腸内細菌学雑誌
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28 巻 , 1 号
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総  説
  • 山下 智也, 笠原 和之, 佐々木 直人, 平田 健一
    2014 年 28 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
    腸管は栄養や水分を吸収するのが主な機能の臓器ではあるが,免疫臓器としての役割とその重要性が注目されている.最近の研究の進展によって,腸内細菌の種類と腸管免疫調節との関係,そして常在腸内細菌叢(腸内フローラ)と疾患発症との関連性が解明されつつある.特に,腸内細菌叢と肥満,そして糖尿病をはじめとする代謝性疾患の発症との関連性が報告されており,疾患の予防を目的とした治療的介入も視野に入れた研究が進められている.同様に,動脈硬化研究の領域でも,腸内細菌叢の病態への関与や,腸管免疫修飾による新規予防法の取り組みなどの報告があり,我々も腸管からの動脈硬化予防法の開発研究を進めている.本稿では腸管と動脈硬化との関連性に注目して,今まで報告された研究成果をふまえて,今後のこの研究分野の展望について考えてみたい.
  • ―魚介類の腸内細菌を用いたウイルス病の予防―
    吉水 守, 笠井 久会, 渡邉 研一
    2014 年 28 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
    魚介類の腸内細菌叢に関する研究が進み,近年は分子生物学的手法を用いた解析法が導入され,多くの知見が集積され,その全容解明と働きが徐々に解明されてきている.成長促進や疾病予防に関与するプロバイオティック微生物の発見のみならず,食の安全にまでリンクした研究が展開できるようになってきた.ここでは水産分野でのプロバイオティクス研究の一つとして,種苗生産過程における仔稚魚のウイルス病予防の観点から,抗ウイルス活性を有する腸内細菌を用いた疾病予防についての研究成果を概説する.淡水生活期のサケ科魚類の腸内菌叢の主体を成すAeromonas属細菌を対象に伝染性造血器壊死症(IHN)ウイルスに対する抗ウイルス作用を示す菌株のスクリーニングを行い,90%以上のプラーク減少を示す菌株を3株得た.分離菌は飼料ペレット成分を栄養源として抗ウイルス物質を産生し,ペレットに10%の割合で菌体培養液を混ぜ経口投与すると,腸内容物も強い抗IHNV活性を示した.分離菌添加ペレットを3週間ニジマスおよびサクラマスに投与後,100TCID50/mlのIHNVで浸漬攻撃を行ったところ有意な差が認められた.マツカワやヒラメの腸内細菌であるVibrio属細菌を対象に,抗IHNV,サケ科魚ヘルペスウイルス(OMV)およびウイルス性神経壊死症(VNN)原因ノダウイルス(BF-NNV)活性を調べ,3者に対し強い抗ウイルス効果を示すVibrio sp. 2IF6株を得た.生物餌料のアルテミア卵を次亜塩素酸ナトリウムで消毒後,滅菌海水で孵化させ分離株を添加して培養すると,アルテミアホモジナイズ液は培養2日後にBF-NNVに対して90%の感染価減少を示し,培養液は99%を示した.このアルテミアを給餌したマツカワの腸内容物の10倍希釈は105.8TCID50/mlのBF-NNVの感染価を99.99%以上減少させた.換水率0~300%で60日間飼育したマツカワ仔魚にVNNは発生せず,生存率は通常飼育区より高くなった.シオミズツボワムシの複相単性生殖卵を消毒し,ヒラメの腸内から分離した抗OMV活性を示すV. alginolyticus V-23株添加したワムシをヒラメ仔魚に給餌し,103TCID50のOMVを不活化する最大希釈倍数で抗OMV活性を求めると,給餌20日以降,分離菌添加区のヒラメの腸内容物では対照区の2~5倍,飼育水では対照区の2~4倍の抗OMV活性が測定された.さらに,貝類ではカキの中腸腺から分離したV. neptunis V-176株がNorovirus代替えネコカリシウイルスを,Vibrio sp. V-4株がカキヘルペスウイルス(OsHV-1μVar)代替えOMVを不活化した.これらの細菌をカキの餌料である無菌化キートセロスに添加して給餌すれば,魚類と同様にウイルス病の予防あるいは不活化が期待できると考える.
報  文
  • 新 良一, 伊藤 幸惠, 片岡 元行, 原 宏佳, 大橋 雄二, 三浦 詩織, 三浦 竜介, 水谷 武夫, 藤澤 倫彦
    2014 年 28 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
    豆乳の発酵産物が宿主に及ぼす影響を検討した報告は少ない.今回,我々は豆乳の乳酸菌発酵産物(SFP: Soybean milk-Fermented Product)がヒト腸内細菌叢に及ぼす影響を検討し,さらに大腸の発がん予防とその作用機序についても合わせて検討した.SFPは豆乳を複数の乳酸菌と酵母で混合培養後殺菌し,凍結乾燥して調製した.一般的な日本食を食べているボランティアにSFPを摂取させ(450 mg/day/head for 14 days),腸内細菌叢の変化を比較したところ,SFP群はプラセボ群よりBifidobacteriumの占有率が25%以上増加した人数が多かった(P<0.05).さらに,昼食のみを一般的な日本食から肉食中心の欧米食(肉摂取量約300 g,900 kcal)に3日間変えると,Clostridiumの占有率は増加したが(P<0.05),SFPを摂取(900 mg/day/head)すると減少した(P<0.05).また,SFPの摂取でBifidobacteriumの占有率が増加した(P<0.05).このボランティアの糞便中β-glucuronidase活性は,昼食を肉食中心の欧米食にすると一般的な日本食摂取時より5倍以上増加したが(P<0.01),SFP摂取で一般的な日本食時のレベルにまで減少した(P<0.05).以上の結果は,SFPが多くのプロバイオティクスなどで示されている大腸がんの発がんリスクを軽減する可能性を示唆していると考え,以下の検討を試みた.即ち,SFPが大腸がんの発がんに及ぼす影響は大腸がん誘起剤1,2-dimethylhydrazine (DMH)をCF#1マウスに投与する化学発がんモデルを用いて検討した.SFPはDMH投与開始時から飼料中に3%(W/W)混和して与え,大腸に発がんした腫瘤数を検討した結果,有意な抑制が認められた(P<0.05).一方,SFPの抗腫瘍作用機序は,Meth-A腫瘍移植モデルで検討した.SFP(10 mg/0.2 ml/day/head)は化学発がんモデルと同様にMeth-A腫瘍移植前から実験期間中投与し,抗腫瘍効果が得られた脾細胞を用いた Winn assayでその作用機序を検討した.その結果,SFP群のみは移植6日目以降でMeth-A単独移植群に比べ有意な腫瘍増殖抑制が認められ(P<0.05),担癌マウスの脾細胞中に抗腫瘍作用を示す免疫細胞群が誘導された可能性が考えられた.Bifidobacteriumを定着させたノトバイオートマウスは無菌マウスより脾細胞数が増加したが,無菌マウスにSFPや豆乳(10 mg/0.2 ml/day/head)を4週間連日経口投与しても,脾細胞数は生理食塩液を投与した無菌マウスと差が認められなかった.これらのことからSFPの抗腫瘍効果には腸内細菌が宿主免疫に関与した可能性が示唆されたが,その詳しい機序については今後の検討が必要である.
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