日本食生活学会誌
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17 巻, 3 号
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総説
  • 五十部 誠一郎
    2006 年 17 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      Applications of superheated steam for food processing have been studied in recent years with several advantages. A new oven system, which generates superheated steam with micro droplets of hot water (Aqua-gas), was achieved spraying heated water into a heating chamber filled with the superheated steam. It was expected that the micro-droplets increased the heat transfer coefficient of the heating medium. It was also expected that water content of foods processed with this oven could be controlled by regulating the amount of the micro droplets in the superheated steam. Heat transfer rates of the Aqua-gas and the superheated steam maintained at 115°C were measured based on surface temperature of a heat flowmeter. The heat transfer rate of the Aqua-gas was larger than that of the superheated steam in the case the temperature of the heat transfer boundary was low. In addition the drying rate of the food sample was lower in the case of the Aqua-gas due to the effect of the micro droplets. An application of this new Aqua-gas system for surface pasteurization of flesh vegetables and the blanching were examined. Cucumber and carrot samples were pasteurized effectively with slight changes of its color and rheological properties in 30 seconds to 1 minute using this new Aqua-gas system. Potato salad, pasteurized by this new system, had better flavor and longer shelf life than potato salad prepared by the traditional method. The potatoes and broccoli were blanched by the Aqua-gas. The changes in the color, the rheological properties were smaller than the blanched sample by the hot water. The weight loss of the potato was small in the Aqua-gas. In addition, Bacillus subtilis spores on potato were pasteurized effectively by the Aqua-gas. These results suggest that safe fresh food and products with high quality and long shelf life can be provided using this new oven system.
  • 長尾 慶子
    2006 年 17 巻 3 号 p. 198-203
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      The thermal conduction induced near to the heating plane was detected along the one-dimensional axis (x-axis) in foodstuffs such as a series of food models, cereal flour doughs, highly moisturized foods, etc during pan broiling (heating in a metal vessel) at 105°C, frying at 180°C, boiling at 100°C, steaming at 100°C, and baking at 170°C, using the newly provided heatineg devices. The velocity of increasing temperature monitored in each sample was ranked from the highest to the lowest in the order of frying, boiling, steaming, pan broiling and baking, irrespective of temperature in each heat transfer medium. The increasing temperature against heating time curves for all the samples were in conformity to an exponential equation derived from an assumption that a retardation phenomenon plays a role in the thermal conduction. This article describes the details about distinctive feature of the retardation phenomenon during heating procedures of foods.
論文
  • 小林 麻里子, 奥脇 義行, 川井 英雄
    2006 年 17 巻 3 号 p. 204-210
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      口腔内には微好気性菌が存在するため, ペットボトル入り清涼飲料水から直接飲用し微好気培養を試みた。また, 口腔内常在菌叢は多種多様の細菌から構成されているため, 個人の間での違い (好気培養) も検討した。
    (1) 好気培養と比較して微好気培養では8時間後においても多くの生菌を認め, 好気培養時には速やかに死滅したグラム陰性双球菌 (Neisseria属) が8時間後においても検出された。
    (2) Neisseria属は炭酸ガス培養で発育が良好となるため, 微好気培養下で長時間にわたって生残が可能であった。
    (3) Bacillus属は好気性菌であるが芽胞を形成して強い抵抗力を示すため, 微好気の環境でも生残した。
    (4) 被検者 (単独), 本学学生, 教職員の間での菌相には大差は認められず, 口腔内常在菌叢に大きな個人差はないことが示唆された。
  • 小林 麻里子, 奥脇 義行, 川井 英雄
    2006 年 17 巻 3 号 p. 211-216
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      Staphylococcus属菌及びStreptococcus属菌はPETボトル入り清涼飲料水中でも長時間の生存が可能な場合がある。そこで,これらの中で口腔内に常在していることの多いS.aureusS.pyogenesの一定濃度の菌液を調製し, 菌数の変動を検討した。
    (1) S.aureusS.pyogenesを接種した実験において, スポーツ飲料と乳酸菌飲料ではS.aureusでは菌数の変化が見られなかったが, S.pyogenesは5時間後までに死滅した。
    (2) むぎ茶飲料ではS.aureusは増加し, S.pyogenesはわずかな減少を示した。
    (3) 紅茶飲料 (ミルクティ) は両菌種ともに増加した。
    (4) スポーツ飲料と乳酸菌飲料はpH3, むぎ茶飲料と紅茶飲料 (ミルクティ) はpH6程度であるため, 細菌の生存には成分も影響するが, pHの方がより強く影響することが示唆された。
    (5) むぎ茶飲料と紅茶飲料 (ミルクティ) との比較では, むぎ茶飲料はタンパク質, 脂質, 炭水化物を全く含まず, 原材料が麦の浸出液のみである。これに対し, 紅茶飲料 (ミルクティ) は乳成分 (牛乳, 脱脂粉乳など) や砂糖を含むため, 細菌の増殖に適した条件であると言える。
    (6) 黄色ブドウ球菌食中毒が発症するエンテロトキシン量は平均100~200ngとされる。これは, 食品中におけるS.aureusが106cfu/g以上と同レベルの増殖である。本研究の紅茶飲料 (ミルクティ) では, 接種24時間後でもっとも増殖した試料でも104cfu/mL程度である。このためエンテロトキシンが産生される条件に満たなかったと考えられた。
  • 金 廷恩, 松本 仲子
    2006 年 17 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      韓国の伝統的な漬物である白菜のキムチについて韓日間の嗜好を主として官能評価法により検討した。材料配合は,白菜1kgに対して唐辛子20g, にんにく45g, 塩辛60gを1:1:1の基準とし, 唐辛子は0.75, 1.0, 1.2, 1.4, 1.6の5系列, にんにくと塩辛は0, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0の5系列とした。また漬日数を2, 4, 6, 10日として試料を調製した。官能評価は, 7段階の評点 [-3=非常に悪い (非常に弱い), 0=普通, 3=非常に良い (非常に強い)] 法によった。結果は次のように要約された。
      1. キムチは漬日数に従って, 歯ざわりが弱まる一方で, 酸味を増し, 韓日のいずれもがpH4前後の6日目と10日目の評価が高く, pH5以上の2日目と4日目は評価が低かった。
      2. キムチの総合評価には, テクスチャーよりも味の影響が強く, 辛味, にんにく臭さ, 旨味, 酸味などが関与した。
      3. 韓日の総合評価は1%の危険率で有意な相関が認められたが, 韓国人は評価基準が明確で, 評価の幅が広いのに対して, 日本人は中心化傾向を示し, 評価の幅が狭かった。
      4. 総合評価で, 韓日ともに高い評価を示したのは, 材料配合が唐辛子:にんにく:塩辛=1:1:1の漬日数6日目と1:1:1.5の10日目, 低い評価を示したのは, 1:2:1の2日目であった。にんにくが多く漬日数が浅いものは, にんにく臭が非常に強いために好まれなかった。
      5. 日本人のキムチに対する嗜好は, 韓国人に比べて, 唐辛子, にんにくの濃度が幾分控えめなものが高く評価される傾向が認められた。
  • ―幼稚園児の弁当の実態とその問題点―
    江田 節子
    2006 年 17 巻 3 号 p. 224-230
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      幼稚園児を持つ保護者を対象に, 幼児の弁当の実態調査を行い, 問題点および課題について検討した。その結果は次の通りである。
      1. 幼児の弁当は「ほとんど手作り」が約1/3であった。
      2. 多くの保護者は, 弁当作りにおいて子どもの嗜好や彩り, 食べやすさ, 栄養バランスなどに配慮していたが,安全性については低率を示した。
      3. 1日の総エネルギーのうち, 昼食(弁当)の占める割合は約3割という妥当な回答を示したのは62.5%であった。
      4. 弁当の主食はご飯が多く, 味付けご飯やおにぎりが多く, 白飯はごくわずかであった。
      5. 副食の品数は平均5.6品であった。
      6. 油脂類を使用した調理法の重なり, 肉類の使用が多く, 魚料理や野菜料理の使用頻度は低いなどの問題がみられた。
      7. 課題として, 子育て支援の一環として食支援のプログラムを組み入れて展開していくことが望まれる。
  • 村井 陽子, 奥田 豊子
    2006 年 17 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      小学校4, 5年生を対象に調理実習と授業実践を取り入れた「豆」の指導を展開した。指導前後に実施した質問紙調査, 指導群150名と対照群249名の成績を解析し, 教育効果を明らかにするとともに, 豆等の摂取頻度と児童の健康状況の関連を検討した。
      (1) 指導群では, 指導後, 豆の嗜好, 豆の摂取意欲が有意に向上し, 対照群と比較すると家庭での豆の摂取頻度に増加傾向がみられた。
      (2) 調理実習で児童が豆を「おいしい」と感じ, 嗜好が改善すれば, 豆の摂取も多くなることが示唆された。家庭での豆料理の提供が増えると, 豆の摂取は更に増加すると推察された。
      (3) 調査した家庭での4項目の摂取頻度は,「豆」と「豆製品」,「カップめん」と「コンビニおにぎり」がそれぞれ有意な正の相関を示し, 健康状況に対しては,「豆」「豆製品」が有意な正の相関,「カップめん」「コンビニおにぎり」が有意な負の相関を示す傾向がみられた。
      (4) 指導群では, コンビニ食品の摂取頻度が有意に減少し, 児童の健康状況の有意な向上が認められた。
      (5) 摂取頻度における「豆・豆製品優位群」は,「コンビニ食品優位群」に比べて有意に高い健康度を示した。
      (6) 児童に伝統的な食材やその食べ方を伝えていくことは, 食体験の幅を広げるとともに, 児童の健康状況に良好な影響を与える効果を期待できることが示唆された。
  • 江間 三恵子
    2006 年 17 巻 3 号 p. 239-246
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      乾燥食品 (野菜類, キノコ類, 果実類) の変遷を特許に基づいて考察した。乾燥野菜類や乾燥キノコ類など, 海外からの輸入が増加しているなか, 加工に関する技術の発展に伴い新素材の開発が進められ, 食生活における日本人の食の文化の維持と発展に寄与している。本論文では次のことを明らかにした。
      1) 乾燥食品は粉末が多い。粉末は菓子類, 即席食品やチップス, 健康食品, ダイエット食, 製菓素材, さらにはサバイバルフーズにも利用され, 多方面に適用されている。
      2) 乾燥食品の形状と品質は乾燥法とその乾燥経費が関係する。
      3) 乾燥食品を粉末にするには噴霧乾燥が, 原型のまま乾燥するには熱風乾燥, 凍結乾燥などが適している。野菜類は凍結乾燥, キノコ類は加熱乾燥, 果実類は熱風・高温加熱が多く使用されている。
      4) 乾燥食品の利用法を3つのカテゴリーに分類し, 種々の機能との関係を示した。
      5) 乾燥食品の機能を分類し, 素材と機能との関係を示した。
  • 石黒 弥生, 藤原 しのぶ, 佐々木 弘子, 松本 仲子, 菅原 龍幸
    2006 年 17 巻 3 号 p. 247-254
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      シイタケ, マツタケ, ブナシメジ, エリンギ, マイタケ, ツクリタケの6種類のキノコ類を緩慢凍結した後に加熱すると, 実験に用いた6種類のキノコ類全てについて, RNAは生キノコを加熱調理したものより有意に, 或いは, より低下の傾向を示した。これに伴い, 生キノコを加熱したものに比べ, 緩慢凍結してから加熱したキノコの5'-GMPは, 実験に用いた全てのキノコについて有意に増加した。これは, SEMによる観察から凍結したキノコの場合, 加熱調理時にドリップの生成が多く, 酵素作用が活発に行われるためと考えられる。
      冷凍したキノコと生キノコを用いてキノコ飯を作り, 両者についてその受容性を比較したところ, 冷凍キノコを用いたものが生キノコを用いた場合より味が好まれたのは, シイタケであり, 味, テクスチャー, 総合で好まれたものは, ブナシメジであった。香りで好まれたものは, マツタケ, ブナシメジ, 醤油味のマイタケであった。
      逆にマイタケを用いた塩味の場合は, 生キノコが色, テクスチャー, 総合において冷凍キノコを用いた場合より有意に好まれていた。しかし, 醤油味にした場合は, 香りについて逆に冷凍キノコが好まれた他, 両者の間で有意な差は見られなかった。マイタケを味噌汁の具にした場合は, 冷凍キノコが生キノコを用いた場合より, 色, 汁の味, キノコの味, 総合評価共に有意に冷凍キノコが好まれた。
      以上の他に, テクスチャー, 総合の評価では, 冷凍キノコを用いた場合と生キノコを用いた場合とを比較した場合, 両者間に有意な差は見られなかった。これらの結果から, キノコ類を家庭でブランチング処理をせずに冷凍して短期間保存し利用することは可能であると考えられる。
  • 土部 聡福, 片海 晟五, 森 正樹, 森 治樹
    2006 年 17 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      The inhibitory effect on the increasing the postprandial blood glucose levels by Banaba extract capsule enriched corosolic acid was evaluated. First of all, blood glucose levels of 12 subjects including of 7 males and 5 females were measured at the time of fasting and in 30, 60, and 120 minutes after being ingested only starch meal (540 kcal).
      Then a soft capsule of Banaba extract contained high 10mg quantity of corosolic acid was orally administered to all subjects at every morning for two weeks.
      The inhibitory effect by the capsule was evaluated to compare with the postprandial blood glucose levels by being ingested the only starch meal. As a result, a significant inhibitory effect was observed at the each point of fasting and 30, 60 and 120 minutes within only one week after administrating the soft capsule. Both the weight loss and the improvement of BMI were observed also after two weeks administrating.
    It is clear that the soft capsule of Banaba extract contained high 10mg quantity of corosolic acid is available, as no adverse effect was observed during and after the trial.
  • ―ウランバートル出身者と地方出身者の比較―
    早川 史子, 岡崎 章子, 韓 順子
    2006 年 17 巻 3 号 p. 260-265
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      2003年10月~12月, モンゴルのウランバートル出身の女子大学生306名と地方出身の女子大学生283名を対象に飲み物調査を実施し, 次のことが明らかになった。
      1. ウランバートル出身者と地方出身者の間で湯の飲用頻度がもっとも高いことは共通していた。しかし湯以外の飲み物の飲用状況は両者間で異なり, 前者では紅茶やコーヒーの飲用頻度が高く, 地方出身者ではスーティツァイ, ハルツァイの飲用頻度が高かった。
      2. コーヒーは食事と食事の間に飲まれる頻度が高かったが, 紅茶は食事に付随した飲み物として定着していることが明らかになった。
      3. ウランバートル出身者に比べると地方出身者ではスーティツァイに対する嗜好性が高く, 紅茶に対する嗜好性が低かったことによって, 飲み物の嗜好性に差が認められた(p<0.001)。
      4. 来客時および団欒時の飲み物としてスーティツァイに対するイメージが両群とももっとも高かったが, 地方出身者の方がより高かったことと紅茶に対するイメージがウランバートル出身者の方がより高かったことによって, 両者間における来客時および団欒時の飲み物に対するイメージに有意差が認められた(p<0.001)。
      5. 紅茶やコーヒーに対して嗜好性を示した者でも来客時や団欒時には伝統的飲料であるスーティツァイをイメージする者が多かった。
資料
  • 青山 佳弘
    2006 年 17 巻 3 号 p. 266-270
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
      An electronic nose is equipment imitating the human smell mechanism and evaluates the smell as the whole. The fundamental principle is the combination of the measurement of gas by some gas sensors with which the gas response characteristics differ and the multivariate analysis of information from these sensors.
      We added the trap tube to the measurement mechanism in a shimadzu electronic nose [FF-2A]. Using this trap tube, we got measurement sensitivity higher than before by concentration of sample gas, and reproducibility and distinctiveness higher than before by removal of humidity.
      And we introduced the concept of a vector into analysis. Using this analysis method, we realized dividing the smell into quality and strength and expressing them numerically, and realized bringing the strength of a smell close to human sense.
    We performed evaluation of smell in relation to food and drink field using FF-2A, and in this review, we introduced the example of comparative evaluation of the smell of the Japanese tea with which grades and places of production differ, yogurt, and wraps for foods.
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