ICAO(国際民間航空機関)のFANS(将来の航空航法システム委員会)によれば,GNSS(Global Navigation Satellite System,全地球的衛星航法システム)を次のように定義している。「GNSSとは,21世紀において,主要な単独航法を可能とするICAOのシステム要件を満足する衛星航法システムである。」この定義を満足するシステムはまだない。GPS,GLONASSあるいはこれらを組み合わせたシステムでさえGNSSではない。理由は,インテグリティ等のICAOの要件を満たしていないからである。両者とも,軍用に設計されたものであり,システムプロバイダは民間航空のインテグリティ等の確保の要求に対応することなど考慮していない。このような理由を含めて,GPSやGLONASSの弱点を克服するために,別な組織において解決策の実現と評価が行われている。ユーザーにすぐにも利用できるように問題を解決するため,インテグリティ,アベイラビリティおよび精度の改善を目途として補強システムを追加するという努力が集中的に行われている。ここ2〜3年のうちに初期運用の開始を目指して3種類の補強システムが開発中である。欧州のEGNOS(European Geostationary Navigation Overlay System),日本のMSAS(MTSAT Satellitebased Augmentation System)および米国のWAAS(Wide Area Augmentation System)である。これらのシステムは多くの共通する特徴を有し,航空のユーザーにとって,覆域の重複により,今まで利用していたシステムから別のシステムへ切れ目無く切り替ることが可能であるというような両立性を考慮している。これらのシステムはデータの配信に静止衛星を利用する。データとして,インテグリティ情報,広域デファレンシャル補正および測距信号がユーザーに利用可能になる。上記のGNSSの定義によれば,GPS衛星,GLONASS衛星と組み合わせたEGNOSはICAOにおけるエンルート,非精密進入の要件を満足すると共に,欧州,アフリカおよび中東における海事利用の要求にも対応できる。(船舶における港湾での利用および入港への運用と共に航空機の精密進入・着陸への利用にあたっては地域的な解決法が必要となることが考えられる。)上記の3種類のシステムはGNSS-1と呼ばれる。欧州三者グループ(European Triparte Group)によればGNSS-2とはワールドワイドな民間用衛星航法システムであり,国際共同管理され,全てのカテゴリーのユーザーに位置,速度および時刻を提供するシステムであると定義している。ここでは欧州におけるGNSS-2について背景,機構,活動,スケジュール等について紹介する。
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