ディーゼル機関のシリンダ内サイクルは, 燃焼状態, 熱損失などの影響を受けるため, 機関サイクルをシミュレートする場合, それらをどのように評価するかが重要な課題である.そこで, 大形ディーゼル機関によって実験的に有効燃焼率を求め, 燃料噴射率との関係, 燃焼状態, 熱損失などについて検討を行ない, つぎのような結果を得た.
(1) 機関に供給される燃料の発熱量と燃焼により得られる有効熱量との相対関係をあらわす有効燃焼係数を定義した.この係数によって各種運転条件に対する燃焼状態をよく評価することができる.そして, 有効燃焼終わりにおける有効燃焼係数によって, 燃焼期間中の熱損失, 有効燃焼終わりにおける末燃焼燃料分などを評価することができる.
(2) 有効燃焼率曲線の指数関数による表現を試みたが, 適当な係数を選ぶことにより実測値をよく近似することができ, また, それらの係数によって燃焼の現象をよく説明することができる.
(3) 燃料噴射率と有効燃焼率との相対関係をあらわす近似燃焼遅れ曲線を求めたが, 供試機関の場合, この曲線は正味平均有効圧, 機関回転数, 掃気圧力などの運転条件に関係なく一定となる.このことは, 過渡特性をシミュレートするうえできわめて好つこうである.
(4) 機関の燃焼過程をシミュレートする方法として, 有効燃焼率を直接指数関数によってあらわす方法があり, それは有効燃焼率を忠実に表現することができるが, 数式およびその諸係数が複雑なため, シミュレーションには適しない.また, 有効燃焼係数または近似燃焼遅れ曲線を数式化して, これらと燃料噴射率とから有効燃焼率をあらわす方法があるが, 有効燃焼係数はその曲線の形が運転条件によって複雑に変化するため, これもシミュレーションには適していない.結局, 機関の運転条件に無関係に一定の曲線で表現できる近似燃焼遅れ曲線を数式化する方法が, シミュレーションに対して最も便利である.
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