腸内細菌学雑誌
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20 巻, 4 号
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  • 鎌田 信彦, 日比 紀文
    2006 年 20 巻 4 号 p. 303-307
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/28
    ジャーナル フリー
    腸管マクロファージ(Mф)は腸内細菌に対する免疫応答に重要な役割を果たしている.腸管局所では常に多数の腸内細菌が存在しているため,マクロファージはそれら腸内細菌に対して過剰な免疫反応を引き起こさないよう,何らかの機構によって制御されていると考えられる.一方で,炎症性腸疾患では腸管マクロファージの腸内細菌に対する免疫制御機構が破綻し,腸内細菌に対し過剰な免疫反応が誘導されることにより病態が形成されると考えられる.本研究により正常マウスの腸管MфはIL-10高産生の抑制性Mфであり,腸内細菌への過剰な免疫反応を制御していることが明らかになった.一方,炎症性腸疾患モデルであるIL-10ノックアウトマウスでは内因性IL-10の欠損のため腸管Mфが異常な分化を遂げ,腸内細菌に対しIL-12やIL-23といったTh1誘導性のサイトカインを過剰産生することが明らかになった.このようにIL-10ノックアウトマウスでは本来抑制性である腸管Mфの分化異常が腸内細菌に対する過剰な免疫応答を引き起こし,Th1型の慢性腸炎の発症に寄与していることが示唆された.
  • 神谷 茂
    2006 年 20 巻 4 号 p. 309-319
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/28
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pyloriは胃粘膜に持続感染するグラム陰性らせん状細菌である. H. pyloriは急性および慢性胃炎を惹起するとともに,消化性潰瘍の再発因子および治癒遷延因子として作用する.また,本菌感染と胃癌や胃MALTリンパ腫との関連性が推定されている. H. pyloriの病原因子は細菌側因子と宿主側因子に分けられる.細菌側病原因子としてウレアーゼ,アドヘジン,VacAサイトトキシン,CagA, cagPAI,OipA,NapA,熱ショック蛋白などが挙げられる.IV型分泌機構を介したCagAの宿主細胞内移入は細胞機能に大きな変化を与え,病態発現に重要な役割を演じる.宿主側病原因子として胃上皮細胞や宿主免疫担当細胞が産生するサイトカイン(TNF α,IL-6, IL-8など),活性酸素,一酸化窒素などが挙げられる.さらに H. pyloriと胃十二指腸以外の疾患(特発性血小板減少性紫斑病,慢性蕁麻疹,冠動脈疾患など)との関連性が報告され,本菌の除菌による上記疾患の改善化が報告されている.
  • 西川 武志, 小林 菜津美, 岡安 多香子, 山田 玲子, 磯貝 恵美子, 磯貝 浩, 山下 利春
    2006 年 20 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/28
    ジャーナル フリー
    カテキンの抗菌活性については多くの報告がみられている.一方,最近ペットボトル等のお茶を飲む人が多くなっている.そこで,市販のカテキン含有飲料の病原性大腸菌感染症に対する予防効果を検討することを目的として,腸管出血性大腸菌O157(EDL931およびHK)および非病原性大腸菌MV1184に対するカテキン含有飲料の増殖抑制作用について検討した.また,併せて毒素産生抑制作用についても検討した.紅茶,緑茶1,緑茶2および番茶は大腸菌に対して強い増殖抑制作用を示した.この中でもカテキン含有量の最も多い緑茶2が,すべての大腸菌に対し極めて強い増殖抑制作用を示した.また,供試したE. coli O157はベロ毒素1型(VT1)産生株であり,紅茶,緑茶1,緑茶2,および番茶によって毒素の産生は抑制あるいは阻止された.これらの結果から,茶を飲用することは,O157をはじめとする病原性大腸菌感染症を予防するのに有効であると考えられた.
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