日本経営工学会論文誌
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66 巻, 3 号
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巻頭言
原著論文(理論・技術)
  • 井上 真吾, 有薗 育生, 友廣 亮介, 竹本 康彦, 金川 明弘
    2015 年 66 巻 3 号 p. 218-229
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    品質工学におけるパラメータ設計で用いられる各特性値のばらつきの指標としてSN比が存在する.近年,2重非心F分布がこのSN比の分布を説明することが明らかになり,2重非心F分布の確率特性の吟味の必要性が再認識されている.ただし,2重非心F分布の確率密度関数は複雑な形をしているため,パーセント点を厳密に算出することは困難である.したがって,近似によってパーセント点を算定する方法が考えられてきた.そのひとつとして,2重非心F分布の3次までのモーメントの近似値を利用して2重非心F分布のパーセント点を中心F分布を用いて与える方法が考案された.さらに,パーセント点の算定法に関して,モーメントの近似値を用いてCornish-Fisher展開を適用する計算法が提案された.本研究ではこれらの従来法とは別に,2重非心F分布の1次と2次のモーメントの理論式により計算されるモーメントの値のみを用いる新たなパーセント点の算定法を提案する.さらに,従来の方法による結果と比較し,提案法の有効性を検証する.くわえて,提案法の適用例として,SN比の信頼区間の評価を試みる.
  • 三川 健太, 小林 学, 後藤 正幸
    2015 年 66 巻 3 号 p. 230-239
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    データの統計的特徴を考慮した距離構造を学習する方法論としてメトリックラーニングが知られており,そのための様々な手法が提案されている.メトリックラーニングはマハラノビス距離におけるマハラノビス行列(以下,計量行列)を学習するための手法であるが,パラメータ数が入力データの次元数の2乗に比例することが知られている.加えて,学習に要するデータの数も同様に増加してしまうため,高次元データを用いた場合には非常に多くのデータを用意する必要がある.本研究では,計量行列のパラメータ数を減少させるための方法としてl1正則化に基づくアプローチを採用し,ADMM (Alternating Direction Method of Multiplier) を用いた最適な計量行列の導出方法を示す.提案手法を高次元,スパースなデータセット,ならびに低次元,密なデータセットそれぞれについて適用し,その有効性について示す.
  • 竹本 康彦, 有薗 育生
    2015 年 66 巻 3 号 p. 240-248
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    工程で製造される製品には必ずバラツキが存在する.このバラツキをもったデータにおいて,工程の状態変化をモニタリングし工程の異常を検知する方法として管理図が知られている.管理図が工程異常を検知したとき,異常検知時点から遡り,どの時点で,どのような原因により工程異常がもたらされたのかを究明することは,工程管理上において重要な課題である.本研究では,工程異常の検知後,バラツキをもったデータの中から工程状態の変化点や工程異常に至るまでの状態変化の軌跡を抽出する状態変化追跡方法を提案する.さらに,管理図の運用段階において,提案する状態変化追跡方法を管理図と併用して工程状態をモニタリングすることによる新たな工程管理のアプローチの可能性について言及する.
原著論文(事例研究)
  • 松本 崇司, 丸山 友希夫, 山本 久志
    2015 年 66 巻 3 号 p. 249-256
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    スポーツ傷害の予防は, スポーツを行う上で最も重要視されるべき課題の1つである. 近年, 傷害発生の危険因子を導出し, 事前に予防策を講じることで, スポーツ傷害の発生率を減少させる取り組みがなされている. しかし, どの危険因子を優先して予防策を講じるかについて明確な基準が存在していないのが現状である. 本論文の目的は, スポーツ傷害の予防介入に関するモデル開発の手助けとなるよう, 現場データからバスケットボールにおけるスポーツ傷害の発生要因と予防要因を導出し, 予防策を講じる際に優先されるべき項目の基準設定を手助けすること. また, 指導者や選手自身がスポーツ傷害の予防策を講じる際の一助とすることである. そこで, 本論文では, ロジスティック回帰分析, ポアソン回帰分析を行い, 筋肉・関節のそれぞれのバスケットボールにおけるスポーツ傷害について発生要因, 予防要因を導出し, それを基にそれぞれに発生率を減少させる予防策を示した.
<一般論文>
原著論文(理論・技術)
  • 有薗 育生, 石井 陽真, 友廣 亮介, 井上 真吾, 竹本 康彦
    2015 年 66 巻 3 号 p. 257-266
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    近年,田口メソッドにおけるパラメータ設計のための基準としてよく知られるSN比の統計的特性が2重非心F分布を用いて説明されることが明らかになった.これにより,2重非心F分布の分布特性に関する興味が再燃している.ここで,2重非心F分布の累積分布関数は,不完全ベータ関数比やGaussの超幾何関数を用いて表現することができる.ただし,不完全ベータ関数比あるいはGaussの超幾何関数は数値計算に関して複雑な計算を必要とするため,2重非心F分布の累積分布関数を評価するための近似法の開発が研究対象とされてきた.本研究では,2重非心F分布の累積分布関数の近似法について考究し,新しい近似法を提案する.数値検証を通して,提案する近似法の特徴について考察する.
  • 中嶋 良介, 稲垣 一平, 松本 俊之
    2015 年 66 巻 3 号 p. 267-276
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,周辺視野を活用した目視検査方法(周辺視目視検査法)を習得させるための訓練システムを開発した.具体的には,周辺視目視検査法で必要とされる周辺視と瞬間視,衝動性眼球運動の3つの要素とそれらの組み合わせで,計6つの要素を段階的に習得させるための訓練ツールをコンピュータシステムとして開発した.また,開発した訓練システムの有効性を検証するため,12名の被験者を訓練しないグループと訓練するグループに分割し,コントロール実験を実施した.その結果,訓練システムには欠点検出率を平均20.4%向上させる効果があることが示された.
  • 門松 誠, 瀬尾 明彦
    2015 年 66 巻 3 号 p. 277-286
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,仰臥位での上方押し作業における作業位置が体幹部および頭頸部の肢位,体圧分布,筋活動などに与える影響を評価し,その身体負担の特性を明らかにすることである.被験者12名を対象に,仰臥位より右上肢を挙上し,把持部を鉛直上向きに押す実験課題を行った.実験条件は,矢状面における把持部の高さ3水準(上肢長60%,75%,90%)と水平位置3条件(耳,肩,肘)を組み合わせ,計9条件とした.その結果,把持部高さ90%の条件では,体幹をわずかに前屈して左に回旋させる動作が生じ,胸部の体圧分布における重心位置が正中線側にずれることがわかった.頭部と胸部にかかる荷重(床反力)の大きさと位置をそれぞれ頭部と胸部の体圧分布より算出したところ,頭部荷重は把持部の水平位置が耳で高さ60%と90%の条件で高くなり,胸部荷重は水平位置が肘の条件で高くなる傾向が認められた.腹直筋と胸鎖乳突筋の筋電図はいずれも把持部高さ90%の条件で高い値を示した.以上より仰臥位での上向き作業では,把持部が上肢長75%の高さで耳あるいは肩の水平位置にあると,頭部や胸部の荷重が低めで胸部や頭部の引き起こしや回旋による筋活動も生じず,体幹部および頭頸部の身体負担が軽減できることが明らかになった.
  • 鈴木 広人, 後藤 允, 大野 髙裕
    2015 年 66 巻 3 号 p. 287-299
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    近年,ペットボトルのリサイクルを行う再生加工事業者は,入札による廃ペットボトルの調達量が不安定であるといった課題を抱えている.これに対し,RVM (Reverse Vending Machine) を活用した廃ペットボトルの回収事例が多く見受けられる.RVMにて回収された廃ペットボトルは再生加工事業者が直接回収とリサイクルを行うため,入札による調達と比較して安定した調達が可能となり,再生加工事業者の利益向上に繋がると考えられる.そこで本研究では,ペットボトル再生加工業におけるRVM導入効果測定モデルを構築した.具体的には,再生加工事業者が直面する3つの不確実性を考慮し,再生加工事業者の意思決定モデルを構築した.さらにRVMを用いない場合と用いる場合の差からRVMの導入効果を導出した.その結果,入札による調達の不確実性が高い場合には非常に高い導入効果があることが分かり,RVMによって回収された廃ペットボトルの調達方法導入において,高い効果をもたらす調達戦略を示した.
原著論文(事例研究)
  • 大宮 望, 山本 久志, 大場 允晶, 丸山 友希夫, 中邨 良樹
    2015 年 66 巻 3 号 p. 300-308
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    近年,情報システムは企業の意思決定に不可欠な存在となってきている.しかし,情報システムの保守工程は,情報システム開発より費用が多く掛るといわれており,経営課題の一つとなっている.その原因の一つに,システム稼働後の初期不良期に問い合わせが多く発生することが挙げられる.この初期不良期に問い合わせが発生する要因については,様々な研究がなされているが,明確な分析はされていない.この課題に対する対策をとるため,本研究では,実際の開発現場で収集されたデータを用いて,初期不良期に問い合わせの発生に影響を与える要因を,統計的手法を用いて分析,考察することで明らかにする.これをもとに初期不良期に発生する問い合わせの予測モデルを提案する.
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