種子集団の形成ののちの撹乱という環境の変化と, 変温効果による種子の裸地検出機構によるものであった。そのため, 本種の保全には埋土種子集団を含む浚渫土等が有効な材料となると考えられる。
  • 島田 直明, 藤原 一繪
    2001 年 65 巻 5 号 p. 557-562
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    適切な二次林管理対象地の選定のための基礎的研究として, 植物種や植生の空間的分布と人為的管理や土地利用履歴との関係を明らかにすることを目的に調査を行った。その結果, 人為的管理によって出現頻度が増加・減少する下位単位区分種が多いこと, 過去の土地利用で草原であった地区では森林性の種は分布しないこと, 森林が継続している地区では草原性の種の分布は少ないことが明らかになった。これらのことから種多様性のため, かつ効率的な二次林管理のためには, 種子供給源となる現在の種の分布調査をした上で管理適地の選定などの植生管理計画が重要であると考えられる。
  • 楠本 良延, 小池 文人, 藤原 一繪
    2001 年 65 巻 5 号 p. 563-568
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    神奈川県域で1969-2000年に取得された826地点の残存自然植生のデータベース化を行い, TWINSPANならびに植物社会学的表操作により自然植生の分類を行った。これにより調査地の自然植生を14タイプに分類した。次に環境データとして, 地形, 気候, 土壌, 地質, その他の環境データを構築し, GISを用いて植生調査地点の環境値を抽出し, ロジステック回帰分析を用いることにより各植生タイプの成立環境要因を定量的に把握した。さらに, このモデルを用いて潜在自然植生図を作成した。この研究により, 個々の自然植生の成立する環境が明らかになるとともに, 客観的な方法による潜在自然植生図の作成が可能となった。自然植生の保全や回復の基礎的な情報となるものと期待する。
  • 古賀 陽子, 小林 達明
    2001 年 65 巻 5 号 p. 569-574
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    房総半島に自生するミツバツツジ類の山採りとその後の民家移出の実態について調査した。その結果, 現在の分布域は新第三紀起源の砂岩・泥岩地域の小起伏山地域内に縮小していた。一方市内には自生区域で7割弱, 市街地でも1割程度の民家でミツバツツジ類が植栽されており, その採取地や入手方法は自生地に近いほど地元の山採りが多かった。こうした山採りは1970年から1985年の間に激化するが, この時期は炭焼きの衰退や山間部の開発等により自生地周辺の農山村生活に変化が生じた。さらに臨海部で工業開発が進行したことを契機に既存市街地周辺で急速な人口増加が生じており, こうしたことがミツバツツジ類の庭木としての需要を増大させた。
  • 森 清和, 島村 雅英
    2001 年 65 巻 5 号 p. 575-578
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    横浜市域のエコロジカル・ネットワーク計画の基礎研究として, 水田及び池の特質と推移について検討した。約100年前, 水田は谷戸田と河川沿い水田がほぼ同面積で約7400haあり, 池は谷戸奥の農業用の溜池を中心に約140ヶ所あった。現在では, 水田は約600haに減少するとともに, 池は溜池がほとんどなくなり, 53ヶ所が公園化等により残されているに過ぎない。その保全再生が今後の大きな課題である。
  • 飯山 直樹, 鎌田 磨人, 中川 恵美子, 中越 信和
    2001 年 65 巻 5 号 p. 579-584
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    棚田畦畔がもつ草地性植物の生育地としての機能を把握するため, 徳島県上勝町樫原地区において, 次のようなことを明らかにした。当地では, 全水田面積に対する畦畔面積の割合は29.4%であり, 水田に付随する草地の面積は大きい。植物群落は, 畦畔の物理的な構造に対応して異なっており, 土や石垣等の様々な物理環境の畦畔があることにより, 地域内の植物の多様性が高められている。畦畔における年間の草刈り回数の違いは植生高や遷移度に影響を与え, 刈取り回数が多いほど (最大3回), それらが低く保たれた。一方, 草刈り回数の違いは, 植物群落の種組成や多様度には大きな影響は及ぼさなかった。出現種数や多様度は草刈りが行われないまま2年間放置された畦畔でも変わらず維持されていたが, 5年間放置されると極端に減少していた。
  • 中本 学, 関岡 裕明, 下田 路子, 森本 幸裕
    2001 年 65 巻 5 号 p. 585-590
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 福井県敦賀市中池見の休耕田において, コナギやアゼナなど小型で一年生の水田雑草を保全するための管理手法を検討した。植生調査は, 耕起を再開した1997年に開始し, 復田を行った2000年まで継続した。耕起を停止した場合には, サンカクイなど特定の多年生草本が著しく増加するため, 耕起の継続は不可欠であった。さらに, 耕起を継続しても増加する多年生草本を減少させるには, 復田が有効であった。このことから, 生物の保全を目的とする休耕田の管理手法として, 耕起の継続に加えて数年に一度の復田を組み入れるシステムを提案した。
  • 田村 和也, 浅見 佳世, 赤松 弘治, 中尾 昌弘, 野村 利己, 塚西 豊志
    2001 年 65 巻 5 号 p. 591-594
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    猪名川下流域の低水敷において, 河川本来の自然植生を復元することを目的とした手法を用いて, 河床掘削工事を行った。工事では, 平面形状の保全, 低水敷の緩傾斜化, 現場で発生した表土の埋戻しを行った。2年間にわたる追跡調査の結果, 埋戻しを行った区域では, 行わなかった区域と比較して次のような効果が得られた: 立地に応じた多様な植生の復元, 帰化植物群落面積の減少と在来植物群落面積の増加, 絶滅危惧種の出現。このように, 河床掘削工事においても低水敷を残し, 平面形状の保全, 緩傾斜化, 表土の埋戻しを行うことで, 河川本来の植生の成立やその多様性を高めることが可能であることが示された。
  • 松村 俊和
    2001 年 65 巻 5 号 p. 595-598
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    兵庫県の淡路島北部地域において災害復旧地・非整備地・圃場整備地の水田畦畔法面植生を調査した。種多様性は非整備地, 災害復旧地, 圃場整備地の順で高かった。種組成は圃場整備地で欠落する種があったが, 災害復旧地は非整備地と類似していた。種子散布型では圃場整備地は短距離散布型の種が少なかったが, 非整備地は短距離散布型の種が比較的多く侵入していた。圃場整備では表土を使用せず, 近くに種子供給源は存在していない。一方, 災害復旧地では表土を使用し, 近くに種子供給源が存在している。このように整備方法の違いは, 種多様性の保全に影響を与えていることが示唆された。
  • 故選 千代子, 森本 幸裕
    2001 年 65 巻 5 号 p. 599-602
    発行日: 2001/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は都市環境における鳥被食散布植物の実生更新の実態とそれに影響を与える環境要因を明らかにすることである。京都市街地において中高木種鳥被食散布植物の分布状況, 実生の成立に影響を与える果実食鳥の冬期の分布について調査し, 緑地や土地被覆の状態とともにGISデータベース化した。遷移初期に現れる陽樹は実生更新が活発なこと, また外来種が分布を拡大しつつあることが明らかになった。実生数に影響を与える環境要因を検討した結果, 200m×200mの区画単位において実生数は植被率に最も左右され, また母樹の数と果実食鳥の個体数に高く影響されることが明らかになった。
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