日本経営工学会論文誌
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64 巻, 1 号
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原著論文(理論・技術)
  • 肥田 拓哉, 茅原 崇徳, 瀬尾 明彦
    2013 年 64 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,立位姿勢で検査対象物の取り回しを伴う目視検査作業を想定した実験を行い,そのときの上肢負担を明らかにすることを目的とした.被験者は男子学生10名,実験条件は検査速度が4水準,検査ポイントの検査経路が2水準とし,これらを組み合わせた計8条件で実験を行った.評価項目は,筋電図を用いた筋負担,把持力分布測定システムを用いた把持力,被験者の主観による評価の3項目とした.実験の結果,頸関節と手関節の動作に作用する筋の負担が高く,把持動作による手指負担は手の部位によって異なることが明らかとなった.
  • 高橋 啓, 大野 髙裕
    2013 年 64 巻 1 号 p. 9-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,マーケティング·サイエンス,交通計画分野で用いられているGeneralized Nested Logit Model(GNL)の段階的パラメータ推定問題が,非集計的に制約条件付の段階エントロピー·モデルと等価であることを証明する.具体的には,効用関数パラメータ及びアロケーション·パラメータをブランド選択段階,類似度パラメータをネスト選択段階に対応させ,等価性を証明する.この過程で,対数尤度最大化問題ではアロケーション·パラメータの制約条件は考慮されていることを示す.GNLは,多くの離散選択モデルを内包するため,内包されるモデルの段階推定問題は全て情報量最小化問題と等価であることとなる.
  • 田村 慶信, 山田 茂
    2013 年 64 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    現在,短納期,コスト削減,開発労力の削減などの理由から,複数のオープンソースコンポーネントを結合したオープンソースソリューションの利用が拡大している.オープンソースソリューションは,複数のオープンソースソフトウェアから構成されているため,品質の面で総体的な問題となることが多く,1つの主要コンポーネントが全体のオープンソースソリューションとしての機能自体を崩壊させる危険性も含んでいる.本論文では,こうしたオープンソースソリューションに対するソフトウェア·サービス性能評価のための確率微分方程式モデルを構築する.さらに,実際のOSSのソフトウェアフォールト発見数データに対する数値例を示す.
  • 山口 真知, 吉本 一穗, 鈴木 広人
    2013 年 64 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    サービス生産性把握の目的は「(1)業績の定量的把握」,「(2)提供サービスと顧客の知覚したサービス品質とのギャップの把握」,「(3)サービス生産性向上への結び付け」であり,これは経営システム工学の果たすべき役割であるにもかかわらず,具体的方策に結びつく指示·技法に関する研究はあまりなされていない.本研究では,異業種·異業界であっても,そのサービス提供を類似した業務プロセスレベルに分解·分類可能である点に着目[1]し,サービス生産性の低い原因を,企業·サービスアクティビティの業務プロセス毎に把握し,改善のための具体的なアクションを導出するため,(ⅰ)サービスを業務プロセスに分割,(ⅱ)業務プロセス毎にサービス受容者の評価項目を導出·統合,(ⅲ)主成分分析とクラスター分析を用いてアンケート調査項目を整理し,(ⅳ)アンケート結果を重回帰分析しサービス生産性の式を導出する技法を提案した.また,対面サービスの代表である居酒屋業界を例に,大手T社直営店を対象として提案技法の検証を行った.
  • 渡辺 健太郎, 下村 芳樹
    2013 年 64 巻 1 号 p. 38-52
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    近年,多様な顧客のニーズに柔軟に対応するため,様々な産業分野においてサービスの重要性が高まっている.限られたリソースで多様な顧客要求を充足する手段として,複数の企業間,あるいは消費者自身との協業関係の構築が挙げられるが,関係する利害関係者の要求を把握した上で,これらの要求に配慮し,サービスの受供給プロセスやその実現構造の仕様を決定する設計手法に関する研究は少ない.本稿では,多様な利害関係者の要求とその充足過程を表現するモデリング手法とその評価手法を導入し,これらの手法を用いた協業に基づくサービスの設計プロセスの提案を行う.
  • 稲田 周平, 長町 悠樹, 坂田 啓
    2013 年 64 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    本稿では,生産·販売を行う製品として複数の候補が存在する状況下で,製品の製造に関わる投資案の採算性と安全性を評価する問題を取り扱う.そこでは,製品の販売価格および生産·販売量,更に製品を生産する為のコストとして初期投資額,期当たりの固定費,変動費単価の値が不確実な状況を想定したもとで,製造投資案を経済性の観点から評価する方法を議論する.最初に,単一製品の問題を取り上げ,先行研究で示された投資案を評価する為の分析図(総額単価図表)を,任意の正の倍率でX軸方向およびY軸方向に拡大·縮小しても,図形的な性質を利用して視覚的に案の採算性と安全性を評価できることを明らかにする.続いて,この性質を利用して,製品の候補が複数個存在する多製品の問題に対して,製造投資案の安全性を分析する為の方法を議論する.
  • 有薗 育生, 竹本 康彦, 辻脇 優一
    2013 年 64 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
    ジャーナル フリー
    我が国の書籍や音楽CDならびに新聞などの販売形態の特徴的な制度として,再販売価格維持制度と委託販売制度が存在する.これらの販売制度のもとに,近年,書籍の返品率は約40%に昇り,出版業務の経済性を圧迫している.このような状況の改善を目的として,出版社から書店への書籍の卸売価格を従来の価格から下げるが返品時に卸売価格の数割程度でしか買戻さない責任販売制度による取引が導入されてきた.このことに鑑み,責任販売制度への円滑な移行を実現することを目的に,卸売価格と買戻価格に関する契約を出版社と書店双方が協調的に意志決定するためのプロセスが考察されている.ただし,従来研究では出版媒体として雑誌等を想定し,その需要分布に関して既知である状況を仮定している.一方,書籍は,その性質から製品寿命が長く,代替のない唯一性が強い製品である.この特性において,書籍の需要分布を厳密に把握することは必ずしも容易ではない.本研究では,需要量の期待値や分散という限定された情報のみに基づいて同様の契約問題に関する解を合理的に与えるための方法について,Distribution Free Approachの概念を用いて考究する.この結果として,書店と出版社にとって,双方の利益に関する最大満足を目指す合理的な契約事項の決定プロセスを提示する.
原著論文(事例研究)
  • 竹俣 潤, 宮﨑 浩一, 小林 寛司
    2013 年 64 巻 1 号 p. 75-84
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    資産評価モデルの妥当性をGRS検定から検証する際,米国株式市場では企業特性に基づくポートフォリオをモデルのファクターで回帰分析すると切片項が小さくなりモデルが採択されやすいバイアスが生じるため,ポートフォリオをクラスター分析で構築すべきとの指摘がある.日本株式市場では,クラスター分析を採用したポートフォリオの方が,決定係数が低くなる影響からモデルは採択されやすくなる結果を得た.この背景をシミュレーション実験により検討したところ,GRS検定は切片項と決定係数の相対的な程度に依存するため,モデルの妥当性を検証するには切片項の平均や決定係数の大きさを個別に確認するなど,GRS検定を補う視点の必要性が示唆された.
  • 大宮 望, 山本 久志, 大場 允晶, 丸山 友希夫, 中邨 良樹
    2013 年 64 巻 1 号 p. 85-93
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    近年,情報システムは企業に不可欠な存在となってきている.しかし,情報システムの保守工程は,情報システム開発より費用が多くかかるといわれており,経営課題の一つとなっている.その原因の一つに,情報システム開発プロジェクトの納期が守れず,品質が悪化したまま,保守工程にこのプロジェクトが持ち込まれ,保守工程に多くのコストが発生することがある.また,ユーザからの問い合わせの時間と件数の増加も,同様に保守工程のコスト増加の要因として挙げられているが,明確な分析はされていない.この課題に対する対策をとるため,本研究では,実際の開発現場で収集されたデータを用いて,問い合わせの発生傾向について分析しその要因を明らかにした.また,この要因から問い合わせの対応時間を短くするための提言も合わせて行う.
  • —電力設備の工事·保全サービスの改善を通じて—
    赤坂 文弥, 千葉 龍介, 下村 芳樹
    2013 年 64 巻 1 号 p. 94-105
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    著者らは,サービス工学研究会と呼ぶ産学連携の研究組織において,サービスを設計するための工学的方法論を構築することを目的とした研究活動を進めている.本稿では,サービス工学研究会の活動成果として,電力設備の工事·保全サービスに対して,受給者を起点としたサービス改善設計を支援する手法を適用した成果を報告する.本活動では,(1)サービスに対する受給者の要求を獲得するための手法と(2)受給者満足を最大化するために実施すべき改善案を最適化計算により特定するための手法を上記事例に適用した.そして,その結果,上記手法がサービス改善において有効に利用可能であることを確認した.
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