腸内細菌学雑誌
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30 巻, 4 号
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総 説  <平成27年度日本ビフィズス菌センター研究奨励賞受賞>
  • 後藤 義幸
    2016 年 30 巻 4 号 p. 159-163
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/27
    ジャーナル フリー
    腸管は腸内細菌を含む無数の抗原に日常的に曝されている特殊な組織であり,宿主は腸内細菌と共生関係を維持しつつ病原性微生物を排除するために精緻な腸管免疫システムを備えている.腸内細菌の一種であるセグメント細菌(segmented filamentous bacteria:SFB)は,Citrobacter rodentiumなどの病原性細菌の感染に対する防御機能を司る腸管ヘルパーT17細胞(Th17)の誘導に必須であることが報告されている.本研究では,SFBによって誘導されるTh17細胞の誘導機構の解析を行った.その結果,Th17細胞の誘導には樹状細胞によるMHCIIを介した抗原提示が必要である一方,3型自然リンパ球(group 3 innate lymphoid cells:ILC3)上に発現しているMHCIIはTh17細胞の分化・増殖を負に制御することが明らかとなった.また,SFBは腸管上皮細胞における糖鎖(α1,2-フコース)の発現を誘導することも見出した.さらに,腸管上皮細胞のα1,2-フコースの誘導には,腸内細菌依存的にILC3から産生されるIL-22が必要であることも明らかとした.上皮細胞が発現するα1,2-フコースは,病原性細菌であるSalmonella typhimuriumの感染に対し防御的役割を果たす.以上の結果から,げっ歯類の腸管において腸内細菌の一種であるSFBは,Th17細胞の恒常性維持に寄与するのみならず,ILC3を介して上皮細胞のα1,2-フコースを誘導することで,病原性細菌に対する感染防御基盤を形成していることが明らかとなった.
総  説 <特集:腸内細菌の分類の現状―嫌気性菌および乳酸菌を中心に―>
  • 高田 敏彦, 渡邊 洋平, 梅﨑 良則
    2016 年 30 巻 4 号 p. 165-175
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/27
    ジャーナル フリー
    近年のDNA解析技術の発達によって腸内フローラの全構成が明らかになってきたが,それを構成するメンバーの大部分は未培養である.本総説では未培養菌の中からインビトロ培養法を改変・工夫して分離された細菌種について分類を含めた細菌学的特性と,インビボで無菌動物を使って均一な細菌集団として分離されたセグメント細菌についてはインビトロ培養の試みを含めて紹介する.
  • ―嫌気性Phylum FirmicutesおよびPhylum Actinobactreriaを中心に―
    藤澤 倫彦
    2016 年 30 巻 4 号 p. 177-190
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/27
    ジャーナル フリー
    現在,細菌(原核生物)では,Archaeaドメインが5つの門(phylum),Bacteriaドメインが30の門に分類されているが,このうちヒトの腸内に見出されるのは,Archaeaドメインの1門とBacteriaドメインの11門であり,なかでもBacteriaドメインのFirmicutesBacteroidetesActinobacteriaProteobacteriaの4門だけで菌叢のほとんどを占めるとされている.ところで,ヒトの腸内には1,000種以上にもおよぶ多種多様な細菌が生息・存在しているといわれている. 近年,ヒトの腸管に生息・存在するBacteriaドメインの957菌種およびArchaeaドメインの8菌種が示された.本稿ではこの報告を基にBacteriaドメインの2門,すなわちFirmicutes門およびActinobacteria門を中心に,グラム陽性細菌,とりわけ主な偏性嫌気性グラム陽性細菌について新菌属,新菌種の提案や学名の変更など,分類の現状に触れてみる.
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