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鈴木 誠, 井上 学
1989 年 53 巻 5 号 p.
1-6
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
庭園景観に対する評価構造を, 日本の代表的庭園景10景, イギリス, イタリア, スペイン, 中国, フランスの代表的庭園景それぞれ5景, 合計35景の35ミリスライド映像を刺激として, 被験者30名 (学生) により視覚心理実験を実施し, その景観評価を考察した。実験結果の因子分析から4つの顕著な因子軸が検出されそれらは (1) 快適性,(2) 囲続性,(3) 自然性,(4) 華寂性であった。また庭園景サンプルの因子空間に占める位置が国別庭園にまとまる傾向を示すことから, 各国庭園景に対する一定の評価の構造 (イメージ) が認められた。
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埴生 雅章
1989 年 53 巻 5 号 p.
7-12
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
富山県において進めている「雪見環境づくり」のための基礎的研究の一つとして, 中世の二つの和歌集 (玉葉, 風雅和歌集) を取り上げ, その中の雪の歌を雪見の視点から分析した。雪の風景を, 様々な「条件」の相互間速によって出現する「現象」としてとらえ, 詠まれた雪の表現の中から, 9つの「類」に分けられる55タイプの雪景現象のイメージの「型」を抽出した。抽出結果に対しては, 雪見の対象を創出する観点から考察を加えた。
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宮城 俊作
1989 年 53 巻 5 号 p.
13-18
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
近世都市に起源をもつわが国の歴史的市街地では, 近代以前の宅地割が限定的な土地経営のもとで大きく変動せず,「にわ」としてのオープンスペースと家屋群がコンポジションを形成する空間構成が維持されてきた。土地の高度利用を目指した明治中期から昭和初期の土地経営は, 土地所有単位の変更を伴わずに街区内部のビルトアップをもたらしたが, 昭和20年以後は宅地の分割譲渡を経て個別の更新がすすみ, 伝統的な空間構成が変質した。
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浅野 二郎, 白 志星, 藤井 英二郎
1989 年 53 巻 5 号 p.
19-24
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
韓国・扶余に現存する園地址・宮南池について考察する。これは三国史記に誌す百済第30代武王35年 (634), 王宮の南に営まれた園池の址と伝えられるもので, 今日なお田園のなかに中農を伴った小池として, そのおもかげを残している。本論文では史記がこの園池の池水として20余里の間を導水したと伝える導水路を検討するとともに, 園池の四周についても, 現地測量を手がかりとして若干の考察を加えるものである。
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伊藤 太一
1989 年 53 巻 5 号 p.
25-30
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
イエローストーンに続いて1875年に設立されたマキノー国立公園の変遷をたどることによって, 当1時の国立公園観とその意義が明らかになった。当時は自然環境の保全よりも, 地元の利害が重要であった。そのため管理費を確保することが最大の問題であった。また, マキノーの自然は国立公園としての要件をみたすものではなかったが, 軍によって公園としてふさわしい管理が行われ, その後の国立公園の発展に大きく貢献した。
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木村 三郎
1989 年 53 巻 5 号 p.
31-36
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
我国古代造園の源流を探究する場合, 現存する実例が乏しいために専ら古い文献に依存せざるを得ないがその場合上一般の歴史家の常川する古事記・口木書紀その他風土記の類を典嫁とせざるを得ない。就中日本詐紀の中に見出される2~3の造園記述を中心にしてこれまでの造園史家の史観の原点が求められてきた。しかし筆者は [1本書紀編纂者の間に存在する多くの偏見や誤謬を明らかにし併せて我国特有の自然観や国民感精に基く造園形成の源流の特質を改あて探究致した。
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小椋 純一
1989 年 53 巻 5 号 p.
37-42
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
古い時代の植生景観を考える上で, 絵画は参考になるものであるが, それがどの程度の資料性をもつかを述べることはなかなか容易ではない。ここでは, 文化年間に刊行された「華洛一覧図」の資料性を, 同時代に描かれた他の絵図との比較や, 図中の景観を細かく検討することによって明らかにし, 当時の京都周辺山地の植生景観を考察した。その結果, 当時そこには, 低植生地が多いなど, 今日とは大きく異なる植生景観が見られたものと考えられる。
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飛田 範夫
1989 年 53 巻 5 号 p.
43-48
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
京都市の青蓮院は, 火災や移転などによって大きく変化している。しかし, 青蓮院の記録をまとめた『門葉記』と『華頂要略』によって, その変遷をたどることができる。13世紀前半頃の「三条房指図」を見ると建物も庭園も寝殿造の形態になっている。14世紀前半の「十楽院差図」の時代には, 園池は建物に近接するなど害院造の邸宅の影響が見られる。19世紀中頃の「御本坊総図」からは, 書院造の建築に付随した庭園の状態がうかがえる。
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柳 五郎
1989 年 53 巻 5 号 p.
49-54
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
明治初年, 大和三山に醸成されて来た風致感は, 御料地の形成を意識して, 官幣人社, 橿原神宮の創建に契機を与えた。この創建神社の風致に対する国家的側面は, 各藩の烈士を祭祀した招魂社が靖国神社へと発展して行く過程で招魂社附属地から公園を区別したことにも表れて来る。そして創建神社境域に求められた風致の役割は, 靖国神社附属地から官幣大社大社, 明治神宮周辺へと反映され,「風致地区」に強い影響を写えたことである。
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小野 健吉
1989 年 53 巻 5 号 p.
55-60
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
明治中期から昭和初期にかけて横浜を中心に活躍した実業家・原富太郎 (三溪) は, 横浜市本牧三之谷の広大な地所に三溪園を築造した。そのうち外苑は, 自然の景勝は私すべきではないという思想に基づき公開された。また, 古建築を移築し, 地形・眺望を生かした庭景の構成は, 1対1のスケールを持つ写突的な風景式庭園としてヨーロッパ風景式庭園と類似し, しかも日本におけるそれとして高い完成度を示すものであった。
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河合 健
1989 年 53 巻 5 号 p.
61-66
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
日本に持ち込まれた外国空間がどの様に変貌してゆくのか。この問題を, 明治期の神戸外国人居留地を例に考えてみた。具体的には, 外国人らが居留地に造成した公園に注目し, 造成当初のデザインを明らかにするとともに, 彼らがそのデザインを求めた背景を考察した。その結果, この公園は外国人らが非日本人の共同空間として策定したものであり, 日本空間からは完全に分離=「異化」した空間となった, と結論づけた。
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丸山 宏
1989 年 53 巻 5 号 p.
67-72
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
園部公園は明治30年および同39年の二度にわたる国有林の公園地編入により設置, 拡張される。その背景には明治22年の京都・宮津間車道の開盤, 32年「京鶴鉄道」の園部・京都開開通による経済的発展の期待があった。公園設置の要求はこの鉄道着工の年, 明治29年に起こる。丹後, 丹波を訪れる旅客の誘致手段として, また, 郡の諸施設の存在する地区の「顔」として公園設置は園部にとって不可欠な要素であったといえる。
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小野 良平
1989 年 53 巻 5 号 p.
73-78
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
市区改正に始まる近代都市公園整備が, 帝都復興事業を経て一つの結実を見るまで, その間の公園設計の史的展開は不明な点が多い。主に東京の都市公園を対象に新設公園の現れた明治中期から復興事業の完了した昭和初期に亘る公園設計の源流を辿ることにより, 近代化の中で公共造園設計が, 西欧から何を学び如何なる系譜の下に展開してきたのかを明らかにすることを試みた。
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藤崎 健一郎, 島田 久美子
1989 年 53 巻 5 号 p.
79-84
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
東京都区部における公園開設の歴史を数, 面積, 配置の面から解析した。旧東京市区内においては太政官布達や市区改正事業等による公園が明治期に作られたが, 周辺の区域においては昭和10年頃まで公園はほとんど作られていなかった。時代によって開設される公園の数や面積が変動し, 地域によって公園開設の進んだ時期が異なる。このような事情に関連して, 公園の数や面積についての地域的な差異をみることができた。
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鈴木 雅和, 川口 摩利夫
1989 年 53 巻 5 号 p.
85-90
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
大規模公園等においては, 管理すべき施設が多様かつ大量に存在し管理業務体系が複雑なため, 施設管理の電算化が遅れている。近年開発されたハイパーメディアは, 良好なユーザーインターフェースの下で, マルチメディアを有機的に関係づけ, 実行可能なサブシステムを結合して大きなシステムを構築できる情報処理環境である。本研究では, ハイパーメディアを用いて, 公園施設管理支援システムを試行的に開発し, 実用可能性を検討した。
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小林 章
1989 年 53 巻 5 号 p.
91-96
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
造園用砂礫材料の色彩を, 客観的な分かりやすい形で表示することを試みた。砂礫材料の13品目を測色の試料とし, 品目を (1) 天然の砂礫で色彩により選別されたもの・されていないもの,(2) 砕石で一色のもの・色を混ぜられたものに分類し, 品目ごとに粒径を揃えた。各品目の気乾状態の石粒各100粒を測定径3mmの色彩計により一粒ずつ表面色を測定し, 主としてYxyの平均値の表とHVCによる色分布のグラフで色彩を表示した。
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養父 志乃夫, 中島 敦司, 河村 止, 石川 格
1989 年 53 巻 5 号 p.
97-102
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
オオスギゴケの張り苔の生産手法を検討するため, 火山灰赤色土 (赤土) と花崗岩風化土 (キラ土) 及びこれに真珠岩パーライトM1, M3, バラス砕石を混合させた実験用上において, 蒔き付けた木種の生茎葉から個体成立状況を比較した。茎葉をキラ土に蒔くと, 栄養繁殖により増殖は良好であるが, パーライトM3を30%混合させると最大の生長が得られた。この場合の蒔き付け後7カ月目の成立茎数は, 4.5木/cm
2植被率は90%に達した。
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金 敏洙, 金光 達太郎, 矢橋 晨吾
1989 年 53 巻 5 号 p.
103-108
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
土の種類と密度によって霜柱の発生に差があることの原因を調べたところ, 霜柱の立ちにくいマサ土では熱伝導率が高いため地中から熱が伝わって, 地表面が0℃ になりにくくなった。マサ土に霜柱が発生しにくいもう一つの原因は比表面積が小さいし, 熱容量も小さいため土の表面が凍結しやすくなることであった。マサ土ではボアー容積量が少ないため, 熱伝導率が高くなるし, 給水機能も悪くなって, 霜柱が発生しにくくなっていた。
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重松 敏則, 久松 直樹
1989 年 53 巻 5 号 p.
109-114
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
幹挿しによる, 造成法面や急傾斜地での樹林復元手法の開発を目的に, アラカシ, ヤブッバキ, イヌッゲについて, 穂木の長さと太さの限界を把握するための実験を行った。その結果, 穂木の幹直径は, それぞれ10, 8, 7cmでも十分な発根が得られること, 地上部の幹の長さは, イヌッゲでは50cm, ヤブツバキでは100cmでも50%程度が発根するが, 70%以上の発根・活着率を達成するには, いずれの樹種も25cm程度にすべきことが分かった。
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朴 容珍, 沖中 健
1989 年 53 巻 5 号 p.
115-120
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
つる植物による壁面緑化は, 植栽地の位置によって「登はん」と「下垂」の2つのタイプに分けることができる。本研究はナツヅタ・オオイタビ・キヅタ・ツリガネカズラを用いた植栽実験によって, 壁面での登はんと下乖状態におけるその成長量及び生育状況を比較検討したものである。その結果, 成長量は企種について登はん区が下垂区より明かに大きかった。壁面被覆のパターンは登はん区がピラミッド形を下垂区が縦長の帯状を呈した。
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増田 拓朗, 金出 陽一, 守屋 均
1989 年 53 巻 5 号 p.
121-126
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
ポットに植栽したシャリンバイとトベラの土壌水分条件を変えて光合成および蒸散速度を測定した。シャリンバイは土壌の乾燥に伴い光合成蒸散ともに減少した。とくに光合成は午前中にピークを示した後, 午後はほとんど停止状態となった。トベラは土壌水分が十分な場合には, 光合成, 蒸散ともシャリンバイよりやや低いレベルであったが, 土壌の乾燥に対する減少はシャリンバイほど急激ではなく, 両樹種の耐乾性の違いが示唆された。
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三沢 彰, 高倉 博史
1989 年 53 巻 5 号 p.
127-132
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
街路灯付近の落葉樹の葉は, 光の影響により秋遅くまで落葉しない傾向が見られる。しかし, その影響がどの程度のものかについて科学的に研究された例はない。そこで, 著者らは東京都内の代表的な7種の街路樹を対象に観測路線を設け調査を行った。また, 実験的にもその裏ずけを行った。その結果, 照明の落葉に及ぼす影響は樹種によって異なること, 照明の強く当たるところだけが落葉しない, などのことが明らかとなった。
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内田 仁
1989 年 53 巻 5 号 p.
133-138
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
東京都調布市を事例として, 花木・軍花の生育型別・花色別開花時期について同一フィールドで総合的に調査した。現地調査の結果より, 花木は5色, 草花は6色に大別できた。花木の樹形を高木4タイプ, 低木3タイプ, 草花の草形を草姿と花の着き方によって4タイプ, 草丈によって3タイプに種別した。造園的応用を図るため花による植栽設計の基礎的資料となる月・季節別, 樹形・草形別, 花色別の開花特性表の作成を試みた。
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近藤 哲也
1989 年 53 巻 5 号 p.
139-144
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
アキノキリンソウをアメニティの向上を目的とした景観素材として取り上げ, 室内での発芽実験とポット植え個体による刈取り実験を行った。その結果, その年に生産された種子は, 冬季の低温湿層処理を受けた後に高い発芽力を得て翌春一斉に発芽することが示唆された。また生育期における刈取りは, 年1回でも地下蓄積量に大きな消耗を要求するが, 致命的なダメージにはならず, 6月末刈の開花状況は無刈取りとほぼ同程度になった。
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大窪 久美子, 前中 久行
1989 年 53 巻 5 号 p.
145-150
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
野生草花の生育地の管理手法を検討するため, 長野県戸隠村戸隠高原の草地において植生調査を行い, その種組成や遷移状態を明らかにした。その結果, コキンバイーヒメシダ群落, ノリウツギーヒメシダ群落, ノシバークマイザサ群落など5種の群落に分けられた。しかし, いずれの群落にも, 放置すれば植生を遷移させる木木種がすでに存在し, それらを取り除く意味での刈り取りが植生の維持管理に必要であると確認された。
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大黒 俊哉, 武内 和彦, 今川 俊明, 高岡 貞夫
1989 年 53 巻 5 号 p.
151-156
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
吾妻硫黄鉱山跡地周辺で, 地形・土壌・植生調査を行い, 煙害による植生変化の過程を分析した。鉱山周辺ではヒメスゲ優占型とササ優占型の荒原植生が成立するが, 激害地では侵食裸地が出現する。また, 草津白根火山山頂の荒廃地と比較した結果, 両者はほぼ同様の退行・進行過程を呈するが, 侵食裸地の形成過程は大きく異なることが明らかになった。また分析結果をふまえて, 荒廃地における保全・修復と開発の方向性が示唆された。
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斉藤 庸平, 岩河 信文, 根岸 茂
1989 年 53 巻 5 号 p.
157-162
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
屋敷林は, 防災を目的のひとっとして人為的に形成された樹林地と考えられている○本研究は, 屋敷林の持つ防災機能を解明するために, 茨城県っくば市に現存する屋敷林を対象に樹林調査と火災想定による効果計測を行なった。それらをもとに考察した結果, 屋敷林は, 防災機能が良く働くように合理的に樹木の選択, 配置等がなされていること, 延焼防止に効果があることを明らかにした。
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山田 宏之, 丸田 頼一
1989 年 53 巻 5 号 p.
163-168
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
公園緑地内でみられるような樹林地を対象とし, 気象条件, 樹林の規模等の差異に伴う, 夏季における樹林内の気温の低減の程度を測定するとともに, 気温の移動観測を行う際の測定精度限界について考察を加えた。その結果, 気温, 風速, 湿度等の値を用い, 樹林内外の気温差を, かなりの精度で算川できること, また, 樹林規模により差異があることも把握された。なお, 今回の測定精度は, ±0.5℃ 程度と算山された。
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田畑 貞寿, 宮城 俊作, 内田 和伸
1989 年 53 巻 5 号 p.
169-174
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, わが国の近世城郭跡の保存と活用を目的とした公園化による環境整備がどのようにすすめられているのかを明らかにし, 史跡保存のため新たな史跡公園化の方途を探ることを目的とした。国内90ケ所の城址公園を対象として行った調査により, 多くの事例において史跡指定→指定地内の土地公有化→施設の移転→遺構の発掘調査→復元整備→史跡公園化といった事業のプロセスが確認された。
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小野 佐和子
1989 年 53 巻 5 号 p.
175-180
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
公園利用者に公園内の事物や事象, 施設の情報を様々な形で提供することにより公園に対する利用者の理解を深めるとともに利用の増進と活性化をはかる “公園解説” がアメリカのレクリエーション地域では数多く行われている。本稿では, ゴールデンゲート国設レクリエーション地域で実施されたプログラムの種類と運営法を通じて,“公園解説” の実態と役割を明らかにする。
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堀 繁, 植田 明浩, 篠原 修
1989 年 53 巻 5 号 p.
181-186
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
自然公園の利用拠点である集団施設地区の計画の思想 (基本的考え方) を明らかにするために, それが典型的に表れていると考えられる国立公園の国民休暇村24ヶ所を取り上げ, 立地と敷地の特徴を公園計画図, 集団施設地区詳細計画図等から分析した. その結果,(1) 自然資源への過近接,(2) 拠点性の欠如,(3) 隔絶性,(4) 景観への配慮の薄弱さなどが明らかとなり, しかも画一的で立地に応じた多様性がないことがわかった.
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杉本 正美, 包清 博之, 金 炳哲
1989 年 53 巻 5 号 p.
187-192
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
ランドスケープ・スペースに音を導入する場合, どこにどのような質の音を設定するのかはそのランドスケープ・スペース全体の質の良し悪しを決定する点で重要である. 本研究では, 音を導入するための空間領域の設定及びその空間に導入する質の設定条件となる諸特性について考察した.
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斎藤 潮
1989 年 53 巻 5 号 p.
193-198
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
ある種の美的効果が期待される物的対象の配置と人間の視野の特性には密接な関連がある. 本研究は, 南都七大寺を中心とした大規模平地伽藍池を介在させた浄土伽藍, および神社参道を構成する鳥居・楼門・拝殿等の配置, さらには竜安寺石庭の石組の配置に注目し, 物的対象の主要な視点からの見込角を視野との関連で整理し, これと期待された美的効果との対応で見込角の大きさを性格づけ, 指標化することを試みた.
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小林 享
1989 年 53 巻 5 号 p.
199-204
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
気象現象に伴う景観の体験に着目し, 人と現象との空間的な関係を,「気象景観把握モデル」 で捉え, 現象に対する身体感覚の動態を単独感覚による 「鋭敏化作用」 複数感覚の同時的働きによる 「協働化作用」 主題感覚と仮想感覚の関係による 「統合化作用」 身体の移動及び介在物の規定による 「分散, 遮断, 減少作用」 の各概念を用いて考察した. さらに, それを基本フレームとして, 気象景観の操作可能性について検討した.
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清水 祥雄, 中村 良夫
1989 年 53 巻 5 号 p.
205-209
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 旧版地図や文献等の資料を基にして歴史的・地形的な景観を読み出すことを目的とする. 具体的には世田谷区の一部を対象地域として取り上げる. 概要としては1-景観構成要素の抽出, 2. 地図に頻出する景観構成要素の組み合わせ (景観構成パターン) の抽出, 3. 集団表象を手掛りとした景観パターンの評価, の3つを通じて地相系景観について実証的に考察し, それぞれの成果及び得られた知見を提示している.
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仲間 浩一
1989 年 53 巻 5 号 p.
210-214
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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フリー
本研究はまちにおえKる景観体験や行動の文脈に甚づき集団として認識されるまちのイメージを研究対象とする. 本論では, 空間の固有名称付けという行為を社会的・集団的なイメージ表現の現象であると規定した上で, 名称付けの由来に対して空間内での現視的又は継続的な体験の両面から説明を試みた. その結果, まちのイメージをとりまとめる感受性の枠組を提示し, 実際のまち空間のデザイン手法として有効であることを示した.
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山根 ますみ, 篠原 修, 堀 繁
1989 年 53 巻 5 号 p.
215-220
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
長期的にみた場合の景観に対するイメージ形成のメカニズムを解明するための試論として, 東京の自然の代表である武蔵野を取りあげ, 各時代毎のイメージの内容とその変化の過程, イメージ変化と景観変遷との関係, イメージ変化の要因について分析した. その結果, イメージと景観は異なる変化のしかたをしてきたこと, イメージ変化のきっかけとして文学作品などが重要であったことが明らかになった.
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古谷 勝則, 天野 雅志, 赤坂 道保, 建石 隆太郎, 油井 正昭, 石井 弘
1989 年 53 巻 5 号 p.
221-226
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
緑地の把握に有効な人工衛星データを探るために, 画素サイズとセンサーの性能の異なるLANDSATMSS, LANDSAT TM, SPOT HRV, COSMOS KFA1000の4種の人工衛星データを用い, 緑地の把握を行った. LAND SATTMとLANSATMSSデータを用いて樹林地を把握することの有効性が確認され, SPOTデータでも緑地の把握が可能であることが示された. 得られた結果と首都圏細密数値情報との比較を行い, 土地利用と土地被覆の違いが明確になった.
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斎藤 馨, 堺 武志
1989 年 53 巻 5 号 p.
227-232
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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CCG (カラー・コンピューターグラフィックス) 景観予測手法を道路施設 (環境施設帯, 遮音壁) 修景緑化計画の評価に実用した結果, 以下の点が明かになった.
1) 複数代替案の予測景観作成にはCCGが最も実用的である.
2) CCGによる景観予測では, 3次元モデリングと2次元ペイントの併用が実用的である.
3) CCGにより景観予測評価手法が一貫したシステムとなりうることが実証された.
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原薗 芳信, 村上 智美, 林 陽生
1989 年 53 巻 5 号 p.
233-238
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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群落密度と内部の植生が異なる2つのアカマツ樹林を対象に, 群落上の気温と群落内部の熱環境特性との関係を, 緑陰の快適性の観点から調べた. 密な群落内部では空気流動は少なく群落内に偏った貯熱分布が生じ, 見かけ上断熱的に作用するため, 気温は外気温より約15%低下した. 粗な群落では内部の空気流動があり, 群落内外の温度差は小さかった. したがって, 林内の気流特性を考慮し, 樹種や植栽密度を検討することにより快適な樹林空問を創造できる可能性が検証された.
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藤田 辰一郎, 古谷 勝則, 斎藤 馨, 油井 正昭
1989 年 53 巻 5 号 p.
239-244
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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自然景観に調和する建築物のファーサイドタイプと色彩との関係を研究する目的で, 現地調査で得たデータを基に, CCGによるカラーシミュレーション手法を用いて景観画像を作成し, 評価実験を行った。その結果, 自然景観地における建築物の色彩調和は, ファーサイドタイプの種類と屋根の有無, 屋根の色彩に影響されていることが明らかになった。また, 9種類に分類したタイプについて, 評価の相互関係を知ることができた。
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安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦
1989 年 53 巻 5 号 p.
245-250
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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本研究では, 街路景観を構成する多数の要素の内, 変動要素を街路植裁にしぼり, 他の構成要素を一定の条件下で景観評価する手法の提案を試みるとともに, 街路植裁操作による効果的・効率的な街路修景・緑化手法を考察するものである。フォトモンタージュ法を用いて修景・緑化モデルの作成を試みるとともに, 各モデルの景観評価特性を解析することによって, 街路修景・緑化に関する有効な知見を得た。
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磯野 順一, 斎藤 馨, 熊谷 洋一, 武内 和彦, 輿水 肇, 山本 幹雄
1989 年 53 巻 5 号 p.
251-256
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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丘陵地における望ましい住宅地開発を計画するためには, 景観と生態の両面からの適切な評価が必要である。本研究では特に景観の評価についてケーススタディーとして多摩ニュータウンを取り上げて考察を加えた。CCGによるシミュレーション画像を用いた評価実験を行い, 景観の評価指標と評価との関係を明らかにした。その結果, 住棟規模の評価への影響が大きく, スカイラインはそれほど影響の大きな要因ではない, 等が確認された。
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増田 昇, 下村 泰彦, 安部 大就
1989 年 53 巻 5 号 p.
257-262
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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本研究では, ため池の公園的利用を前提として, ため池が保有している多面的なポテンシャルをその保存一利用の2側面から評価する手法の提案を試みた。大阪狭山市に存在する51ケ所のため池をケーススタディとして, 周辺部の植生, 水質, 景観の観点から利用ポテンシャル, 灌漑機能の存続性, 公園的利用要求, 整備の可能性の観点から利用ポテンシャルを評価し, ため池の環境整備計画への応用の仕方について探求した。
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谷中 英記
1989 年 53 巻 5 号 p.
263-268
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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都市での森林の減少や自由時間の増加によって, 都市住民はレクリエーションの場を近郊の森林等の自然地域に求める傾向をみせる。都市近郊レクリエーション林計画では, 位置選定, 規模決定及び森林レクリエーション施設の配置に関する考察が基本的課題になる。計画策定においては, 森林レクリエーションの特性, 森林の魅力性と適正収容力及びこれらを著しく高めることのできる林内レクリエーション施設に関する検討が必要である。
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香川 隆英, 八巻 下成
1989 年 53 巻 5 号 p.
269-274
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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筑波山国定公園においてアンケート調査を実施した。筑波山は都市近郊の森林ではあるが, かなり高い自然性を有している。
筑波山来訪者の満足度を, 利用したルート別に, またルート別満足度を階層化して分析することにより, 森林レクリエーションにおける快適性の構造を明らかにした。
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長山 宗美
1989 年 53 巻 5 号 p.
275-280
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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冒険遊び場 (羽根木プレイパーク) にて聞き取り調査を行ったところ, 他の遊び場 (よく遊ぶ場所は公園や家の中) との相違点は自然性と独自の手作り遊具であると感じていること, そこでの遊びで好きなことは, めまい感覚を体験できる手作り遊具での遊びであること, 距離が近いほど頻繁に訪れやすいこと, 自身の意志で頻繁に訪れる人ほど遊具以外のおもしろさに気がつくようになり, 特にその傾向は男子, 高学年にあること, が明らかになった。
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槙村 久子
1989 年 53 巻 5 号 p.
281-286
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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There is a great need of the cemetery by the densely inhabitant to the city, the increase of the nuclear family and the aging society in Japan. Then it needs an area of about 4000ha for the cemetery from 1985 to 2000. From a viewpoint of a folklore, the cemetery has to be a permanent residence. But the people who service to the memory of the ancestor are on the decrease by the change of an industrial structure, a moving of the population, a change of the lifestyle, a change to the nuclear family, increasing of single family. So the grave changes to be liquidity, neglected, individual. The cemetery will be a very important factor for the structure of the community.
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中村 隆治, 藤井 英二郎
1989 年 53 巻 5 号 p.
287-292
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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緑地の心理的効果を実験的に分析するために, 人が植物を見たときの脳波, 特にα波について解析を行った。ゼラニウム, ベゴニアそれぞれの葉だけ, 花も付けたもの, 比較対照物の円柱, 鉢を呈示し, その後の閉眼時におけるα波出現量とα波帯域周波数を検討した。その結果, ゼラニウムではα波出現量において, ベゴニアでは周波数において一定の傾向がみられ, 植物の違いによって異なった傾向を示すことがわかった。
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笹谷 康之, 小柳 武和
1989 年 53 巻 5 号 p.
293-298
発行日: 1989/03/30
公開日: 2011/07/19
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小字・小名は, 村落における人々の伝統的な位置関係の認識を, 端的な言葉で表現した小地名である。そこで, 人々が小地名を川いて, 村落内の場所相圧の位置関係をどのように認識してきたかについて, 2万件の小字データベースや, 字界地形図で分析した。この結果, 方位・垂直方向・流水方向・焦点方向・身体方向・形状方向・地形部位・内外距離・日照・地形区分の10の基準の組み合わせによって, 人々は村落における位置関係を認識していた。
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