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丸山 宏
1984 年 48 巻 5 号 p.
1-6
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
円山公園の拡張の目的は, 公園地の官有地化により名勝地を確保することにあった。経済都市として京都が復興するために数々の政策が行われたが, 名勝地の保護あるいは確保もその一つであった。円山公園の拡張はそのテスト・ケースともいえる。拡張の手段として土地収用法を適用したことは, いかに円山公園が重要なものであったかが理解される。公共の名のもとに行われた土地収用は, また公園に公共性を付与するものでもある。
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柳 五郎
1984 年 48 巻 5 号 p.
7-12
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
中国租界の公園設置は開港地における日本居留地と較べて外交上の約定よりも自治行政の存在か重要視される。この公園地は自治権を保証された居留外国人の主導たる自治行政機関をもって運営された。租界市政としての公園設置は立法議事の中心たる参事会の議決に基づき, その実務執行の役割を上海祖界工部局に求めた。必然的にこの公園行政か中国人を除外したものであることに問題を見付け出すのである。
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伊藤 太一
1984 年 48 巻 5 号 p.
13-18
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
今日, 合衆国の国立公園を利用するためには, 自動車を持つことが不可欠であるが, 初期には鉄道で訪れるのが主流であった。この国立公園への交通手段の変遷を調べると, 自動車の利用を促進した要因が明白になるとともに, 今日の利用形態の内包する問題も明らかになった。すなわち, 公共交通が欠如しているため, 社会的弱者が利用できないということと, 自動車の介在にばり, 人間と自然との交流が妨げられていることである。
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丸田 頼一, 支倉 紳, 柴田 知之
1984 年 48 巻 5 号 p.
19-24
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
1864年に, カリフォルニア州政府が設置したヨセミテ公園は, 広域な原生地域を対象とした全米で最初のものであった。その後, この公園は国立公園に吸収合併されたが, 1902年, レッドウッドパークの設置以後, カリフォルニア州政府は州営公園系統の整備を着実に進め, 現在では, 260ヵ所にものぼる多種多様な公園を設置している。本論においては, このような州営公園の発展の史的事実及び背景等を明白にしようとするものである。
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永嶋 正信
1984 年 48 巻 5 号 p.
25-30
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
日光地域における1868-1931年までの間は, 野外Recの利用としみた場合, 大きな変化がある。江戸時代の庇護がなくなった地域で, 歴史的建造物, 名勝地を維持していくことが大変な仕事であった。やがて皇族の利用, 諸外国の大公使館の別荘がつくられ, 外務大臣が来訪するなど国際的にも重要さを加えていた。1879年に保晃会が設立されたがその当初から我国の大公園として日光地区を考え, 1911年の請願に向けてその機が熟していった。
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赤坂 信
1984 年 48 巻 5 号 p.
31-36
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
19世紀初頭に国土美化を提唱したフォアヘアは活動の拠点を国土美化特別委員会におき, 農会などと連携をはかりながらその思想の普及に努める。国土美化を容認する王権の交代とともに特別委員会は解体するが, 国土美化思想の影響をうけた美化協会 (市民団体) がこの運動を担うことになる。しかし美化協会の活動は社会計画的な視点に欠け, 局所的な美化装飾にはしって後に批判されるが, これは国土美化思想の大衆化の一形態といえよう。
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白幡 洋三郎
1984 年 48 巻 5 号 p.
37-42
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
1789年, 代々の宮廷庭師の家に生まれたレンネはその職をついだ。しかしヨーロッパ近代の幕開けフランス革命の年に生まれたことで, 彼は19世紀前半の公園開幕の時代に出会う。宮廷造園家の仕事と都市自治体の公共造園の仕事とを結びつけることは, レンネを代表とするこの時代の造園家たちが史上初めて直面した大きな社会的要請で, この時生まれた公園観は, ドイツの公園の性格を決定づけた点で大変重要である。
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中村 一
1984 年 48 巻 5 号 p.
43-48
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
世界の国立公園が創設された年を国別に調べて分析した。また, 創設の背後にある政治経済的諸条件を概観することによって, 国立公園成立の歴史的類型を8つ取り出した。さらに, これらの類型の形成に関係すると考えられるナショナリズム, 観光, 自然保護の三契機を見出した。これらの類型は, 世界の国立公園の歴史的性格を説明する上で有用と考えられる。その類型のひとつとしてのファシズム型の適用を日本の場合について検討した。
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伊藤 登
1984 年 48 巻 5 号 p.
49-54
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
共同体風景としての都市の風景を考える時, 空間に対する礼的な対応の仕方が重要と考えられる。本研究では, これを空間作法とし江戸後期の都市「江戸」を対象に分析した。この結果, 江戸の都市景観は地域に固有な自然や文化・社会システム・美意識といった風土に脈打つものであり, 空間作法の存在が重要であることがわかった。また, 江戸には都市意匠が存在し, その技術的発想は造園的なものであった。
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小野 佐和子
1984 年 48 巻 5 号 p.
55-60
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
自然と人間との遊びを媒介としたかかわりをさぐる一助として江戸時代の園芸植物の流行現象を考察した。
江戸時代のたび重なる園芸植物の流行は, 奇品-通常とは異なる珍しい植物の嗜好を大きな特徴とするか, そこでは, 奇品は自然が人間の助けをえて作り出す傑出した作品であると考えられた。また奇品の流行には競争及び賭の要素を, 流行の背景には武家と植木屋の積極的な関与の存在を認めることができる。
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鈴木 誠
1984 年 48 巻 5 号 p.
61-66
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
20年以上放置され荒廃した明治期の庭, 旧伏見宮家別邸銚子瑞鶴荘の庭を発掘調査し, 実測, 文献, ヒアリングにより往時の姿を推定した。特に主庭部分については旧景観の図上復元を試みた結果, 明治期の庭園の特徴とされる自然を生かした借景庭園であることがわかった。また, 千葉県銚子犬吠埼という庭の立地の意味するものもあわせて考察した。
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河原 武敏
1984 年 48 巻 5 号 p.
67-72
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
平安から鎌倉時代の庭園植栽技法を明らかにするため, 31の絵巻を対象に, その場面を195個所抽出・分類整理した。次いで同時代の作庭秘伝書である『作庭記』及び『山水井野形図』と対照しつつ考察し, 新たに斜幹仕立て・双植・交叉配植の多見, 建物や工作物の修景配植, 保護囲い, 愛好された樹種などを確認した。
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進士 五十八
1984 年 48 巻 5 号 p.
73-78
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
Agingは古びることの意・本論は日本庭園の精神的特質の代表的側面とされてきた“わび・さび”の現代的解釈をAging概念を導入することによって次のように結論した。モンスーン知戻高温多楓土下では自然材が時間経過によってAgingがかかり, 風化変質腐朽してゆく“さび”の語源にその意味が含まれるようにこれを日本的風土文化の美意識は評価した。時間美としてのAgingは西洋庭園意匠に人工の廃墟が用いられたように造園の本質的要素でもある。
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木村 三郎
1984 年 48 巻 5 号 p.
79-84
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
筆者は昨年本學會誌第47巻第4号に「作庭記新考」と題してその特有の語句を幾っか摘出してその成立時代の推定を行った。そこでよく知られる『山水井野形図』についても同じ方法を重視するとともに更に『作庭記』の一般論に対し,『野形図』の専ら配石排植論に終始したその補完的な後績本としての評価を行ってみた。同時に天地人 (三才) 用語の使用から同時代の諸芸能における同種の用法の動向と対比してその成立時代性をも追究しその時代を14世紀後半乃至15世紀前半と推定したのである。
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三沢 彰, 斉藤 庸平
1984 年 48 巻 5 号 p.
85-90
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
街路樹等により通過車輛がさえぎられると騒音が実際の音量より小さく感じられることは体験的に知られている。いわば樹木の心理的な減音効果である。これは樹木が車をさえぎるという視覚刺激の変化が聴覚に影響するためと考えられている。
本研究は実験的な手法により, この樹木の持つ心理的な減音効果を実証し, 更にその減音量を求めたものである。
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岩河 信文
1984 年 48 巻 5 号 p.
91-96
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
熱気流による樹木の発火危険を探るため, 発火時の葉温を既往の実験成果から整理するとともに, その検証のための実験を行った。既往の実験姓として空気温度の測定であったため藻内への熱の貯留から発火に至る経過がつかみ得なかった。本実験では藻の麺が発火する時点で近傍の遮敝板内の測点の値を記録することにより, 輻射熱の影響のない適正な葉温 (発火限界温度) を把握することができた。
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小林 章, 金井 格
1984 年 48 巻 5 号 p.
97-102
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
造園材料としての白川砂の色彩的特性を明らかにするため, 砂利・砂の色彩を比較研究した。材料: 市場品の白川砂・川と山から採取した風化した北白川花崗岩の砂, および3種類の白色の造園用砂利・砂。方法: 砂利・砂の色彩は光電色彩計により測色し, XYZ表色系で表示した。
次のことが明らかにされた。(1) 白川砂と風化した北白川花崗岩の砂との色彩の相異,(2) 乾湿による白川砂の色彩の変化,(3) 白色の砂利・砂の色彩の共通点。
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矢橋 晨吾, 金光 達太郎
1984 年 48 巻 5 号 p.
103-108
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
前報までは, マサ土の水食や崩壊に関係する物理性を追求してきた。本報では, まず, 法面崩壊の実態を現地調査から捉えた上で土中水分の分布や挙動を把握するため, 試験法面の崩壊部近傍における基本物理量, 地下水位, 水分張力, 等を測定し, 崩壊機構との関係を求めた。その結果, 盛土内における物理性や水分張力はかなり複雑な様相を呈し, 浸透水はこれらに左右され, 透水性の影響を受けて流動していることがわかった。
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増田 拓朗, 広畑 晴彦, 吉田 重幸
1984 年 48 巻 5 号 p.
109-114
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
マサ土に土壌改良剤 (有機質系: オガクズ牛糞堆肥, バーク堆肥, ピートモス, 無機質系: パーライト, バーミキュライト) を混入し, ヘデラ (H. helix‘Pittsburgh’) を植栽してその生育に及ぼす土壌改良剤の効果を検討した。ヘデラの生育は土壌中のN含有量と高い相関があるが, バーク堆肥はオガクズ牛糞堆肥に比べ肥効が悪いこと, 無機質単用でも混入比20%程度ならば, マサ土のみよりもよい生育を示すことなどが認められた。
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森本 幸裕, 小橋 澄治
1984 年 48 巻 5 号 p.
115-120
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
自然性の高い森林の造成を目的とした大規模人工改変地である万国博記念公園樹林地土壌調査結果をもとに植栽後ほぼ10年の発達過程を調べた。その結果, 表層土のかたさや, 諸性質の変化のようすがあきらかとなり, その変化に影響を与える要因として, 樹林の生育状態 (平均単木幹材積×立木密度3, 2) と種類, 立地の排水条件などが抽出され, さらに盛土材ごとの (マサ土と大阪層群) 土壌中窒素蓄積量の平均増加速度のデータを得た。
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浅野 義人
1984 年 48 巻 5 号 p.
121-126
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
北海道内に植栽されている緑化樹木125種を対象に, アンケート法により植栽状況を調査し, その分布域を規定している温度気候要因を解析した。比較的よく分布を分けることの多い温度要因は, 平均年最低気温或は1月の平均気温であることが認められた。平均年最低気温の等値線を用い, 一部, 温量指数線により補正して, 植栽ゾーン図を作成した。
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下村 孝
1984 年 48 巻 5 号 p.
127-132
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
オオイタビ, ヒメイタビ, イタビカズラの内, オオイタビが自生の北限を越えた広い地域でコンクリートブロックの塀などに利用され高い評価を得ている事が分った。
3種は形態が類似し, 識別が困難であるとされてきた。図鑑類の調査に加え, 形態観察を行ない, 異形性の有無, 幼形葉の形態, 葉裏面の細毛の有無, 果のうの大きさが有効な識別の為の指標となることを明らかにした。
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近藤 三雄, 望月 明宏, 高橋 新平, 小沢 知雄
1984 年 48 巻 5 号 p.
133-138
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 花卉の導入により道路等ののり面の植生景観の多様化を図るためには, どのような種類の花卉の導入が望ましく, いかなる割合で混播することが緑化用芝草と共存し, しかも修景効果を高めることになるかを探るための実験を行った。その結果, 花の着生度合, 生育等からケンタッキー31フエスキューとの望ましい混播割合 (粒数比) はオオキンケイギ久ムシトリナデシコ, ルドベキアでは30%, フランスギクで50%という目安が得られた。
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近藤 三雄
1984 年 48 巻 5 号 p.
139-144
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では芝生地の収容力を究明する一環として, 踏圧強度と芝生の生育との関係を生理的レベルで検証することを意図した。その結果, 毎日15回連続30日間, 踏圧を加えた芝生の茎葉は草丈, 葉長の生育が著しく抑制されるなど損耗し, 光合成速度も無踏圧の芝生に比べて半減することなどか判明した。なお, 草丈, 葉長などが著しく抑制されるのは芝生に踏圧が加わることによって生成されるエチレンの作用によるものであることが判明した。
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重松 敏則
1984 年 48 巻 5 号 p.
145-150
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
ネザサ型林床を林間でのレクリェーション利用に適した状態に維持管理していくための指針を得るために, 頻度を違えた刈取り実験を実施した。その結果, 夏と冬の年2回の刈取りではネザサは急激に衰退し, ほとんど駆遂されてしまったが, 年回の冬期刈取りでは旺盛な再生を示した。この場合, 稈高か高過ぎることと, 光条件に恵まれたところではススキやワラビも繁茂してくるため, 年1回, 初夏の頃の刈取りか適当であると考察された。
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重松 敏則, 高橋 理喜男, 鈴木 尚
1984 年 48 巻 5 号 p.
151-156
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
ツツジ型の林床景観を創造する上で必要な既存二次林の改良指針を得るために, 林内光条件と自生ツツジ類の着花との関係を調査した結果, 良好な着花を達成するには, 林内相対照度がコバノミツバツツジでは30%以上, ヤマツツジでは20%以上必要であり, モチツツジでは40%でも不足することが明らかとなった。また6月上旬までに間伐, 選択的下刈りを完了すれば, 翌春には開花の得られることが明確となった。
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養父 志乃夫, 重松 敏則, 高橋 理喜男
1984 年 48 巻 5 号 p.
157-162
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
減少の著しいカタクリ群落の生態学的な保全手法を確立し, また, 森林公園等における群落の復元とその管理手法に関する指針を得るために, 群落量と光, 土壌条件, 競合植物との関係を調査した。その結果, 群落の発達は谷部の落葉広葉樹林下で優れ, 林床にほぼ一面の開花 (花数: 900個Aa程度) を確保するためには, 春期の林内相対照度を40~50%(夏期: 10%程度) に調整し, さらに1~2年に1回, 夏期の下刈りが必要であることが判った。
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李 基徹, 糸賀 黎, 佐野 正徳
1984 年 48 巻 5 号 p.
163-168
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
筑波研究学園都市における公園緑地のなかに残されている既存樹林-農用林として植林された平地林 (主にアカマツ)-の利用と管理のあり方を明らかにするために立地条件と林床typeを類型別に調査した。林床typeを裸地型, 芝生型, 草本型, 低木型, 自然型の5typeに判定し, 林分及び林床条件, 土壌条件, 相対照度などの立地条件と管理実態より, 樹林地の維持管理の類型化のための基礎資料を得て, 今後の研究の指標とした。
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倉本 宣, 曽根 伸典
1984 年 48 巻 5 号 p.
169-174
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
多摩川の固有植物群落として, 近年保全が図られてきたマルバヤハズソウーカワラノギク群集及びカワラヨモギーカワラサイコ群集の消長を1976年と1983年の植生図を比較して検討した。前者の占有面積は17%に, 後者のそれは76%に減少していた.河辺植生が本来持っていた動的平衡を破壊する要因の一つである, 河川敷内のコンクリート裸地は1.3倍に増加していた。河辺植生の保全と, 河川敷の利用との関わりについて考察を加えた。
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坂本 圭児, 小林 達明, 池内 善一
1984 年 48 巻 5 号 p.
175-180
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
京都下鴨神社境内の立入禁止区域の常緑一落葉混交林において, その林分構造について調査した。その結果, 上層木は, 常緑, 落葉両樹種の優占が明らかであったが, 常緑樹種は, 多くが閉鎖林部, ギャップ (樹冠欠損部), 林縁で後継個体を維持しており, 落葉樹種は, 先駆種を含め, ギャップ, 林縁でしか, 後継個体がみられないことがわかった。この結果から, さらに, この森林での更新, 都市林としての問題点について考察した。
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中村 徹, 石井 秀樹, 山田 孝雄, 雨宮 礼一
1984 年 48 巻 5 号 p.
181-186
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
スキー場の植生と土壌の現況を知り, それをもとにスキー場の植生管理を考える目的で, 新潟県長岡市営スキー場において調査した。その結果, 識別されたゲレンデ内の5つの植生単位のうち, 4つの植生単位で問題点があり, これらに対する方策を提言した。
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島田 正文
1984 年 48 巻 5 号 p.
187-192
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
市街地における公園緑地の整備において, 従来の利用面を中心とした手法に加えて, 昆虫類の生息をも考慮に入れることは, 公園緑地の質的向上等にあって重要な一手段になるものと考える。本報においては, 各種昆虫類のうち, 腐肉食性昆虫等を対象としたベイトトラップによる調査結果から, これらの昆虫類の生息にあっては, 植栽, 利用, 管理状況等の面において十分な配慮を加える必要かあることが把握された。
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堀 透, 藤井 英二郎, 安蒜 俊比古, 浅野 二郎
1984 年 48 巻 5 号 p.
193-198
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
単植では対照的な注視特性をもつコノテガシワとチャボヒバを使って, 単植と2~4本の列植に対する注視特性を注視点記録装置によって比較した。チャボヒバでは2本列植の段階で列植特有の注視特性を示すのに対して, コノテガシワでは2本列植ではまだ単植的な注視特性が強く残り, 3本列植ではじめて列植としての注視特性が明確になった。
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藤井 英二郎, 清田 秀雄, 安蒜 俊比古, 浅野 二郎
1984 年 48 巻 5 号 p.
199-204
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
緑葉, 紅葉, 落葉期のケヤキとマロニエに対する注視特性を比較した。ケヤキでは3期ともマロニエに比べて幹とその周辺に注視点がより集中した。また, ケヤキの注視点移動は幹に沿った垂直的移動が多く, マロニエでは幹と樹冠, 枝を結ぶ斜めの移動が多かった。これらの違いは, 細かな枝ぶりと多くの小さな葉による密で均質な樹冠のケヤキと, 疎らな枝ぶりで大きな葉をもち変化の多い樹冠をもつマロニエとの違いが原因と考えられた。
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前中 久行
1984 年 48 巻 5 号 p.
205-210
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
草地に加わるレクリェーション利用圧は延べ滞在時間・人で表現するのが最も良いが, これは最大滞在者数と「平均利用時間」の積として求めることもでき, この関係を用いると調査の能率を上げることができる。各地の公園利用調査をもとに検討した結果, 平均利用時間は近郊地の園地では4.2~5.0時間, 都市基幹公園内では5.4~6.4時間, 住区基幹公園内では7.0~8.9時間の値か得られた。
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岸塚 正昭, 熊谷 惟明, 金井 格
1984 年 48 巻 5 号 p.
211-216
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
自然歩行に適う園路線形の解法を開発したい。このため2点間を歩く動線の予測から円曲線で幾何学モデルを構成し, これを一般解として定式化する。本式と, 前報の歩行実験で検証されたhuman-scaleの曲率式を連立した数値解析プログラムが作成され, 意図的なテストデータを入力した試験が行われた。収束の方法停止条件を変えた出力解を対比し検討の結果, 測量器械の精度に見合う解法のプロトタイプがほぼ完成したと思われる。
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永松 義博
1984 年 48 巻 5 号 p.
217-221
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
全盲者を対象に, 戸外活動への意識について, 調査した結果の分析である。
全盲者は, 行動範囲, 行動時間も限られ, 戸外での, 遊びの種類も, 非常に少ない。特に, 先天性の盲人, 盲人女子に, その傾向がみられ, 戸外活動に対して, 消極的な態度である。戸外遊びでの阻害要因は, 遊び仲間の不在, 自動車事故に対する恐れ, 障害物等にぶつかる危険性等があげられた。
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白井 彦衛, 斉藤 一雄, 城戸 敏子
1984 年 48 巻 5 号 p.
222-227
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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キャンパス計画の基礎資料を得るためアンケート調査を実施した。千葉大学の学生, 教職員と地域住民の3者を対象とし, 意識の差, 構成要因への考え方を探った。その結果, 学生と社会人とではキャンパスを見る腹が異なること, 前掲3者は立場の相違により施設に対する関心が異なること, とくに地域住民は大学関係者より大学の役割を強く意識すること等, 価値ある資料か得られた。
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安島 博幸, 熊谷 圭介
1984 年 48 巻 5 号 p.
228-233
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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然風景地内における, 地形の構造物への適合性を, 景観的に分析した。計画段階及び対象となる地形スケールに沿い, 地形の起伏等を利用して構造物を見えにくくするという観点からの地域全体的なマクロな把握を, 数値地形モデルを用い確率論的に取り扱った。さらに, 地形に調和した構造物の位置選定ということから, 立地タイプを抽出した。またスケール比, シルエット率といった制約条件を計量心理学的アプローチにより導出した。
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金 承煥, 糸賀 黎
1984 年 48 巻 5 号 p.
234-239
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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国の発展過程において, 自然に対する開発政策と保全対策は対立する要素を持つ。そこでまず, 国土における自然の現況および保全と開発の持つ意味を解析する。次に, 具体的な問題として韓国を中心にしながら, 比較対象国として人文・社会・自然環境が似ている日本を選び, 国土利用計画および自然環境保全を目的とした政策展開過程, 法律・行政等の制度的なことを参考にし, 問題点を検討する。
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糸賀 黎
1984 年 48 巻 5 号 p.
240-245
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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半世紀を経た日本の国立公園制度の伝統的な地域制のあり方について, 主として南アルプス国立公園の計画やスーパー林道建設を事例研究として, 次の諸点より論ずる。(1) 政策決定システムにおける不確実性・不可逆性, リスク, 遷移に対する配慮 (2) 自然保護運動の評価,(3) 持続性, 持続的発展の重視。開発と保護の統合,(4) 環境管理計画的なアプローチの導入による地域制自然保護システムの再構築と活性化
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斎藤 馨
1984 年 48 巻 5 号 p.
246-251
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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本研究は, 写真による景観評価特性の把握を目的として, 上高地の景観写真 (夏5景・秋5景のモノクロ/カラー, 合計20枚) について, 被験者100名による評価心理実験 (順位法・SD法) と「景観嗜好予測得点 (Shafer: 1969)」の計測とを行なった。
その結果, モノクロ/カラー写真の評価間には差異がある事, さらに既存の景観評価モデルを直接わが国に適用するには問題点があることを明らかにした。
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熊谷 洋一, 柳瀬 徹夫
1984 年 48 巻 5 号 p.
252-257
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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景観アセスメントを実質化し有効に機能させるには, 景観評価の結果が計画・設計プロセスと結びつく必要がある。そこで計画レベルや景観タイプと対応した評価項目, 評価軸からなる景観評価構造を提案した。景観予測事例をもとに評価心理実験を実施し, 当該評価構造の妥当性を検証した。さらに三相因子分析手法による評価構造の検討を行い, 評価主体, 評価対象, 評価尺度間の関係を明らかにした。
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油井 正昭, 石井 弘
1984 年 48 巻 5 号 p.
258-263
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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風致林の概念を体系的に整理分類し, この成果を利用して, 国有林を対象に, 風致林施業の望ましい森林の抽出手法を開発し, 現地検証の結果, 今後の風致林の計画とその施業に関して基本的指針を明らかにすることができた。
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俵 浩三
1984 年 48 巻 5 号 p.
264-269
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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東京以外の道府県庁所在都市および人口30万以上の都市から, 代表的な中央公園を抽出し, その都市の成因, 公園の起源, 立地, 成立期, 規模等を調べ, 全国的な傾向, 地方的特性, 城跡公園の特性等について考察した。
その結果, 北海道以外では, 城跡公園の占める割合が高く, また中央公園は良きにつけ悪しきにつけ, 封建時代の都市形成と深いかかわりをもつものが多いこと等が明らかとなった。
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浅川 昭一郎, 鈴木 幹雄, 小林 昭裕
1984 年 48 巻 5 号 p.
270-275
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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都市スケールでのシンボライズされた景観として山, 河川, 農地, 公園等を含む緑地的景観の占める割合, およびその立地特性を北海道における都市を事例として想起法により抽出した。その結果, 緑地的景観はシンボライズされた都市景観として価値の高いことが示され, また抽出された景観要素はそのタイプによりDIDに対する立地条件, 勾配に対する立地条件, 都市の立地地形条件に対して異なる抽出傾向を示した。
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山田 善之, 田畑 貞寿
1984 年 48 巻 5 号 p.
276-281
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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身近な自然の保全・活用について知見を得るために, 身近な自然要素と市民との関わりに注目し, 諸条件の異なる地域を対象にアンケート調査を実施した。その結果,(1) 世代間と動植物の知見では, 種類名が学校教育で扱われているか否かにより相違がみられた。(2) 自然遊びの形態は, 樹木, 草花の順にこれらを活用した遊びか多く, 多様な遊びがされていたが, 世代間から言えば30歳前後から遊びの形態が単純化されるなどの傾向がみられた。
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広脇 淳, 田畑 貞寿
1984 年 48 巻 5 号 p.
282-287
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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本研究では, 地域を代表する「身近な象徴的自然空間」の認識と活用のあり方を, 自然条件や都市化の状況の異なる3地域において調査・分析を行なった。その結果,(1)「身近な象徴的自然空間」に対する住民の意識と活用のされ方に地域特性に応じた差異か見られた。(2) 自然遊びによる活用が,「身近な象徴的自然空間」に対する認識の違いの重要な要因となっていることがわかった。
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久保 貞, 宮崎 研一, 安部 大就, 中瀬 勲, 上甫木 昭春, 伊藤 康則
1984 年 48 巻 5 号 p.
288-293
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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大阪市における土地利用特性の相違する4つの日常生活圏 (小学校区) を対象に, それぞれを代表する公園を抽出し, 日常生活圏スケールでの公園緑地に関する直接面接調査を実施した。公園の利用程度, 全体的雰囲気, 立地環境と内部環境, 利用行為と満足度について分析し, 各調査項目間の関連性及び土地利用特性との関連性から, 日常生活圏での住民に対応した今後の公園緑地整備についての知見を得た。
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久保 貞, 上甫木 昭春, 安部 大就, 中瀬 勲, 伊藤 康則
1984 年 48 巻 5 号 p.
294-299
発行日: 1984/03/30
公開日: 2011/07/19
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本研究は, 低層集合住宅地において, 人々の反応行動に基づく, 時間次元を軸にした街並み景観変化の認識構造の把握を目的とした。そのために, 時間経過がもたらす住環境の変化と共有空間の景観変化について解析し, 以下の諸結果を得た。(1) 住みごこちの変化は, 緑の変化との係わりが深く,(2) 緑の増加量が支配的要因となっている共有空間の景観変化は, 空間性, 多様性, 自然性の3軸で認識されること等が判った。
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