腸内細菌学雑誌
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15 巻, 1 号
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  • ホスト・ベクター系の開発を中心に
    緒方 是嗣, 中村 睦, 田島 清, 松井 宏樹, 長峰 孝文, 辨野 義己
    2001 年 15 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    反芻動物は, 第一胃 (ルーメン) に棲息する微生物による発酵 (ルーメン発酵) によって, 植物繊維の分解を行うことで, 飼料作物を利用することができる.ルーメン内での繊維質飼料の消化性機能を向上させるために, 遺伝子組換えの技術を導入し, 高い繊維質分解能を有する組換え細菌を作出する試みが行われている.主要なルーメン細菌について, 組換え細菌を作出するためのツールとなりうるホストベクター系の作出を試みた.また導入先であるルーメン環境における分子生態についても検討した.
  • DNA-PCR法による確認
    角 有希子, 結城 功勝, 久代 明, 渡辺 幸一, 諸富 正己
    2001 年 15 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    プロバイオティクスとしての特性の一つである菌の消化管内生残性を, 飲用-糞便からの回収実験で迅速, 正確に調べるために, 選択培地を作製し, さらにrandomly amplified polymorphic DNA-PCR法 (RAPD-PCR法) を導入した.被験者は健康成人男子8名で, 飲用開始1週間前から発酵乳製品の摂取を控え, その後3日間, 毎昼食後Bifidobacterium breve ヤクルト株を含む発酵乳製品 (ミルミルS) を100ml飲用した.飲用初日の早朝便を飲用前, 最後の飲用の翌朝便を飲用後の便とし, 糞便中のB. breveヤクルト株を選択培地を用いて検出し, RAPD法により投与菌であることの確認を行った.選択培地上の投与菌とそれ以外の菌は, ほとんどの場合コロニー性状によって容易に区別できたが, RAPD法により明確に識別できた.飲用前の便からは, 8例中5例ではB. breveヤクルト株は検出されず, また検出された3例での菌数は糞便1g当たり平均で103.7と低かった.それに対し, 飲用後の便からはすべての検体からB. breveヤクルト株が検出され, その菌数は糞便1g当たり107.18±0.83であった.RAPD-PCR法は迅速, かっ正確な菌株識別法であり, またこの方法を選択培地と併用することでB. breveヤクルト株は高い消化管内生残性を示すことが確認された.
  • Lactobacillus plantarumの大腸到達性および健康成人の糞便細菌叢に及ぼす影響
    久米村 恵, 戸羽 正道, 曽川 芳郎, 清水 精一, 川口 信三
    2001 年 15 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Lactobacillus plantarum ONC141株のヒトにおける大腸到達性およびそれを用いて調製した発酵乳の継続摂取が健康成人の糞便細菌叢に及ぼす影響についてそれぞれ検討した.はじめに, 健康成人6名にL.plantarumONC141株を用いて調製した発酵乳 (生菌数5.3×108CFU/ml) を1日200mlずつ1週間摂取させ, 摂取前, 摂取1日目, 2日目, 4日目, 7日目の糞便を回収し, 投与したL.plantarumONC141株の分離同定を行った.その結果, 発酵乳摂取1日目以降全ての被験者から糞便1g当たり107.8~108.4個のL.plantarum ONC141株が検出された.次に, 健康成人男女21名に, L.plantarum ONC141株を用いて調製した発酵乳 (生菌数7.1×107CFU/ml) または市販牛乳をそれぞれ1日300mlずっ4週間継続摂取させ, 摂取前後の新鮮糞便を採取して糞便細菌叢を検索した.その結果, 発酵乳群 (11例) では,.BifidobacteriumおよびLactobacillusの菌数は摂取前に比べ有意に増加し, 牛乳群 (10例) の摂取後の値に比較しても有意に高値を示した.また, Bifidobacteriumの占有率も, 発酵乳の摂取により, 20.9±13.0%から44.1±19.5%へと顕著に増加し, 牛乳群に対しても有意に高値を示した.これらの結果から, 今回用いたL.plantarum ONC141株は, 生きたまま大腸へ到達すること, さらにその菌株を用いて調製した発酵乳の摂取により糞便細菌叢のバランスを改善できることがわかった.
  • 便秘気味の成人の排便回数に及ぼす影響
    戸羽 正道, 久米村 恵, 宗行 哲, 曽川 芳郎, 吉澤 久雄, 矢島 洋一, 松田 豊, 飯島 肇
    2001 年 15 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    排便回数が週に4回以下の便秘気味の成人 (平均年齢40.3歳) 16名を対象に, Lactobacillus plantarumONC 141株を用いて製造した発酵乳を1日300mlずつ3週間継続して摂取させ, 排便回数を主要評価項目とし, あわせて便性, 糞便細菌叢に及ぼす影響を検討した.発酵乳の摂取に伴い排便回数の有意な増加を認め, 本発酵乳を継続摂取することで便通改善作用のあることを認めた.糞便の硬さ, 形, 色および排便時の爽快感は, 摂取前に比較し摂取後にいずれも改善する傾向がみられた.Bifidobacteriumの菌数および占有率が増加する傾向を示す一方, Enterobacteriaceaeの菌数は低下する傾向を示した.糞便中腐敗産物量および糞便pHは変化しなかった.発酵乳摂取に伴い特に問題となる臨床症状は認められなかった.以上の結果から, 本発酵乳の継続摂取は便通改善作用, 便性改善作用および糞便細菌叢改善作用を有すると考えられた.
  • 高井 許子, 水道 裕久, 藤田 晃人, 小谷 麻由美, 山西 敦之, 澄川 一英, 光岡 知足
    2001 年 15 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    便秘症状を自覚する成人25名 (22~57歳, 平均年齢33.3歳) を対象に, 乾燥ビール酵母錠剤および乾燥ビール酵母を乳酸菌で発酵 (Lactobacillus rhamnosus SN88株でpH4.07まで発酵) したものを配合して加熱殺菌した飲料による, 排便 (便通・便性) に及ぼす影響について検討した.12名に乾燥ビール酵母錠剤を1日25錠 (酵母量3.75g) 〈 以下錠剤群と略記 〉, 13名に乳酸菌発酵ビール酵母飲料を1日1缶 (160g, 酵母3.75gを含む) 〈 以下飲料群と略記 〉, それぞれ3週間摂取させた.錠剤群には, 摂取時に飲料と同量の水も摂取させた.摂取期間の前後に各2週間ずっ非摂取期間を設け, 排便に関するアンケート調査を実施した.試験期間中, 発酵乳, オリゴ糖, 納豆, 野菜ジュースなど便性に影響を与える可能性がある食品, 薬剤の摂取を控えさせた以外は特に食事制限は行わなかった.摂取期間終了時の有効症例である解析対象者は, 錠剤群で9名, 飲料群で8名となった.その結果, 飲料群について, 摂取期間中に排便回数, 排便量, 排便後の感覚 (すっきり感), 1週ごとの便秘自覚状況の有意な改善が認められた.便の形状, 硬さについても改善の傾向はあったが, 有意な差ではなかった.また摂取を終了すると, 便通の状態は摂取前に近い状態に戻った.錠剤群に関しても, 摂取により便通改善の傾向は認められたが有意な差ではなかった.以上の結果より, 乳酸菌発酵ビール酵母飲料は, 便秘の人の排便改善に有用であることが明らかになった.
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