精進出し汁の料理への適用性を明らかにすることを目的として昆布, 干椎茸, 切干大根, 干瓢, 大豆を使用した単独出し汁と, 昆布と昆布以外の材料を合わせて取った混合出し汁について呈味成分の分析を行った。さらに, 混合出し汁を使用してすまし汁, 大根の煮物, 凍り豆腐の煮物を調理し官能検査を行った結果, 以下のことが明らかとなった。
(1) 昆布出し汁はマンニトール, グルタミン酸, アスパラギン酸, 干椎茸出し汁はトレハロース, 5'-シチジル酸, 切干大根出し汁はシュクロース, カリウム, 干瓢出し汁はリンゴ酸, カリウムを多く含有した出し汁であった。大豆出し汁は戻し汁への呈味成分の溶出量が低く, いずれの呈味成分もわずかであった。
(2) 干椎茸出し汁および昆布+干椎茸出し汁, 昆布+切干大根出し汁はγ-アミノ酪酸を, 切干大根出し汁および昆布+切干大根出し汁はタウリンを多く含有した出し汁であり, これら出し汁の機能性食品素材としての利用に期待が持たれた。
(3) 昆布と昆布以外の材料を合わせて出し汁を取ることにより, いずれの出し汁もうま味の増加が認められた。また, 昆布+切干大根出し汁および昆布+干瓢出し汁では甘味や酸味の減少が認められた。
(4) 昆布+干椎茸出し汁はにおい, 色, うま味, あと味, 昆布+切干大根出し汁は色, うま味, 甘味二, あと味, 昆布+干瓢出し汁は酸味, あと味が強いと評価されたが, 昆布+大豆出し汁はいずれの評価も低く, 呈味の弱い出し汁であった。
(5) いずれの混合出し汁もすまし汁, 大根の煮物, 凍り豆腐の煮物のすべての料理において, 総合評価で普通と評価されたことから, 出し汁として使用可能であると判断された。
(6) 昆布+切干大根出し汁は, いずれの料理でも普通以上の評価を得ており, 混合出し汁の中では最も適用性の高い出し汁であると考えられた。
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