本研究では,仰臥位での上方押し作業における作業位置が上肢負担に与える影響を定量的に評価し,上肢負担の小さい作業位置を明らかにすることを目的とした.実験は11名の被験者を対象とし,仰臥位において上肢を挙上し,作業部を片手で鉛直上向きに押し込む静的作業を行ってもらった.実験条件は,矢状面における押し込み部の水平位置(耳位置,肩位置,肘位置)と高さ(上肢長比60%, 75%, 90%)をそれぞれ3条件ずつ組み合わせた計9条件とした.上肢負担は,関節トルク,筋電図,主観評価によって評価した.実験の結果,肩の位置かつ上肢長比90%の高さで上肢負担が小さく,最も作業しやすいことがわかった.立位では肘の高さかつ身体に近い位置が正常作業域とされているが,仰臥位では異なる作業域を推奨する必要があることが示された.
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