文部科学省が2014年に実施した調査によると高等教育中退者は約8万人である.しかしながら,高等教育中退後の就職,転職等のキャリアパスに関して個人レベルでの分析は焦点があてられてきていないのが現状である.本研究では,個人レベルでの調査・分析を指向して,2018年1月にWebアンケートを行い,調査時点で就業している高等教育中退者と高卒労働者の323サンプルを集めた.質問項目には初職の就業形態・現職の就業形態・2017年度の年収に加え,高校時代・高等教育時代・家庭背景等を含んでいる.条件付確率を用いたベイジアンネットワークにより高卒労働者と比較することで高等教育中途退学が就業形態や賃金に与える影響の因果関係を明らかにした.
機械加工作業では,比較的早い段階で,仕上がり寸法を許容幅内に目標時間内で収めることのできる高能力群と,目標に到達するために,より多くの訓練が必要になる能力不足群が存在する.しかしながら,訓練期間の初期段階の結果だけで,目標に到達できるかを予測することは難しい.さらに訓練生ごとに容易に習得できる作業が異なり,訓練の結果から得られる寸法データもばらつきが大きいので,学習過程の傾向を把握しにくいという問題もある.そこで,本研究では機械加工作業を対象に,訓練生の習得状況に合わせた訓練方法を見出すために,反復訓練の初期段階までの評価から,後半の習得状況を予測し,学習過程の傾向を分類する方法を提案する.さらに事例への適用を通じて,分類方法の有効性を示す.
本研究で対象とする倉庫は,組立直前に必要な部品を取り揃えるフォワードエリアと,そこへ補充するために比較的長期間に渡り部品を保管しているリザーブエリアに分かれている.このリザーブエリアでは,保管する部品量の増加に伴い,数段に渡りパレットの状態で積み重ねられているため部品の入出庫に伴うハンドリング時間が問題となっている.この時間を減らすためにはできるだけ広いスペースを使ってパレットの積み重ねを行わないようにすればよいが,フォワードエリアへ部品を補充するためのフォークリフトによる移動時間が長くなってしまうという問題が生じる.そこで本研究ではこれらを考慮した部品の保管位置割当問題を考える.
本研究は,高度な認知作業と特徴づけられる臨床工学業務に着目し,実務における制約を考慮してIEの分析の重要なステップであるタスク記述を実施するための手順を示すことを目的としている.外部から観察可能な作業データである,ビデオデータ,言語プロトコルデータ,および眼球運動データから,タスク記述に必要な情報を読み取り,視覚的に理解が容易な形でタスクの構造が記述される具体的手順について示される.さらにこの記述方法を用いて,臨床現場における透析装置の不具合対処時の技士の行動のタスク記述がされ,この記述を利用した着眼点の導出および解決に向けた対策の導出のための方針およびその試験的な利用例が示される.一連の研究から,臨床工学業務の現場における制約を考慮し,認知的な側面を含む作業において現状把握を行うための手順とその活用方法を構築・適用することを通して,医療におけるIE的な考え方の適用の可能性を示した.