情報メディア研究
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20 巻, 1 号
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論文
  • 渡辺 真希子, 後藤 裕明, 中山 伸一
    2021 年 20 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2021/05/21
    公開日: 2021/05/21
    ジャーナル フリー

    疾患を持つ子どもの親とその家族は, 医療者との治療に関する意思決定において情報を必要とすることが分かっているものの, 小児がんの子どもを持つ親の情報探索行動については殆ど明らかとなっていない. 本研究は, 親の治療決定の同意との関連から親の情報探索行動を明らかにすることを目的とする. さまざまな医療情報源の使用頻度と他の決定要因との調査を行い, どの種類の情報源が子どもの治療決定に関する親の同意に影響を与えるかについて重回帰分析を用いて評価した. 僅かではあるが主治医(β= 1.72, p = .028)と, 主治医が所属する機関に関わらず広く医療機関のウェブサイト(β= 0.87, p = .016)が治療決定の同意に正の影響を与えること, 医師が発信するウェブサイト(β= -0.8, p = .042)が治療決定の同意に負の影響を与えること, 親の批判的ヘルスリテラシーよりも伝達的ヘルスリテラシー(β= 0.63, p = .003)が情報探索行動の決定的要因としての治療決定の同意に関連することが分かった. これらの結果は, 医師が発信するウェブサイトを利用する親は, 複数の医師からの情報についても探索し, 情報源として主治医及び医療機関のウェブサイトを利用する親より治療選択の同意に慎重である可能性を示唆した. 親の情報探索における伝達的ヘルスリテラシーが治療選択の同意において関連が深いことは, 親が診断の初期段階に幅広い情報源を使用したことを示唆している. そのため医療スタッフ及び情報提供の専門家は, 小児がんの子どもを持つ親の情報探索行動が個人属性に影響されることを考慮し, 診断の初期段階で親の識字能力や学歴に応じた情報を提供する必要があることを考察した.

  • アザディ ナグシ ファテメ, 鈴木 佳苗, 歳森 敦
    2021 年 20 巻 1 号 p. 19-35
    発行日: 2021/05/21
    公開日: 2021/05/21
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、問題解決行動に対する報酬の有効性への文化的影響を、問題解決の正確さと問題解決におけるリスクテイクの 2 つの尺度から明らかにすることである。実験は、報酬のレベルを 2 段階 (金銭報酬と無報酬)、国籍を 2 段階 (日本人と非日本人) とした 2×2 要因で行なった。実験には計 84 名が参加し、問題解決のタスクには「数独」を使用した。

    実験の結果、日本人参加者よりも非日本人参加者の方がリスクテイクのスコアが有意に高く、他方金銭的報酬のない日本人参加者は、非日本人参加者に比べて正確さのスコアが有意に高かった。これらの結果からは、課題遂行において、金銭的報酬に左右されにくいという日本人の文化的特質が示唆される。

  • -子どもの読書活動推進に向けて-
    金沢 みどり, 望月 道浩
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 1 号 p. 37-54
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

    子どもの読書習慣の形成と継続には,家庭,学校,公立図書館をはじめとする地域の読書活動の推進に関する積極的な取り組みが必要不可欠である.本研究では,日本の公立図書館 Web サイトの子ども読書 Web ページのコンテンツに関する現状調査を行った.調査結果から,市区町村立図書館が家庭内や市区町村域の読書活動の推進に力点を置いたコンテンツを備える傾向にあるのに対して,都道府県立図書館は都道府県域や全国的な視野からコンテンツを構築する傾向にあることが示された.さらに,子ども読書 Web ページ,児童の Web ページ,ヤングアダルト Web ページ,及び,学校支援 Web ページ間の相互リンクの現状を調査した.その結果,児童の Web ページがそれらの中で中心的な位置付けにあり,子ども読書 Web ページは児童の Web ページに最も関連性のあることが明らかになった.今後はヤングアダルト Web ページなどとの相互関係にも留意し,コンテンツを積極的に構築することが望まれる.

  • 文書とのタッチインタラクションに着目して
    松山 麻珠
    2021 年 20 巻 1 号 p. 55-70
    発行日: 2021/08/13
    公開日: 2021/08/13
    ジャーナル フリー

    本研究では、紙および電子メディアの読みにおける「タッチ」を伴うインタラクションの影響について、読書材から誤り部分を探す読みを課題とした実験を元に考察した。実験では、紙・タブレット端末・PC ディスプレイの表示媒体 3 条件と、接触不可・接触可・書き込み可のインタラクション条件 3 条件の組合せ 9 条件を設定した。文章のみ・図表とその説明文・絵の間違い探し 3 種類の「誤りを探す読み」課題による作業効率の測定と主観評価を実施した。実験協力者は 12 名(平均 23.2 歳)であった。その結果、回答の正確性を示す再現率は、紙とタブレット端末では接触不可条件と比較して接触可・書き込み可条件のほうが高くなり、PC では接触可・書き込み可条件と比較して接触不可条件のほうが高くなった。また、回答の網羅性を示す適合率は、紙やタブレット端末と比較して PC のほうが低くなった。この実験結果から、手指による直接的なインタラクションを行う紙やタブレット端末は、マウスを使った間接的なインタラクションを行う PC より効率的な読みが可能であったことが示された。

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