情報メディア研究
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16 巻, 1 号
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論文
  • — 女性向け実用教養番組『婦人百科』を対象として —
    辻 泰明
    2017 年 16 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本でのテレビの変化期,すなわち 1980 年代におけるテレビ視聴時間量の一時的な減少に伴う番組態様の変化期での,女性向け実用教養番組『婦人百科』について,形態素解析によって副題を分析し,その品詞分布の変化と番組内容の変化との関係およびその意義を考察することを目的とする.1980 年度から 1989 年度まで 10 年間の『番組確定表』を元に,同期間に放送された『婦人百科』1853 本の副題に対して形態素解析をおこない,当該期における変化を調査した.その結果,『婦人百科』の副題は,1980 年代中頃を境として,名詞が用いられる比率が減少しているのに対し,動詞が用いられる比率が増加していることが明らかになった.このことは,テレビの変化期において,番組の形式には表立った変化がなかった女性向け実用教養番組『婦人百科』においても,番組内容には「教養」重視から「実技」重視へという変化が生じていたことに呼応すると考えられ,1980 年代半ばにおけるテレビメディアの変化の一端を数量的に可視化するものである.
  • -雑誌論文は学会発表を経ているか-
    山西(増井) 史子
    2017 年 16 巻 1 号 p. 15-31
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー
     本研究は,日本文学・日本語学分野の学会誌に掲載された論文がその内容に対応する学会発表を経ているか否かを調査し,当該分野の研究における論文と学会発表の関連性を明らかにすることを目的とする.
     調査対象は,日本文学・日本語学分野で重要視されている学会誌 9 誌に 2005 年~ 2014 年の 10 年間に掲載された論文 1,958 本である.調査項目は,論文の内容に対応する学会発表の有無,学会発表が確認できた場合は,その学会名,学会発表と論文出版のタイムラグ,の 3 点である.
     結果は,対応する学会発表を経た論文は 729 本で全体の 37%であった.その内訳は,論文が掲載された学会誌を出版する学会での発表を経ていたのが 420 本で全体の 21%,論文が掲載されたのと別の学会での発表を経ていたのが 309 本で全体の 16%であった.
     全体的な傾向としては,論文出版と学会発表の関連性は低かった.しかし,一部の学会では,学会発表と論文出版の関連性が高い傾向があることが明らかとなった.
  • 桂 瑠以
    2018 年 16 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 2018/01/08
    公開日: 2018/01/08
    ジャーナル フリー

     本研究では,大学生 500 名を対象に,2時点のパネル調査を行い,LINE の使用が LINE での社会関係資本及びレジリエンスに及ぼす影響を検討することを目的とした.その結果,第 1 に,LINE の使用量が LINE での互酬性を高め,LINE の使用量,所属感が LINE での信頼感を高める効果が認められたことから,LINE の使用が LINE での社会関係資本を高める可能性があるといえる.第 2 に,LINE での互酬性がレジリエンスを高める効果が認められたことから,LINE での社会関係資本の一部はレジリエンスを高める可能性があるといえる.これらのことから,LINE の使用が LINE での社会関係資本を醸成し,LINE での社会関係資本が高いほど,使用者のレジリエンスが高まることが示唆された.

  • 後藤 嘉宏
    2018 年 16 巻 1 号 p. 41-69
    発行日: 2018/03/08
    公開日: 2018/03/08
    ジャーナル フリー

    和文要約 中井正一の「委員会の論理」(1936)における嘘言の媒介には後藤宏行(1965),ついで針生一郎・松岡正剛(1982)が言及し,両者は嘘言によるコミュニケーションの発展を肯定的に把握した.他方,荒瀬豊(1979)は中井における嘘言の克服を強調した.しかし「委員会の論理」を仔細に読むとテクストは双方を支持し,嘘言が遍在する点を本稿は論じる. 「委員会の論理」は,連載時の『世界文化』編集後記で元原稿を紙幅の関係で圧縮するように依頼した旨記され,中井の既存の諸論考の議論を補わないと理解しがたい. 中井の重要概念,基礎射影及びコプラという言葉は「委員会の論理」でそれぞれ一つの節で僅かしか現れないが,先行あるいは後続する彼の諸論考と重ね合わせると,それらは嘘言の文脈で理解できる.また「委員会の論理」の本題とされる十六節のループ状のモデルにも嘘言は媒介する. 以上のように「委員会の論理」において嘘言が遍在することを本稿は論じ,難解な「委員会の論理」の理解をやや明快にする一助となることを目指す.

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