日本経営工学会論文誌
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65 巻, 4 号
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原著論文(理論・技術)
  • —市場環境変化によるアクティビティコストの変動把握方法—
    石井 智之, 熊谷 敏, 大場 允晶
    2015 年 65 巻 4 号 p. 249-259
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    近年の低成長期において価格競争が激化し,単一のコスト変動要因にのみに着目して,限界利益のみを見る経営が困難になりつつある.また,市場環境の変化に対して製品のコストや損益がどのように変化するかを迅速に把握する必要がある.本研究ではプロセスモデリングをコスト計算に応用し,市場環境の変化に即応して,製品のコストや損益を構造的かつ詳細に把握できるコスト管理方法を提案する.  プロセスモデルでは,コスト変動要因毎に,トランザクションと呼ぶアクティビティの集合を定義する.そして材料費,設備費などのコストをアクティビティ毎に把握する.そしてプロセスモデルをコスト構造マトリックスに変換し,市場環境変化を与えたときのコストと損益の算出方法を明らかにする.これにより経営状況の変化に対応でき,数値的な根拠を意思決定の際に与えるコスト管理モデルを提供する.
  • 肥田 拓哉, 瀬尾 明彦
    2015 年 65 巻 4 号 p. 260-267
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 立位姿勢で検査対象物の取り回しを伴う目視検査作業を想定した実験を行い, そのときの上肢負担を明らかにすることを目的とした. 被験者は健常成人男性10名, 実験条件は検査対象面が6水準, 検査対象物の大きさが2水準とし, これらを組み合わせた計12条件で実験を行った. 評価項目は, 筋電図を用いた筋負担, 関節角度を用いた関節モーメント, 被験者の主観による評価の3項目とした. 実験の結果, 検査対象面が下面のときに上肢の筋負担が最も高くなることが明らかとなった. そのとき肩関節, 肘関節, および手関節の動作に関与する筋の%MVCは10%を超えるため, 長時間の作業は避けるべきである. また, 検査対象物の大きさが大きくなると, 検査対象物の取り回し量が増加することによって頸部および上肢の筋活動が活発になるため, 頸部および上肢の筋負担は高くなることが明らかとなった.
  • 水野 浩孝, 森山 弘海, 羽田 隆男
    2015 年 65 巻 4 号 p. 268-277
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    サプライチェーンにおいて,最終需要の変動が増幅されながら上流側へ伝搬するブルウィップ効果と呼ばれる現象が知られている.ブルウィップ効果の抑制には最終需要情報の共有が有効と言われているが,現実のチェーンでは情報共有の実現は必ずしも容易ではない.本論文では,チェーンの各段階が上流段階に発注する際に,発注情報とともに最終需要情報も伝達するモデルを取り上げる.このモデルでは,上流側ほど遅れがあるものの,最終需要情報共有が実現される.評価式ならびにシミュレーション実験によりモデルを評価し,時間的に遅れた最終需要情報であっても,各段階がそれらを共有することでブルウィップ効果を抑制できることを明らかにした.
  • 原田 康平, 伊呂原 隆, 長沢 敬祐
    2015 年 65 巻 4 号 p. 278-285
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    多くの在庫管理の研究において,リードタイムは所与として扱われている.しかし,追加費用(クラッシングコスト)を支払うことによって,リードタイムを短縮できる状況は少なくない.実際に,リードタイムの短縮を考慮した研究はいくつか行われている.本研究では,発注量とリードタイムの短縮期間の両方に依存するクラッシングコストと欠品量に依存して変化するバックオーダー率を考慮し,発注量・発注点・リードタイムを決定変数とする在庫モデルを提案する.そして,提案モデルに対する近似解の導出を行い,数値実験により提案モデルの有効性を示す.さらに,感度解析により,リードタイムの短縮を行うべき状況を明らかにする.
  • 大井 貴裕, 三川 健太, 後藤 正幸
    2015 年 65 巻 4 号 p. 286-293
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    近年,インターネット上の電子商取引サイトでは,ユーザの購買履歴や購買アイテムに対する評価履歴といった膨大なデータを活用したプロモーションが可能となり,特に各ユーザの嗜好や特性に合わせて自動で推薦を行う推薦システムのwebマーケティングツールとしての重要性が増してきた.このような推薦のための手法として,確率的潜在クラスモデルを用いた協調フィルタリング(以下,CF)がある.このモデルでは,顧客の商品への評価履歴を用い,未評価アイテムに対する評価値を予測することが可能である.しかし,現実世界のECサイト上での購買活動を考えると,商品を購入する利用者の大半は購入した商品に対する評価値をわざわざ投稿しない.また,頻繁に評価値情報を投稿する利用者も少数存在するが,このような利用者も全ての購入商品に対して評価値を付与するわけではない.このとき,商品アイテムが購入されたという履歴は残るものの,そのユーザがどの程度満足したかを表す評価値は得られないことになる.そこで本研究では,アスペクトモデルを用いたCFによる評価値予測問題を対象に,評価履歴データに加え,購買履歴データも同時に用いたパラメータ推定法を提案する.ベンチマークデータを用いた実験により,両履歴データを用いてパラメータを推定する本提案が,評価履歴のみを用いて学習を行う従来法に比べ推薦精度の面で優れていることを示す.
原著論文(事例研究)
  • 大墨 龍一, 伊呂原 隆, 長沢 敬祐
    2015 年 65 巻 4 号 p. 294-301
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    効率的な在庫管理は顧客満足度向上やコスト削減に繋がるため,多くの企業は在庫管理に大きな力を入れている.近年,出荷作業の複雑化に対応するべく,在庫の保管場所をフォワードエリアとリザーヴエリアに分ける物流センターが多い.本研究では,対象事例の物流センターのフォワードエリアの在庫の不足・過剰という問題の改善を目的とし,商品の発注点と補充点を求めるモデルの提案,及び,発注点と補充点の適正な見直し間隔に関する研究を行った.発注点と補充点は,在庫スペースと緊急補充頻度のトレードオフの関係を把握し,決定すべきである.対象の物流センターでは,発注点と補充点を4ヶ月ごとに発注点と補充点を見直すのが適正であった.
  • ―ベテラン臨床工学技士の判断箇所可視化に基づいた検討―
    前田 佳孝, 鈴木 聡, 小松原 明哲
    2015 年 65 巻 4 号 p. 302-310
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    血液透析では,体外循環に伴う出血などの事故の防止や,患者の容態に応じた透析条件設定・調整を確実に行うため,装置の透析条件設定は適切か等の判断を適切・迅速に行うことが医療安全上重要となる.一方,同じ透析状態でも,それが不具合に相当するか否かの判断基準は様々な要因により異なり,臨床工学技士の経験度により判断が異なる場合も多い.また,判断基準の多くは各技士が経験により獲得した内在化された知識から構成されているため,新人教育上の課題も多い.本稿では透析中の判断に関して,新人技士が難度を高く感じる判断箇所に着目し,技士が困難さを感じている理由を抽出することで,新人技士の訓練項目を明確化した.
  • 高橋 源, 山田 秀
    2015 年 65 巻 4 号 p. 311-319
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
    情報システムやソフトウェア導入における発注者側の課題が指摘されている.本研究の目的は,ソフトウェア開発発注を行う技術者が,発注すべき機能選択を行うための手法提供である.提案手法は,重要度が設定された要求品質と機能を関連付け,開発実施時に選択される機能の組み合わせを整理する.重要度の高い要求品質をどれだけ充足するかを表す発注価値とコストを関連づけて可視化する.コストに対する発注価値が最も高い機能を選択することで,コスト効率の高いソフトウェア発注を実現させる.提案手法を無線通信業界の技術サービス支援ソフトウェアの発注事例へ適用し,重要度に適時性を考慮した発注価値と,発注価値を算出する際に扱う充足度を可視化する有効性を示す.
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