造園雑誌
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54 巻, 5 号
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  • 元 貞喜, 白 在峯
    1990 年 54 巻 5 号 p. 1-6
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    韓国・朝鮮時代に作られた, 全国27ケ所の伝統的池塘庭園において, 作庭思想及び手法に対する検討を行った結果,(1) 方池円島の池の形態 (2) 東北から南西への水の流れ (3) 石築による単純な水際の処理 (4) 風水地理説, 陰陽五行説, 神仙思想, 隠逸思想などの作庭思想, が明かになった。
  • 浅野 二郎, 白 志星, 藤井 英二郎
    1990 年 54 巻 5 号 p. 7-12
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    新羅1000年の歴史を伝える韓国の古都・慶州に現存する苑池址・雁鴨池について考察する。雁鴨池は三国史記, 新羅30代文武王14年 (674) の条に「宮内に池を掘り, 山を造り…」と誌された苑池の址と伝えられ, 1975~1976年には韓国政府がその発掘, 整備を実施している。本論文では発掘調査資料 (韓国文化財管理局刊), 三国史記などの諸資料および現地測量を手がかりとして, 主に雁鴨池の護岸のあり方と雁鴨池に対する導水路について考察を加える。
  • 仲 隆裕, 浅野 二郎
    1990 年 54 巻 5 号 p. 13-18
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    平安時代中期以降の上級貴族住宅とされる寝殿造住宅につくられた寝殿造庭園については, これまで文献史料を中心に研究が進められてきた。近年, 土地の開発等によって行われる埋蔵文化財の緊急発掘調査の増加に伴って庭園遺構の検出が全国で相次ぎ, 平安京跡においても高陽院・堀河院等, 寝殿造庭園とされる事例が検出されている。その成果から住宅の中心建物の平面構成を平安京の条坊との関連で検討してみると, 東西いずれかの門の方向へ片寄って配置されている事が指摘される。庭園の空間構成について見た場合, 平安京の地形を最大限に活用しようという姿勢が見られ, このことが建物の構成と相俟って特徴ある寝殿造住宅を構成していたのであった。
  • 内田 仁
    1990 年 54 巻 5 号 p. 19-24
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    二條城本丸庭園の作庭の変遷については, 京都市二條城事業係が建築的側面より紹介している。だがその詳細については断片的にしか研究されていない。そこで本研究は本丸が造られた寛永年間から現在の本丸庭園が完成した明治28年までの作庭の歴史的な変遷を考察することを目論んだ。寛永年間の本丸庭園はその資料が全くなく不明であり天明8年本丸御殿焼失と共に崩壊し幕末を迎えた。幕末・明治初期には茶庭が存在していたが建物の老朽化が激しく明治14年取り壊された。明治27年旧桂宮邸の一部が本丸へ移築されその際売泉水庭園が作られた。明治28年には芝生を主体とした外国の影響とも思える庭園に大改造され現在に至る築山風庭園が完成された。
  • 服部 勉, 進士 五十八
    1990 年 54 巻 5 号 p. 25-30
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 将軍家斉, 家慶の在世中, 浜御殿庭園を訪問した徳川寔子など4例の回遊利用の行動について『千世の浜松 (1826年)』などの訪問記録, 史料をもとに, 浜離宮庭園現況図に図上復原を試みたものである。図上復原の内容は,(1) 回遊ルート,(2) 庭園各部での滞留時間,(3) 各ポイントにおける利用行動等で, 利用状況を復原してみることによって, 江戸期回遊式庭園がどの様に利用されていたかを明かにすると同時に今後, 本庭園の復原事業の実施に資することとしたい。利用復原の結果と現況利用の比較から現存しない庭園施設が休息・眺望など回遊利用の上で重要な役割を担っていたことが明かとなった。
  • 小野 佐和子
    1990 年 54 巻 5 号 p. 31-36
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸時代後期に農村風景が名所化される要因を, 大和の月瀬梅林を例に, 当時の漢詩文の流行と知識人の遊覧熱との関連で考察した。月瀬梅林は商業的農業による梅の大量栽培により出現した, 渓谷沿いの数ケ村におよぶ規模の大きな梅林である。この梅林は津藩の儒者斎藤拙堂の『月瀬記勝』により名所としての名を高めたが, そこには, この時代, 景勝の地をある美意識のもとに叙する文学形式が出現し, それが風景享受の指針的役割を果たしたこと, 文人や知識人のコミュニケーションの仲立ちとして遊覧と詩作があったことが認められる。また農民も宿の提供や案内書の出版で, 名所化に参画した。
  • その造園史的意義について
    木村 三郎
    1990 年 54 巻 5 号 p. 37-41
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    我国で世界に誇りうる風景観と云えば第一に富士山, その第二に瀬戸内海をあげることが出来る。そこで富士山については既に本機関誌『造園雑誌』第54巻1号 (1990) に於いてその文化的価値を中心にその歴史的な考察を行ってきた。そこでその第二のステップとして, ここに瀬戸内海についても同様な観点から究明して見たい。即ち冨士山が孤高の山景美とすれば正に瀬戸内海は白砂青松の海景美と云える。このような伝統美が欧米化の風潮の波に圧倒されて兎角忘れ勝ちになっていることに反発を禁じ得ないし, 又その保全の手段方法についても一考して見たい。
  • 小椋 純一
    1990 年 54 巻 5 号 p. 42-47
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    京都は長い歴史をもつ都市であり, 残されている資料も多いにもかかわらず, その周辺山地の植生景観の変遷については不明な点が多い。絵画は, そのような過去の植生を考える上で参考になるものであるが, それがどの程度の資料性をもっかを述べることは難しい場合が多い。ここでは, 江戸時代の画家の中でも, 写生的な画風でよく知られている円山応挙の初期の作品を通して, 江戸時代中期における京都近郊山地の植生景観を考察した。その結果, そこには当時, 低植生地あるいは植生自体が無いような所も広く見られ, 比較的よい森林は, 社寺有地などの一部以外には少ないなど, 今日とは大きく異なる植生景観が見られたものと考えられる。
  • 埴生 雅章
    1990 年 54 巻 5 号 p. 48-53
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    雪見の対象となる雪景としては, 雪のある所とない所の相互関連により生じる『対比』が雪景操作の観点からも重要であり, その視点から, 雪の絵で評価の高い『広重』の雪景画を対象とし, 雪景における『対比』の効果的な表現手法を分析の上, その特質を考察した。その結果, 積雪の大地や物を白く覆い, 風景を統一する効果, 物を部分的に覆い, 風景に変化と統一を与える効果, 統一された雪の領域の出現によって, 雪に覆われない領域等との明瞭な対比関係が生ずる効果, および降雪の背景との色彩対比等により印象的に見える効果等が多用されている傾向が確認され, 雪見対象の構成原則確立のための手掛りが得られた。
  • 渡辺 達三
    1990 年 54 巻 5 号 p. 54-59
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸時代にはハス観賞が盛んとなり, 蓮譜 (ハスの図鑑) もいくつか現れるようになる。本稿では江戸末期から明治初・中期に発行されたとみられる14の蓮譜をとりあげ, そこに記載されている観賞用ハス品種をみながら, 蓮譜やハス品種の実態についてみた。また, それらの成果を前提に, 江戸時代の代表的な蓮譜でありながら現在その所在が不明でその実態の必ずしも明らかでない「清香譜」に掲載の品種について, その考察を行った。
  • 伊藤 太一
    1990 年 54 巻 5 号 p. 60-65
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    アメリカにおける初期の国立公園史をたどると, プラットのように小規模で都市公園的な国立公園も設立されている。これらの公園が設立された時代にはまだ管理主体が存在せず, システムとしての考え方もなかったことが, 大小混在した理由である。これらは国立公園の基準をはずれるものであったが, これらが基準外の公園として存在したがゆえに, 公園の基準が明らかになってきた。公園の国立公園の基準は今日もなお流動的であり, むしろ国立公園局が近年都市域での活動を重視していることを鑑みると, その歴史の中で小規模な公園が国立公園の普及と発展に果たした役割は重要である。
  • 永嶋 正信
    1990 年 54 巻 5 号 p. 66-71
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    国道4号線, 東北本線の開通, 到達道路から域内道路の整備へと進展する。日光地域からの影響も受けつつ, 那須地域を性格づける利用施設が形成されていった。自動車の進入は奥日光地域へ入るより早期であったが, 域内車道の発達は比較的遅れていた。当初, 湯治の利用からはじまり, 1926 (昭和元) 年から観光目的の客が増加し, 御用邸の新築, ゴルフ場の建設等が進められた。
    利用の形態では当初, 秋季の利用が首位を占めていたが, 1964 (昭和39) 年以後25年間の平均値は, 夏季が首位を占め以下, 秋季, 春季, 冬季と続き, この状態は現在に及んでいる。地域振興の一つとして冬季の増加が, 日光地域と共通の課題となっている。
  • 西村 公宏
    1990 年 54 巻 5 号 p. 72-77
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    1876年に開校した札幌農学校のカリキュラムはマサチュセッツ農科大学 (MAC) に範を求めており, MACで履修するLandscape Gardeningは札幌農学校においても開講が予定されたが, 第1期生が履修する前にPractical Horticultureに変更になる。
    近代黎明期のランドスケープガーデニングは, ダウニングの著者等を参考に土地の装飾法を考究したと考えられるが, その教授には植物に関する知識と共に空間構成のセンスが必要とされるため, 植物の生育に重点を置いていた農学系教育機関では, 主に植物園等の屋外環境の整備という点において意味を持ったと言えるであろう。
  • 佐々木 邦博
    1990 年 54 巻 5 号 p. 78-83
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    アルファンは19世紀フランスの第二帝政期にセーヌ県知事オスマンによりパリ都市改造の緑地部門の責任者に任命された技術者である。彼は自ら関与した緑地を詳細に記録した「プロムナードゥ・ドゥ・パリ」という大著を残している。冒頭には長い序文があり, 主に造園史が記されているのだが, 著者の公園観が各所でにじみでている。この序文を分析の対象とし, 考察を進めた。その主な特徴は2点ある。第一点は造園の社会的地位が高くなく, 芸術家になおざりにされている状況への強い反発である。第二点は造園史の流れを発展とみなし, 自然風景への好みを媒介を務めるものとみなす見解である。この結果, パリの公園は最も進んだ造園と位置づけられているのである。
  • 石川 幹子
    1990 年 54 巻 5 号 p. 84-89
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    アメリカの公園緑地系統の成立において先鞭をつけたボストン公園緑地系統は, 1850年代にその萌芽がみられ, 半世紀をかけて徐々に確立された。計画思想は, 当初より都市公園の整備と緑地保全の思潮を合わせもった広域的なものであった。実現のプロセスは, 1850年代の良質の都市基盤整備, 1880年代のエメラルド・ネックレスの建設, 1900年代の大都市圏公園緑地系統の成立と, 段階的発展をとげたことが特色である。
  • 若生 謙二
    1990 年 54 巻 5 号 p. 90-95
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 生態的展示のもとに新たに開園したセントラルパーク動物園の実態とその歴史的概要をさぐることにより, 両者の関係を論じる。またオルムステッドの動物園計画に対する態度を通じて, その公園観の一端をさぐる。公園の本質を景観ととらえていたオルムステッドは, 当初計画の景観を乱す施設としての動物園に反対していた。景観を乱す施設の代表とされた動物園は, 生態的展示をとりいれることにより, 公園の景観へと変質した。オルムステッドが課題としていた施設と景観の問題は, 動物園においては一定の解決をみたといえる。これは動物園計画に生態学的なバイオームの概念をとりいれたことによるものといえる。
  • 宮城 俊作
    1990 年 54 巻 5 号 p. 96-101
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    1980年代にはいって新たな展開を模索しはじめたアメリカ合衆国のランドスケープデザインに関して, その背景をなすものとして, 環境芸術, 特にアースワークの作品群と作家の主張を位置づける。広大な風景の中での空間とスケールの表現, 人間の知覚と行動を媒体とした作品の完結性, 生態学的倫理と制作を通じて土地改良を目指す態度のあいだに生起する葛藤, さらには制作のプロセスそのものを作品化する試み, 以上4つの側面からその潜在的影響を考察することができる。ランドスケープアーキテクトによる試行的なデザインには, こうした潜在的影響のもとで, 芸術家の制作に社会性を付与してゆこうという意識が内包されている。
  • 竹田 直樹
    1990 年 54 巻 5 号 p. 102-107
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 都市環境における彫刻作品の作品内容に対する市民の評価の視点について分析を行なうものである。彫刻作品が量的に豊富な地域をケーススタディとして調査対象地に設定し, そこに居住する市民を被験者として, 身近な生活空間に設置されている複数の彫刻作品の作品内容に関する意識をアンケート調査により把握し, これを分析して, 次のような点について明らかにした。1) 市民の作品内容に対する評価の視点の内容について。2) この視点を評価の尺度 (評定尺度) としてとらえた場合, これに基づく評価の中に存在する因子の内容について。3) 検出される因子と, 作品内容の適切性に関する評価の関係について。
  • 三島 孔明, 藤井 英二郎
    1990 年 54 巻 5 号 p. 108-113
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    色彩と脳波の関係について分析した。視覚対象として色布を用い, 黄, 緑白, 青, 黒赤, 紫, 灰の順に被験者に呈示し, それぞれの対象物をみているときのα波, β 波, θ 波の出現量を比較検討した。その結果, 黄ではα波, β 波, θ 波のいずれも多くなる人が他の色よりも多く, それらのほとんどが女性であった。一方, 青や黒ではそれらの出現量がともに少ない人が多く, 黄とは対照的であった。これらに対して緑は, α 波, β 波, θ 波のいずれも高くなる被験者と低くなる被験者が混在することから, それらの色に比べて多様な反応をもたらす色と言えよう。
  • 養父 志乃夫, 石川 格, 大曽根 兼一, 田中 繁男, 荻野 徹, 河村 止
    1990 年 54 巻 5 号 p. 114-119
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    チャボリュウノヒゲの大量増殖手法を確立するため, 生長調節物質の濃度と種類を違えたMS培地で茎頂分裂組織を培養した。その結果, 無菌再生個体が得られ組織培養による本種の増殖の可能性を確認した。α-ナフタレン酢酸は高濃度の時にカルスを, 低濃度の時に根を誘導し, その違いに関係なくシュートの成長を促進すること, 6-ベンジルアミノブリンは, シュートを誘導し, α-ナフタレン酢酸の効果を抑制することがほぼ明らかになった。
  • 鈴木 登
    1990 年 54 巻 5 号 p. 120-124
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    従来, 剪除されているウメの長果枝を活用することにより晩期の開花が多くなることを明らかにした。樹形は崩れるおそれがあるが, 木は立性となるため, 狭い住宅庭園ではむしろ望ましい。
  • 鈴木 雅和, 渡辺 達三
    1990 年 54 巻 5 号 p. 125-130
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    緑地植物の重要な形質である色彩について, 客観的な方法で正確に測定され, 多様な情報利用を可能にする形で体系的に蓄積された成果はない。本研究では緑地植物の色彩を種・部位・時期毎に, 色彩色差計により測定し, 結果をリアルタイムにコンピュータヘ送信し, 色彩値の平均と標準偏差をデータベース化できるシステムを開発した。各種緑地植物の色彩を統計的モデルとして処理できることになり, また色彩デザイン原理を適用することも可能になる。既報の緑地植物の画像データベース (Green Vision) における特性情報などと連動させて, 植栽計画・品種の同定・活力度診断・育種目標の設定などに応用する可能性が生まれた。
  • 雨宮 悠, 滝下 真之, 渡嘉敷 勝, 矢橋 晨吾, 金光 達太郎
    1990 年 54 巻 5 号 p. 131-136
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    園路路材としての砂礫について歩行の難易を調べるために, 踏圧計を作製し, これによる砂礫層への貫入を調べた。その結果, 貫入, すなわち, 砂礫の移動のし易さは礫層の次元, 砂礫径に大きく依存することがわかった。また, ロッド径 (靴底面積) と礫径の関係も調べられ, 貫入は大なる粒径ほど起こりにくいことが示された。砂礫材における膝屈折角度, 身体横搖れ加速度波形による歩行姿勢の観測から歩き難さは歩行時の両足接地時間比で示され得ることを示し, 礫径の小さなるものでは沈下が, 大なるものでは礫の凹凸が歩き難さの原因であることを推察した。
  • 小林 章
    1990 年 54 巻 5 号 p. 137-142
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    砂礫材料の精製法の原則を明らかにすることを目的として, 精製法のタイプが異なる代表的な3品目, 桜川砂, 那智砂利および白川砂の, 各品目の原材料や精製したもの (市場品) など各3種類を試料にし, 外観について一対比較法により嗜好を検査した。その比較の結果に, 砂礫材料の粒度および物体色を対応させたところ, 良いとされる精製法の原則は次のようなものとみなされた。
    粒度に関しては単粒度にすること。
    色彩に関しては, 白系統は明度がより高い, 有彩色は彩度がより高い, 黒系統は明度がより低い色彩の原材料, すなわち色彩の特徴を際立たせるような原材料を採取または選別すること。
  • 北沢 清, 濱野 周泰, 濱谷 稔夫
    1990 年 54 巻 5 号 p. 143-148
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    広葉樹の中には, 習性として当年伸長シュートの先端を萎縮あるいは脱落させて仮頂芽を形成するものが少なくない。そしてその結果として, 仮軸分枝は樹木のtree architecture (樹体構築) の意義を考える上で無視できない形質である。本研究では, ふっうに目に燭れる日本産広葉樹約710種のうちから明らかに仮頂芽を形成する236種について, まずシュート上の仮頂芽形成位置との関係による類型化を試みた。更にその結果に基づいて仮頂芽形成樹種の分類位置や地理的分布並びに生活形との関係についても考察した。
  • 近藤 哲也, 前中 久行, 野田 敏秀
    1990 年 54 巻 5 号 p. 149-154
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    発芽に及ぼす覆土厚の影響を8種類の野生草花について調査した。室内のシャーレ実験では明区より暗区で高い発芽率を示したウマノアシガタは無覆土より覆土条件下で高い発芽率を示した。室内実験の暗区で発芽が抑制されたニガナ, アキノキリンソウは薄い覆土でも発芽が抑制された。発芽適温期では厚い覆土からでも発芽するが不適温期では浅い覆土でも発芽は著しく抑制された。発芽可能な覆土厚は種子重量と関連があると思われた。4月に播種した場合, 40日後に50%の発芽率を得ることのできる覆土厚はヂシバリ, ニガナ, アキノキリンソウは2.5mm, ノコンギクは5mm, コウゾリナ, ウマノアシガタ, ノアザミは10mm, ブタナは20mm程度と推定された。
  • 福田 明人, 平野 暁
    1990 年 54 巻 5 号 p. 155-160
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    連作障害は多くの作物において認められているので, 造園樹木において, 一般に同種を再植すると生育が劣るといわれているサクラ, ウメ, ヤマモミジ, ジンチョウゲ及びマサキの苗を用いて, その事実の有無を確かめた。生育を全重をもって比較すると, ウメにおいては明らかな生育抑制はみられなかったが, 他の4種には連作障害が認められ, その程度は, ヤマモミジ及びジンチョウゲが最も強く, マサキがこれに次ぎ, サクラにおいて最も弱かった。また, 同種が生育していた土壌中における生育抑制は, 5種とも地下部より地上部において著しかった。
  • 高橋 新平, 近藤 三雄
    1990 年 54 巻 5 号 p. 161-166
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    遮光条件下における地被植物の生育適域は,(1) 相対照度50%~10%でセイヨウイワナンテン, フッキソウ緑葉種ならびに班入り種ヘデラカナリエンシスの基本種 (緑種) ならびに班入り種, ソヨゴ,(2) 相対照度100%~50%でツワブキならびにブイリツワブキ, サツキツツジ, マツバギク, トケイソウ,(3) 相対照度100%~10%でカロライナジャスミン, ビグノニア, メキシコマンネングサ, クレマチスアルマンディ,(4) 相対照度50%~0.0%でオモトであった。また, 班入り種と緑葉種の光合成速度を測定し, 光の強弱に対する生理反応の特性も把握できた。
  • 馬場 多久男, 伊藤 精晤, 田中 誠
    1990 年 54 巻 5 号 p. 167-172
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年, 野草の種類が急速に減少している。今日, 山間地水田にも農業の基盤整備が必要とされており, そのため, 山村の豊富に残された野草も危機的な状態となっている。山間地水田土手斜面には豊富な野草が維持されてきた。今回, この土手の野草の実態を明らかにするため, 事例として長野県長谷村南非持の50の土手について5.7.9月の3回にわたり, 植生調査を行った。その結果, 優占種を主に12種類の土手に区分でき, 季節的に変動しつつ存在していることがわかった。さらに構成種の中の特徴的な区分種によって, 6つの型に整理することができた。今後こうした植生の実態をもとに野草の育成維持管理に有用な手法を見出すことができると考える。
  • 山本 聡, 高橋 理喜男
    1990 年 54 巻 5 号 p. 173-178
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    一般に花見の場所といえば, オープンスペースに積極的にサクラを植栽して作られた都市型が普通であるが, それとは別に, 二次林内に成立したヤマザクラの群生地に原型をもつ里山型があると思われる。本論では東北地方の調査旅行日誌をまとめた, 江戸時代の「菅江真澄遊覧記」をとりあげ, 記録されているサクラ群生地の立地環境を明らかにするとともに, 現在, 大阪近郊の山林に見られるサクラ群生地の立地的, あるいは植生的特性などを分析することによって, サクラ群生地の成立には, 人為的干渉-とくに保全指向をもった-が大きくかかわっているのではないかと推論した。
  • 田中 伸彦
    1990 年 54 巻 5 号 p. 179-184
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    今後の森林の景観施業において「見せる施業」の方向づけは重要なテーマである。本論は次元的景観概念を提唱し、景観現象成立の必要十分条件を満たす4生成因子 (次元・景観主体・景観客体・景観媒体) を規定し、その中の次元因子に関する階層構造性を明らかにした。また人間に関する景観の次元数について考察した。
    さらに従来の森林の景観施業は景観の次元的階層構造性を考慮していないことを指摘し、それらに替わる「見せる施業」の多様な展開の可能性を明らかにした。
  • 香川 隆英
    1990 年 54 巻 5 号 p. 185-190
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    AHP (Analytic Hierarchy Process) を応用した手法で, 京都北山に代表される, 人工林のアメニティの階層構造及び, アメニティを構成する因子のウエイト (重要度) を明らかにした。
    人工林のアメニティ評価を, 地元居住者 (森林所有者)・専門家集団に分けて行い, 異なる視点からの評価構造の違いについて言及した。
  • 市原 恒一, 豊川 勝生, 山田 健, 大川畑 修
    1990 年 54 巻 5 号 p. 191-196
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    森林施業が行われている既存の人工林を森林レクリエーションのための森林, すなわち景観的な価値が高い森林に改組する方法について検討している。今回は笠間営林署筑波山国有林のヒノキ複層林試験地の林内景観と森林の構造との関係を, 写真および現地における景観評価試験により検討した。写真と現地の試験結果は, おおむね一致した。その結果, 複層林は一般の林分より美しく, 特に,(1) 林内相対照度が大きい,(2) 樹幹が通直である,(3) 奥行きが深い,(4) 奥行きが浅い林分では明るい林外が見通せる, などの条件をそなえた複層林が美しいと評価されることが明らかになった。
  • 堀 繁
    1990 年 54 巻 5 号 p. 197-202
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    国立公園の空間計画・空間管理の思想を明らかにするために,(1) 審査指針の分析から建築物規制の基本的考え方を考察し, さらに (2) 環境庁各種文書の分析から建築物規制のうち最も錯綜している高さ規制の現状を整理し, 現実的対応に見られる規制の基本的考え方を考察した
    その結果,(1) で見られる自然風景優先主義, 建築物隠蔽主義が, 実際の対応では (2) 自然風景唯一主義, 建築物放棄主義となっていることが明らかとなった。
    審査指針が理想主義的に自然風景の側に立っあまり, 利用拠点や道路沿線など自然風景ではないが重要な場所の景観をないがしろにし, 柔軟的対応に欠けていることがわかった。
  • 油井 正昭, 古谷 勝則, 磯野 順一
    1990 年 54 巻 5 号 p. 203-208
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    景観の自然性を把握する場合, 工作物の存在が, 評価に影響を与えている。工作物には様々なタイプがあり, 影響の度合いに差があると考え, その差を明らかにすることを研究の目的とした。
    自然景観地域に存在する工作物の実態を3国立公園で調査し, その結果を基に評価実験に用いる12種類の工作物を選定した。選定した工作物を近景域で撮影してスライドを作成し, このスライドで被験者に対しマグニチュード法による評価実験とイメージによる工作物の影響順位調査を行った。その結果, 工作物別の影響の度合いを明らかにした。求めた工作物の影響の度合いを利用して, 日光国立公園塩原地区で景観の自然性把握を試みた。
  • 飯島 忠昭, 安陪 麻子, 蓑茂 寿太郎, 趙 賢一, 姜 榮祚
    1990 年 54 巻 5 号 p. 209-214
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    市民が抱く, その土地らしい風景イメージと風景対象をアンケートを行って収集し, 評価された風景の意味や価値と様相を, 地域らしさを表す風景イメージの特性として把握した。この特性に基づいて, 風景対象の分布と存在の傾向を調査し, 地域の風景が谷戸型, 台地型, 低地型の三っの風景型を基本に, 広がりやまとまりのある構成からその部分に至る変化の段階を持って存在していることを明らかにした。そして, これらの風景型の具体例に見る風景の意味や価値の要所と, その変化の傾向を捉えて, 地域の風景の価値とその存続の方向を示した。
  • 下村 彰男
    1990 年 54 巻 5 号 p. 215-220
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    滞在の長期化が目論まれる観光地やリゾート地では, 自然環境の活用やそれとの共生が大きな課題の一つである。近世後期から明治期を中心とする温泉地では, 空間構成そして滞在活動の両面で豊かな自然との接触が見られた。そこで本研究は, 温泉地の成立基盤としての地形・水系構造と集落の空間構造との関係について検討を行った。具体的には, 地図や絵図, 地誌などをもとに, 地形 (傾斜, 背後の山の概形, 微地形) および水系 (その有無, 規模, 方向性) と, 主要社寺の立地および繁華街路パターンとの関係について調査・分析した。その結果, 空間の方向性という点で, 両者が深く関わりあっていることが明らかとなった。
  • 川北 健雄
    1990 年 54 巻 5 号 p. 221-226
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    円通寺は比叡山を借景とする庭園で名高いが, 本論文はこの庭園景観について, 景観全体のイメージと, 景観を構成する諸要素のイメージとの関連について考察するものである。
    具体的には, この庭園景観の1枚のスライド写真, およびその写真の内の何らかの景観構成要素を消去した合成写真数枚のスライドを用いて, SD法によるイメージ評定を行ない, 各構成要素のイメージと, それらの有無が景観全体のイメージに与える変化について因子分析法などを用いた解析を通して明らかにしている。
  • 杉尾 邦江
    1990 年 54 巻 5 号 p. 227-232
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ニュージーランド人と日本人の庭園景観に対する意識について, ニュージランドのホームガーデン, 日本の住宅庭園等のスライドを用い, SD法による評価実験を行い, 平均の差の検定, 回帰分析, 主成分分析等によって多角的に考察した。被験者は, ニュージーランド人17人, 日本人77人の学生で, その結果, 特に庭園景観に対する色彩感に両国の意識が異なることが判明した。ニュージーランド人はカラフルさと派手さとは異なった因子軸に, かっ, 色彩感と親近感に相関性が認められたが, 日本人はカラフルさと景観の派手さと躍動感とは同一の因子軸にあることが認められた。また, 両国ともカラフルな景観に対して, 色彩の複数の混合度によって, 異なった評価を行っていることも認められた。
  • 田代 順孝, 田畑 貞寿, 井手 久登, 中山 敬一, 小林 康平
    1990 年 54 巻 5 号 p. 233-238
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では乾燥地域のサンプルとしてパキスタンの10都市を対象として, 住民の緑意識について調査, 分析を行った。年間雨量が500mmを越えない地域で, 都心部, 周辺部のいずれにおいても, 緑に対する欲求は強く, 具体の空間としての公園に対する欲求も強い。緑の機能的有用性や視覚的美しさに対する評価は都市の雨量の多い少いと関連づけて把握することの可能性が認められた。また総体としての緑に対する欲求の度合は乾燥の度合とほぼ比例するという傾向が認められた。社会的価値観文化, 言語等の異なる地域での調査ではあるが, 緑意識の一般的解明への端緒が開かれたといえよう。
  • 槙村 久子
    1990 年 54 巻 5 号 p. 239-244
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    産業構造の大きな変化の中で人口の移動性が高まり, 職場と住居の移動に伴って, 墓地と生活の場が切り離され遠隔化が起きると考えられる。墓地の需要が急増すると予想される人口急増地の一都市を取り上げ, 転入者がどのような経過でその都市を定住地としたか, 家族形態と職場と住居の移動と墓地の場所の相関を探った。農村地域から都市への移住者, 都市圏内移住者, 全国転勤者の3家族に詳細に聞き取り調査し, 明治から現在に至る四世代の家族形態の変化と住居, 職場と墓地の移動と都市化の進展の過程のケース別モデルを作成した。結果, 園域定住者と圏外定住者で大きくタイプが分れ, 又墓は住居の移動に伴って移動されていることがわかった。
  • 山本 勝利
    1990 年 54 巻 5 号 p. 245-250
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市近郊農村の既存樹林地を景観林として利用する観点から, 茨城県南部を事例に, 相観を重視した樹林地タイプ分けを行い, その分布を大字単位で把握した。また, 都市化の程度の異なる大字を比較して, 都市化の進行と樹林地の分布の関係を見た。その結果, 集落付近の竹林・屋敷林や斜面林としての常緑広葉樹林は都市化の影響を余り受けていないこと, アカマツ林などの集落から離れた場所に分布する樹林地は都市化の進行による量や規模の縮小, 遷移の進行や退行による質的変化が著しいことを把握した。また, 居住地周辺の樹林地は, 集落周辺では変化が少なく, 新興住宅地周辺ではアカマツ中心の林相から複雑な林相へ変化している。
  • 金 範洙, 安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦
    1990 年 54 巻 5 号 p. 251-256
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大規模公園緑地内の樹林地, 芝生広場, 水辺広場といった多様なオープンスペースを対象として, オープンスペースの物的諸特性と公園利用者の行動面-心理面の2側面との相互関係からレクリエーション的価値の評価を試みた。その結果, 広場型のオープンスペースはレクリエーション的価値が概して高いこと, 中でも, 水辺広場は瀞的レクリエーション的価値が概して高く, 眺望の広がりを有し平坦な芝生広場は動的レクリエーション的価値が概して高いことが明らかとなった。また, 樹林型のオープンスペースでは, レクリエーション的価値は概して低いものの, 樹林形態によっては高い落ち着き感が得られることが明らかとなった。
  • 権 奇燦, 安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦
    1990 年 54 巻 5 号 p. 257-262
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 泉北ニュータウンの泉ヶ丘地区内に存在する保存緑地を対象とし, 保存緑地の地形, 植生, 立地等の物的諸特性が保存緑地に対する人間の景観評価特性にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることによって, 今後のニュータウン内における保存緑地の活用のあり方を探ることを目的とした。その結果, 外観評価に対しては, 中程度の傾斜, 多様な樹種構成, 多段林といった自然性が重要な要因であることが明らかとなった。また, 林内評価に対しては, 高木層の被度が高く, 単層林, 一斉林で立地場所の公共性が高いといった人々の利用性が重要な要因であることが明らかとなった。
  • 金 炳哲, 杉本 正美, 包清 博之, 藤本 一寿, 中村 洋
    1990 年 54 巻 5 号 p. 263-268
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, サウンドスケープの視点から都市空間の諸特徴を把握し, 究極的には音を配慮した都市環境整備の在り方に関する計画的示唆を得ることを目的とした。スタディーエリアとしては, 長い歴史のある都市空間であり, 福岡市の中心部に位置する博多部を取り上げた。調査・研究の結果, 音を配慮した都市空間整備の在り方を考える場合, 騒音規制という側面からのアプローチだけでなく, その地域の特有な文化, 伝統そして自然を基調とした音を保存することと共に, 音とフィジカルな都市空間との係わりを基調にした音の演出 (活用) に関する研究プログラムの樹立の必要性が認識できた。
  • 下村 泰彦, 増田 昇, 安部 大就, 忽那 裕樹
    1990 年 54 巻 5 号 p. 269-274
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 都心部に位置し, 夜間照明が施された18街路を対象に, 昼夜間のスライド写真を用いた景観評価と現地調査および画面情報のデータ化を通じた街路空間特性との相互関係から, 昼夜間景観の評価構造特性を捉えることを目的とした。その結果,(1) 街路景観は, 昼間では『快適性』と『活気度』, 夜間では『安全感』と『落着き』によって評価され, 評価構造が昼夜間で差異のあること,(2) 画面構成率では, 緑が昼夜間とも評価に影響を及ぼし, 夜間では路面が評価に影響を及ぼすこと,(3) 多様な植栽形式・緑量を有し, 夜間照明により可視領域が拡大された街路では昼夜間を通じて評価が高いこと等が明らかとなった。
  • 増田 昇, 岩崎 慎, 下村 泰彦, 安部 大就
    1990 年 54 巻 5 号 p. 275-280
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 芦屋市内を流れる河川空間整備が施された芦屋川と未整備の宮川を対象として, 両河川空間に対する近隣居住者の利用行動と心理反応といった反応行動特性を, 特に『河川空間から住居までの距離』といった距離概念を通じて把握することによって, 河川空間の整備効果を明らかにすることを試みた。その結果, 河川空間整備によって, 河川空間の利用頻度や多目的利用の向上が図られるといった利用価値や河川空間が周辺部に存在することによって居住環境の向上が図られるといった存在価値が高められることを明らかにした。特に, 利用価値の向上は市域全域に及び, 存在価値の向上は250m圏内で顕著であることが明らかとなった。
  • 加藤 和弘, 武内 和彦
    1990 年 54 巻 5 号 p. 281-286
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    快適な水辺の創造のための環境管理では, 水域の生物群集を正当に評価し, これを健全に維持するための配慮を加えることが重要である。本研究では, 生物指標および生物群集情報の多変量解析により, 水辺環境の管理指針を得るための方法を検討した。生物指標は指標生物および算定手法によって性質が異なるので, その組合せにより評価対象水域の環境の異なった側面を評価できる。多変量解析により, 対象水域の生物群集が影響を受けている環境条件を知ることができる。これらの結果を地図情報と対応させて, 水系を生態的に均質な部分に分割し, 環境管理の基本単位とすることも考えられる。以上の手法について, 東京都の河川への適用例とともに報告する。
  • 島田 正文, 高橋 徹雄, 丸田 頼一
    1990 年 54 巻 5 号 p. 287-292
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    市街化の進行した都市部においては, 公園緑地が昆虫類の生息地として重要な存在となっている。本研究は, 都市内の公園緑地における昆虫類の生息状況を把握するとともに, 利用状況管理状況および植栽状況との関連性について言及を試み, 今後の公園緑地における昆虫類を対象とした良好な生息環境の創出手法について考察することを主な目的とした。そこで, 東京都葛飾区の水元公園を調査対象地として選定し, 公園内の環境要素を把握するとともに, ベイトトラップ調査により昆虫類の生息状況を調査した。その結果, 4目11科24種6885個体の昆虫が捕獲され, また, 利用状況等の環境要素が捕獲個体数等に影響を及ぼすこと等が把握された。
  • 近江 慶光, 丸田 頼一
    1990 年 54 巻 5 号 p. 293-298
    発行日: 1990/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    住宅敷地の有する空間的な条件と高木の分布特性との関係を明らかにし, 住居系市街地における高木の保全および緑化方策を検討することを目的に研究を行った。調査対象地は, 身近な緑に対する住民の満足感が比較的高く, 高木が市街地に点在し, 地形が平坦で, ほとんどが住居系の用途地域で占められ, 建築形態は戸建て住宅が中心に占められている地域とした。敷地毎に敷地の有する条件と高木の分布位置を調査した結果, 空地巾の増加に伴う高木本数の増加傾向および空地面積の増加に伴う高木本数の増加傾向は, 北面する空地および南面する空地においての方が, 東面する空地および西面する空地においてよりも著しく大きいことが把握された。
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