原子力船に圧力抑制格納方式を採用しようとすると, 多くの問題がある.
その一つとして, 格納容器はできるだけコンパクトにすべきである.したがって事故時に陸上発電所の場合に比べて, 格納容器の圧力が高く, また, 抑制室内の水温も高くなる.このため, 特にベントチューブ出口での吹出し蒸気の凝縮の機構, 必要なベントチューブ浸水深さおよび船の運動と姿勢の影響を究明しておく必要がある.
著者らは, 飽和蒸気 (空気含有量0~50%, 圧力1.5~18kg/cm
2) をオリフィス (直径2~50mm) を通して水中 (圧力1~11kg/cm
2, サブクール5~100℃) に吹出し, その状態を瞬間写真と高速度写真を用いて観察することにより, これらの問題を実験的に究明した.以下はその結果の概要である.
吹出しの形態は, 大きな騒音と振動をともなう周期的な吹出しと, ほとんど音を出さない連続的なものとに区別され, 周期的吹出しから連続的吹出しへの遷移は, 抑制室内の水圧と蒸気圧力との比がほぼ臨界圧力比のときに起こることがわかった.周期的吹出しの場合, 気泡は非常に早く消滅し, この場合, 気泡表面での等価凝縮熱伝達率は10
5~10
6Kcal/m
2h℃のオーダーであり, この値は蒸気中の空気含有量の増加とともに減少する.一方, 必要なベントチューブの浸水深さを見積る実験式をデータから得た.蒸気が上向きおよび下向きに吹出した場合の特徴を示し, いずれの姿勢でも十分な水の混合が達成されるならば, 設計に採用できることを示した.
他の一つの問題は, 格納容器の内容積が小さいことにより, 原子炉一次系の配管, またはノズル部の破断部分から流出する二相流によるジェットが格納容器内にある破断部分周辺の機械や, 計装用機器に, 衝撃荷重を及ぼし, それらの機構や機能に障害を与へる恐れがある.
それゆえ, 格納方式を採用するうえで, このような力についての基礎的な知識を得るのは重要なことである.そこでわれわれは, 試験装置を作り, 容器からのブローダウンの一連の実験を行なった.実験のパラメータとしては, 破断圧力50~90kg/cm
2G, 破断口径0.5inch~1.5inch, および格納容器の状態, すなわち, 乾式あるいは湿式をとった.
この論文では, ブローダウン実験において, 衝撃の破断口からの距離による強度変化, 破断後のその強度の時間的変化, さらに, 装置全体の圧力変化などの実験値を示すとともに, その解析結果を報告する.
結論として, 舶用炉において格納容器のコンパクト化を計るために, 圧力抑制方式を採用することは, 設計上合理的であることがわかった.
抄録全体を表示