腸内細菌学雑誌
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17 巻, 1 号
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  • 福島 洋一, 山野 俊彦
    2003 年 17 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    経口的に摂取される病原性の細菌やウイルス, アレルゲンなどの異物に対し, 生体は防御機能 (バリア) を有している.唾液や胃酸, 消化酵素, 胆汁酸などの消化管における防御が最初のバリアであり, 腸内フローラによるバリア, さらに腸管免疫を含む免疫系のバリアが存在する.プロバイオティクスの中で, こうした生体防御機能に対し, より積極的に関与する乳酸菌が近年注目を集めている.
    Lactobacillus johnsonii La1株は, ネスレ中央研究所のカルチャーコレクションの中で, ヒト腸管上皮細胞に対する最も優れた接着性を有する乳酸菌としてスクリーニングされ, これを用いてLClヨーグルトが開発された.Lal株は, ネズミチフス菌や病原性大腸菌などの病原性細菌のCaco-2細胞への接着や侵入を阻害した.腸管への接着性を有する菌株による病原菌の接着阻害は, 腸管での感染防御を考える上で重要と考えられる.またLa1株を含有するヨーグルトの摂取は, 血中貪食細胞を活性化し, 血中IgA抗体を上昇させることがヒト試験により示され, 宿主の免疫を賦活することが確認された.
    Bifidobaoterium laotis Bb12株は, 世界的に育児用粉乳 (ネスレBLシリーズ) に使用されている菌株で, ヒト由来の腸管粘膜分泌物に対する接着性を有する.Bb12株の摂取においても, ヒト貪食細胞が活性化し, 腸管でのIgA抗体産生が上昇することが示されている.また, Bb12株の摂取によるロタウイルスの抑制, 感染性下痢の発症抑制, 乳児のアトピー性皮膚炎の症状改善に対する有効性が報告されている.
    乳酸菌のような共生型の細菌は, 炎症を誘導せずに宿主の防御機能を強める方向にサイトカインシグナルを誘導することがin vitroを中心とした最近の研究によりわかってきた.腸管上皮における細菌との接触は, 宿主側の免疫応答を引き出す重要なステップであり, 腸管上皮へのプロバイオティクスの接着性は, こうした応答を効果的に引き出す上で重要な因子と考えられる.La1株及びBb12株などのプロバイオティクスの利用は, 免疫系の賦活など宿主の生体防御機能の強化に役立っものと考えられる.
  • 湯山 輝彦, 中西 信吾, 高井 伸二, 椿 志郎, 諸富 正己
    2003 年 17 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Mycobaoteriumaviumの感染が疑われ長期間抗生物質 (IsoniazidおよびRifampicin) を経口投与され, かっ疝痛の頻発と栄養状態の低下を呈した種牡馬の腸内細菌叢構成, 糞便中の短鎖脂肪酸組成, および糞便pHを調べた.抗生物質投与の腸内細菌叢への影響を明らかにするため, 抗生物質投与期, 休止期, および再投与期にそれぞれ数回ずつ糞便を採取してこれらの分析を行った.また同時に, 該当病態と腸内細菌叢の関連を明らかにするため, 同じ環境で飼養されている健康な種牡馬3頭を対照とし, これらの項目について比較検討を行った.さらに, 投与された抗生物質に対しての耐性獲得の有無を明らかにするため, 該当馬および対照健康馬から分離した各菌群の菌株についてこれらの抗生物質に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した.抗生物質投与期と休止期の比較ではいずれの測定項目においても顕著な差が見られなかった.分離した各種腸内細菌菌株の抗生物質感受性試験では, Isoniazidに対してはすべての菌のMICが500μg/ml以上で耐性を示し, Rifampicinに対しては菌株によってMICが異なったが長期間抗生物質投与種牡馬, 健康馬ともに高い耐性を示す菌株が分離された.健康馬との比較では, 該当馬の糞便中短鎖脂肪酸濃度は明らかに高く, 糞便pHは明らかに低かった.また腸内細菌叢構成においては, Bacteroidaoeae, Lactobaoillus, および総菌数が該当馬で高値を示した.以上の結果, および剖検時の所見から, 該当馬で見られた腸内細菌叢や糞便pH, および短鎖脂肪酸濃度の健康馬との違いは, 投与された抗生物質の直接の影響によるものではなく, 消化管の機能的な障害によるものであると推測された.
  • 勝野 眞也, 岡田 恵, 川合 伸一, 宝野 英紀, 寺田 厚
    2003 年 17 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    17-85歳の健常人41名を対象にYP97ヨーグルトの便通および便性に及ぼす影響について調べ, さらにその中の8名を対象に糞便内菌叢, 短鎖脂肪酸, アンモニア含量, pHおよび水分について調べた.被験者を2群に分けYP97ヨーグルト80g/日, 115g/日および市販他社製品ヨーグルト100g/日をそれぞれ2週間ずっ摂取させ, 各摂取期の間に2週間の休止期を置き, 全11週間のクロスオーバー試験を実施した.YP97ヨーグルト80g/日, 115g/日および市販他社製品ヨーグルト100g/日摂取期における便秘傾向者の排便回数は摂取前に対し有意に増加した.Bifidobacteriumは摂取前に対してYP97ヨーグルト80g/日摂取期において有意に増加し, YP97ヨーグルト115g/日摂取期および市販他社製品ヨーグルト100g/日摂取期において増加傾向を示した.糞便中のアンモニア含量は, YP97ヨーグルト80g/日, 115g/日および市販他社製品ヨーグルト100g/日摂取期において摂取前および休止期に対して有意に減少した.以上の結果より, YP97ヨーグルト80g/日, 115g/日および市販他社製品ヨーグルト100g/日の摂取による排便回数および腸内菌叢の改善効果は同等であることが示唆された.また, 健常な成人11名 (22-60歳) を対象に行った過剰摂取試験において胃腸症状の大きな変化は認められなかった.
  • 勝野 眞也, 岡田 恵, 川合 伸一, 宝野 英紀, 小暮 怜美, 中澤 勇二, 寺田 厚
    2003 年 17 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    健常な19-25歳の女性58名を対象に, YP97ヨーグルトの便通および便性に及ぼす影響について調べた.またその中の8名を対象に糞便内菌叢, 短鎖脂肪酸, アンモニア含量, pH水分について調べた.被験者を2群に分け, YP97ヨーグルト115g/日, プラセボヨーグルト115g/日を各2週間ずっ摂取させ, また各摂取期の間に2週間の休止期を置き, 全8週間のクロスオーバー試験を実施した.YP97ヨーグルト摂取期において, 便秘傾向者の排便回数は摂取前, 休止期およびプラセボ摂取期に対して有意に増加し, Bifiaobaoteriumはプラセボ摂取期に対して有意に増加し, レシチナーゼ陽性Clostriaiumは摂取前に対して減少傾向を示した.また, YP97ヨーグルト摂取期において, 総菌数に対するBifiaobacteriumの占有率は摂取前, 休止期およびプラセボ摂取期に対して有意に増加し, 糞便中のアンモニア含量は休止期およびプラセボ摂取期に対して有意に減少し, 糞便pHは摂取前休止期に対して有意に低下した.以上の結果よりYP97ヨーグルトの摂取は便通や腸内菌叢の改善に有効であることが示唆された.
  • 勝野 眞也, 岡田 恵, 川合 伸一, 宝野 英紀, 小暮 怜美, 中澤 勇二
    2003 年 17 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    健常若年女性63人 (19-23歳) を対象に, YP97フルーツヨーグルトの便通, 便性に及ぼす影響について調べた.また健常成人12名 (38-66歳) を対象にYP97フルーツヨーグルトの糞便内菌叢, アンモニア含量, pHおよび水分に及ぼす影響について調べた.試験は摂取前を1週間, プラセボヨーグルト80g/日を2週間, 休止期間を1週間, YP97フルーッヨーグルトを80g/日を2週間とする全6週間で実施した.YP97フルーツヨーグルト摂取期における若年女性の全被験者および便秘傾向者の便の色と排便後の爽快感は摂取前に対して有意に改善され, 排便回数と排便量は摂取前およびプラセボ摂取期に対し有意に増加した.また, YP97フルーツヨーグルト摂取期におけるBifidobaoteriumの菌数および総菌数に対する占有率は摂取前に対して有意に増加した.以上の結果より, YP97フルーツヨーグルト80g/日の摂取により便通および便性が改善されること, Bifidobacteriumの菌数および総菌数に対する占有率が増加し腸内菌叢が改善されることが明らかとなった.
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