情報メディア研究
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4 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • 李 常慶
    2005 年 4 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/27
    ジャーナル フリー
    本稿では,1970年代末から始まった中国古典籍のデジタル化の流れをまとめた上で,中国の古典籍史上最大の叢書である『四庫全書』のデジタル化について紹介し,最後に『四庫全書』のデジタル化が学術研究に与える影響について考察した.この考察を通じて,『四庫全書』のデジタル化は中国古典籍の保存,整理および利用に大きな役割を果たすのみならず,今後の中国古典籍のデジタル化,例えば,漢字処理技術の開発などにおいても非常に参考になるものであることを明らかにした.さらに,『四庫全書』のデジタル化により,膨大な量の古典籍の本文を加工して利用しやすくなり,これの検索ももれなく行なうことができ,さらに,数量的分析も行ないやすくなるので,古典籍の学術研究に大きな刺激を与えることができることをも指摘した.
  • 松縄 正登
    2005 年 4 巻 1 号 p. 21-40
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/27
    ジャーナル フリー
    2005年9月30日,知的財産高等裁判所でワープロソフト「一太郎」と統合グラフィックソフト「花子」の製造販売差止請求を棄却する旨の判決(知財高裁判平17.9.30)があった.同年2月,東京地裁で,「一太郎」「花子」の製造販売差止請求を認める旨の判決(東京地判平17.2.1)から,約8ヶ月の短期間で決着がつき,ジャストシステム側の訴えが認められた.この事件は,原告の所有する「情報処理装置及び情報処理方法」というハードウェアに関する特許と,「一太郎」「花子」というソフトウェアとの争いである点に特徴を有する.本稿は,この事件に焦点をあてながら,ソフトウェアの知的財産権を巡る問題について考察を加えたものである.
  • 丸山 有紀子, 金沢 みどり
    2005 年 4 巻 1 号 p. 41-53
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/27
    ジャーナル フリー
    日本の公共図書館のWebサイトを対象として,館内で実施されている児童サービスについて情報がどのくらい記載されているのか,また,特に児童のためのWebページについてユーザビリティにどのくらい配慮されているのかなどを中心に計701館のWebサイトの調査を行なった.その結果,実態と比べて児童を対象とした資料,スペース,サービスなどの情報が広報活動の観点から必ずしも充分に記載されていないことがわかった.さらに,児童のためのWebページを特に設けている公共図書館Webサイトは123館(17.5%)と決して多くはないことがわかった.児童のためのWebページが設けられている場合には,子どものユーザビリティに関して読みやすさやナビゲーションの容易さなどの観点から比較的配慮されていることが示された.
  • 新保 史生
    2005 年 4 巻 1 号 p. 55-76
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/27
    ジャーナル フリー
    人の身体的・行動的特徴を用いて特定の個人を認証する仕組みであるバイオメトリクスは,社会の様々な局面において情報セキュリティの確保等の目的で利用される場面が増えつつある.しかし,バイオメトリクスは,鍵やパスワードなどを用いることなく身体そのものが「鍵」になるという利便性がある一方で,生体情報は変更することができない情報であり,それが不正に利用されると鍵の紛失やパスワードの不正利用とは異なる問題が生ずる可能性がある.とりわけ,生体情報は,個人に「唯一」備わっている特徴(情報)であり,本人が生存している限り「不変」かつ「永続的」に存在する情報であることから,その取扱いは極めて慎重に行うことが求められている.そこで,本稿では,バイオメトリクスの適正な利用にあたって必要な生体情報の保護の問題について,個人情報保護法に基づく個人情報の適正な取扱いを中心に考察する.
  • 土橋 祐介, 河島 茂生
    2005 年 4 巻 1 号 p. 77-93
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,書き込み機能のアーキテクチャ変更にともなうユーザ行動のありようを比較している.すなわち,本研究は,ウェブサイトの書き込み機能のアーキテクチャを変更して,(1)ユーザ登録およびログイン作業の有無が書き込み数や書き込み内容に与える影響,(2)返信機能の有無が書き込み数や書き込み内容に与える影響,を検討している.調査の結果,ユーザ登録およびログイン作業なしの場合は,サイト全体での書き込み数は増えず「荒らし」が散見されるようになったものの,書き込みの窓口が広くなりRAM比率が上がることが示された.また,返信機能なしの場合は,サイト全体での書き込み数も増えずRAM比率も下がり,話題も深く掘り下げられることなく話題転換しやすかった.
レター
  • 大貫 和則, 鈴木 佳苗, 波多野 和彦
    2005 年 4 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/27
    ジャーナル フリー
    高等学校の普通教科「情報」において,インターネットの匿名性に焦点をあてることで情報モラルを育成する授業を設計した.本研究では生徒自身のなりすまし体験と内省(生徒の自己の振り返り)を重要な要素とし,クラス単位でこの体験を重視した指導法と教師による事例紹介を中心とした指導法のいずれかを実践して,生徒が記述した内省文から匿名性についての気づきや理解の違いを検討した.その結果,体験を重視した指導法では匿名性による相手識別の困難さを多くの生徒が指摘することができた.また,匿名性について受信者のみならず送信者の立場で考えることができることが示唆された.一方で,インターネット上でのルールの必要性に気づきにくい特徴があり,法制度を含めた情報社会のあり方については別の機会に補う必要があることが示唆された.
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