本研究では, 取引コストが存在する場合のアメリカン・オプションの上限, 及び下限価格を無裁定条件を適用して実際に導出する方法を提案する.まず, 上限価格を裁定機会が存在しないオプションの最大売却価格として定義する, そして, この価格を求める問題が凸計画問題として定式化でき, Bensaid et al.の提案したアルゴリズムを拡張することによって解くことができることを示す.一方, 下限価格を裁定機会が存在しない最小購入価格として定義する.この問題は, 非凸の制約領域を持つ数理計画問題として定義されるため, 簡単には解くことができない.そこで, この非凸問題を効率よく解くために2つのルールを提案し, そのルールが実際の計算時に有効であることを示す.さらに, このアルゴリズムを利用し, 株価が二項過程, 三項過程にしたがうと想定した場合の上・下限価格を実際に求め, これを比較, 検討する.これにより, 取引コストの存在時には, 二項過程を想定する方がより効果的であることを示す.
抄録全体を表示