家庭における調理の簡便化に伴って基本調理器具の使用方法も変化している.そこで調理の簡便化と基本調理器具の使用状況との関係を知ることを目的として本研究を行った.その結果つぎのような結論を得た.
(1) 家庭の基本調理器具の保有種類は, 一世帯約80~100種類の器具が保有されており, とくに保有率の高いものは, たわし・ふきん・しゃもじなどであった.
(2) 家庭に保有されている器具を分類してみると, 1グループの趣味的洋菓子づくり器具, 2グループの本物手づくり器具, 3グループの小物器具, 4グループの実用和風料理器具の4グループに分類できた.
(3) 調理の簡便化に伴う調理法によると使用器具も使用回数も減少した.
(4) 調理法が異なる, 手づくり法と加工食品使用の方法とで料理を実際に作り, このとき使用される器具の特性を知るため, 主な使用器具の使用回数と料理の摂食頻度から主成分分析を行った.その結果手づくり法による調理器具の使用のされ方に特徴がみられたが, 加工食品を用いた料理では明確な類型化はされなかった.
(5) 手づくりの料理では, 鍋・ガスレンジ・まないた・包丁などが主要器具として使用され, これらの器具によって, 主食・主菜・副菜・汁物などがセットで調理されていることがわかった.一方加工食品利用の調理においては, どのような器具が主に用いられ, どのような料理が作られているかという類型化ができなかった.
以上の調理器具の変化は新しい加工食品専用の電気調理機器具を生みだしている. このように調理形態の変化を随伴して器具の形態が変わり, 現在の家庭の台所では新たな局面をむかえ, 食事づくりに変化を与えていると考えられる.
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