造園雑誌
Online ISSN : 2185-3053
Print ISSN : 0387-7248
ISSN-L : 0387-7248
最新号
選択された号の論文の68件中1~50を表示しています
  • 服部 勉, 進士 五十八
    1994 年 57 巻 5 号 p. 1-6
    発行日: 1994/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 日本に残る数少ない鴨場である浜離宮庭園の庚申堂鴨場, 新銭座鴨場を主たる対象として以下の3点について歴史的に考察を行なったものである。まず鴨場の基本的事項として,(1) 鴨場の構成東京周辺における分布, 起源について確認を行ない, 次に (2) 絵図面や江戸期の来訪者が記した記録などから, 浜離宮庭園における鴨場の変遷や景観がどの様なものであったかを明らかにし,(3) 浜離宮庭園における鴨場と庭園の意味について考察を行なった。
  • 内田 仁
    1993 年 57 巻 5 号 p. 7-12
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は明治末期・大正中期・昭和期の平面図及び『明治廿八年度臨号明細書』の添附絵図面や明治29年頃・昭和15年の写真等を基に近代における二條城本丸庭園の地割・植栽の経年変化について考察した。明治29年当初から基本的な地割及び庭園景に変化はなかった。但し, 現在では築山に登る園路は保存状態に変化が生じてきた。現在の植栽形態は竣工当時と比べ, 樹木が覆い茂り変貌してしまったようにもみえるが, 昭和15年とはほぼ近いものであった。明治29年頃や昭和15年の多聞塀跡は現在のように常緑樹には覆われていない。
  • 河原 武敏
    1993 年 57 巻 5 号 p. 13-18
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    平安鎌倉時代の植栽管理については, 主として作庭書や発掘調査などから論じられてきたが, 本研究は更に古記録のほか, 生活描写の色濃い日記・随筆・説話・物語・絵巻などから資料を収録して考察することとした。その結果,(1) 管理担当の職名。(2) 植栽の維持作業には, 清掃とその時間帯・植物の手入れ・剪定・植替え・伐採・草焼き。(3) 庭園植物の繁殖には, 株分け・挿木・接ぎ木・播種。(4) 植栽の保護施設には, 柵囲い.植桝・霜除け・控木の存在が明らかとなった。
  • 渡辺 達三
    1993 年 57 巻 5 号 p. 19-24
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    わが国前近代のハスの観照の歴史的な変遷をみ, 1) 上代では, ハスへの観照がみられるが, 中国からの影響の大きい, 女性, 恋愛などの寓意性をもった人事中心のものであること, 2) 中古では, ハスの植物や生態などの特性がよく観察され, それを基礎にした植物や, 釈教, 人事上の事柄について観照されていること, 3) 中世では現実的, 実践的な性格を強め, ハスは環境との連係を強め, 空間, 時間, 音響などの再構成された, 複合的な事象の中で, それらとの連関において観照されていること, 4) 近世では, 前代の現実的指向, 環境との連係の傾向をいっそう強め, その植物や生態等の特性に即したものとなり, 釈教的な観照はほとんどみられなくなっていること等をみた。
  • 村上 朝子, 藤井 英二郎
    1993 年 57 巻 5 号 p. 25-30
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    立て花から発展した立花は, 仏教の影響を残しながら, 自然を象徴的に表すことがその主眼とされる。その構成には自然界の理や縁に準拠しようとする考え方がみられ, それは作庭の基本的な考え方や, その具体的な展開にも通じる。遠山の景色を象る立花に比べて, 目前の景気を表す砂の物の表現はより具象的で, 庭園における写景に類する面をもつ。細部の意匠を大切にする点で砂の物と近景の植栽意匠にみられる意識は類似し, この意識は盆栽ともつながるが, 盆栽には盆中に理想の風景を看て, そこに心を遊ばせるという鑑賞姿勢がみられる。この姿勢は, 空間の中に実際に身を置き, 人と空間とが一体化できる庭園の鑑賞姿勢とっながるものである。
  • 丸山 宏
    1993 年 57 巻 5 号 p. 31-36
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    江戸期における朝顔関係書の出版は園芸文化の高揚期でもある文化・文政期と幕末の嘉永・安政期にそのピークがある。近代に入ると明治30年代に再び江戸期に劣らない朝顔関係書が多数出版される。また, 朝顔雑誌が明治20年代後半から東京を中心に各地で発刊され, 同好会的存在であった朝顔会が雑誌というメディアによって情報交換の場を作り, 多くの会員を集めたことは特筆に値する。朝顔が一年草で, 栽培の比較的容易な種であったことも一因であるが, 明治期の流行は江戸の園芸文化への憧憬として, 劣性遺伝による変化朝顔への好事家的嗜好がその背景にあった。明治期に多くの園芸雑誌が刊行される中, 朝顔雑誌の近代園芸史上の意義を検討する。
  • 西村 公宏
    1993 年 57 巻 5 号 p. 37-42
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    千葉県立園芸専門学校では, 創立当初から「庭園実習」による校庭整備が進められると共に, 第3学年を対象に「庭園論」が講じられている。この「庭園論」を, 初代担当の鏡保之助は美学の立場から論じ, その後を受けた本郷高徳はさらに国土修飾の視点も加え充実させるが, いずれも (洋風) 庭園を近代化にふさわしい開放的な空間と捉えていた。
    実際の校庭整備は, 明治期の上流邸宅の庭園整備を手掛けた林修巳の経験に負うところが大きく, 実習見本園的性格を有していたが, 地方に対して開かれた「楽園」としても位置付けられており, その公園的性格の背景に「庭園論」を指摘することは可能であろう。
  • 小野 佐和子
    1993 年 57 巻 5 号 p. 43-48
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    公園とは種類の異なるオープンスペースとしての庭のもっ意義をさぐるために, 公団の共用空間で庭づくりを行っている人々に聞き取り調査を行った。その結果, 庭は, 共用地でありながら個人の自由にできる空間であること, 物理的・心理的距離, 植物の種類や数, 住み手の人柄を反映するデザイン, 育つ植物を見ることにおいて公園とは異なる特質を持つこと, 庭づくりの経過や特別の出来事と結び付いた植物の存在が庭への愛着を深くすることが明らかになり, 庭づくりが場所との個人的で親密な関係を育て, 住民による主体的な環境形成の働きをもつことを認めた。
  • 野嶋 政和
    1993 年 57 巻 5 号 p. 49-54
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大正後期より本格的に開発され始あた郊外住宅地は近代がもたらした新しい空間である。本論の目的は, 郊外住宅地の構想に関係することになる議論を考察することによって, 郊外住宅地に担わされた社会的な意志を明らかにすることである。その対象時期は郊外住宅地が実体化する以前の明治末期から人正初期にかけてとする。というのも, 実体化される以前のこうした議論は, 直接郊外住宅地の開発を前提としていないが故に, 実体にとらわれない認識や意志がより明示的に示されているだろうからである。考察の結果明らかになったことは, 郊外住宅地を特徴付ける要素は, 統一されて語られていたのではなかったが, それぞれに強い連関をもって構想されていた。
  • 土肥 真人
    1993 年 57 巻 5 号 p. 55-60
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は, 江戸から東京への変動期にみられる都市オープンスペースの形態的変化と社会的諸制度の変化との相関を検討することを目的とする。江戸の貧民対策は, 基底的社会制度である身分制度により, 各身分内で行われるのが原則であった。路上の貧民は, 路上を活動の舞台とする諸身分に組み込まれた。明治初期の身分制度廃止により, 浮浪者および路上を活動の舞台としていた身分の人々は道路上から排除され, 空間的に収容される。明治初期公園は, この空間的貧民収容という側面からも捉えられる。本論の考察の結果, 身分的収容から空間的収容への貧民収容制度の変化は, 都市オープンスペースの形態的変化と密接に関わっていることが明らかにされた。
  • 石川 幹子
    1993 年 57 巻 5 号 p. 61-66
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    アメリカ合衆国における初期のパークシステムは, 公園と公園を結ぶレクリエーション系統計画としてではなく, それまで別々のものとして整備されてきた公園と街路を一つの系統としてとらえ, 良質の都市基盤整備を導入することにより, 計画的市街地開発を誘導し, あわせて良質な自然環境の保全をめざしたものであった。こうした都市基盤整備の考え方の萌芽となったものが, ブルックリン市におけるプロスペクト公園とパークウェイの整備であった。
  • 宮城 俊作
    1993 年 57 巻 5 号 p. 67-72
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    フレッチャー・スティール (1885-1971) は, アメリカ合衆国におけるランドスケープ・デザインの近代主義運動の萌芽に強く関わった人物である。本稿では, 1920年代から30年代にかけてスティールが著した論説に見いだされる近代主義的な思考を抽出するが, その過程において, 特にフランス近代主義の庭園デザインを評価する視点に着目する。庭園の装置がもたらす視覚的効果, 三次元空間における幾何学的造形, 近代主義建築との空間的関係, の3点から庭園独自の空間構成のあり方を導く論理の展開過程を再構築し, 後の近代主義デザインの展開にはたした役割を論じる。
  • 木村 三郎
    1993 年 57 巻 5 号 p. 73-78
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    最近我国造園界も中国造園界と接触を深め, 古い中国造園の実体を把握するようになってきている。しかし何分にも中国3000年という古い歴史を知る上で大変な労苦を覚悟しなければならない。更に中国語の如きも, その時代時代に就いて, 十分理解することも亦甚だ重要なことにちがいない。ところが幸いにも我国は遣唐 (隋) 使の派遣などを通じて, 古い時代の多くの文献や実像も既に知り得た筈である。従つてその間における中国造園事情も何かと知り得たにちがいない。その代表例として白楽天の白氏文集をあげることができる。その歴史的な影響を特に振りかえって見たい。
  • 小椋 純一
    1993 年 57 巻 5 号 p. 79-84
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    関東地方では明治以降, 東京を中心とする都市域の拡大などにより, その景観は大きく変化してきたが, そのかつての植生景観については十分明らかではない部分がある。本研究は, 関東地方で最初の本格的な地形図である迅速図の原図, およびそれを補完する目的で作成された『偵察録』をもとにして, 明治10年代におけるその地の森林景観を明らかにしようとしたものである。その結果, 当時, 関東地方の森林の大部分は松林と楢椚林であり, その林種分布には地域性が見られたこと, それらの森林の樹木にはかなり小さいものが多かったこと, また, 官林や社寺林や屋敷林には, しばしば一般にはない大きな樹木があったことなどが明らかとなった。
  • 手嶋 潤一, 堀 繁
    1993 年 57 巻 5 号 p. 85-90
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    国立公園成立期に, 日光国立公園の成立に果たした栃木県の役割を考察するため, 大正8年から昭和13年までの日光国立公園に係る行政文書25編を分析した。その結果, 以下が明らかになった。栃木県は (1) 指定のための詳細な調査, 分析を行い, 国の指定作業を容易にした。(2) 保護計画策定までの間, 風景保護に対する国の施策の実行性を高めた。(3) 国の利用計画に先行して施設計画案を策定し, その結果国の計画に影響を与えた。
  • 西田 正憲
    1993 年 57 巻 5 号 p. 91-96
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海国立公園には明治大正時代に築かれた近代の要塞が数ケ所に渡って残っている。紀淡海峡, 芸予諸島, 広島湾口, 関門海峡, 豊予海峡と国立公園の優れた風景地に, 同じような構造をもつ堅牢な砲台跡や煉瓦造りの兵舎跡を見ることができる。要塞遺跡はそれ自体自然と一体となった明治の洋風建築として情趣あるものであるが, さらに一帯は, 瀬戸内海の典型的な瀬戸景観などを眺める優れた展望地として, 国立公園の重要な利用拠点になっている。瀬戸内海国立公園の近代要塞遺跡とはそもそも何かその概要を体系的に明らかにするとともに, この要塞跡地が瀬戸内海国立公園の利用拠点をいかに形成してきたかその経緯を明らかにするものである。
  • 猪爪 範子
    1993 年 57 巻 5 号 p. 97-102
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大分県湯布院町は1960年代の九州横断道路開設を契機に, ひなびた寒村から著名な温泉リゾートへと劇的に発展したが, 際立った魅力の中心は, その優れた農村らしい景観にある。この景観は, その時々の景観をめぐる争点に対する対処を通して次第に形成されるものであり, 人為的な行為の結果である。本研究は, 60年代から現在に至る間, 当町で発生した景観をめぐる出来事を各種資料を収集分析することを通して, その争点が自然景観から産業景観へ, そして生活景観へと移行してきたプロセスを実証するとともに, それから生み出された施策や活動が時代の価値観や社会的状況を如実に反映したものであることを明らかにする。
  • 金 正大, 熊谷 洋一
    1993 年 57 巻 5 号 p. 103-108
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では韓国の戦後におけるリゾートの最初の発生地であるウォーカーヒルを取り上げ, その成立と展開に関する変遷を探った。その結果, 政府の国家政策の一環として外貨獲得等, 開発途上の国家経済成長に大きく貢献したことが判った。特に, 韓国のリゾート開発におけるウォーカーヒルが果たしたリゾートライフの普及はかなり大きかった。ウォーカーヒルは観光・リゾートの政策と深く関わって発展してきており, 戦後における韓国のリゾート開発の先駆的な役割を果たした。
  • 槇村 久子
    1993 年 57 巻 5 号 p. 109-114
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    地縁血縁の中で成立, 維持されてきた墓地が近代化の中で崩壊してきた。これまでの墓地が固定的な地域共同体により支えられていたなら, その崩壊後にはどのような墓地が出現してくるのか。その墓地は何を要素として成立しているのか。近年新たな形で出現している都市型共同墓所を調査することで, 地縁血縁を超える墓地の方向を探る。都市型共同墓所とは家族を単位とせず, 地縁血縁によらずに同じ墓所に眠る形をそう呼ぶこととする。分析の結果, 共同墓所に共通にあるのは個人単位, 共同祭祀, 死後の平等の3点。今後の方向として墓所の共同化, 有期限化, 無形化が導き出された。それは近代化の矛盾の課題に対応し, 近代を超える萠芽と見られる。
  • 内田 均, 萩原 信弘
    1993 年 57 巻 5 号 p. 115-120
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    従来より用いられている根巻資材と最近用いられ始めた根巻資材の相違が移植樹木の生育.発根に及ぼす影響を明らかにするため, 新規根巻資材である紙・麻袋・麻布とこれまでの藁を用いて, 3樹種 (カイズカイブキ・カナメモチ.マテバシイ) の移植樹木を対象に, 根巻資材の分解状況, 根巻資材からの発根量, 樹木の生育状況より検討を行った。その結果, 資材の分解は紙が早くから分解の進行を示すが, 一年後においては藁が最も分解する。しかし, 各資材とも生育はこれまでの藁と同様であり, 生育に及ぼす影響は現われなかった。また, 根巻資材の相違が発根に及ぼす影響は, 移植経過一年からみても生育同様影響がないことが明らかとなった。
  • 長嶋 聡
    1993 年 57 巻 5 号 p. 121-126
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    植木生産における労働力不足に対応するため, 2種類の不織布資材を用いて, 出荷労力の省力化を検討した。落葉広葉樹のソメイヨシノを供試し。移植不適期の8月に調査を行った。作業員の心拍数変化からエネルギー代謝率RMR (Relative Metabolic Rate) を求め, 作業時間を乗じた労働作業量で比較した。遮根型不織布シートで養成すると, 掘上げ・荷造りまでの労働作業量は慣行区の約1/5に省力化できるものの, 3年間の生育量は養成開始時の270%程度であった。一方, 貫根型不織布ポットで養成すると, 労働作業量は約1/4に省力化でき, 生育量も560%で慣行養成法に対しても遜色ないことがわかった。
  • 倉本 宣, 鷲谷 いづみ, 牧 雅之, 増田 理子, 井上 健
    1993 年 57 巻 5 号 p. 127-132
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    カワラノギクの保全生物学的研究の一環として, 種子の段階の動態について検討した。多摩川で最大の生育地である秋川市草花地区の7つの個体群について, 種子捕食者であるツツミノガ属の一種の幼虫による食害を考慮して, 1991年12月 (一部は翌年12月) に開花個体密度, 個体当りの頭果数などから有効なシードレイン (単位面積当りの種子生産量) を調査した。最大の個体群において, 埋土種子の数の変化を1992年と翌年に調べた。有効なシードレインは1, 200~11,000粒/m2であった。発芽時期の後には埋土種子は少数しか残っていなかったので, 埋土種子集団の個体群の維持に対する貢献は小さいことが判明した。
  • 早野 美智子, 渡嘉敷 勝, 雨宮 悠, 矢橋 晨吾
    1993 年 57 巻 5 号 p. 133-138
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市内公園緑地を利用し, 雨水を有効に浸透させるためには, 緑地の水文的構造を明らかにする必要がある。そこで人々の利用頻度の高い公園の, 踏固の影響を受けた裸地と芝地によって構成される広場において, その場所における水収支を設定し, 降雨時に形成される窪地貯留の水位変化とその時の降雨強度を測定し, その場所における水収支を考えた。その結果, 形成される湛水域の広範囲にわたる周辺から, 目に見えない流入が存在することが示された。また, 大抵の場合, 水位変化が地表面のもつフラックスの大きさを決めることから, 雨水の一時貯留域として公園広場を窪地形にすることの有効性も確認された。
  • 金 恩一, 藤井 英二郎, 安藤 敏夫
    1993 年 57 巻 5 号 p. 139-144
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    緑地の視覚心理的効果を明らかにするため, 植物の視覚的要素の一つである色彩に着目し, それと眼球運動, 脳波との関係について検討した。視覚対象としては, ペチュニアの6品種 (紫, 赤, ピンク, サーモンピンク, 黄, 白) と花のないペチュニアそれぞれを面的に広がる形で被験者の前に提示し, そのときの眼球運動をトークアイで, 脳波を脳波計によって測定した。その結果, 眼球運動と脳波の間にある種の関連性をみることができた。また, 既報の色布を用いた実験と比較した結果, 男女差については緑色を除いて他の色では類似した傾向を得ることができた。
  • 田代 順孝, スリスティアントロ バンバン
    1993 年 57 巻 5 号 p. 145-150_1
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 高密度市街地の住宅地と樹路における温熱景 (サーモスケープ) の一日の変化のパターンを視覚的に明らかにし, 地区レベルでの環境デザインの資料を得るための基礎的研究である。具体的には, 千葉県松戸市新松戸をケーススタディーエリアとし, 1993年夏期における路上21箇所と高層住宅屋上から赤外線サーモビジョンカメラを用いて画像データを得, パソコンで画像処理 (温熱景の分析) を行い, 景観構成要素における高温領域と低温領域の変化がビジュアルデータとして把握された。特に街路樹などの樹冠によって構成される低温領域の動態が詳しく把握された。
  • 藤崎 健一郎, 半田 真理子
    1993 年 57 巻 5 号 p. 151-156
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 植栽が微気象に及ぼす効果を定量的に把握することを目的とし, 特に温度に重点をおいて調査したものである。日射の強い夏の日においても樹林内外の気温差は2~3℃程度であるが, 人が感じる差異はこれよりはるかに大きい。そこでグローブ温度計を用いて黒球温度を測定したところ, 気温差が1.6℃ の時に17.1℃ の差があり, 体感温度の差を定量的に表現するのに適していると考えた。そこで, 各種の植栽地内外において, 気温, 黒球温度及び他の微気象要素の測定を冬季に行った。その結果, 街路樹の有無によっても黒球温度で8℃ 程度の差ができること, 地表面の状態によっても黒球温度に差ができることなどが明らかとなった。
  • 山田 宏之
    1993 年 57 巻 5 号 p. 157-162
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    埼玉県幸手市を対象に, 1989年, 1990年の2年間, 盛夏の14時, 4時における気温分布の移動観測を行った。測定結果から気温分布図を作成し, 緑地分布との関連についての考察を加え, 緑地分布と良く対応した形の都市高温化が発現していることを把握した。次に, 測定範囲内から抽出した30地点を中心にした直径500m, 250mの範囲内の緑被率, 緑地率を航空写真から計測した。それらの値と測定された気温との関連を各種回帰分析により解析した結果, 緑被率10%あたりの気温低減率として, 14時において0.21℃ という値を得た。これらの値を過去の調査事例と比較, 考察するとともに, 1989年, 1990年の結果について, 回帰係数の比較を行った。
  • 高橋 新平, 曽我 聡, 近藤 三雄
    1993 年 57 巻 5 号 p. 163-168
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    弱光条件下における芝草7種類の生育と光合成反応を実験によって把握した。その結果,(1) 耐陰性に優れるとされるケンタッキーブルーグラス, セントオーガスチングラス (緑葉) は他種に比較し弱光条件下で長期間生育できること, しかしセントオーガスチングラス (緑葉) は光強度増加にともなう光合成速度増加がケンタッキーブルーグラスよりも少ないこと,(2) セントオーガスチングラスの斑入種は緑葉種に比較し生育日数が短いこと, 光強度増加に伴う光合成速度増加が少ないこと,(3) ペレニアルライグラス, ケンタッキーブルーグラスは165μmol・m-2・S-1で飽和光合成速度に達することが推察され他種よりも健全に生育していることが把握できた。
  • 鈴木 雅和, 菅野 博貢
    1993 年 57 巻 5 号 p. 169-174
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市部における墓地需要の高まりと, 墓地不足は深刻な都市問題となっており, 都市周辺部においては墓地供給の圧力が高まっている。本研究は, 水戸市近郊の瓜連町における公園墓地計画策定に伴い, 従来からの定住層と新規住宅団地に移住してきた住民における, 墓地に関する意識の比較を行った上で, 今後の墓地のあり方について考察したものである。その結果, 新旧住民の間には, 墓地需要の度合, 埋葬・慰霊・墓地のあり方に関する意識, 公園墓地の整備に際して望む事柄などに差があることが分かった。また, 今後の公園墓地計画において, 多様な慰霊形態を受け入れ管理することにより, 墓地の不用意な拡大を抑制する可能性について考察した。
  • 上甫木 昭春, 池口 仁
    1993 年 57 巻 5 号 p. 175-180
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 兵庫県三田市のフラワータウン内の残存樹林を対象として, ニュータウン内外の居住者へのアンケート調査を通じて, 残存樹林との接触機会, 残存樹林との接触頻度に係わる居住者側及び樹林側要因の把握を試みた。その結果, 残存樹林との接触機会は, 屋外での生活行動に依存していること, 残存樹林との接触頻度に係わる居住者側要因としては離隔距離, 居住年数, 年齢, 居住地区等との関連性が相対的に強く, 残存樹林との接触頻度に係わる樹林側要因としては, 近接道路長, 規模等が強く影響していること等が明らかとなった。
  • 澤木 昌典
    1993 年 57 巻 5 号 p. 181-186
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 兵庫県三田市に建設中のニュータウン, 神戸三田国際公園都市のフラワータウン地区の住民に対するアンケート調査を通じて, 同地区のような比較的自然度の高い地域にあるニュータウンの住民は入居当初から自然環境重視の傾向が強いこと, そして中でも自然に関心の強い人には樹林の近傍に住んでいる人が多く, 定住意向が強いこと, 日常生活上において庭に鳥やチョウを呼ぶ工夫をして積極的に自然と関わっていることを明らかにした。さらに, 対象地区の重要な自然環境構成要素である周囲の山並み景観や地区内の残存樹林等の保全の重要性を居住者側からの要望としても再確認した。
  • 権 奇燦, 安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦, 山本 聡
    1993 年 57 巻 5 号 p. 187-192
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 高蔵寺ニュータウンに存在する保存緑地を対象として, 保存緑地の物的諸特性とアンケート調査を通じて捉えた保存緑地が保有する景観性, 利用性, 自然供給性に対する評価との相互関係を明らかにし, 今後の保存緑地の活用のあり方を探った。その結果, 保存緑地の主に立地条件によって規定される公共性, アクセス性や可視機会に応じて, 居住者が捉える意識構造が影響されるといえる。評価では, 利用性に関しては, 緩傾斜地形を含むことや園路整備率が高いことが評価を高め, 景観性や自然供給性に関しては, 主に植生特性が影響し, 高木層の被度が高く, 二段林であり, 高木層の多様度が高いことが評価を高あることが明らかとなった。
  • 安原 加津枝, 奥 敬一, 田中 伸彦
    1993 年 57 巻 5 号 p. 193-198
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    生物群集の保全のための包括的な対策が求められているが, 保全状況の実態は十分に把握されていない。そこで, 保護林制度下の374箇所の植物群落保護林と特定動物生慰地保護林を対象にして, 生物群集の保全の現状と問題点を2つの側面から明らかにした。1つは, 法制度の枠組みの中で保護林がおかれた現状であり, 森林の機能区分や保護林の設定状況管理状況である。もう1つは, 植生パターンや立地状況などの, 保護林がおかれた生態学的な側面からの現状である。そして,(1) 保護対象や機能区分の特徴, レクリエーション利用との調整や希少種の保護管理の進展の状況,(2) 保護林を取り巻く植生の状況や保護林の孤立化, などが明らかになった。
  • 井手 任, 原田 直國, 守山 弘
    1993 年 57 巻 5 号 p. 199-204
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    平地農村の孤立化した二次林を対象に, そこへ供給される種子と下層植生の木本種の構成を調査し, 孤立二次林における種子供給が下層植生に与える影響を明らかにしようとした。下層を構成する木本種の4割以上が周辺より供給された種であり, そのほとんどが鳥によって被食・散布される種であった。また, 孤立林に近接する街路樹個体群は, 周辺より供給される種の一部をトラップし, 孤立林に街路樹構成種を供給することが明らかになった。以上より, 孤立林の下層植生の種構成が, 種子の供給を通して, 周辺の樹林や植栽の樹種構成の影響を受けやすいことを示し, 孤立林へ供給される種子の構成を改善するための街路植栽等のあり方について考察した。
  • 大久保 悟, 加藤 和弘
    1993 年 57 巻 5 号 p. 205-210
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    薪炭林や農用林としての管理が放棄され, 他の土地利用によって強く分断されている平地二次林に補充されている高木種の, 種組成と個体の根元直径を調査した。特に近年の補充状況を把握するために, 樹高1.5m以下の実生及び幼齢木を対象とした。TWINSPANにより種と調査区を分類した結果, 種構成を特徴づけるのは二次林の外部から補充される種であり, 母樹からの距離と調査区内の植生構造によって規定されていることがわかった。また個体のサイズ分布から, シラカシ, 及びサワラ, ヒノキは群落への定着が良好であると考えられた。最後に近年の高木種の補充状況に影響を与えている要因を考慮し, 今後の樹林地管理・保全の上で重要な点を考察した。
  • 藤村 忠志
    1993 年 57 巻 5 号 p. 211-216
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    多摩丘陵の二次林の農用林的利用衰退と植生変化の関係について考察した。現在の二次林の植生は種組成と相観から, 林冠の2つの型と林床構造の3つの型の組合せによる落葉広葉樹林6タイプと常緑広葉樹林1タイプの合計7タイプ (3林冠型と7林床型) に区分された。林冠型・林床型の分布と斜面方位と傾斜, 最終伐採年代との関係の分析から, 林冠部の植生変化としてS.40年代以降に伐採された針葉樹の植林の一部, S.50年代以降に伐採された北緩斜面, 南急斜面のコナラ, クヌギの優占する林分での伐採後の管理衰退による薪炭利用に不適な樹種の混生する林分への変化, 林床部での変化として下刈り管理の衰退による林床植物の高密化が明らかとなった。
  • 服部 保, 上甫木 昭春, 小舘 誓治, 熊懐 恵美, 藤井 俊夫, 武田 義明
    1993 年 57 巻 5 号 p. 217-222
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    兵庫県三田市のフラワータウン内に残存する二次林を島の生物地理学的視点から孤立林として扱い, その樹林の現状および保全について考察した。調査の結果, 孤立林の面積と出現種数には強い相関があることが明らかとなった。樹林の小面積化と共に減少してゆく種は林床に生育する多年生草本植物, 特に好適湿性の種が多く, 種の欠落には立地の乾燥化が主として影響していると考えられた。孤立林の特徴として種の欠落と共に周辺の植栽樹木からの種子による侵入が認められた。種数一面積関係などから孤立林の保全面積をいくつかの方法で提案した。樹林を残すに当たって多数の小面積孤立林か, 少数の大面積林かという問題についても考察した。
  • 橋本 佳明, 上甫木 昭春, 服部 保
    1993 年 57 巻 5 号 p. 223-228
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    兵庫県三田市フラワータウン内に残された90~17200m2の面積を有する孤立林10箇所と102700m2の非孤立林で, アリ類の出現種類数, 種組成などを指標として, 林内の節足動物相の現状の解析を行なった。その結果, 林内節足動物相の豊富さと林地の残存との間には強い正の相関があることが示唆された。また, 残存面積が10000m2以上ある孤立林では, 節足動物の生息空間として, 多様性の高い林内環境が保持されているが, それ以下の残存面積では, 林内湿潤地の消失や林床の貧弱化など環境の劣化が起こっていることが示唆された。これらの知見から, ニュータウン開発に対して, 多様な節足動物が生息する持続性の高い樹林を保全するための方針を提示した。
  • 葉山 嘉一
    1993 年 57 巻 5 号 p. 229-234
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市林や公園林における生態系保全のための植生計画や植生管理計画は, 人間の利用を考慮しつつ生物生息空間の質について生態学の成果を応用することが重要である。本研究は, 都市公園の樹林地において異なる植生が鳥類の生態にどの様な影響を与えるか明らかにするため, 横浜市立こども自然公園を対象に植生調査および鳥類調査を行い, 林分構造と生息鳥類の質と量の違いを検討した。その結果, 公園林では鳥類の生息空間として, 落葉広葉樹林の隣接地に針葉樹林の小規模な林分が散在すること, 林床に植生が存在すること, 林床植生が存在しない場合樹林の形態は単独の幹のものと株立ちのものが混在することなどが重要であることが示唆された。
  • 一ノ瀬 友博, 加藤 和弘
    1993 年 57 巻 5 号 p. 235-240
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    孤立した樹林地において鳥類群集を調査し, その分布に影響を与えている要因を検討した。埼玉県所沢市西部の1ha程度またはそれ以上の樹林地20ケ所を対象とした。鳥類群集調査は, 越冬期の1993年の1~2月と繁殖期の同5~6月に行った。樹林地やその周辺の土地利用は空中写真より読み取った。分析の結果, 鳥類群集に最も強く影響を与えている要因は, 樹林地の面積であることが確認された。さらに, TWINSPANによって樹林地と鳥類を分類し, 鳥類出現パターン模式図を作成した。樹林地は4つのタイプに分類された。樹林地のタイプごとの鳥類群集について分析するとともに, 鳥類群集の生息に配慮した樹林地の管理について検討した。
  • 長田 光世, 大纒 亜実, 森 清和, 田畑 貞寿
    1993 年 57 巻 5 号 p. 241-246
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    生物生息空間としての池の環境を復元しつつある本牧市民公園に関し, 近接する3/1、学校の5年生に対してアンケートを実施した。子ども達は, 自然や野生生物に対する潜在的要求を有したが, 全般的に生きものとふれあい, 遊んだ体験は十分ではなかった。一方, トンボ池利用体験者は, 生きものを好み, 本牧市民公園を頻繁に利用し, 生きもの体験イベントに積極的に参加し, トンボを捕まえた経験が多く, また, トンボ池を生物生息空間として高く評価していた。トンボ池は, 子どもの生きものとふれあう潜在的要求を引き出し, 具体化させる発現の場として重要な役割を果たしていることが明らかになった。
  • 坂口 次郎, 鈴木 雅和
    1993 年 57 巻 5 号 p. 247-252
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    筑波研究学園都市の街路樹は, 緑量の増加と樹冠の一体化を意図して2本立植栽がなされ, 植栽デザインとして特徴的である。しかし, 植栽後約20年経過して観察すると, 必ずしも当初のデザイン意図どおりの効果を達成していないものも見られる。本研究はそれら街路樹に関する活力度調査および視覚的評価によりデザイン意図と成果の検証を行うことによって, 植栽デザインの方法論を考察したものである。その結果, ユリノキ, アメリカフウではデザイン意図を達成しているが, トウカエデ, シラカシ, エンジュでは達成していないことがわかった。今後, 植栽デザインにおいて樹木の経年的変化と管理方法を考慮する必要性が明らかになった。
  • 崔 成圭, 仲 隆裕, 藤井 英二郎
    1993 年 57 巻 5 号 p. 253-258
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    富津市萩生集落を対象に海岸集落の空間構成とその植栽の特性について現地調査をもとに考察した。農家の住宅はほとんどが南向きであるのに対し, 漁師の住宅では北西向きが多い。これは前者では主屋前の広庭を南面させる必要があるのに対して, 後者ではその必要がない上に北西に位置する海と生活が深く係わることによるものと考えられる。農家の屋敷囲いはその四周に及びその閉鎖性も高いが, 漁師の家にはほとんどなく, あっても低く部分的なものに限られ, 開放的な空間構成が特徴的であった。こうした特徴は集落の空間構成でも見られ, それらはそれぞれの地域の生業の違いを背景に生まれたものと考えられた。
  • 高野 歩
    1993 年 57 巻 5 号 p. 259-264
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    緑の人間に対する固有効果のうち, 人間の感覚に働きかけるものとして快適性 (アメニティ) があげられる。本研究では, 林内の快適性評価において, 景観因子で高いウエイトを占めると報告されている木洩れ日を題材として, 感覚的性質のものを具体的に数値としてとらえ, 形成要素の明確化を図ることを目的とした。
    研究方法は, 解析データとして, 魚眼レンズで撮影した落葉樹地, 落葉常緑樹混植地の天空写真を用い, 木洩れ日という現象を陰, 木洩れ日 (3段階), 空の5つのカテゴリー別に数値化した。次にその数値データを解析することにより, 各データにおけるカテゴリー別色相設定を明確にし, これらの結果から木洩れ日の形成状態を明らかにした。
  • 吉岡 太郎, 熊谷 洋一, 斎藤 馨
    1993 年 57 巻 5 号 p. 265-270
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    コンピューターテクノロジーの進歩によって, 豊富な情報を可視化することが可能になり, 現在では, 非常に美しいフォトリアリスティックな森林風景を再現することもできる。しかしそれらは, 「そこにあるもの」を基本とし「そこに見えるもの」について考えられているものではない。最近の脳生理学の研究によって, 視覚情報は脳の中で (ニューロンレベルでも) 再構成され, それによって変化しているということが明らかにされている。したがつて, これからのCGは, 豊富な情報を分かりやすい形に再構成するという点も考慮する必要がある。本研究は, 日本画の手法を応用し, 我々が「見ている」形に視覚情報を再構成するという新たな試みである
  • 赤谷 隆一, 安藤 昭, 神崎 彰, 千田 庸哉
    1993 年 57 巻 5 号 p. 271-276
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 河川景観の計画設計のための基礎的研究として, 河川の流軸景における視知覚的構造の分析を行なうことを目的とするものである。
    研究方法は, 河床勾配が緩やかに変化し流勢があり波立つ流れから緩やかに蛇行する流れまで, 特徴的な景観を有する北上川中流部を対象に, 橋上からの流軸景を数地点選定し, 注目点の分布と領域感覚 (hereとthere) の分布について現地調査を行ない, 俯角により分析した。これらの調査分析結果から, 河川景観においては注目点の位置と視覚的領域感覚の分節点の位置は一致しないことが明らかとなり, 景観計画設計のための有効な基礎的資料が得られた。
  • 増田 昇, 安部 大就, 下村 泰彦, 山本 聡, 酒井 毅
    1993 年 57 巻 5 号 p. 277-282
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 川らしさの保全・創出を図る上で, 河川空間の流路形態, 水の表情と空間の自然性が重要であると考え, 河川空間の流路線形, 低水路水際形態, 高水敷の修景緑化形態を操作した基盤整備モデルと修景整備モデルを作成し, モデルに対する景観評価を通じて, 川らしさを保全や創出するための課題と方向性を探った。その結果, 川らしさの保全・創出には, 流路線形が最も重要であり, 中でも, 低水路線形を曲線とすることが効果的であることや水際部の曲線に加え低水路にヨシや洲を導入することが有効であることが基盤整備モデルから明らかとなった。さらに, 高水敷の修景緑化の意義が修景整備モデルから明らかとなった。
  • 古谷 勝則, 裴 重南, 油井 正昭, 石井 弘, 児島 隆政, 沼本 健司
    1993 年 57 巻 5 号 p. 283-288
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    自然景観地における多様な眺望景観を対象に, 視覚認識特性の把握を試みた。その結果, 眺望景観では, 景観のイメ-ジとして, 好ましさや自然性だけでなく, 景観の動きや力, スケール感が亜要であることがわかった。また, 好ましさの評価埜準として, 「構成要素の多様な存在」, 「広がり」, 「動き」, 「複雑」, 「シンボル要素の存在」, 「明るさ」などが挙げられた。複雑で多様な構成要素があり, 遠景に山並が見え, 近景が開け, シンボル的要素や水の流れがあると, 好ましく感じる傾向があった。知覚認識特性としては, 一目でわからないような複雑なものを注視する傾向があった。また, スカイラインや水際線を注視することもあった。
  • 裴 重南, 古谷 勝則, 油井 正昭, 沼本 健司, 児島 隆政
    1993 年 57 巻 5 号 p. 289-294
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    自然景観地において建築物の位置が景観認識にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため景観認識評価の差を求めた。その結果, 建築物が自然景観の注視点に存在する場合, 認識評価は自然景観のみに対して, 注視点が興味対象や象徴物であるときには評価が50%以下, 景観構図上収斂点であるときは約50~60%, 特に興味対象がなく画面中央であるときは約50~80%に低下した。また, 建築物が注視点以外に存在する場合, 注視点が興味対象や象徴物にあるタイプの自然景観ではいずれも影響は少なかった。これに対してこの外のタイプの自然景観では, 評価が高い場合があった。一方, 注視点に建築物が建設されると景観調和が図り難いこととなっ
  • 市原 恒一, 豊川 勝生, 山田 健
    1993 年 57 巻 5 号 p. 295-300
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    橋梁は大きく, 見通しの良い場所に設置されているため, 遠方からよく見え, 風景を構成する重要な要素となる。橋梁のデザインには十分な配慮が必要である。本報告では, コンピュータグラフィックスにより同一風景に7種類の形式と色彩の橋梁を合成して, 49枚の合成画像を作成した。これにより景観評価試験を行い, 頻度形式のデータを用いて数量化II類により共通形容詞対の抽出を行った。つぎに, 橋梁の景観が形容詞対の階層構造により説明できると仮定して, ファジィAHP法により各橋梁景観の評価値を求めた。その結果, 橋梁の色彩は濃い青みの緑色と灰青色, 形式は上路および下路アーチ橋吊り橋の評価が高いことが明らかになった。
feedback
Top