同一産業に属する企業間、例えば、保険会社間においてもその投資リスクの大きさは異なる。経営学やコーポレートファイナンスの既存研究に基づいて、その差異を生じさせる要因を明らかにすることが本研究の目的である。そこで、債権者、株主、経営者の意思決定に影響する要因を説明変数とし、それぞれリスク量の異なる国債投資、外国証券投資、株式投資、非国債投資の4つの投資行動を被説明変数とし回帰分析を行った。その結果、債権者のニーズの多様化、大株主の影響力の減少、Chief Executive Officer (CEO)のナルシシズムの度合いの増加が投資リスク増加に影響を与えていることが分かった。
生命保険会社は一般事業会社の大株主である。近年のスチュアードシップコードのもとでは、機関投資家としての生命保険会社は、投資先企業に対する適切な株主還元要求をより高めていくことが求められている。これは、かつての「物言わぬ株主」と言われてきた生命保険会社とは明らかに状況が変わりつつあることを意味する。他方で、近年、企業の現金保有が大きく増加しており、これは、適切な株主還元という意味において問題があると指摘されることも多い。その意味において、投資先企業に対する適切なガバナンスという観点から、企業の現金保有が株主価値に与える影響を検討することには重要な意義がある。本論文の目的は、現金を潤沢に保有することは株主価値を向上させるのかどうかを、東証上場企業を対象として実証的に明らかにすることにある。
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